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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

15 空白の1週間

今から話すのは、俺と恵梨香が"幼馴染"という関係になった日から1週間の間の話。
つまり、俺があの変な女に出会うまでの話だ。

✽✽✽
1日目—―
俺が朝、朝食を食べていると『ピンポーン』とインターホンが鳴った。

誰だろうか? 俺はそう思いつつ、玄関を開ける。

そこには、恵梨香がいた。

「えっ? なんで来てんだよ。もう、俺とお前は……」

「何、言ってるの? 私達は、"幼馴染"だからしょうがないじゃない」

恵梨香がそう言って、微笑む。

そして、続けるようにこう言った。

「私の生活習慣を崩したくないっていうか。それと……夕君、私がいなかったら何もできないでしょ?」

「た、確かにそうだけど……」

「まぁ、いいから。いいから。早く、行く準備しないと遅刻しちゃうよ」

恵梨香に急かされ、俺は急いで行く準備を始めた。


「ふぅ〜〜 間に合った」

「もう、夕君。ギリギリだよ! もっと早くこなきゃ」

「そ、そうだな」

俺と恵梨香はギリギリ学校に登校することができた。本当に恵梨香がいなかったら、遅刻していたかもしれん。

「え、恵梨香……俺と一緒でいいのか?」

「な、なんで?」恵梨香が首を傾げる。

「だって、俺と一緒にいたら……葵が……」

「ゆ、夕君。私、実は葵君を好きじゃないの」

彼女はそう言って、走っていった。

自分の教室に入るが岬はまた今日も来ていなかった。
その後、2日目、3日目、と特に何も起きなかった。

そして、4日目。

すなわち、日曜日に事態は少しずつ深刻化していく事になる。

日曜日は俺と恵梨香は一緒に買い物を買いに行くという約束をしていたのだが、俺はそれを急遽断る事になる。

断る理由としては、彼氏がいる女の子と一緒に外を出歩くのは危険だと判断したからだ。だって、あの時の恵梨香は葵と付き合っていたからだ。もう、彼女は行く気満々の様で、俺にLINEをして服装はどれがいいかなどの事を写メって送ってきていた。

俺は、それを見ていて、恵梨香かわいぃなとか思いつつも、この状況を打破する作戦を思い浮かべていた。

その時だった。

プルプル……電話が鳴ったのだ。

それも俺のスマホの電話が。

俺は元々、自分の電話番号をあまり人に教えていない。教えていないっていうか、大体の人はLINEで済ませるようにしているからだ。それに友達と言える人間が健一しかいなかったので、俺は自分の携帯の電話番号を教える事は無かったのだ。っていうか、無縁だった。俺の電話番号を知っている人となると、母親と恵梨香、それと自分自身だけのはずだ。しかし、自分が自分に電話をかける事は無いし、恵梨香は今はLINEで会話しているので、わざわざ電話をかける事も無い。

という事は、残るは母親だけのはずだ。と思い、電話を取ったのだが、意外な人物からの電話だった。

『ねぇ、岬だけど。今から、会えない?』

俺は、岬からの電話という事に驚きを隠せなかったが、それよりも岬の事が心配だったのでちょうどよかったと思った。

「あぁ、いいが。恵梨香も一緒に行っていいか?」

「恵梨香ちゃんはダメ! っていうか、相手が拒絶すると思うし……」

「そうとは限らないかもしれないぞ」

「いや、それでもやだ! 私は、渚君と二人で会いたいの」

「あぁ、わかった。それでどこで?」

「駅前の喫茶店でいいかしら? 私の家から近いから」

俺は、恵梨香に罪悪感を抱きながらも、仕方がないことだと言い聞かせ、

「あぁ、わかった。今から、そっちに向かう」とだけ、伝え、電話を切った。

その後、LINEで恵梨香に『急な予定が入った。今日のデートは中止!』と送った。

俺は、電車に乗り、岬の家の近くにあるという有名な喫茶店に向かっていた。喫茶店と言えば、俺等の文化祭の催し物も喫茶店だったな。とか、思いながらスマホゲームをこれでもかと堪能していると、すぐに駅に着いた。

人通りの多い駅前を横切って、十字の交差点を渡ると、岬が指定した喫茶店があり、俺は中に入る。この喫茶店は、中々有名な所なのだが、俺とは縁もゆかりもない場所だった。しかし、今日、俺はこの喫茶店と縁ができてしまったようだ。

