宇宙大殺人事件

チョーカー

あなたの名前は・・・・・・

 「……」と暫く、沈黙した後で「それは、私が人間ではないからですか?」とA12に言った。
 「それは、難しい質問だな。何を持って人間とするか?非常に哲学的だ」
 僕のふざけた言葉にA12は、不快感を表情で示す。
 「私に人間が殺せません。それは心理的にも、肉体的にも同様です」
 「う~ん、そうだね。確かにそうだ」
 「なら――――」と食いかかってくるA12を制止させた。
 「けれども、君の理屈は、君が……あなたが、本当にA12だったら、と前提条件がある」
 ピタッと時間が静止したかのような感覚だった。
 彼の目には、僕が狂人に写っているのか、それとも……
 「殺害されたウキョウ氏の部屋には奇妙な点があった」
 「奇妙な点ですか?」
 「そうだ。腐った食べ物だ。なぜ、そんな物があると思う?」
 単純な質問だ。
 普通の人間なら、こう答えるだろう。「食べるため」だと。
 しかし、A12は、そう答えなかった。帰ってくるのは沈黙だけだ。

 「まるで祭壇だったよ。この旅のスポンサー様の写真が引き伸ばされていて、神様のように飾られていた。そうやって、食べ物は、神様への供物のようにカモフラージュされていたんだ。
 そう、あれはカモフラージュさ。何かを誤魔化す為の大掛かりな舞台装置にすぎない。
 では、なぜ?どうして?食べ物が隠されていたんだろ?」
 「わかりません。私には答えるための情報が欠如しています」
 「簡単だよ。食べ物を隠さないと、この艦内に人が隠れている事がバレてしまう」

 A12は「……」とまたも沈黙で返した。

 「誰が、なんのために密航していたのか?僕には想像すら難しいけれども、本当にそんな人物がいたとしたら……」
 「いたとしたら?」
 「まぁ、犯人だろうね。幸いにも、乗客のほとんどは人工冷凍装置で眠っているんだ。初日を隠れきれば40年間は見つかることはない」

 「普通ならね」と付け加えた。
 「そう、問題は君だ、A12という存在だ。ただただ数十年の時間を宇宙船の管理に過ごすために作られた人工的人間は、犯人にとって厄介な存在だろうか?いや、違うね。違う。そうではない」
 「違う?いったい、何が違うというのですか?」
 「A12という存在は、最初からそのためにいたのではないだろうか?」
 「最初から?そのため?……とは?」
 「最初から、犯人と入れ替わるためだけにいたのではないか?そういう意味だよ」

 もしも、僕の推測どおりなら、そうなる。
 企業が関わる一大事業である星の現地調査。
 そのチェックを潜り抜けて艦内に忍ぶこむ事ができる事が可能なのだろうか?
 可能ではある。 しかし、それは……
 それは企業の最高権力者クラスの人物。
 そして、これは――――全てが茶番だ。

 「A12……失礼ながら、あなたはのお名前は、杭打騎士ではありませんか?」

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