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チャット始めたら、危ない女が現れた。

片山樹

3 文化祭実行委員

特に何の進展も無く、俺が高校に通い始めて、2ヶ月が経った。
ここから一気に話は進んでいく。

 2ヶ月という時間のおかげで高校生活に慣れ始めていた俺は特にクラスの美少女である岬と仲良くなる事も無く、本当に普通の生活を過ごしていた。
普通と言ってもかなり充実していた毎日だったけど。

毎朝、俺と恵梨香は一緒に登校し、昼ご飯も一緒に食べ、放課後は一緒に帰る。
こんな風に授業中と10分間休み以外はずっと側にいた。側にいたからこそ、今まで以上に恵梨香の事を思う気持ちは次第に大きくなっていた。

本当に彼女が自分の彼女でいいのだろうかと悩むほどに……

そんなある日、文化祭実行委員を決める事になった。
確か、六月の中旬だった気がする。正確にはもうあまり覚えていない。

 俺の学校ってかなり文化祭をするのが早いんだ。
その理由としては、学校の校訓でもある『良い学校』というものが深く関係していると考えている。その校訓には三つあって。
その一つが住みよい学校生活。(環境が良ければ、人間としての人格が成長するとかしないとか)
二つめは挨拶ができる学校。(挨拶ができる奴は将来的に役に立つとか)
そして、三つめが活気がある学校。(生徒全員が活気に満ち溢れ、仲が良い学校)
という、風だったはずだ。

 それで、この学校の知名度アップとまだ始まったばかりの新しいクラスを仲が良いクラスにする為、この学校は文化祭を早くしているというわけだ。

先輩達から聞いた話(俺は盗み聞きしたのだが)、10年前ぐらいは文化祭を2月にやっていたらしいのだが、酷い雪が積もりできなくなってしまったらしい。勿論、当時の3年生達は最後の文化祭として楽しみにしていたが、『そんな時間は取れない』と学校側は決断。

 そして、そのまま学園祭ができないまま3年生は卒業という最悪な結果になってしまったらしい。
まぁ、仕方がなかったというか……運が悪かったというか。

 そんな訳で学校側は親などや生徒達から反感を買ったらしく、行事予定を変更。

こうして、何も行事予定の無かった7月の初旬に文化祭はなったのだ。
噂程度の話だが、かなり信憑性がある話だと思う。

俺はこの文化祭が早くなったということは良かったと思っている。
進学校に通っている奴は分かるかもしれないけど、本当に教室が静かなんだよね。
授業中は静かなのは当たり前なんだけど、休み時間でさえ皆ずっと勉強とかやってたりして、本当に静か過ぎて驚いた。逆に休み時間に騒いでた方がおかしいという風な空気が出ている為に健一はかなり目立っているわけだけど……

まぁ、そんな訳で文化祭実行委員を決める事になった訳なんだが。

隠す必要もないのではっきり言わしてもらう。

『俺が文化祭実行委員になった』

まぁ、実際には担任の独断と偏見で、俺が文化祭実行委員にさせられたと言ってもいいだろう。
できればこんなめんどくさい仕事は死んでもごめんと言いたい所だが、塾に行く人や部活をやっている人などは文化祭実行委員をするのは無理という担任の判断から、部活に所属していない俺に白羽の矢が立ったわけだ。まぁ、それならしょうがないよね。

そう、自分に言い聞かせた。

文化祭実行委員って実は2人決めないといけないらしく、俺は残りの一人が誰だろうと胸がドキドキ。あわよくば、そいつに仕事を任せようという願いも込めて、俺は手を合わせた。

我ながらクズである。だけど、青春って感じで悪くないかもな。
「変な奴とはなりませんように」と何度も心の中で願った。

「渚君の他に部活やってない人、手を上げてー」
学級委員がクラス皆に呼びかけた。その可憐な姿に目を奪われた。

「あぁー。誰もいないの? じゃあ、私がー」
学級委員がそう言いかけた時だった。

机が力強く動き、誰かが立ち上がった。
後ろの席の方からだ。もう、夕日が照らされ、影に映ったシルエットを確認して誰かが分かった。
この影は――

「私、部活動をやってないわよ」と自信満々に立ち上がり、腕をその豊満な胸の前に組んでいる。
別にいばることでは無いと思うんだがと不安な気持ちになる。
こいつと一緒に学園祭を盛り上げなくてはならないのかと。

