ヒーローライクヒール
その1・魔法について学ぼう
クロノ「ハゼットさんの任務ってまだかかるんですかね。」
ハゼットが闇を退治する為の遠征に行って4日が経った。
ガイア「かかってるんだろうな。闇というのは、ただ倒せばいいわけじゃないらしい。」
妹が故郷に戻ったが、休暇がまだ残っているのでギリギリまで休むつもりらしく、ギルドに顔を出している。
クロノ「はぁ…」
というわけでハゼットの帰還にはまだ時間がかかりそうだ。
●
ガイアとどのような話をしていいか分からず、沈黙が流れていた。
ガイア「お前がここに来てからどれぐらいだ?」
クロノ「あぁー、1週間…くらいですかね?」
どことなく微妙に仲良くなれない親子のような空気感。
(というより、共通点の見つからない初対面同士か…)
ガイア「まだ来たばかりか。それでよくあれだけ動けたな。」
クロノ「あれだけ…巨大ゴブリンの時っすか。」
(ほんとだよ。来て数日で…まぁ厨二病は頭に見合った力があれば何でもできるしな。)
ガイア「だがこの世界についてはまだ知らないことは多いだろう。」
クロノ「…そうですね。」
フレア「なんすかなんすか〜?何の話ですか〜?」
外からフレアが帰ってきた。
ガイア「フレアか。今日はアクアと一緒じゃないんだな。」
フレア「別にいつも一緒にいるわけじゃないですよ…今はエリーさんと2人で南の森に行ってます。」
ガイア「…大丈夫なのか?」
フレア「…森の中だし、多分。」
(え、なにこの不穏な空気。)
ガイア「まぁ、当たり前のモラルくらいはあるだろう。」
フレア「酒さえ入ってなけりゃあ常識はありますからね。」
(……聞かなかったことにしよう。)
フレア「レオは?俺今日まだ見てないけど…」
クロノ「レオなら街の中央の方に行ってくるって。」
フレア「へぇー。あ、そうだ。さっきの続きっすよ。何の話してたんですか?」
ガイア「クロノはまだこの世界について知らないことが多いそうだ。ギルドに属しているわけだし、色々と知っておくべきだと思ってな。」
フレア「ほほーう。俺もご一緒していいっすか?」
ガイア「あぁ。話すことが多いが…まぁ忘れてもいいから聞くだけ聞いとけ。まずは…まぁ、戦闘についてか。」
クロノ「戦闘、ですか。」
ガイア「戦闘といっても、技術云々ではなく知識だ。どんな魔法があるかとかな。」
つまり、座学である。
ガイア「既に知っていることもあるだろうが復習ついでに順番に行こう。まずは…魔力強化については知ってるよな?」
クロノ「はい。身体能力を高めるんですよね。」
ガイア「あぁ。魔力を集中させて、己の体を硬くしたり、属性を付与して威力を高めたり、逆に減らしたり。壁を登ったり、高く飛んだり。体に魔力を流したり、そこから周りに魔力を流して何か効果を加えることを魔力強化という。」
フレア「はい質問。自分の体に炎を纏わせたり、雷発生させたりもありますけど、あれも魔力強化ですか?」
ガイア「そうだ。」
クロノ「じゃあゴブリンの時の、レオやガイアさんがやってたのは魔力強化とは別のものなんですか?」
ガイア「あれは魔法というものだ。これも順番に説明していこう。魔力には大きく2つ、『魔力強化』と『魔法』というものがある。『魔力強化』がさっき話したやつだ。もう1つの『魔法』の中にはさらに2つのカテゴリーがある。『通常魔法』と『陣魔法』だ。」
クロノ「『通常魔法』と『陣魔法』。」
ガイア「陣魔法というのは、魔法を発動するのに魔法陣が必要となる魔法だ。例えば、ゴブリンの時に俺がやったやつ。」
星型の各頂点を線で結び、それを丸で囲み、真ん中に剣でアスタリスクマークを描いたような魔法陣が現れたのを思い出す。
クロノ「ありましたね。なんかデカい腕が出てきたやつ。」
ガイア「あれのように、発動に魔法陣を使うんだ。さらに、陣魔法の中にも『速攻陣』と『詠唱陣』の2つがある。」
クロノ「はぁ。」
ガイア「速攻陣は、文字通りすぐに陣が作られるものだ。この陣は人によって模様が違う。例えば、俺の速攻陣は星型の各頂点を線で結び、それを円で囲んで中心に3本の剣を絡めたようになっている。」
