ヒーローライクヒール
その4・過去の影を照らせるよう
一旦落ち着いてアクアとエリーが帰ってきた。
エリーがアクアに両手を後ろで押さえられている。
ガイア「おかえり。大丈夫だったか?」
(えぇー、この状況を当たり前のように…)
アクア「まぁね。」
エリー「まさかしくじってしまうとは…」
アクア「ふん。あたしを襲おうだなんて100年早いよ。」
フレア「ほんと節操ねぇな〜。」
クロノ「フレア。」
フレア「うん?」
クロノ「何がどういうこと?」
状況が一切読めない。
フレア「あぁ…エリーさんはな…なんつーか…両刀?っていうのか?」
クロノ「はい?」
フレア「特に女には見境いないんだと。さすがに知り合いしか襲わないらしいけど。」
クロノ「えぇ…」
引いたわけではないが、さすがにそういうこと聞いて驚かずにはいられない。
エリー「また今度…」
アクア「しないよ。」
エリーが地面に倒れ伏した。
マキノ「おっと、そろそろ帰らなくては。」
そそくさと帰っていった。
●
エリー「それで、なんの話してたんですか。」
エリーがぬるっと起き上がる。
ガイアが一通りのことを話す。
エリー「なるほど。」
ガイア「あとは…何か知らなくてはいけないようなことは…」
エリー「必要かどうかは分かりませんけど、英雄神のことくらいは知っておいた方がいいのでは?」
フレア「まぁ、この世界じゃあ常識だしな。」
クロノ「英雄神?」
(名前からして凄そう。)
エリー「英雄神というのは、今から1500年ほど前に活躍した人達のことです。戦い、戦略、恋、農業、呪術、狂気…その他様々な方面で才を発揮した人達を神様と同じくらい素晴らしい存在として讃えているんです。宗教とはまた別の方向で、ですけど。」
クロノ「神様はまた別にいるんですね。っていうか宗教あるんですね。」
ガイア「どちらもあるぞ。この国は大陸の中央に近いから特にこれと決まった宗教を持つ奴は少ないがな。俺も無宗教だ。」
フレア「ラフの連中も基本的に無宗教だけどね。」
(日本みたいなもんか…日本は中心ってわけではないけど。)
エリー「英雄神には神の加護が付いているから神と同等、と言う方もいますが、根本的には全く違う存在ですね。」
クロノ「1000年以上も前にそんな凄い人らがいたんすね…」
エリー「ちなみに、ハゼットさんは2000年前に生まれたので英雄神より先輩ですよ。」
クロノ「え⁉︎あ、そうか。2000年生きてるとか言ってましたね…」
身近に凄い人がいてもその凄さが分かるような分からないような微妙な感覚。
クロノ「あれ、じゃあ英雄神より凄いってこと?」
エリー「それは…どうなんでしょうね…」
クロノ「え、凄くないの?」
エリー「ドラゴンを単独討伐したり、数々の闇を倒してきたり、素晴らしい活躍はしてきているのですが、英雄神として崇められるような…こう、1つ秀でている才能というのが無いんです。英雄神は何か1つの才能に秀でていたから讃えられていたわけですし。」
クロノ「その道のスペシャリスト、ってわけですか。」
エリー「あらゆる面でとても強いのですが、悪く言ってしまえば器用貧乏なんですよ。」
(ゲームのキャラステータスを特化型じゃなくて全部を良い感じに上げようとするバランス厨の俺としては胸が痛くなる話だ…)
●
フレア「そういえば英雄神に1人生きてる人いませんでしたっけ?」
クロノ「2000年近く?」
まさか生きているはずがないと少し呆れた顔になるが、
エリー「いますね。あれは確か不老不死だったと思いますよ?伝説の通りなら。」
いるらしい。
クロノ「不老不死ってそんなにポンポンいるもんなんですか?」
エリー「いえいえ、不老不死はその人を入れても3人ですよ。」
現在不老不死の人間はハゼット、エリー、英雄神の3人。
クロノ「あぁ…でもなんかこうもたくさん見ちゃうと他にもいそうって思っちゃいますね。」
エリー「さすがにないと思います。今はもう方法がないはずですし。」
クロノ「方法?不老不死って後天的なものなんですか?」
フレア「逆に生まれつき不老不死だと赤ん坊の見た目のまま何百歳ってことになるぜ?」
クロノ「あ、そうか。」
エリー「その英雄神の方の場合ですと、その人は戦いの神と呼ばれているアリウスという方なのですが、死を操る神の反感を買って不老不死にさせられたのだとか。」
クロノ「何をしたんですか…」
死を操る神を怒らせ、死そのものを奪われたとなると余程のことをしたに違いない。
エリー「さぁ…何も記録が残ってないんですよね。」
クロノ「はぁ…ちなみになんですけど、エリーさんとハゼットさんはどんな方法で?」
一瞬、場が静まる。
レオが「あっ」と小さく口に出したかもしれない。
(え?なにこれ?)
