ヒーローライクヒール
その6・研究所見学
巨大ゴブリンとの戦いがあって次の日の朝。
クロノ「んー?えーと、あー、いや、えー?」
武器をいじりながら唸っているクロノの元へエリーがやってくる。
エリー「おはようございます。武器の点検ですか?」
クロノ「あ、エリーさん。おはようございます。いや、点検っていうか…なんか調子が悪いっていうか…」
エリー「調子が悪い?」
クロノ「具体的には、銃の形態から剣の形態に変形してくんない、って感じですかね。」
何かがひっかかっているかのようにレバーが動かなくなってしまっている。
エリー「故障じゃないですか。」
クロノ「ですよねぇ…。」
エリー「ゴブリンと戦いが戦う時に凄い技をしたじゃないですか。あの時の衝撃で壊れたんじゃ…」
クロノ「うーん…」
何度斬りつけても全く刃が通らない硬い皮膚を破壊する威力のパイルバンカー。
それを銃で代用したが、パイルバンカーはやはりパイルバンカーでやらないといけない。
クロノ「やっぱりマキノさんに診てもらわないとっすねー。」
エリー「マキノさんの研究所、場所分かります?」
クロノ「あぁ、それなら…」
研究所には1度行ったことがある。
気絶した時に目が覚め、そこからマキノと共にアリアンテの街まで戻ってきた。
が、
クロノ「…覚えてないですね…。」
1回で道を覚えるのは苦手である。
エリー「では、私が案内しましょう。」
クロノ「いいんですか?昨日あんなに激しい戦闘したのに…」
エリー「いいんです。昨日クロノさんも頑張ってましたし、それに武器が調子悪いのを放っておいてはダメでしょう?」
(見た目が少し怖いというか、いつも疲れてそうな雰囲気だけどめちゃくちゃ優しい…)
●
アリアンテ近くの森。
アリアンテの周囲には2つの森があり、南側にある森には少し大きめの湖が、北側にある森にはマキノの研究所がある。
南の森の湖が、クロノがここに来た際に落ちた湖である。
街の中に研究所を建てるスペースが無く、仕方なく近くの森の中に建てたのだそうだ。
北側の森は比較的魔獣が少なく、いたとしても他の魔獣の生息域から追い出された弱い魔獣しかいない。
それらの魔獣は『挑んだら負ける』と本能で感じているらしく、人に襲いかかってこない。
街に近く、魔獣の危険も少なく、あまり邪魔にならないという最高の立地である。
クロノ「だから森の中にねぇ…」
エリー「マキノさんも時々魔獣にご飯をあげたりして懐かせているそうですよ。」
クロノ「いつか魔獣がペットになる日も来るんじゃないですかねぇ…」
エリー「ふふっ。さぁ、着きましたよ。」
森の中に完全に場違いな建物が現れる。
(なにこの…近未来の何とかセンターみたいな…ここで装備のアップグレードをしていってね☆みたいな施設は…マキノさん本当にここの出身…?)