クロノ「あの時見たやつが速攻陣ですか。」
ガイア「そうだ。レオやフレアの速攻陣も、特有のものになっている。」
フレア「機会があったら見せてやるよ。」
ガイア「魔力で陣を描き、魔法を発動する。自分の速攻陣の図を覚えておけば、一瞬で描くことができ、即座に発動できる。これが速攻陣だ。」
「もう1つの詠唱陣というのは、速攻陣と違って陣を描くのに手間がかかる。さらに、個人ではなく、魔法によって陣の模様が違うんだ。」
クロノ「魔法によって、ですか。」
ガイア「あぁ。だから、1つ1つ魔法陣の図を覚えておかなければならない。しかも速攻陣と違って、陣を描くのに時間をかけなければならない。とはいえ、1つ1つの陣を覚えているならその時間もかなり短縮できる。」
クロノ「やっぱり速攻陣の魔法より詠唱陣の方が強いんですか?」
ガイア「基本的にはな。後は、使ったやつの力量次第だ。さて、では通常魔法の話だがこっちは特に語ることもない。陣を使わずに放てる魔法のことだ。」
クロノ「レオがやってた、星を落とすやつですか?」
ガイア「いや、あれは速攻陣の魔法なんだ。」
クロノ「そうなんですか?え、あれ魔法陣ありました?」
ガイア「間違えるのも分かるがな。レオの武器であるあの杖は魔導杖と言って、特殊な素材や加護のお陰である程度の魔力を保有できたり、杖そのものに陣を付与することができる。」
クロノ「ってことは、杖に事前に陣を張っとくことで、さらに手間を減らすってことですか?」
ガイア「そうだ。普通は速攻陣を張るものなんだが、聞いた話だと、同時に何十個もの魔導杖を持ち歩き、その1個に1個に速攻陣ではなく詠唱陣を張る奴もいるそうだ。」
クロノ「うわぁ…ってことは、その1個1個が詠唱陣の魔法を放つ為の専用武器ってことですか…」
ガイア「確かに強力だが、同時にいくつもの武器を持つという欠点があるんだがな。速攻陣なら1つの陣で多くの魔法が使えるから、便利さでいえばやはり速攻陣の方がいい。」
クロノ「なるほど。で、レオがやってたアレは速攻陣で放った魔法だと。」
ガイア「そうだ。通常魔法は…まぁ言わなくても分かるだろ?」
クロノ「そうですね、ちょくちょく見ましたし。」
ガイア「そしてさらに、まだカテゴリーがある。」
クロノ「まだあるんすか…」
ガイア「これが最後だ。『魔力強化』と『魔法』の2つをまたがって3つ、『小魔法』、『大魔法』、そして『詠唱魔法』がある。」
クロノ「2つをまたがってってことは、魔力強化に小魔法があり、魔法にも小魔法がありってことですか?」
ガイア「そうだ。小魔法というのは、魔力をいちいち溜めることなく、すぐに放つことができる魔法。速攻性は高いが、威力を低めだ。続いて大魔法は、魔力を溜める必要がある。その代わり、威力や効果は高い。ちなみに、詠唱陣は性質上、小魔法というのは存在しない。」
クロノ「時間がかかる前提の魔法だからですか。」
ガイア「あぁ。俺の知る限り、最も早い詠唱陣魔法で5秒だったかな。」
クロノ「十分早いじゃないですか。」
ガイア「戦闘中に時間がかかる魔法なんて命取りだ。1秒でも短い方が便利なんだ。さて、最後の『詠唱魔法』だ。」
クロノ「名前的に、なんかを詠唱してから魔法を放つって感じですけど、大魔法とかとどう違うんですか?」
ガイア「詠唱して放つというのは合っている。大魔法は詠唱せずとも、魔力を溜めさえすればできる。詠唱魔法は詠唱呪文を唱えることで初めて発動できるものだ。」
クロノ「特別なんですね。」
ガイア「あぁ、なんせ1人に1つだからな。」
クロノ「1人に1つ⁉︎」
ガイア「言ってみれば、そいつ専用の最終奥義みたいなもんだ。」
クロノ「へー!そんなすごいものが…」
最終奥義と聞いてロマンを感じずにはいられない。
ガイア「ただ、発動条件が難しいんだ。余程のことがないと発動できない。」
クロノ「呪文さえ唱えれば発動できるわけじゃないんですか?」