凍りついた、という感覚を初めて理解できた気がした。
クロノ「えっと…?」
エリー「ユニコーンって知ってます?」
特に気にしてない風に始めるが、空気的に地雷だと分かる。
(これもしかしてやばいこと聞いた感じかな…)
しかし、ここで話を止めるのも空気が悪くなる。
クロノ「名前くらいなら…」
話を続ける。
エリー「額に角が生えた馬のような外見の魔獣です。今はもう絶滅したそうですが、ハゼットさんや私がまだ生まれて少しの頃にはいました。その時には既に一体しかいませんでしたが。」
クロノ「そのユニコーンが、鍵なんすか?」
エリー「ユニコーンの血を飲むと不老不死になれる、という噂話が広まっていたんです。本当のことだったんですが、当時信じている人はそんなにいませんでした。」
クロノ「ってことは、ハゼットとエリーさんはその噂を信じて、狩りに行ったとか、そういう…?」
エリーの横でレオが首を横に振っている。
「違う」というよりは「その話をしてはいけない」というような表情もしている。
エリー「いえ、別に狩りに行ったわけではないんです。不老不死になりたかったわけではないですし。」
ここで、「じゃあどうやって?」と聞いてはいけないと分かってはいるが、しかし、ここで話を切ってもそれはそれで不自然である。
(こう考えると不老不死って結構地雷やばそうな話だな…なるべくこの話をぶった切りたいけど、変に気を遣わせちゃうし、めちゃくちゃ気まずいぞ…)
エリー「あっ!」
エリーがパンと手を叩く。
それだけの行動でこの場にいる全員がビクッとする。
エリー「私、ちょっと忘れ物したんでした!すみません、ちょっと出てきますね。」
そう言って足早にギルドを出て行く。
クロノ「あっちゃー…まじか…」
(気を遣わせてしまった…)
フレア「クロノ…」
クロノ「知らなかったんだよ…そんな重い話になるようなことだったなんて…」
アクア「あたしらも詳しくは知らないが、相当胸糞悪くなるようなことがあったらしいんだ。」
俯きながら言う。
ガイア「何があったか知っているのは本人くらいなんじゃないか?俺も聞いたことないし、レオもないだろう?」
レオ「うん。すごく酷いことがあったっていうのは知ってるけど…」
1人で出て行ったエリーが心配になる。
クロノ「忘れ物って、絶対嘘ですよね。」
アクア「そうだろうね…というかさっき森に行った時、あの人何も持ってきてなかったし。」
クロノ「…行ってきます。」
フレア「行くって?」
クロノ「謝ってきます。」
フレア「あっおい!」
止める間もなく、エリーを追いかけに行く。
アクア「行っちまったよ。」
フレア「こういう時って1人にした方がいいんじゃ…」
アクア「いや、謝るのが良いかはともかく、とりあえず会いに行くのは良いんじゃないかい?そこでどう接するかによると思うが。」
●
クロノ「エリーさん!」
出て行ってから若干時間が経ってしまったため、離れた所に行ってしまったかと思ったが、出口のすぐ横で座り込んでいた。
クロノ「エリーさん…」
エリー「………」
