世の中凡人を探す方が難しい

青キング

傲慢

 爽があの時以来学園にさえも姿がない。
 そんなとき、小学生時代に爽と仲が良かったと自称する男子生徒と出会った。
 そいつと部活行く前に話し合っているとこだ。 その名前は張山はりやま 信彦のぶひこと言い毛先が鋭そうな茶髪を顎くらいまで垂らし鋭い目付きが軽薄そうな男だが、あんがい気が利き一途と本人は言っている。
 俺はそいつに爽の事を詳しく聴取している。
 そうこうしているうちに一週間が過ぎようとしていた。
 「忍よー、俺だってあいつの謎を解きたい」
 「しかし、それがわからないまま爽はお前の事を忘れていた」
 「中学の間に何があったのか?」
 信彦は手に顎をおき、考え始める。
 記憶がないのか、それともふりをしているか?
 後者は確率的には低い。なぜなら理由が必要だからだ。
 しかし、理由があったとしたら?
 「で・・・・・・忍はいいのか部活?」
 「えっ何を?」
 突然、視界が真っ暗になる。
 「だーれだ?」
 この声は女か。 
 聞き覚えがあるぞ!
 「おそーい!」
 その瞬間、目に何か細いものが突き刺さる。
 「ぎゃあーーーーーーー」
 前に倒れて目を押さえながら痛みにもがきのたうち回る。
 「いでーい! 少し楽になってきた、うぶっ」
  のたうち回る俺の腹を足で押さえつけ、上から見下ろしているのは案の条、秋菜だ。
 表情的にお冠のようだ。
 「なんで森林 爽が来ないのよ、あんた何か嫌らしいことでもしたの?」
 「男同士でするわけ無いだろ」
 「問答無用!」
 さらに強く押さえつけてくる。腸が破裂する。
 「やめて苦しいから、ほんと・・・・・・お願いします」
 「何があったのか答えたらね」
 足を俺の腹の上から退かすと、その場で仁王立ちする。
 相変わらず傲慢だな。
 「三嶋っていう、爽のロリコン執事がいて・・・・・・うっぶっ」
 「虚言厳禁」
 俺の喉を押さえつけてくる。これでも軽めにやっているのだろうが、めちゃくちゃ苦しい。
 足を上げたとき一瞬、スカートの中が見えた気がしたが・・・・・・ううう苦しい。
 「さすがにやめろよ」
 張山が秋菜を止めようとしてくれる。
 「死ぬと困るからやめてあげるわ」
 ありがとう張山。
 
 場所を変え、張山も入れて談話を始める。
 先にまやとあおいが来ており、遅いですよと言われてしまった。反省します。
 「えっ森林さん来てないんですか!」
 「ファーム行きっスカ」
 まやは頭から野球を捨てて聞きなさい。
 「ファーム行きかもな」
 張山。お前は肯定しようとするな。
 「私は絶対何か隠してると思うのよ」
 「他には」
 考える素振りを見せて
 「家が厳しいとか」
 「その心は?」
 キョトンとしてこちらを見つめてくる。
 他の三人も同様に。ごめんなさい。
 「でもおかしいよな、突然すぎる」
 「爽ってどこに住んでるんだ?」
 俺の不意な質問に驚きながらも答えてくれる。
 「俺も知らないがお金持ちの家。ということくらいしかな」
 「本人に聞くしか術はないのか」
 「そのようだな」 
 「仕方ないわよ、お金持ちが相手じゃ」
 残念だが爽が姿を現してくれることを祈るしかないな。
 捜したいが三嶋がいるしな。
 「気分的に浮かないわ今日はもう解散しましょう」
 「早くないスカ」
 「行きましょ、まや」
 まやは部室を出ていったあおいに倣うように鞄を持って出ていく。
 「ごめんな協力できなくて」
 張山が俺に呟く。
 「協力じゃないだろ、共同だろう」
 「じゃあな」
 鞄を無造作に取り、張山も出ていった。
 「俺も帰るかな」
 部室から出ようとしたとき、目の前に秋菜が待ちなさい、と立ち塞ぐ。
 「どうした?」
 「ひとつだけ聞かせてよ。あんたっていつもこうなの?」
 「は?」
 意味が理解できない。
 「いつも人の事を心配だけして助けないの?」
 「俺は最善を尽くしてる」
 「そう、所詮そんなものなのね」
そう言い残してスタタッと走り去った。
 助けない? お前が知らないだけで俺は人助けをしている。
 なんだよ、ほんと傲慢。

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