ガイア「その呪文が問題なんだ。呪文は特に決められているわけではない。だが、条件がある。」
クロノ「条件?」
ガイア「『心の底からの想いが込められた言葉』。これが詠唱呪文であり、これを唱えることで初めて詠唱魔法が使える。」
クロノ「心の底から…?どういうことです?」
ガイア「誰かを助けたい、殺したい…なんでもいい、心から感じた想いを口に出す。その覚悟が自らの精神を昂らせ、強力な魔法を発動させる。それが、『詠唱魔法』だ。」
クロノ「はぁ。」
微妙によく分からない。
ガイア「実際にその時が来てみれば分かるさ。どういう時に思ったものが詠唱呪文になるのか、な。」
クロノ「どういうのがあるんですか?やっぱり強力な攻撃系?」
ガイア「そういうのあるし、とんでもなく効果の高い魔力強化というものもある。人によってどんな詠唱魔法があるかは違うんだ。」
クロノ「へぇ〜。ちなみに、お二人は?」
ガイア「知らん。」
クロノ「え?」
フレア「俺も知らねぇ。」
てっきり、とんでもない魔法を持っているのかと思っていたが、予想外の答えが返ってくる。
クロノ「知らない?」
ガイア「あぁ。なんせ、心から何かを願うといったようなことが起こったことがないからな。」
クロノ「シビアなんですね…他の方のは知らないんですか?」
ガイア「マキノの詠唱魔法は1度見たことあるな。」
クロノ「マキノさんの?」
(ってことは、あのマキノさんが何かを感じたことがあるってこと?)
何故かは知らないが、初めてマキノの人間らしさを感じた気がした。
フレア「俺も見ました。アレは…」
ガイア「アレはな…」
クロノ「え、なに、アレって何よ。」
フレア「アレは口では説明できねぇ。実際に見た方が早い。」
ガイア「実際に見ても分からんだろうよ…」
クロノ「えぇ…」
焦らすだけで教えてくれないが、2人の困惑した表情から、ロクでもないものだと察する。
ガイア「とにかく魔力強化、小魔法と大魔法、そして詠唱魔法。これだけ覚えておけ。後は勝手に頭に入る。」
ハゼットが闇を退治する為の遠征に行って4日が経った。
ガイア「かかってるんだろうな。闇というのは、ただ倒せばいいわけじゃないらしい。」
妹が故郷に戻ったが、休暇がまだ残っているのでギリギリまで休むつもりらしく、ギルドに顔を出している。
クロノ「はぁ…」
というわけでハゼットの帰還にはまだ時間がかかりそうだ。
●
ガイアとどのような話をしていいか分からず、沈黙が流れていた。
ガイア「お前がここに来てからどれぐらいだ?」
クロノ「あぁー、1週間…くらいですかね?」
どことなく微妙に仲良くなれない親子のような空気感。
(というより、共通点の見つからない初対面同士か…)
ガイア「まだ来たばかりか。それでよくあれだけ動けたな。」
クロノ「あれだけ…巨大ゴブリンの時っすか。」
(ほんとだよ。来て数日で…まぁ厨二病は頭に見合った力があれば何でもできるしな。)
ガイア「だがこの世界についてはまだ知らないことは多いだろう。」
クロノ「…そうですね。」
フレア「なんすかなんすか〜?何の話ですか〜?」
外からフレアが帰ってきた。
ガイア「フレアか。今日はアクアと一緒じゃないんだな。」
フレア「別にいつも一緒にいるわけじゃないですよ…今はエリーさんと2人で南の森に行ってます。」
ガイア「…大丈夫なのか?」
フレア「…森の中だし、多分。」
(え、なにこの不穏な空気。)
ガイア「まぁ、当たり前のモラルくらいはあるだろう。」
フレア「酒さえ入ってなけりゃあ常識はありますからね。」
(……聞かなかったことにしよう。)
フレア「レオは?俺今日まだ見てないけど…」
クロノ「レオなら街の中央の方に行ってくるって。」
フレア「へぇー。あ、そうだ。さっきの続きっすよ。何の話してたんですか?」
ガイア「クロノはまだこの世界について知らないことが多いそうだ。ギルドに属しているわけだし、色々と知っておくべきだと思ってな。」
フレア「ほほーう。俺もご一緒していいっすか?」