その人物こそが岬だったわけだ。

まぁ、そんな訳で俺と岬が晴れて一緒に文化祭実行委員をすることになった。

健一や他の男子からも「お前、羨ましすぎるぜ」みたいな感じで言われたけど、俺は別に嬉しくなかった。

可愛いってことは認めざるを得ないけど、俺には恵梨香がいる訳だし岬の事なんてちっともなんとも思っていなかった。
『クラスにいる美少女』というだけで特に岬には何も感じる事はなかったっていう訳だ。
言うの忘れてたけど、俺と恵梨香が付き合っているというのは学校の皆には隠していた。
だって、何かからかわれたりしたら嫌じゃん。
あ、別に恵梨香が不満ってことじゃないからな!


 放課後、文化祭実行委員は集まらなければならなくなった。

どうやら、大事な会議があるらしい。
俺等、1年A組もとい、この帝光高校は何かと緩い。
そのせいか、大切な会議が始まる10分前まで文化祭実行委員が決まっていなかった。
そのせいで、今、俺と岬は慌てて廊下を走っているわけだ。

俺と岬が向かっている場所は総合学習室。
この総合学習室ってのは、広さは普通の教室の二倍の広さで合同教室とも呼ばれている。 
学年集会とかがある時に使われる少し広い部屋と思ってくれると有り難い。

走りながら、俺は思う。

このまま、何も会話もせずに総合学習室に向かうべきなのだろうか? と。

本来、例えば時間に結構余裕があるならば、会話をするべきだと分かるのだが……
今のこの状況を考えると会話をする気にならないと思うんだ。

 それに俺と岬は帰宅部だぜ。未所属だぜ。誰からも束縛されない奴等だぜ。
まぁ、体力がないのはご察しの通りだと思うんですけど。
二人とも、息切れ半端ないわけですよ。

「ぜぇーぜぇーはぁー」のエンドレスってわけですよ。
そんな俺等が会話? 無理無理。

殺す気?

そんな事を思っていると総合学習室が見え、俺と岬は足を止める。
そして、二人仲良く深呼吸。
意外と俺等って仲良くなれるんじゃね?
あ、しまった。今日は恵梨香と帰る約束してたんだった。
あぁぁぁぁぁ、くそくそ! 俺のリア充生活ライフを奪って楽しいのかよ。

あの、担任の野郎! 独身の29歳と13か月の癖に。
もう、お前は30だよって現実を突き付けてやりたいぜ。
もう、あんたは売れ残ったんだよって。
あぁ、でも止めておくか。そんなことをするのは流石に可愛そうだな。
うん、そうしよう。今度暇な時にコーヒーでも奢ってあげよう。

そして言ってやるんだ。
「独身乾杯―!!」って。
俺って性格かなり悪いな。まぁ、先生に比べたらまだマシだけど。

「う、うわわわぁぁぁぁ」

俺の顏のすぐ近くに美少女の顏があってびっくりした。
っていうか、そんな俺の驚きぶりを見て岬はご満悦。

「貴方、もしかして変な考えてた?」
若干、岬が俺を引いているが、大丈夫だ。まだやり直せる。

「いや、そんなことは無いと思うけど……何か変?」

「それならそれでいいけど」
そう言いながら、岬は総合学習室の扉を開けた。
俺から逃げ、人がいる場所に逃げ込むように……。
そんな訳無いと信じたいが。

総合学習室に入ると見覚えのある後ろ姿だと思ったらやはりそうだった。

「え、恵梨香? なんでここにいるんだ?」

「わ、私も文化祭実行委員になっちゃって……もしかしてっていうかここに夕君もいるってことは夕君も文化祭実行委員なの?」
恵梨香が首を傾げ、俺に尋ねる。
その姿、いとうつくし。(たいそう可愛いって意味)

「あぁ、そうだ。じゃあ、一緒に頑張ろうぜ」
俺がそう言うと恵梨香はニコッと微笑んだ。
恵梨香の横に不愛想な男がいるのが少しむかつくけど……仕方ないだろう。
彼も俺と同じ無理矢理押し付けられた人なのかもしれないのだから。
もしかして、俺って嫉妬体質なのか?

