話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

9 俺は俺のやり方で

俺は恵梨香の居る教室の目の前に来ていた。恵梨香に誤解を解くために。それしか、方法が無いから。健一のやり方だと、不幸にさせる人が絶対に出てくるから。だから、俺は恵梨香の元にやってきたのだ。

ドアを開けて、中に入る。教室の中にいた人の視線を一気に感じ、居心地が悪い。俺がこの教室に入ってくるのを否定しているように。それでも俺は恵梨香の元に駆け寄り、恵梨香の手を握った。

「話がある」そう言って、俺と恵梨香は学食へと向かった。

「ねぇ、何? 夕君、もう私達別れたんだよ?」恵梨香が泣きながらそう言った。

また、泣かせてしまったと罪悪感が残る。
だけど岬と俺には何もないということを分かってほしいんだ。

「食べながら、話そう。今日は俺が奢る」俺がそう言うと恵梨香の顏がぱぁっと明るくなった。
「えっ? いいの? やったぁー、じゃあカレーライスで!」ニコッと笑う彼女の姿は何時にも増して綺麗に見えた。
やっぱり、恵梨香は泣いているよりも笑っている方が可愛いな。

俺の学校の学食は食券制に完全に統一されている。機械に触り、食券を買いそれを学食のおばちゃんに渡すという仕組みになっている。ちなみに学食のメニューは結構豊富な方で、カレーにも種類が何個かあったり、ラーメン、うどん、日替わりランチ、スパゲッティ、などなどの比較的、簡単に作れる料理を食べることができる。なので、生徒達が飽きる事なく、毎日学食に通う事ができるという訳だ。

俺は恵梨香の分と俺の分の2つのカレーライスの食券を買った。(外国では料理を頼む時にカレーと言ったら、ルーしか来ないらしい。なので、外国に行ったときはカレーライスときちんと言おう)