ガイア「あぁ。話すことが多いが…まぁ忘れてもいいから聞くだけ聞いとけ。まずは…まぁ、戦闘についてか。」
クロノ「戦闘、ですか。」
ガイア「戦闘といっても、技術云々ではなく知識だ。どんな魔法があるかとかな。」
つまり、座学である。
ガイア「既に知っていることもあるだろうが復習ついでに順番に行こう。まずは…魔力強化については知ってるよな?」
クロノ「はい。身体能力を高めるんですよね。」
ガイア「あぁ。魔力を集中させて、己の体を硬くしたり、属性を付与して威力を高めたり、逆に減らしたり。壁を登ったり、高く飛んだり。体に魔力を流したり、そこから周りに魔力を流して何か効果を加えることを魔力強化という。」
フレア「はい質問。自分の体に炎を纏わせたり、雷発生させたりもありますけど、あれも魔力強化ですか?」
ガイア「そうだ。」
クロノ「じゃあゴブリンの時の、レオやガイアさんがやってたのは魔力強化とは別のものなんですか?」
ガイア「あれは魔法というものだ。これも順番に説明していこう。魔力には大きく2つ、『魔力強化』と『魔法』というものがある。『魔力強化』がさっき話したやつだ。もう1つの『魔法』の中にはさらに2つのカテゴリーがある。『通常魔法』と『陣魔法』だ。」
クロノ「『通常魔法』と『陣魔法』。」
ガイア「陣魔法というのは、魔法を発動するのに魔法陣が必要となる魔法だ。例えば、ゴブリンの時に俺がやったやつ。」
星型の各頂点を線で結び、それを丸で囲み、真ん中に剣でアスタリスクマークを描いたような魔法陣が現れたのを思い出す。
クロノ「ありましたね。なんかデカい腕が出てきたやつ。」
ガイア「あれのように、発動に魔法陣を使うんだ。さらに、陣魔法の中にも『速攻陣』と『詠唱陣』の2つがある。」
クロノ「はぁ。」
ガイア「速攻陣は、文字通りすぐに陣が作られるものだ。この陣は人によって模様が違う。例えば、俺の速攻陣は星型の各頂点を線で結び、それを円で囲んで中心に3本の剣を絡めたようになっている。」
クロノ「あの時見たやつが速攻陣ですか。」
ガイア「そうだ。レオやフレアの速攻陣も、特有のものになっている。」
フレア「機会があったら見せてやるよ。」
ガイア「魔力で陣を描き、魔法を発動する。自分の速攻陣の図を覚えておけば、一瞬で描くことができ、即座に発動できる。これが速攻陣だ。」
「もう1つの詠唱陣というのは、速攻陣と違って陣を描くのに手間がかかる。さらに、個人ではなく、魔法によって陣の模様が違うんだ。」
クロノ「魔法によって、ですか。」
ガイア「あぁ。だから、1つ1つ魔法陣の図を覚えておかなければならない。しかも速攻陣と違って、陣を描くのに時間をかけなければならない。とはいえ、1つ1つの陣を覚えているならその時間もかなり短縮できる。」
クロノ「やっぱり速攻陣の魔法より詠唱陣の方が強いんですか?」
ガイア「基本的にはな。後は、使ったやつの力量次第だ。さて、では通常魔法の話だがこっちは特に語ることもない。陣を使わずに放てる魔法のことだ。」
クロノ「レオがやってた、星を落とすやつですか?」
ガイア「いや、あれは速攻陣の魔法なんだ。」
クロノ「そうなんですか?え、あれ魔法陣ありました?」
ガイア「間違えるのも分かるがな。レオの武器であるあの杖は魔導杖と言って、特殊な素材や加護のお陰である程度の魔力を保有できたり、杖そのものに陣を付与することができる。」
クロノ「ってことは、杖に事前に陣を張っとくことで、さらに手間を減らすってことですか?」
ガイア「そうだ。普通は速攻陣を張るものなんだが、聞いた話だと、同時に何十個もの魔導杖を持ち歩き、その1個に1個に速攻陣ではなく詠唱陣を張る奴もいるそうだ。」
クロノ「うわぁ…ってことは、その1個1個が詠唱陣の魔法を放つ為の専用武器ってことですか…」
ガイア「確かに強力だが、同時にいくつもの武器を持つという欠点があるんだがな。速攻陣なら1つの陣で多くの魔法が使えるから、便利さでいえばやはり速攻陣の方がいい。」
クロノ「なるほど。で、レオがやってたアレは速攻陣で放った魔法だと。」