(やべぇ、追ってきたものの何話せばいいかわかんねぇ…)
そもそも、上月玄野は人とあまり話さないから話題になるものもフォローの仕方も知らない。
クロノ「あの…」
エリー「ごめんなさい。」
謝ろうとすると向こうに先に謝られる。
クロノ「いや、自分こそ!なんか、聞いちゃいけないようなとこにまで首突っ込んじゃって…みんなから少しだけ聞いたんですけど、嫌なことがあったって…それも知らずに…」
エリー「別に、聞かれたのが嫌だったわけではないんですよ。」
クロノ「………」
エリー「ただ、あのことを思い出すとどうしても…逃げたくなってしまうというか…どこに行けばいいかも分からないのに。」
クロノ「その…」
(何言えばいいんだ…)
エリー「早く言わなくちゃとは思ってるんですけどね。」
クロノ「そんな覚悟がいるほど、辛いことなんですか?」
エリーの正面に座る。
エリー「え?」
クロノ「別に急ぐ必要はないですよ。多分、いつか言う日が来るまで辛いのは続くかもしれませんが、覚悟が微妙なままで言っても、お互いが辛いままです。」
フォローの仕方は全く知らないし、慰め方も知らないし、国語の試験の記述はいつも3割も取れないような点数になるほど話の核心を掴むのは苦手だが、
クロノ「みんなはエリーさんの過去が知りたいんじゃなくて、エリーさんが過去の…その、恐怖を克服できたかを知りたいんだと思います。みんなエリーさんが心配なんです。だから急がずに…えーと、辛い過去が辛いっていうのはどうしようもないですから、ちょっとずつゆっくりやっていきましょう?」
目の前に本気で困ってる人がいると何とかしてやりたいと思うことはできる。
エリー「…ありがとうございます。」
クロノ「その…慰めるのすごく下手ですけど、でもエリーさんが心配なのは本当ですし!」
エリー「えぇ、分かってますよ。言いたいことだけはちゃんと伝わってます。」
(これは…上手くいったのかな…)
立ち上がって、クロノの手を取る。
クロノ「エリーさん?」
エリー「男の人が苦手で、克服しようとフレアさんやクロノさんやレオにもできるだけ接しようと思ってたんですけど…」
クロノ「女の人が好きみたいなこと聞いたんですけど、それと関係が…」
エリー「…クロノさん結構突っ込んできますね。」
クロノ「あっ!すみません!やっぱ聞かない方が…」
手を離して頭を下げようとするが、エリーから強く握ってくる。
エリー「いえ、あまり気を遣われすぎるのもそれはそれで寂しいんですよ?みんな気を遣ってくれて…それが親切だとは分かってはいるんですが、やっぱり寂しいんです。あ、別にみんなが嫌いなわけじゃないんです!むしろ大好きです!」
クロノ「大丈夫です、分かってます。」
エリー「…男の人が怖くて、みんなもそこにも気を遣って…私が逃げた時は1人にしてくれるんです。でもクロノさんは違いましたね。」
(なんかお前はデリカシーがねぇって言われてるみたいだ。)
クロノ「っていうか、男性恐怖症?ならこれ手握ってるのも怖いんじゃ…」
エリー「そうですよね。でも、不思議とあんまり感じないんです!」
(ん?)