見た感じコンクリートのような材質の壁も、意味ありげな謎のオブジェも、こちらの世界というよりは向こう側の世界のもののような感じがする。
エリー「それじゃあ入りますよ。」
扉を開けて入る。
●
エントランスはとても開けていて、広間の真ん中に机と椅子が4つ、少し離れてソファが2個ある以外には壁沿いに花が並んでいる。
感覚的にはドラマで見るような大きな会議室みたいな広さだ。
(ざっと…何畳?2桁くらいは軽くありそうだけど…)
普段部屋を見て何畳とか考えない人間にはさらっと出てこない。
エリー「どこにいるんでしょうか…」
入ってきた扉とちょうど正反対の位置に奥へと向かう通路がある。
クロノ「どこ行くんですか?」
エリーが通路へと向かっていく。
エリー「もしかしたら、部屋にいるのかも。」
エリーについて行く。
●
通路には等間隔で左右に8つの扉がある。
部屋の表札に何か書かれているが、この世界の文字であるようで、クロノには読めない。
(まぁ、薬品室とか、物置とか、なんかそういうのが書いてあるんでしょ。)
エリーが通路の行き当たりの部屋をノックする。
エリー「ふむ…」
返答がない。
エリー「鍵もかかってますし、こっちにはいないんでしょう。」
クロノ「今のは?」
エリー「マキノさんの私室です。」
クロノ「私室にいないってことは…」
マキノ「おぉ、クロノとエリーか。」
背後からマキノの声がする。
エリー「マキノさん。そっちの部屋にいたんですか。」
マキノ「あぁ。どうしたんだ?いきなり。」
クロノ「実は武器の調子が悪くて…」
マキノ「調子が?この間改良したばっかりだろう?何か異常でもあったのか…?」
クロノ「いやちょっと…乱暴に扱ったっていうか…思い切り魔獣をぶん殴るのに使ったっていうか…」
マキノ「思い切り?ふむ…かなり耐久性はあると思っていたのだが…どんな扱い方をしたんだ?」
呆れたような声で言うが、顔からニヤけが隠せていない。
エリー「それはもう。すごいです。」
マキノ「すごい…まさか、昨日現れた巨大ゴブリンと戦ったわけじゃあるまいな?」
エリー「知ってるんですか?」
マキノ「知ってるも何も、近くであんなサイズの魔獣が現れたら嫌でも分かる。」
エリー「あぁ、なるほど。」
マキノ「で?」
クロノ「戦いました。」
マキノ「戦ったのか⁉︎無事だったのか⁉︎」
クロノ「えぇ、まぁ。何度かヤバい目には遭いましたが…」
マキノ「そうか…だが、魔力は無事だったのか?」
クロノ「え?あっ。」
魔力を使いすぎると意識が保てなくなる、という制約を忘れていた。
血液に魔力が染み込んでおり、魔力を使いすぎると貧血や失血のような状態になってしまう。
多少使いすぎる程度では貧血で倒れる程度だが、あまりにもやり過ぎると血が足りなくて死ぬ、ということになりかねない。
クロノ「そういえば…今回はそういう方面でヤバい事にはならなかったですけど…」
(かなり魔力使ったと思ったんだが…)
クロノ「終わった後にちょっと倒れそうになったくらいでしょうか。」
マキノ「倒れそうに…ギリギリだったということか。何にせよ無事で良かった。さて、武器の修理だったな。預かろう。」
銃を引き渡す。
マキノ「合体したまま取れなくなったか…ふむ。」
銃を揺らしたり、レバーをいじったりして調べる。
マキノ「衝撃で中の部品が取れたか折れたか、というところか?1度分解せねばならんな。」
エリー「どのくらいかかりますか?」
マキノ「今日中には済むさ。予備の部品があるから、付け替えるだけで済むと思う。」
クロノ「なるほど。それじゃあ…」
(修理が終わるまでどうしよう…)
エリー「私は一旦ギルドに戻りますけど、クロノさんはどうします?」
クロノ「そうですね…終わるまで待ってもいいですか?」
(特にどこかに行くような用事も無いし、できるだけ早く返してほしいし。)
マキノ「いいぞ。好きなように見て回っていいが、触るなよ。」
そう言って部屋の1つに入っていく。
エリー「それでは。」
●
クロノ「さてと…」
最初に目についた扉に手をかける。
(何の部屋かな?)
扉を開けて中に入る。
大量のフラスコや試験管、その中にカラフルな液体と部屋中が変な色の気体に包まれている。
(薬系の実験室?)
火を当てて熱したまま放置してある試験管もある。
クロノ「あれ大丈夫なのか…?っていうか…」
先ほどから変な匂いがする。
(甘いというか…なんか嫌なんだけどクセになるっていうか…)
吸えば吸うほど、その先が気になってくる。
(いや、こういうのはヤバいパターンだ!早めに出よう!)