中に入ると、異様なオーラを醸し出す岬はあまりにも分かりやすかったので俺は岬の待つテーブルに座った。

「あの、どちら様ですか?」

岬が俺を見つめ、真顔でそう答えてきた。

こ、こいつ……本当に冗談がきつい。

「俺だよ。俺!」

「オレダヨ オレさん? 私、そんな人を知らないんだけど」

「いやいや、そんな訳では無いんだが……まぁ、いい。それで用件はなんだ?」

「それでは、オレダヨ オレさん。私は、貴方に話があるの。色々と。今までの事も、今からの事も。全部、全て。まるっとすっきりと話を聞いてくれるかしら?」

俺をじっと見つめる。

まぁ、オレダヨ オレさんってのはやめて欲しいが、こんなにも岬という正統派美少女がユーモアに溢れる女の子だったという事が分かり、親しみを持ったのも事実だ。

俺は答える。

「あぁ、いいけど。その前に一つだけ、条件がある」

「条件? 話を聞いてやる代わりに身体を要求するのは無しでお願いね」

「おいおい! ちょっと待ってくれ……俺ってそんな風に見られていたのか?」

「あぁ、今のは失敬。私とした事が、ついいつもの癖でポロポロと心の声が出てしまった、わ」

その、最後のわざとらしい『わ』って何だよとツッコミを入れたいが、今回は避けておこう。

それよりも俺がそんな風に思われていたことがかなり、ショックなんだが。

「お前と話していても俺のメンタルが先に壊れるかもしれないから、本題に入ろう」

岬は「そうね」とだけ、言い残して寂しい顔をした。

岬から聞いて分かったこと。

・葵から告白されたこと。

・Twitter事件の犯人では無いこと。

・学校に行っていないのは、情報を探していること。(どうやって情報を集めているのかは聞いていない)

・それと謎の不審者が家の付近を彷徨い歩いていること。

この4つが分かった。

まぁ、最後の話は別に関係ないことだと思うのだが「とりあえず、注意しとけよ」とだけ言っておいた。

その後、俺が二杯目のアイスコーヒを頼み、岬にストロベリーパフェを奢って上げた。

岬は俺に奢られるという行為に何か裏があるんじゃないかと思っている様で胸を手で隠していた。

 俺と岬はお互いに会話を続けた。
俺は今の学校のこと、恵梨香と仲直りできたことなどだ。
だけど、楽しい時間ってのはあっという間に終わり店を出た。


「ねぇ、渚君……」

「どうしたんだ? 岬」

俺が後ろを振り返り、岬に尋ねる。

「やっぱり、いい」

岬は顔をぷくっと膨らませた。

「おい、何か怒ってんのか?」

「いや、なんもない! じゃあ、私は帰るわね」

彼女はそう言って、俺の前から立ち去って行った。

何、怒ってんだよ……


その後、5日目、6日目と何事も起きなかった。
ちなみに岬が学校に来ることも無かったが。

そして7日目。

俺は、ある女の子に昼休みに出逢う事になる。

それは俺が昼飯を食べ終わり、図書室に向かっていた時だった。階段を上っていると、前から女の子にぶつかった。

ぶつかった衝撃により、彼女が手に持っていた本が落ちた。

俺は、その本をしゃがみこんで彼女に返そう……と思ったが、俺はその本の表紙を見て懐かしんだ。

その本が俺にとって、思い出の一冊だったからだ。

「あ、あの……本、返してもらっていいですか?」

眼鏡を掛けたいかにも真面目そうな女の子が俺に本を返すように要求された。

「あぁ……ごめん。ちょっと懐かしくて」

彼女は目をまん丸にして、俺に興味津々だ。

「ちょっと……恥ずかしいんだが」

「あ、あの、すいません」

彼女が俺に頭を深く下げて謝ってきた。

「い、いや……そんなにも謝らなくても。っていうか、君も『ぼくら』シリーズ好きなの?」

「は、はい!! もしかして、貴方も好きなんですか?」

「あぁ、まぁ〜な。ってか、よく昔の本を知ってるな」

まぁ、俺も人の事を言えないのだが。

俺がこの本に出会ったのは俺が小学4年生の頃だった。あの頃の俺は本を漁るように読んでいた記憶がある。そんな時に図書室に置かれていた『ぼくら』シリーズを読んだわけだ。

作品的には、小学4年生が読むような本では無かったが読み進めていく内に俺は世界観に没頭していた。まるで、その作品に入り込んでいる様な気分だったのだ。

まぁ、そのせいで中学校というものは本当に楽しい所なのだろうと思いこんでいたのは事実である。

「親から小学生の頃に薦められてから、今回で3周目です!」

彼女の目は何か輝いていた。

「あぁ、そうか。そのシリーズはかなり続くからな。俺は全作品とまではいかないが、大学編までは読んだよ。大人編とかもあるらしいけど、色々な図書館や本屋とかにも行ってみたけど売ってなくてな……」

「あの……私の家に全巻揃っているのでもしよかったら、持ってきましょうか?」

「えっ? いいの?」

俺は普通に嬉しかった。

だって、自分の好きだった作品の続きが読めるんだから。

「はい! だって、私達、いや『ぼくら』は友達の為にはいつも全力ですから」

「あぁ、そうか。それはありがたい。じゃあ、明日頼むよ」

「あ、ちょっと待ってください!」

「どうしたんだ?」

「名前……まだ聞いてない」

「そうだなぁ〜。渚夕だ。よろしく」

「はい! 私の名前は古宮フルミヤ朱里アカリです。よろしくお願いします」

これが俺と朱里の初めての出会いだ。

翌日、俺は朱里に本を借り、放課後に文化祭の看板造りをすることになる。

そして、俺はあの不審な女と出逢う事になる。

こうして、俺の長い長い回想は終わりだ。

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