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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

4 予兆

教室に戻ると既に帰る準備ができていると思われる岬の姿があり、さっきの意味を聞いてみようと思ったがあまりにも彼女が暗い表情をしていたので止めておいた。
俺って意外とそういうところって気が利くというか、空気が読めるというか、勇気が無いというか……

そんな俺の気持ちを嘲笑うかのように岬が満面の笑みを見せ、「バイバイ」と手を振って帰っていった。
夕日の影響により、光詐欺が発生してかなり可愛く見えた。(元々、可愛いんだけどね)
岬の顏が暗かったのは俺の勘違いか――俺がそう思いながら帰りの準備をしていると恵梨香が俺の教室にやってきた。

ん? なんか、恵梨香の目が赤いような気がする。

「恵梨香? 目が赤いけど……大丈夫か?」
俺がそう尋ねると恵梨香は目をこすりながら言った。

「ごめん。ゴミが入っただけだよ」って。

「そうか? それならいいんだが……」
とりあえず、一安心。友達ができてないって前にも言ってたからな。
もしも、いじめとかだったらどうしようとか思っていた自分が馬鹿らしい。

「夕君、ちょっと待ってて! 私、教室に忘れ物した」
恵梨香がそう言って飛び出していったので、俺は「おう」と返事をした。


――長い。ちょっと長い気がするよな。
俺のクラス1年A組は3階の南側。恵梨香のクラスである1年B組は4階の北側に位置している。
ちなみに俺のクラスの横はC組があり、B組の隣にはD組がある。そして、成績優秀者などが集うクラスE組は東別館という特殊な場所で学業に励んでいる訳だ。
もちろん、俺はともかく、恵梨香はE組に来ないか? と言われたらしいのだが、断ったらしい。

流石に遅すぎるな。恵梨香、変な奴に絡まれてないだろうな。例えば、文化祭実行委員の時に恵梨香の横にいた奴とか……あぁ、心配になってきた。

でも恵梨香は待っててって言ってたし、悩みどころだ。仕方ない。行こう!

俺は教材がかなり入ったリュックを背負い、鞄を持ち恵梨香のクラスへと向かう。
廊下を通っていく部活動と思しき人を見て、大変だなぁ――と帰宅部らしい感想を抱いていると恵梨香が向こう側から走ってきている。
そんなに走ったら、あの頃みたいに転ぶぞとか思っていたが別に転ぶことはなかった。
やっぱり、恵梨香も変わったんだな。

「お待たせぇー。夕君、本当にごめんね。ちょっと、探し物が見つからなくて」

どうやら、俺の杞憂だったようだ。あの男に絡まれているなんて。

 幸せって感情をいつ皆が思うかはわからないけど、俺にとっては今この状況が最高に幸せだ。
隣に恵梨香がいる。それだけでいいんだ。それだけで俺は幸せだ。世界一の幸せ者なんだ。

だからこそ――今日、言おう。

正式に『好き』と彼女に面と向かって。

 俺は江川恵梨香という幼馴染にちゃんと「好き」と言ったことが無い。好きという感情は確かに持っている。それにその感情が友情ではなく、愛情であるということにも気付いている。
付き合う前は可愛い俺の自慢の幼馴染というイメージが強かったせいか、友情の方が強かった。でも付き合い始めると、次第に愛情に変わり、より一層俺は恵梨香のことが好きになった。
だけど、だからこそ言いにくくなってしまったのだ。もしも、普段に好き好き言うのは何か違うと思うし、今まで通り「好き」と言わないのは確実に彼氏失格の気がする。だから、タイミングというものが必要なのだ。初めて「好き」という気持ちをはっきりというのだから。

よし、決めた! 今、言おう!
逃げるな、俺。逃げるな、俺。
逃げちゃだめだ。逃げちゃ、ダメだ。

「今日、夕君と一緒に文化祭実行委員をしてた女の子可愛かったね」
また、先手を打たれてしまった。
くそぉー自分が情けない。ってか、恵梨香はいつも俺が「好き」と言おうとしたら喋りかけてくるんだよな。
もしかして、時をかけたりしてんのか?