理性が残っている内に部屋を出る。
クロノ「すーーーはーーー」
深呼吸をして綺麗な空気を吸う。
(頭がスッキリしてきた…)
無意識に頭がボーッとしていた。
(あの部屋でマキノさん何作ってんだ…)
他にもいくつか部屋があるが、
(またなんかヤバい物とかねぇよな…)
マキノが入っていった部屋を見る。
(修理の過程でも見せてもらおうかな…マキノさんがいたら何があっても何とかしてくれるだろうし…)
クロノ「んー?えーと、あー、いや、えー?」
武器をいじりながら唸っているクロノの元へエリーがやってくる。
エリー「おはようございます。武器の点検ですか?」
クロノ「あ、エリーさん。おはようございます。いや、点検っていうか…なんか調子が悪いっていうか…」
エリー「調子が悪い?」
クロノ「具体的には、銃の形態から剣の形態に変形してくんない、って感じですかね。」
何かがひっかかっているかのようにレバーが動かなくなってしまっている。
エリー「故障じゃないですか。」
クロノ「ですよねぇ…。」
エリー「ゴブリンと戦いが戦う時に凄い技をしたじゃないですか。あの時の衝撃で壊れたんじゃ…」
クロノ「うーん…」
何度斬りつけても全く刃が通らない硬い皮膚を破壊する威力のパイルバンカー。
それを銃で代用したが、パイルバンカーはやはりパイルバンカーでやらないといけない。
クロノ「やっぱりマキノさんに診てもらわないとっすねー。」
エリー「マキノさんの研究所、場所分かります?」
クロノ「あぁ、それなら…」
研究所には1度行ったことがある。
気絶した時に目が覚め、そこからマキノと共にアリアンテの街まで戻ってきた。
が、
クロノ「…覚えてないですね…。」
1回で道を覚えるのは苦手である。
エリー「では、私が案内しましょう。」
クロノ「いいんですか?昨日あんなに激しい戦闘したのに…」
エリー「いいんです。昨日クロノさんも頑張ってましたし、それに武器が調子悪いのを放っておいてはダメでしょう?」
(見た目が少し怖いというか、いつも疲れてそうな雰囲気だけどめちゃくちゃ優しい…)
●
アリアンテ近くの森。
アリアンテの周囲には2つの森があり、南側にある森には少し大きめの湖が、北側にある森にはマキノの研究所がある。
南の森の湖が、クロノがここに来た際に落ちた湖である。
街の中に研究所を建てるスペースが無く、仕方なく近くの森の中に建てたのだそうだ。
北側の森は比較的魔獣が少なく、いたとしても他の魔獣の生息域から追い出された弱い魔獣しかいない。
それらの魔獣は『挑んだら負ける』と本能で感じているらしく、人に襲いかかってこない。
街に近く、魔獣の危険も少なく、あまり邪魔にならないという最高の立地である。
クロノ「だから森の中にねぇ…」
エリー「マキノさんも時々魔獣にご飯をあげたりして懐かせているそうですよ。」
クロノ「いつか魔獣がペットになる日も来るんじゃないですかねぇ…」
エリー「ふふっ。さぁ、着きましたよ。」
森の中に完全に場違いな建物が現れる。
(なにこの…近未来の何とかセンターみたいな…ここで装備のアップグレードをしていってね☆みたいな施設は…マキノさん本当にここの出身…?)
