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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

5 変わらない日々

 予定よりも明らかに準備が早く終わり、ニュースを見ていると「ピーンポーン」というインターホンの音がした。

恵梨香が来たのだろう。
鏡でもう一度、自分の身だしなみをチェックして玄関へと向かう。

靴箱から靴を出す。黒の革靴である。昔からの学校の伝統らしい。
何かと俺の通う学校はそんなところがある。公立だからだろうか?
急いで革靴を履き、玄関のドアを開ける。

恵梨香の姿があった。

今日はツインテールかぁ……かわええなぁとか思う。

こんな女の子が俺の彼女という嬉しさが込み上げてくる。

「恵梨香、今日の髪型可愛いぞ」

「そ、そう?……ありがと」

髪型を褒められ嬉しそうだ。

「あのさ、今日は一緒に食べるのは無理そう。今日は学食だから」

「えっーじゃあ誰と食べよう……」

「え、恵梨香、もしかして友達まだできてないのか?」

「い、いや! 違うよ! 私はできてないじゃなくて、作ろうとしないだけ!」

「あぁ……わかったわかった。今日は売店でパンを買うから、一緒に食べよう」

「えっ、いいの?」

「あぁ、しょうがないだろ? かよわい女の子を泣かしたりはできないからな」

「あ、ありがとう……私が友達できなくて……迷惑かけてごめん」
恵梨香が顔を竦め、申し訳なさそうだ。

「謝ることじゃない。でも……これは改善しないとダメだな。もしかしたら、恵梨香は可愛いから女子達から妬まれているのかもしれないな」

「そ、そうかもしれない……ね、」
彼女は笑いながらそう言ったが、目は全く笑っていなかった。


 いつものように恵梨香と会話を楽しみにながら、電車に乗って学校へと登校。

電車の中はそんなに多いわけでもなく、普通に座れた。
恵梨香を窓側の席に座らせ、俺はその向かい側の窓側に座る。
ガタゴトガタゴトと車体が動き、自分たちの身体も小刻みに揺れる。
最初の頃はその揺れが慣れていなくて、気持ち悪かったけど今になってしまえば居心地がいいものだ。
車体は既に錆び、椅子も少し硬いが別に困る程でもない。
それに人が少ないので座席に座れるのも魅力の一つだ。

窓から見える景色はとても綺麗な海が見え、少しずつ上がっていく太陽とのツーショットは凄い景色だ。その景色を見る為に俺は電車に乗っていると言ってもいいだろう。

「綺麗だな……」
ぽつりと自分の感想を述べ、恵梨香の方を見ると顔を少し赤くしている。

「どうした? 恵梨香、顔が赤いけど?」

「いや、別に何もないよ!」
手をバタバタさせ、自己主張。

「そ、そうか。それならいいんだが……」
そう言いながらも心配になったので一応おでこの熱を確認。

「ひゃぁぁ!?」
恵梨香が可愛い声を出すが、お構いなし。

「うーん。熱はなさそうなんだが……あ、また顔が赤くなってるけど本当に何ともないか?」

「うん! 平気!」

「それならいいけど」
腑に落ちない気がしたが本人がそう言っているのなら大丈夫だろう。

太陽の日差しが目に入る。眩しい。だけど、そんな太陽よりも恵梨香の方が眩しかった。

 電車を降り、学校へと急ぐ必要が無いのでゆっくりと歩く。他の生徒達から妬ましいオーラを感じるがそれをスルーして恵梨香と楽しく会話。

「あのさ、夕君。ぶ、部活とかって入らないの?」
あまりにも突然過ぎる質問に焦る。

「部活かぁぁー」
考えたこともなかった。

一応、中学の頃は天文学部だった。メンバーは俺一人。
いや、メンバーはもう一人いたか。
……だけど名前も顔も思い出せない。
でも一つだけはっきりと覚えていることがある。
それは奴が部室でいつも笑っていたということだ。
部室にはゲームも無ければ、テレビもない。
あるのは自分が部室で読む本と蛍光灯の光、それと無造作にされている机だけだった。