エリー「ありがとうございます!」
クロノ「え?あっはい…」
(いや、そういう意味ではないよな…親友になりましょうとかそういう…)
握る手はどんどん強くなる上に、じっと目を見つめてくる。
(いやいやいや気まずい気まずい気まずい…話を逸らさないと…待てそういえば今聞き捨てならんことを…)
クロノ「あの…」
エリー「はい?」
クロノ「さっき苦手を克服するために男の人に積極的に話しかけるためにって言いましたよね?」
エリー「はい。」
クロノ「俺とフレアと…誰って?」
エリー「レオです。」
クロノ「レオって…レオ・ローウェルのレオ?」
エリー「そうですけど…えっ、まさか」
クロノ「男の子だったんですかぁ⁉︎」
エリー「知らなかったんですかぁ⁉︎」
エリーがアクアに両手を後ろで押さえられている。
ガイア「おかえり。大丈夫だったか?」
(えぇー、この状況を当たり前のように…)
アクア「まぁね。」
エリー「まさかしくじってしまうとは…」
アクア「ふん。あたしを襲おうだなんて100年早いよ。」
フレア「ほんと節操ねぇな〜。」
クロノ「フレア。」
フレア「うん?」
クロノ「何がどういうこと?」
状況が一切読めない。
フレア「あぁ…エリーさんはな…なんつーか…両刀?っていうのか?」
クロノ「はい?」
フレア「特に女には見境いないんだと。さすがに知り合いしか襲わないらしいけど。」
クロノ「えぇ…」
引いたわけではないが、さすがにそういうこと聞いて驚かずにはいられない。
エリー「また今度…」
アクア「しないよ。」
エリーが地面に倒れ伏した。
マキノ「おっと、そろそろ帰らなくては。」
そそくさと帰っていった。
●
エリー「それで、なんの話してたんですか。」
エリーがぬるっと起き上がる。
ガイアが一通りのことを話す。
エリー「なるほど。」
ガイア「あとは…何か知らなくてはいけないようなことは…」
エリー「必要かどうかは分かりませんけど、英雄神のことくらいは知っておいた方がいいのでは?」
フレア「まぁ、この世界じゃあ常識だしな。」
クロノ「英雄神?」
(名前からして凄そう。)
エリー「英雄神というのは、今から1500年ほど前に活躍した人達のことです。戦い、戦略、恋、農業、呪術、狂気…その他様々な方面で才を発揮した人達を神様と同じくらい素晴らしい存在として讃えているんです。宗教とはまた別の方向で、ですけど。」
クロノ「神様はまた別にいるんですね。っていうか宗教あるんですね。」
ガイア「どちらもあるぞ。この国は大陸の中央に近いから特にこれと決まった宗教を持つ奴は少ないがな。俺も無宗教だ。」
フレア「ラフの連中も基本的に無宗教だけどね。」
(日本みたいなもんか…日本は中心ってわけではないけど。)
エリー「英雄神には神の加護が付いているから神と同等、と言う方もいますが、根本的には全く違う存在ですね。」
クロノ「1000年以上も前にそんな凄い人らがいたんすね…」
エリー「ちなみに、ハゼットさんは2000年前に生まれたので英雄神より先輩ですよ。」
クロノ「え⁉︎あ、そうか。2000年生きてるとか言ってましたね…」
身近に凄い人がいてもその凄さが分かるような分からないような微妙な感覚。
クロノ「あれ、じゃあ英雄神より凄いってこと?」
エリー「それは…どうなんでしょうね…」
クロノ「え、凄くないの?」
エリー「ドラゴンを単独討伐したり、数々の闇を倒してきたり、素晴らしい活躍はしてきているのですが、英雄神として崇められるような…こう、1つ秀でている才能というのが無いんです。英雄神は何か1つの才能に秀でていたから讃えられていたわけですし。」
クロノ「その道のスペシャリスト、ってわけですか。」
エリー「あらゆる面でとても強いのですが、悪く言ってしまえば器用貧乏なんですよ。」
(ゲームのキャラステータスを特化型じゃなくて全部を良い感じに上げようとするバランス厨の俺としては胸が痛くなる話だ…)
●
フレア「そういえば英雄神に1人生きてる人いませんでしたっけ?」
クロノ「2000年近く?」
まさか生きているはずがないと少し呆れた顔になるが、
エリー「いますね。あれは確か不老不死だったと思いますよ?伝説の通りなら。」
いるらしい。
クロノ「不老不死ってそんなにポンポンいるもんなんですか?」
エリー「いえいえ、不老不死はその人を入れても3人ですよ。」
現在不老不死の人間はハゼット、エリー、英雄神の3人。
クロノ「あぁ…でもなんかこうもたくさん見ちゃうと他にもいそうって思っちゃいますね。」
エリー「さすがにないと思います。今はもう方法がないはずですし。」
クロノ「方法?不老不死って後天的なものなんですか?」
フレア「逆に生まれつき不老不死だと赤ん坊の見た目のまま何百歳ってことになるぜ?」
クロノ「あ、そうか。」
エリー「その英雄神の方の場合ですと、その人は戦いの神と呼ばれているアリウスという方なのですが、死を操る神の反感を買って不老不死にさせられたのだとか。」
クロノ「何をしたんですか…」
死を操る神を怒らせ、死そのものを奪われたとなると余程のことをしたに違いない。
エリー「さぁ…何も記録が残ってないんですよね。」
クロノ「はぁ…ちなみになんですけど、エリーさんとハゼットさんはどんな方法で?」
一瞬、場が静まる。
レオが「あっ」と小さく口に出したかもしれない。
(え?なにこれ?)