おばちゃんに食券を渡し、カレーライスを受け取る。そして、水をコップに注ぎ込み、恵梨香の元に戻る。

「おまたせ」

「ありがとうね」と恵梨香は言ってカレーライスを頬張り始めた。

「熱い……」恵梨香は昔から、猫舌なので熱かったようだ。

「大丈夫か? ほら、水飲めよ」

水を渡すと嬉しそうに受け取り水を飲んだ。

「ごくっ……」とのどごしのいい音が聞こえそうなぐらいの飲みっぷりだ。

「はぁ……熱かった」

全く子供みたいだ。昔から、ちっとも変わってもないなと思った。

昔から、ちっとも……変わってない。

そう、彼女は全く変わっていないのだ。

猫舌な所も、可愛いということも、俺の事を好きという感情も、勉強ができるということも、いつも真面目そうにしていて実際はドジな所も、昔から変わっていないのだ。

そう、俺の呼び方も。

「ごちそうさまでした」
恵梨香がカレーライスを食べ終わり、手を合わせた。
そして、続けるようにこう言った。

「ねぇ、夕君。まだ、食べてないの? 私よりも遅いなんて本当に女の子みたいだね」

俺は手に持っていたスプーンを置いて恵梨香を見つめる。

「なぁ、恵梨香。大事な話がある」

「どうしたの? 改まって、また付き合おうって?」

恵梨香がコップに水を注ぎこむ。

「いや、岬と俺の事だ」

コップに入る水の量が一気に増える。

「あ、そう。それで?」
そっけなく、恵梨香が言った。

「俺はあまり、回りくどい事は嫌いだから率直に言う」

「う、うん……」
恵梨香の顏が俯く。

「お前が岬の偽アカを作り、それを使ってツイートしたんだろ?」

恵梨香の顔が青ざめる。

「俺は別に恵梨香を責め立てる事はしない。だから、お前がやったのか、やってないのか、だけは教えてくれ」

「へぇー。そっか、気づいてたんだ」
恵梨香が顔を上げ、俺を関心したような表情で見つめ返す。

「あぁ、俺はお前と幼馴染だからな」

「それで、夕君。何が目的なの?」
声のトーンがいつもより低い恵梨香の声が怖い。

「とりあえず、岬だけには謝ってもらう。それだけでいい」

「嫌よ。謝らない。だって浮気したのはそっちでしょ?」

「浮気? どういうことだよ!」

「だって昨日……泥棒猫とキスしてたじゃない! 廊下で……」

「ちっ、違う。あれは、俺の耳元で岬が囁いただけなんだ」

「えっ? 何言ってんの? 分かんないよ。私、分かんないよ。ねぇ、夕君……私わかんない」

恵梨香の声が震えていく。

「お、落ち着こう。落ち着こう。恵梨香、何があったんだ?」

「わ、私……」

恵梨香が何かを言おうとした時、あいつがやってきた。

「恵梨香さん、探しましたよ。あの、すいません。幼馴染である夕君には悪いですけど、僕の彼女を泣かさないでくれませんかね?」

あいつは今、確かに『彼女』と言った。

「おい……今なんて言った?」
自分の身体の血がすっーと冷えていくのを感じる。

「いや、だから僕は、僕の"彼女"を泣かさないで欲しいといったのですよ」

「はぁ? 恵梨香は俺の彼女だ。誰にも渡さないし、渡す気もねぇ~よ」

「はぁ……これだから困る。貴方にはまだ言っていませんでしたっけ?」

溜息をつかれ、飽きられる。

「何がだよ!」

「実は、僕と恵梨香さんは昨日から付き合ってるんですよ」

俺はこいつの胸倉を思いきり、掴んだ。

「や、やめて!! 夕君……」

え、恵梨香? 何言ってんだよ?

お前がその先を言ったら、俺は……俺は……どうすればいいんだよ。

しかし、そんな俺の気持ちを何も考えずに恵梨香が言った。

「昨日、私、夕君と岬ちゃんがキスしているのを見て泣いてたら、あおい君が来てくれて……」

こ、こいつの名前は葵と言うのか。

俺はひとまず、葵の胸倉を掴むのを止めた。

「でも、昨日俺と一緒に帰っただろ?」

「うん……だけど、私ずっと考えてたんだよ。岬ちゃんと夕君が浮気している事をずっと考えてたんだよ……」

「だから、俺と岬の中にそんなものは無いって。それに俺にとって、一番は恵梨香だけだよ」

「ご、ごめん……もう、今は葵君と付き合っているから……」

「い、いや!! ちょっと待てよ。俺、何もわかんねぇーよ」

「ごめんなさい……」

葵と名乗る男と恵梨香は食堂を出ていった。
ったく……俺が悪者みてぇーじゃん。
俺はコップに水を注ぎこみ、がぶ飲みした。


食堂から自分の教室に戻るとざわざわしている。

「お、おい……何があったんだ……?」

教室に戻ると、岬が何人かの女子から髪を引っ張られたり、服を脱がされたりしている。男子の皆は服を脱がされる岬を見て、ニヤニヤしたりしていて止める事は全くなかった。

「お、おい!! やめろよ!!」
俺が周りの奴らを押しのけ、教室の真ん中に佇む岬の元に駆け寄る。

「やっぱり……岬の味方なんだ。やっぱりね」
こ、こいつさっきの金髪ギャルか。

「お前らにとって何も関係ねぇ~だろ? これは、俺と岬と恵梨香の問題だ。あっちに行ってくれ」

「はぁ? さっきこいつが言ったのさ。『私がやりました』ってね」
金髪ギャルが不気味に笑いながら岬を指さした。

「はぁ? 何言ってんだよ? あれは……恵梨香が……」
俺の脳の中で『?』がエンドレスで行ったり来たりする。
「恵梨香? あんた、やっぱり最低だね。自分の彼女を犯人扱いして」
「いや、違う! あいつが言ったんだ。自分がしたって」
「馬鹿なことをいうのは止めな。恵梨香は被害者だっただろ?」
「被害者?」
「そう。あんたが浮気したから」
「ち、違う! 俺は浮気なんて……」
「それならしてない証拠を出しなよ!」
「そ、それは……無理だ」
「こっちには列記とした証拠がある」
「確証はあるのかよ?」
「確証? どこからどう見てもこれはキスしてるようにしか見えなかったけどね」
「してるように、だろ? お前の目できちんと見たわけじゃないのにそんなことを言うのはどうかと思うぜ?」
「そ、そんなことはどうでもいい!」
「どうでもいい訳ねぇーだろ。逃げるのか?」
「お前と話すのがだるいだけ。ってか、こいつがやりましたって認めた以上こっちが優勢なんだけど」
俺は岬に尋ねる。

「岬……本当にお前がやったのか?」と。

すると、彼女が言った。

「私がやったの」ってね。

「チャット始めたら、危ない女が現れた。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く