世の中凡人を探す方が難しい

青キング

野球大会の練習

 野球大会まであと三週間となった。
 俺達は学校指定の青ジャージに着替えて毎日ここの公園に来てはキャッチボールなどで練習している。
 「樋山先生。メンバー集め順調ですか?」
 秋菜が唐突に先生に聞く。
 ボールを投げると同時に答えも返す。
 「一人は確実と言えるな」
 ここは浜岸光学園から歩いて五分もかからぬ浜岸地はまきしち公園で、小規模ゆえの人の少なさが俺は気に入っている。        
 秋菜は運動神経が良いのか上達が著しい。
 先生も運動能力があるのか朝飯前と言わんばかりのコントロールで秋菜とキャッチボールをしている。
 「誰ですか?」
 「本人が秘密にしてって」
 話し合いながらキャッチボールができるなんて中々だな。
 しかし、あおいが運動音痴でまやが指導に困っている。
 「あおい逃げちゃダメっスヨ!」
 「でも~こわいよ~まや」
 「自分の魂に問いかけるっス! あおいのなかにもきっと闘志があるっスヨ」
 自分の胸に左手をあてながら、壮大なこと言ってるけどあおいは・・・・・・
 「だってこわいもん」
 涙目になりながら頭を抱えて座り込んでいる。
 まやも強引すぎる。
 「ねぇ忍?」
 秋菜が俺に近寄ってくる。
 「大丈夫なのかな? こんな調子で」
 「どういうことだ?」
 「人数よ! に・ん・ず・う!」
 その四文字を強調する必要があったのかはさておき急ぐことでもないはずだ。
 「そんなこと言うなら秋菜自身が友達でも誘えばいいのに」
 「余計なお世話よ」
 自分でも友達が欲しいからか少し顔が火照った。
 「あんたこそ友達誘いなさいよ!」
 「俺はお前と違って一人いるからねぇー」
 たちが悪そうに言ってやると、やはり上目遣いで柳眉を逆立てている。
 「あんたより絶対多く友達作って見せるから覚えときなさいよ!」
 「ハハハ、友達は量じゃなくて質だよ」
 「・・・・・・わかってるわよそのくらい 」
 何か呟いたが、聴こえなかった。
 秋菜は再び先生とキャッチボールを始めた。
 仏頂面になりながら。
 「忍、手伝ってほしいっス」
 「頼む前に用件を言ってくれ」
 「めんどくさいっスネ」
 まやは将来大物になりそうだ。
 なぜか地面に座り込んでしまった。
 何か気に障ることしたかな?
 反省しようとする俺のジャージの裾をまやが引っ張ってくる。
 そして地面を指差す。
 まやは立ち上がり、あおいのところにいそいそと駆け寄った。
 俺は指差した場所をかがんで見てみる。
 『あおいが全然ボールをキャッチしないので忍も一緒に指導してください。してくれたら良いことがあるかも?』
 と地面に書かれてある。
 用件かなこれ? もしそうなら口で伝えれば良くなかった?
 果たしてまやは何がしたかったのだろうか。
 面白くて 思わず笑みが溢れる。
 俺ってこうして仲間と楽しく過ごしている方が好きなのかもしれない。
 久しぶりの感覚だ。

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