凍りついた、という感覚を初めて理解できた気がした。
クロノ「えっと…?」
エリー「ユニコーンって知ってます?」
特に気にしてない風に始めるが、空気的に地雷だと分かる。
(これもしかしてやばいこと聞いた感じかな…)
しかし、ここで話を止めるのも空気が悪くなる。
クロノ「名前くらいなら…」
話を続ける。
エリー「額に角が生えた馬のような外見の魔獣です。今はもう絶滅したそうですが、ハゼットさんや私がまだ生まれて少しの頃にはいました。その時には既に一体しかいませんでしたが。」
クロノ「そのユニコーンが、鍵なんすか?」
エリー「ユニコーンの血を飲むと不老不死になれる、という噂話が広まっていたんです。本当のことだったんですが、当時信じている人はそんなにいませんでした。」
クロノ「ってことは、ハゼットとエリーさんはその噂を信じて、狩りに行ったとか、そういう…?」
エリーの横でレオが首を横に振っている。
「違う」というよりは「その話をしてはいけない」というような表情もしている。
エリー「いえ、別に狩りに行ったわけではないんです。不老不死になりたかったわけではないですし。」
ここで、「じゃあどうやって?」と聞いてはいけないと分かってはいるが、しかし、ここで話を切ってもそれはそれで不自然である。
(こう考えると不老不死って結構地雷やばそうな話だな…なるべくこの話をぶった切りたいけど、変に気を遣わせちゃうし、めちゃくちゃ気まずいぞ…)
エリー「あっ!」
エリーがパンと手を叩く。
それだけの行動でこの場にいる全員がビクッとする。
エリー「私、ちょっと忘れ物したんでした!すみません、ちょっと出てきますね。」
そう言って足早にギルドを出て行く。
クロノ「あっちゃー…まじか…」
(気を遣わせてしまった…)
フレア「クロノ…」
クロノ「知らなかったんだよ…そんな重い話になるようなことだったなんて…」
アクア「あたしらも詳しくは知らないが、相当胸糞悪くなるようなことがあったらしいんだ。」
俯きながら言う。
ガイア「何があったか知っているのは本人くらいなんじゃないか?俺も聞いたことないし、レオもないだろう?」
レオ「うん。すごく酷いことがあったっていうのは知ってるけど…」
1人で出て行ったエリーが心配になる。
クロノ「忘れ物って、絶対嘘ですよね。」
アクア「そうだろうね…というかさっき森に行った時、あの人何も持ってきてなかったし。」
クロノ「…行ってきます。」
フレア「行くって?」
クロノ「謝ってきます。」
フレア「あっおい!」
止める間もなく、エリーを追いかけに行く。
アクア「行っちまったよ。」
フレア「こういう時って1人にした方がいいんじゃ…」
アクア「いや、謝るのが良いかはともかく、とりあえず会いに行くのは良いんじゃないかい?そこでどう接するかによると思うが。」
●
クロノ「エリーさん!」
出て行ってから若干時間が経ってしまったため、離れた所に行ってしまったかと思ったが、出口のすぐ横で座り込んでいた。
クロノ「エリーさん…」
エリー「………」
(やべぇ、追ってきたものの何話せばいいかわかんねぇ…)
そもそも、上月玄野は人とあまり話さないから話題になるものもフォローの仕方も知らない。
クロノ「あの…」
エリー「ごめんなさい。」
謝ろうとすると向こうに先に謝られる。
クロノ「いや、自分こそ!なんか、聞いちゃいけないようなとこにまで首突っ込んじゃって…みんなから少しだけ聞いたんですけど、嫌なことがあったって…それも知らずに…」