ガイア「そうだ。通常魔法は…まぁ言わなくても分かるだろ?」
クロノ「そうですね、ちょくちょく見ましたし。」
ガイア「そしてさらに、まだカテゴリーがある。」
クロノ「まだあるんすか…」
ガイア「これが最後だ。『魔力強化』と『魔法』の2つをまたがって3つ、『小魔法』、『大魔法』、そして『詠唱魔法』がある。」
クロノ「2つをまたがってってことは、魔力強化に小魔法があり、魔法にも小魔法がありってことですか?」
ガイア「そうだ。小魔法というのは、魔力をいちいち溜めることなく、すぐに放つことができる魔法。速攻性は高いが、威力を低めだ。続いて大魔法は、魔力を溜める必要がある。その代わり、威力や効果は高い。ちなみに、詠唱陣は性質上、小魔法というのは存在しない。」
クロノ「時間がかかる前提の魔法だからですか。」
ガイア「あぁ。俺の知る限り、最も早い詠唱陣魔法で5秒だったかな。」
クロノ「十分早いじゃないですか。」
ガイア「戦闘中に時間がかかる魔法なんて命取りだ。1秒でも短い方が便利なんだ。さて、最後の『詠唱魔法』だ。」
クロノ「名前的に、なんかを詠唱してから魔法を放つって感じですけど、大魔法とかとどう違うんですか?」
ガイア「詠唱して放つというのは合っている。大魔法は詠唱せずとも、魔力を溜めさえすればできる。詠唱魔法は詠唱呪文を唱えることで初めて発動できるものだ。」
クロノ「特別なんですね。」
ガイア「あぁ、なんせ1人に1つだからな。」
クロノ「1人に1つ⁉︎」
ガイア「言ってみれば、そいつ専用の最終奥義みたいなもんだ。」
クロノ「へー!そんなすごいものが…」
最終奥義と聞いてロマンを感じずにはいられない。
ガイア「ただ、発動条件が難しいんだ。余程のことがないと発動できない。」
クロノ「呪文さえ唱えれば発動できるわけじゃないんですか?」
ガイア「その呪文が問題なんだ。呪文は特に決められているわけではない。だが、条件がある。」
クロノ「条件?」
ガイア「『心の底からの想いが込められた言葉』。これが詠唱呪文であり、これを唱えることで初めて詠唱魔法が使える。」
クロノ「心の底から…?どういうことです?」
ガイア「誰かを助けたい、殺したい…なんでもいい、心から感じた想いを口に出す。その覚悟が自らの精神を昂らせ、強力な魔法を発動させる。それが、『詠唱魔法』だ。」
クロノ「はぁ。」
微妙によく分からない。
ガイア「実際にその時が来てみれば分かるさ。どういう時に思ったものが詠唱呪文になるのか、な。」
クロノ「どういうのがあるんですか?やっぱり強力な攻撃系?」
ガイア「そういうのあるし、とんでもなく効果の高い魔力強化というものもある。人によってどんな詠唱魔法があるかは違うんだ。」
クロノ「へぇ〜。ちなみに、お二人は?」
ガイア「知らん。」
クロノ「え?」
フレア「俺も知らねぇ。」
てっきり、とんでもない魔法を持っているのかと思っていたが、予想外の答えが返ってくる。
クロノ「知らない?」
ガイア「あぁ。なんせ、心から何かを願うといったようなことが起こったことがないからな。」
クロノ「シビアなんですね…他の方のは知らないんですか?」
ガイア「マキノの詠唱魔法は1度見たことあるな。」
クロノ「マキノさんの?」
(ってことは、あのマキノさんが何かを感じたことがあるってこと?)
何故かは知らないが、初めてマキノの人間らしさを感じた気がした。
フレア「俺も見ました。アレは…」
ガイア「アレはな…」
クロノ「え、なに、アレって何よ。」
フレア「アレは口では説明できねぇ。実際に見た方が早い。」
ガイア「実際に見ても分からんだろうよ…」
クロノ「えぇ…」
焦らすだけで教えてくれないが、2人の困惑した表情から、ロクでもないものだと察する。
ガイア「とにかく魔力強化、小魔法と大魔法、そして詠唱魔法。これだけ覚えておけ。後は勝手に頭に入る。」
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