 俺と岬が総合学習室に着くとすぐに文化祭実行委員長が来て、会議が始まった。

議題は『皆が楽しい文化祭をする為にはどうするべきか?』というものだ。

議題の話を長々と書くのもいいが、めんどくさいので要訳する。

1.ミスコンを開催することになった。

2.文化祭の出し物についてはクラス事に違うものをする。(被ってしまった場合はくじ引きによって判断される)

3.地域の皆さんと共に楽しんで貰う為に文化祭実行委員は係員として動く。(俺等の学校の文化祭は二日間あり、1日目に係員をした人は2日目に自由。1日目に自由の奴は2日目に係員ってこと)

だから文化祭実行委員はどちらか1日は棒に振るうっていうことだ。

会議が終わると、すぐに岬は教室を出て行った。

多分だけど、トイレでも我慢していたのだろう。
しかし、慌てんぼうのサンタクロースは机に消しゴムを忘れている。
本当に困ったものだ。

そんな彼女に消しゴムを届けないといけないと思った俺は恵梨香に「後で、教室に来てくれ」と一言伝え、恵梨香の横に座っていた男を睨み付け、教室を後にした。

もう二度と来たくないものだ。

見たくないと言った方がいいだろうか。
恵梨香の横に座っていた男の目線が気に食わなかったのだ。
何か、恵梨香をエロい目で見てるというか……そんな感じ。
元々、彼がそんな目つきなら仕方が無いと思ったけど明らかに彼の目は違っていた。

教室を出て、少し走るとすぐに岬に追いついた。
そして、俺が来るのを待っていくれているのか? 立ち止まってくれている。

「ほ、ほら、消しゴム」
岬に消しゴムを渡すが、彼女の顏は何故か暗い。

「ねぇ、あのさ……会議が始まる前に喋った人って誰?」
彼女の声がさっきに比べ、トーンが低い。
もしかして、喉痛めたのか?
それで病院に行こうと急いでいたわけか、一人で納得。

「ああ、恵梨香の事か。俺の幼馴染だよ」 

本当にここで「俺の彼女だよ」と言っておけば少しはましな方になっていたかもしれん。

「へぇ~あのさ、一つ聞きたいことがあるんだけど」
恐る恐る彼女が俺に前置きをした。
野生のリスなどが食べれるか、食べれないか。吟味するように。

「な、何?」
クラスメイト。ましてや、美少女。嬉しくないはずがない。

「渚君って、彼女いる?」
あまりにも機械的だった。
何か、冷淡過ぎるというか。人間っぽくないというか。

「い、いない……」
俺は嘘を吐いた。だって、ここでいると言ったら俺と恵梨香が付き合っているってばれるじゃん。
いや、今はばれないかもしれないけど女子だったら絶対に恋愛とか勘鋭いし、女子の情報ってすぐに広まるからすぐにばれるだろ。
恐るべし、女子!

彼女がまた急に俺に近づいてきた。
な、なんだよ!? 俺が言うよりも先に彼女が動く。

彼女の顏が俺の耳元に来た。多分だけど、彼女の身長の事を考えると背伸びしていると考えられる。
そして、彼女はその柔らかそうな唇から言葉を呟いた。

「嘘つきは大切なものを失っちゃうよ」と。

そのまま、岬はつまらなそうに唇を尖らせ、スタスタと教室に戻っていく。

俺はそんな岬の背中を見ながら、俺と恵梨香が付き合っているってのがバレていると感じた。


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