特に面白いと思うものはなかったが、奴は笑っていた。
何が面白かったのは分からないけど。

だけど、そんなある日。
そいつは部室から消えた。学校から消えた。
元々、そんな人はいなかったみたいに。

「どうしたの? 夕君、ぼっーとしてるよ」

「いや、ちょっと中学の時を思い出しちゃって」

「あぁ、天文学部のこと?」

「そうそう。そのことだ」

「なんか懐かしいね。私はあの時びっくりしたよ。夕君が部活始めるって言って職員室に入って行った時は—―」

あの時は無我夢中に部活動を作ろうと必死だった。

理由は星を見たいという率直な考え。
星を見たいと言っても、レンズ越しに見える大きな世界を見たかったのだ。
だから、天文学部を作ろうと決意した。
それとお金がなかったので望遠鏡を学校側に買わせようと思ったことも要因に入る。

そして、俺は二年生の半ば、職員室に乗り込み先生達に頭を下げた。

しかし、部活を設立――できなかった。

人生そんなに甘くねぇーよ。望遠鏡ってそもそも高いし、メンバーが足りなかった。

まぁ、当然の結果である。

それでも諦めきれなかった俺は空き教室を勝手に使い、そこを『天文学部』としたのだ。

あっという間に学校に着き、いつものように「また、後で!」と手を振り自分の教室に向かう。

教室の近くに来ると教室の中がとても騒がしかった。

喧嘩でもしているのだろうか?

疑問を胸に教室のドアに手を掛ける。

すると、その騒がしさがどこかに消えたように一気に静かになった。
さらに男子共が俺を見て、睨んできているような変な視線を感じる。

ったく……何なんだよ。

そう思いながら、開けたドアを閉め、自分の席へ腰を掛ける。

「おはよ、夕。お前さぁー、俺等に内緒にしている事があるよな?」
後ろの席の健一が俺に喋りかけてきた。
やはり、おしゃべりな奴だ。

「えっ? なんのことだよ?」

「いやいや、お前さぁー、俺は失望したぜ。俺はお前の一番の親友だと思っていたんだがな」

「いや、だからなんのことだよ!」

「ったく……しらじらしいな。お前の彼女のことだよ」

あぁ、やっとばれてしまったか。いつかはばれると思っていた。しかし、ばれるのは恥ずかしいな。恵梨香、可愛いからなぁ。
それがばれて男子の視線が痛かったわけか。

「あぁ、悪い悪い。ずっと前から付き合ってんだよ」

「へぇー、そうなのか? それでいつからなんだ?」

「中学の頃からの仲でさ、それで付き合い始めたのが3月14日なんだ」

「なるほど……中学の頃からの仲なのなかぁー。羨ましいなぁー」

「まぁーな。それでお前が大好きな岬ちゃんとは最近どうなんだよ?」 
自分の恋路をあまりしたくなかったので、健一に話を振る。
健一は岬に一目惚れしたとかしてないとか。

「はぁ? 何言ってんだよ? 俺と岬ちゃんは何もねぇーよ」
健一が怒っている?

いや、そんなことはないはずだ。
もしかして、こいつ……何か変なことを言って嫌われたのか?

「えっ? 可愛いって言ってたじゃんかよ」

「いやいや、だからって! ってかそれに岬ちゃんは俺等のアイドルであり、『お前の彼女』だろ?」

『お前の彼女』――俺の彼女?

どういうことだ。

岬が……俺の彼女?

何かの勘違いか? それとも何かのドッキリなのか?

「おい、冗談言うなよ。俺の彼女はB組の恵梨香だぜ」

「はぁ? お前な、何言って……ちょっとこっち、こい!」

健一に腕を強引に掴まれ、教室を後にした。


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