エリー「別に、聞かれたのが嫌だったわけではないんですよ。」
クロノ「………」
エリー「ただ、あのことを思い出すとどうしても…逃げたくなってしまうというか…どこに行けばいいかも分からないのに。」
クロノ「その…」
(何言えばいいんだ…)
エリー「早く言わなくちゃとは思ってるんですけどね。」
クロノ「そんな覚悟がいるほど、辛いことなんですか?」
エリーの正面に座る。
エリー「え?」
クロノ「別に急ぐ必要はないですよ。多分、いつか言う日が来るまで辛いのは続くかもしれませんが、覚悟が微妙なままで言っても、お互いが辛いままです。」
フォローの仕方は全く知らないし、慰め方も知らないし、国語の試験の記述はいつも3割も取れないような点数になるほど話の核心を掴むのは苦手だが、
クロノ「みんなはエリーさんの過去が知りたいんじゃなくて、エリーさんが過去の…その、恐怖を克服できたかを知りたいんだと思います。みんなエリーさんが心配なんです。だから急がずに…えーと、辛い過去が辛いっていうのはどうしようもないですから、ちょっとずつゆっくりやっていきましょう?」
目の前に本気で困ってる人がいると何とかしてやりたいと思うことはできる。
エリー「…ありがとうございます。」
クロノ「その…慰めるのすごく下手ですけど、でもエリーさんが心配なのは本当ですし!」
エリー「えぇ、分かってますよ。言いたいことだけはちゃんと伝わってます。」
(これは…上手くいったのかな…)
立ち上がって、クロノの手を取る。
クロノ「エリーさん?」
エリー「男の人が苦手で、克服しようとフレアさんやクロノさんやレオにもできるだけ接しようと思ってたんですけど…」
クロノ「女の人が好きみたいなこと聞いたんですけど、それと関係が…」
エリー「…クロノさん結構突っ込んできますね。」
クロノ「あっ!すみません!やっぱ聞かない方が…」
手を離して頭を下げようとするが、エリーから強く握ってくる。
エリー「いえ、あまり気を遣われすぎるのもそれはそれで寂しいんですよ?みんな気を遣ってくれて…それが親切だとは分かってはいるんですが、やっぱり寂しいんです。あ、別にみんなが嫌いなわけじゃないんです!むしろ大好きです!」
クロノ「大丈夫です、分かってます。」
エリー「…男の人が怖くて、みんなもそこにも気を遣って…私が逃げた時は1人にしてくれるんです。でもクロノさんは違いましたね。」
(なんかお前はデリカシーがねぇって言われてるみたいだ。)
クロノ「っていうか、男性恐怖症?ならこれ手握ってるのも怖いんじゃ…」
エリー「そうですよね。でも、不思議とあんまり感じないんです!」
(ん?)
エリー「ありがとうございます!」
クロノ「え?あっはい…」
(いや、そういう意味ではないよな…親友になりましょうとかそういう…)
握る手はどんどん強くなる上に、じっと目を見つめてくる。
(いやいやいや気まずい気まずい気まずい…話を逸らさないと…待てそういえば今聞き捨てならんことを…)
クロノ「あの…」
エリー「はい?」
クロノ「さっき苦手を克服するために男の人に積極的に話しかけるためにって言いましたよね?」
エリー「はい。」
クロノ「俺とフレアと…誰って?」
エリー「レオです。」
クロノ「レオって…レオ・ローウェルのレオ?」
エリー「そうですけど…えっ、まさか」
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