世の中凡人を探す方が難しい

青キング

運命の人

 晴天の下、一人寂しく登校する。
 慣れているから良いもののやっぱり一人は寂しい。
 途中まで行けば他の生徒と合流できるのでそこまでの辛抱だ。
 話相手はいないけど。
 ひたすら通学路をたどっていく。
 商店街の界隈に来てしまえば生徒の数が急増する。
 理由は知らない。
 前を歩いていく生徒に倣うように着いていく。
 この男子、俺より背が高い。
 俺の制服の裾を誰かが引っ張った気がするがそんなはずがない。
 全く意に介さず前方のみを見て歩く。
 今度は背中を叩いてくる感触が。と思いながらも気のせいだと脳に認識させた。
 「うぼっ!」
 突然、みぞおちに何かが差し込まれる。
 俺はその場でうずくまる。
 「わざと無視ってるの?」
 視線をあげると目の前には仁王立ちする秋菜の姿がある。
 これはどういうことだ?
 「何でみたいな顔してるけど怒られて当たり前のことをしたんだから反省くらいしなさいよ」
 「反省って何のこと?」
 「顔面吹き飛ばされたいの?」
 秋菜は剣幕で右足を少し上げ軽く揺らす。蹴り飛ばすあげるわよ、ということだろう。
 さすがにそれは免れたいとすぐに立ち上がる。
 痛みも引いてきてずいぶん楽になってきた。
 「話があるんだろう?」
 まあね、とかを期待したが首を横に振った。
 「話なんてないわよ。なんとなく話しかけただけだよ」
 そして秋菜はきびすを返し学園に向かって歩きだした。
 後ろ姿を眺める。
 十秒ぐらい眺めて、自分も歩き出そうとしたとき。
 「あれ彼女っスカ?」
 隣から聞いたことのある声が俺の耳に入ってくる。
 思わずそちらに顔を向ける。
 「君の彼女カワイイっスネ」
 全くこちらを見ずに淡々と話してくる。秋菜の姿を目で追っているのかな。
 肩につきそうなくらいのショートカットにして今日はヘルメットを被っておらず、ユニフォームも着ていない。
 制服姿が激しく俺の心をかきみだす。
 「どうしたんスカ? 顔が少し火照ってるスヨ」
 「い、いや別に」
 視線を逸らしてまやを見ないようにする。
 初見から美少女だとは思ったけど、制服にしたらこんなにも違うとは。
 「あの子はどうスカ? カワイイっスカ? 彼氏としてどう・・・・・・」 
 まやの言葉を遮るように否定を述べる。
 「秋菜は別に彼女とかじゃないよ。最近知り合ったばかりだしな」
 ふーん、とつまらなそうに納得する。
 「君って運命の人と呼べる人と会ったことあるスカ?」
 「へ?」 
 何を言い出すかと思ったら難しい質問を投げてきやがった。
 出所のわからない変則投手か!
 「逆に聞くけどあんたは会ったことあるのか運命の人と」
 「あるっスヨ・・・・・・まやの今を築いた憧れの人っスヨ」
 過去を懐かしむようなしかし寂しさも含んだ声でゆっくりとそう言った。
 「口が滑りました。話すぎましたね」
 俺から離れるように生徒達の向かっている方向に駆けていった。
 俺はまやの後姿が見えなくなるまで見続ける。
 「運命の人か」
 なんとなく呟いてみた。

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