見た感じコンクリートのような材質の壁も、意味ありげな謎のオブジェも、こちらの世界というよりは向こう側の世界のもののような感じがする。
エリー「それじゃあ入りますよ。」
扉を開けて入る。
●
エントランスはとても開けていて、広間の真ん中に机と椅子が4つ、少し離れてソファが2個ある以外には壁沿いに花が並んでいる。
感覚的にはドラマで見るような大きな会議室みたいな広さだ。
(ざっと…何畳?2桁くらいは軽くありそうだけど…)
普段部屋を見て何畳とか考えない人間にはさらっと出てこない。
エリー「どこにいるんでしょうか…」
入ってきた扉とちょうど正反対の位置に奥へと向かう通路がある。
クロノ「どこ行くんですか?」
エリーが通路へと向かっていく。
エリー「もしかしたら、部屋にいるのかも。」
エリーについて行く。
●
通路には等間隔で左右に8つの扉がある。
部屋の表札に何か書かれているが、この世界の文字であるようで、クロノには読めない。
(まぁ、薬品室とか、物置とか、なんかそういうのが書いてあるんでしょ。)
エリーが通路の行き当たりの部屋をノックする。
エリー「ふむ…」
返答がない。
エリー「鍵もかかってますし、こっちにはいないんでしょう。」
クロノ「今のは?」
エリー「マキノさんの私室です。」
クロノ「私室にいないってことは…」
マキノ「おぉ、クロノとエリーか。」
背後からマキノの声がする。
エリー「マキノさん。そっちの部屋にいたんですか。」
マキノ「あぁ。どうしたんだ?いきなり。」
クロノ「実は武器の調子が悪くて…」
マキノ「調子が?この間改良したばっかりだろう?何か異常でもあったのか…?」
クロノ「いやちょっと…乱暴に扱ったっていうか…思い切り魔獣をぶん殴るのに使ったっていうか…」
マキノ「思い切り?ふむ…かなり耐久性はあると思っていたのだが…どんな扱い方をしたんだ?」
呆れたような声で言うが、顔からニヤけが隠せていない。
エリー「それはもう。すごいです。」
マキノ「すごい…まさか、昨日現れた巨大ゴブリンと戦ったわけじゃあるまいな?」
エリー「知ってるんですか?」
マキノ「知ってるも何も、近くであんなサイズの魔獣が現れたら嫌でも分かる。」
エリー「あぁ、なるほど。」
マキノ「で?」
クロノ「戦いました。」
マキノ「戦ったのか⁉︎無事だったのか⁉︎」
クロノ「えぇ、まぁ。何度かヤバい目には遭いましたが…」
マキノ「そうか…だが、魔力は無事だったのか?」
クロノ「え?あっ。」
魔力を使いすぎると意識が保てなくなる、という制約を忘れていた。
血液に魔力が染み込んでおり、魔力を使いすぎると貧血や失血のような状態になってしまう。
多少使いすぎる程度では貧血で倒れる程度だが、あまりにもやり過ぎると血が足りなくて死ぬ、ということになりかねない。
クロノ「そういえば…今回はそういう方面でヤバい事にはならなかったですけど…」
(かなり魔力使ったと思ったんだが…)
クロノ「終わった後にちょっと倒れそうになったくらいでしょうか。」
マキノ「倒れそうに…ギリギリだったということか。何にせよ無事で良かった。さて、武器の修理だったな。預かろう。」
銃を引き渡す。
マキノ「合体したまま取れなくなったか…ふむ。」
銃を揺らしたり、レバーをいじったりして調べる。
マキノ「衝撃で中の部品が取れたか折れたか、というところか?1度分解せねばならんな。」
エリー「どのくらいかかりますか?」
マキノ「今日中には済むさ。予備の部品があるから、付け替えるだけで済むと思う。」
クロノ「なるほど。それじゃあ…」
(修理が終わるまでどうしよう…)
エリー「私は一旦ギルドに戻りますけど、クロノさんはどうします?」
クロノ「そうですね…終わるまで待ってもいいですか?」
(特にどこかに行くような用事も無いし、できるだけ早く返してほしいし。)
マキノ「いいぞ。好きなように見て回っていいが、触るなよ。」
そう言って部屋の1つに入っていく。
エリー「それでは。」
●
クロノ「さてと…」
最初に目についた扉に手をかける。
(何の部屋かな?)
扉を開けて中に入る。
大量のフラスコや試験管、その中にカラフルな液体と部屋中が変な色の気体に包まれている。
(薬系の実験室?)
火を当てて熱したまま放置してある試験管もある。
クロノ「あれ大丈夫なのか…?っていうか…」
先ほどから変な匂いがする。
(甘いというか…なんか嫌なんだけどクセになるっていうか…)
吸えば吸うほど、その先が気になってくる。
(いや、こういうのはヤバいパターンだ!早めに出よう!)
理性が残っている内に部屋を出る。
クロノ「すーーーはーーー」
深呼吸をして綺麗な空気を吸う。
(頭がスッキリしてきた…)
無意識に頭がボーッとしていた。
(あの部屋でマキノさん何作ってんだ…)
他にもいくつか部屋があるが、
(またなんかヤバい物とかねぇよな…)
マキノが入っていった部屋を見る。
(修理の過程でも見せてもらおうかな…マキノさんがいたら何があっても何とかしてくれるだろうし…)
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