ヒーローライクヒール

手頃羊

その2・この世界について学ぼう

ガイア「さて次だ。魔族については知っているか?」

クロノ「魔族?魔獣ではなくて?」
魔獣なら今までスライムやゴブリンなんかと戦ったことはある。

ガイア「魔獣とは別の存在だ。魔族以外にも色々あるし、順番に説明していこう。大きく分けて3つの種族がある。人間族、魔獣族、魔族だ。人間族には更に3つ、人間、亜人、獣人と分けられている。」

クロノ「人間、亜人、獣人。」

ガイア「人間は言わなくても分かるだろう。亜人は、外見的な特徴はほとんど人間と変わらないが、体の一部に動物の特徴が表れている。例えば、猫の亜人なら人間の見た目に猫の耳、エルフなら尖った耳、といった感じにな。」

クロノ「ふむふむ。」

ガイア「獣人は、逆に見た目は完全に動物だが、人間のような知能を持っていたり、人間のように二足で歩いていたりといった感じだ。猫の獣人だと、猫そのものが人間のように二足歩行していたりとかな。」

(つまり、亜人がソフトなケモナー向けで、獣人はガチなケモナー向けってわけか。)

ガイア「魔獣には魔獣で種族がある。ゴブリン族だとか、スライム族だとか。まぁ、こっちは種族というほど大それたものでもない。どんな系統の奴らがいるかってだけだ。ゴブリンでも、地域によって違いがある。」

クロノ「ゴブリンは獣人には入らないんですか?人型だし。」

ガイア「人間族と魔獣を区別する1番の要因は、文明を持つことができるかどうかだ。言語を話せたり、人並みの生活ができたり。誰かが決めたルールというよりは、いつの間にかそれが常識になっていった感じだがな。ゴブリンは人間の言語を話せるわけでもなく、生活も原始的を通り越して野生、しかも人間と敵対しているから魔獣という扱いになっている。」

クロノ「なるほど。」

ガイア「さて、肝心の魔族だ。魔族にも、人間と同じように種族がある。そして、基本的には人型の種族が多い。ヴァンパイア、ヘビ、クモ…ネコもいたかな。俺自身は魔族と頻繁に会うわけではないからそこまで数は知らない。」

クロノ「亜人とか獣人とかとどう違うんですか?」
人型で何かの動物の特徴が表れているという点でなら亜人、獣人と変わらない。

ガイア「見た目なら確かに。だが、人間族と魔族を分ける大きな要因がある。」

フレア「はい!魔力の種類が違う、です!」

クロノ「種類?」

ガイア「方向性が違うんだ。例えるなら、プラスとマイナス、光と闇のような感じか?とにかく、人間の魔力とは正反対のものになっているんだ。」

クロノ「正反対ですか…」

ガイア「感覚の問題だ。どちらもやれることに大差はない。さて、人間族と魔族だが、何百年も前からいざこざがある。人間が魔族を迫害したんだ。」

クロノ「迫害⁉︎」

ガイア「あぁ。まぁ人間側からしたら化け物の集まりだったからな。」

(そりゃまぁ、動物と人間が混じったような姿の奴らなんて化け物と思っても仕方ないわな…)

ガイア「亜人や獣人も迫害していた。人間以外は全員化け物って感じか。」

クロノ「さすがに過激っすね。うちの世界でも似たようなことはありましたが…」

ガイア「世界問わず、迫害は起きるってことか。まぁ、今の亜人獣人と人間の関係は良好だ。街で共に暮らしたり、結婚する者もいるくらいだ。」

クロノ「本当に仲直りできたんですね。」

ガイア「なんとかな。だが、魔族とは今でも関係が修復できていない。迫害から逃げた末に、異界を見つけたんだ。」

クロノ「異界?それって、俺みたいな…」

ガイア「どうだろうな。魔族達が見つけた異界には先住人がいなかったし、厳密には違うだろう。その異界に住み着いて、異界と人間界を隔てる『門』を作り、人間と距離を取って暮らしている。その異界のことを魔族の世界、『魔界』と呼ぶ。」

クロノ「また物騒な話ですね…」

ガイア「異世界から来たお前には関係ないが、元々俺たち人間が始めた迫害だからな。謝ったところで、簡単に許してはくれまい。それに、歴代の魔王が何度も…あぁ、魔王というのは、魔族を統べる魔界の王のことだ。全魔族のリーダーだな。その魔王は、何度も人間族の世界を侵略しようとしてきたんだ。」

クロノ「今度は侵略か…」

ガイア「人間側も抵抗して防いではいる。今も、魔王はきっと何か企んでいるだろう。」
まさに、緊張状態。

ガイア「人間界で暮らしてる以上、魔族と会うことはないだろうが、もし会った時は気をつけろ。普段は『門』が開くことはないが、たまに『門』を開けて来たやつに魔界にまで攫われて奴隷として売られるからな。」

(世紀末かよ…)

フレア「でもハゼットさんの知り合いのあの人は良い人ですよね。」

ガイア「あいつは魔族の中でも変わり者だろうよ。珍しく人間に友好的だからな。」

クロノ「ハゼットさん、魔族に知り合いがいるんですか?」

ガイア「昔魔界に行った時に、そこでとあるサキュバスに気に入られて『門』のこちら側まで来たんだ。本来なら帰さなくてはならないが、絶対に人間を襲わず、門番として『門』の不必要な出入りを見張るという条件で、『門』の近くに屋敷を作ってそこで暮らしている。」

クロノ「はぁ…人間を襲わないんなら、ちょっと会ってみたいですね。」
サキュバスがエロいからではなく、単純な興味。

フレア「いや〜、多分襲われるよ?お前絶対食べられそうな見た目してるもん。」

クロノ「どんな見た目だよ。」

ガイア「まぁ、食べられるだろうな。なんたってサキュバスだ。」

クロノ「食べられるってそっちの意味ですかよ。」

レオ「でも良い人だよ?」
いつの間にか背後にレオがいた。

クロノ「うおっ‼︎」

マキノ「悪い奴ではないんだがな。」
マキノまでいた。

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