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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

16 危険な香り

「はぁぁ……やっと宿題が終わったぜ」
俺は深い深い溜息をついた。
静寂な夜に俺の深い溜息は部屋の向こうにいる親にばれると、俺が何か卑猥な事をやっている。
いや、男として健全な行為をやる時に出る声の様に聞こえているかもしれん。
とりあえず、この宿題の量を出した数学の先生を本気で呪いたいレベルだ。

ってか、皆ちゃんとやってんのか? 
と疑問に思いながら、俺はベットに横になった。

健一はどうせやってないだろうし、佐藤君は我には勉強という概念は無いとか言いつつもちゃんとやってきている。(佐藤君は厨二病だが、割りと真面目な奴だ)
真弓はしっかりやってきてるだろうな。

「あ、寝る前に朱里から借りた本でも読むか!」

俺は朱里から借りた『ぼくら』シリーズを鞄の中から取り出し、横になって読むことにした。

読んだ事が無い奴の為に、少し説明。

『ぼくら』シリーズとは、宗田そうだおさむ先生が書いている作品の一つでシリーズ累計発行部数1500万部を超えるとてもとても凄い作品なのである。

俺は無我夢中で読みふけってしまった。
本を閉じ、時間を確認する。
「あぁ……面白かった。って、もう3時じゃん!」

俺は本を読みだしたら、世界観に入り込み過ぎてしまうのだ。
本当に自分の悪い癖だと思うのだが、母親や恵梨香なんかには、逆にいいことじゃないと言われている。まぁ、確かにいいことなんだと思うが、あまりにも夢中になってしまって、次の日の学校に影響を及ぼすとなると話は別だ。

まぁ、勉強は大体分かるからいいとしても、朝から身体がだるくて動けなくなるのは嫌だし、恵梨香に怒られるのも面倒だ。

「考え事はやめて……とりあえず、寝よう」

俺はそう思い、目を閉じた。

***
 今、俺は文化祭準備をしている。

周りに友達がいて、楽しく笑いながらクラスの為に働く。昨日とは大違いだ。昨日、俺が一人残って看板造りをしていた苦労が嘘だったかのように皆でやれば早く終わった。

「よし、みんなでカラオケでもいかね?」

クラスのイケメンが皆に声をかけ、皆も乗り気だ。もちろん、俺も行く気満々である。

そんな風景は傍から見れば、微笑ましい青春の1ページだろう。文化祭で友達ができるという都市伝説はこれで本物である事が証明された。

これ以上……話を捏造するのは俺の目から涙が流れ始めるのでやめよう。

そして、本当の話をしよう。
本当に現実というものはいつも俺の想像の斜め上を行く残念さをいつも発揮してくれる。

もう、本当に困る。これがもしも、漫画とかアニメとかならいいんだが……それほどまで現実ってのは甘くないのだ。もし、俺の願いが叶うとするならば、それは幻覚という類だろう。

そして、先程までの話は俺があまりの暑さで創り出した幻想だったらしい。

実際の所、俺は放課後に一人残り、昨日の看板造りの続きをしている訳だ。傍から見れば、俺の存在は『可哀想な奴』と思われているに違いない。

しかし、俺はそんな事を気にせずに着々と仕事をこなしていった。

「もう二度と……実行委員だけにはならん」と心の底から誓いながら、『喫茶店』と書かれた文字にペンキで色を塗っていく。

やってみると、結構楽しかった。さらに俺はペンキ屋の才能があるのかもしれないと思うぐらいの出来の良さだった。外国のオーディション番組なら、俺のペンキ職人としての技術力に拍手喝采だろう。

一通り、文字を塗り終わった俺はペンキを片付けて家に帰ることにした。

その時だった。

ギスギス……と廊下が軋む音がしたのだ。

もう、外は暗くなっていて周りがあまり見えないこの時間帯に人がいるというのは明らかにおかしい。

もしかしたら……あの包丁を持った女がいるかもしれないというのが頭の中で一杯一杯だ。

廊下が軋む音が俺の教室に近づいてくる。

怖い……ただ怖い。

俺は恐怖を打ち消すかのように、急いで鞄に今日の宿題だけを入れ込む。

もう、軋む音は俺の教室の側まで来ている。

どうする? 俺……落ち着け。落ち着くんだ。

自分の息遣いが荒くなっているので、深い深呼吸をして、息を整える。

軋む音が俺の廊下を通る。

暗い中でも作業をしていた俺の目にははっきりと軋む音の正体が見えた。

そいつもこちらを見て、ニコッと笑ってきた。

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