「ああ、岬のことか。あいつが俺が前に可愛いって言ってた人だよ」

「なるほどぉ〜、あっ! もしかして、その岬ちゃんっていう女の子が可愛かったから文化祭実行委員になったんじゃ?」
恵梨香が訝しい顔で「うぅ~」とうなり、俺の返答を待っている。

「いや、ねぇーよ。俺は嫌々させられたわけ」
そう言うと、恵梨香の表情がぱぁっと明るくなった。

「た、確かに夕君はそんなめんどくさい事しないよね、ふふ」

時々見せる恵梨香の笑顔は可愛くて、絶対に俺が守っていかなければならない笑顔でもある。

よし、今回は無理だった。だけど、今日の俺は一味違うぜ。

「なぁ、恵梨香、今度の日曜日一緒に映画にでも行かないか?」

「映画……それってもしかして、デートってこと?」

「そうだけど、だめかな?」

「いや、寧ろ嬉しい! 後から、嘘だよとか言うの無しね!」

「あぁ、もちろんだ」

こうして、俺と恵梨香の今週の日曜日は予定ができた。

その日、俺は君に――


 恵梨香を家まで送り、家に着く。当たり前の日常だが、この日常がいつかは無くなってしまうと思うと何か変な気持ちになった。飯を食べ、風呂に入り、勉強も一段落着いていた頃、俺はスマホをいじろうとした。すると、バッテリーが2%しか無かった。スマホを使っている奴には分かると思うんだが、勝手にアプリの更新とかして、かなりバッテリーを食うよな。
まぁ、そんな訳で充電。
俺はちなみに充電しながらスマホはあまり使わないようにしている。その理由は、発熱するからだ。発熱するとスマホの中に入っている金属が溶けるらしい。(まぁ、噂程度だけど俺は信じている)

でも、まぁネットをしたい訳だし、わざわざパソコンを起動するのはめんどくさいしと思っていると俺はあいつの存在を思い出した。

そう、それはipod touchの事だ。

我が相棒である。

親に頼んで返して貰い、いざ起動……とはいかなかった。やはり、バッテリーがもう無くなっていたのだろう。

その夜俺はipod touchを充電が出来ているか二度確認して寝た。


夜中に聞き覚えのある通知音を聞きながら……


 規則正しいアラーム音が蝉の鳴き声と共に俺を起こす。
そのまま、目をこすりながらベットの上に置いていたスマホに手を伸ばす。スマホを手に取り、とりあえず時間の確認。

6時15分。それが今の時間だ。俺達の学校は朝から補習というモノがある為に7時45分には学校にいなければならない。さすが、進学校と言ったところだ。そんな補習などをするから、生徒達は朝早く起きなければならなくなり、睡眠不足になるわけだ。そして、その睡眠不足を補う為に授業中にうとうとなり、しまいには寝てしまう。そうなると、先生達は怒るわけで強制的に居残りさせられるわけですよ。これぞ、まさに負の連鎖だ。

それにしても眠い。多分だけど、昨日の文化祭実行委員の集まりが原因だ。そのせいで、俺の生活習慣が乱れ……クソッ、本気であのやろぉー。
イライラを通り越して、若干殺意が込みあがる。(そんなことで殺意が生じるなら今までに俺は何人殺してんだよ!)

机の上に充電していたipod touchもとい、我が相棒の姿が視界に入った。
その姿は以前に比べるとやけに小さく見える。普段から使っているスマホが大きいからだろう。

あ、そんなことよりも我が相棒にご対面しようか。
もう、感動だよ。取られたのが半年前ぐらいだったはずだ。
ベットから立ち上がり、相棒の元に向かう。
半年前のことを思い出しながら……そして罪悪感を抱きながら。

やはりというか、やっぱり相棒は小さかった。スマホと並べてみると一目瞭然。下手したら、ipod touch二個分と今使っているスマホと一緒かも。

右上にあるボタン的な何かを強く押す。ロック画面が表示され、懐かしい気持ちになる。ちなみにこの時のロック画面の壁紙は『中二病でも恋がしたい!』のヒロイン立花と立花の姉である十花さんの画像だ。とても愛らしく、何より麗しい。

しかし、それよりも気がかり、不自然と言った方がいいかもしれない。
俺を困惑させるものが画面には表示されていた。


『友達作りチャット +999』と。

+999というものを分からない奴の為に説明。

俺が使っていたipod touchは第四世代なので、通知が+999にしかならないのだ。
怖いという感覚よりもこの通知は何かのバグか、それともアプリ自体の通知だろうと自分を自己暗示をかける。

しかし、それが気になってしょうがない。
まぁ、誰でもそうなるよね。当然の結果だろう。
俺はipodのロックを解き、気になるままに、友達作りチャットのアプリを起動させた。

性能的には最新のものではないので動きが重い。
アプリを起動させた直後は重かったけど、スクロールが動いていた。
しかし、すぐに動きが止まった。
見るな! と俺に告げているかのように。
その後、1分程動きが止まった画面を眺めていると強制終了させられた。
ホームに戻った画面で時刻を確認すると6時30分だった。

「そろそろ、準備した方がいいよな……」
そんな言葉を残し、俺はリビングへと向かった。

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