世の中凡人を探す方が難しい

青キング

入学式と一人の女子

 厳かな空気の中入学式が始まった。
 二、三年生の拍手で俺達一年生は体育館に入場。
 それはそれは盛大に拍手された。
 拍手もおさまったところで生徒代表として生徒会長のお話が今から始まる。
  三年生達の座っている一番後列の右隅の男子がカタッという音をたてて起立しステージの方へゆっくりと歩いていく。 
 そして、教壇の少し後ろで礼をして話を始める。           
「新一年生の皆さん、御入学おめでとうごさいます」
俺と同学年の一年全員が座ったまま一斉に頭を下げてお辞儀する。
 「本学校の特徴と言えばあの和と洋を組み合わせた正門ですよね?」
 訊かれても知らんわ。
 「それは置いといて自己紹介をします」
 堂々と言われてもなぁ。  
 でもなんか生徒会長迫力ある気がする。
 「生徒会長の僕の名前は・・・・・・まさはらみかづきだー!」
 自分の名前叫んで不思議な先輩だな。
 一年生全員を圧倒するほどの自己紹介を済ませてまさはら生徒会長は天井を見上げて、やりきった感を醸し出している。
 自己紹介しかしてないよ。
 「ではお話を終わります」
 嬉し泣きなのか涙ぐみながら席に行くときと同様にゆっくりと席に戻っていく。
 「これで入学式を終わります。一同礼!」
 まだ歓迎の言葉と生徒会長の自己紹介しかやってないんだけど。
 在校生から順番に退場していく。
 一年生は無論、最後だ。
 静かな体育館を後にしようとしたその時、自分と同じクラスの席に一人だけ俯いて座っている。
 見てみるに女子列の一番前だ。
誰その子にに気づかないのか、それとも無視しているのかわからないが置いてきぼりにされているのは確かだ。
 俺はなぜかその子の所に足が自動的に向かっていってしまう。
 前に来たとき知ってしまった。
 その子は物音をたてずにスヤスヤ寝ていることに。
 その子の顔と同じ高さまでしゃがんで肩を鷲掴み前後に揺すると、重そうなまぶたを少しだがおもむろに開けた。
 そして数秒でまた閉じた。
 再度揺すってみるが、起きそうな素振りが全く見られない。
 困り果ててその子の顔を凝視する。
 端正な顔立ちに艶やかなロングストレートの桜色の髪 が俺の心を掻き立てる。
 寝顔なんて貴重な物拝ませてもらってるな。
 こんなことに運を使用してしまうとはとても残念な気分だ。
 「うみゃ・・・・・・」 
 またまぶたを開け、こちらを見ている。
 その子の顔が見違えるほど赤くなる。
 「ぎゃあああああああ変態!」
 つんざくような悲鳴に耳を押さえる。
 華奢な腕を振りかぶってそのまま斜めに降り下ろされる。
 降り下ろした勢いそのままに手のひらが俺の頬を直撃する・・・・・・と思ったらからぶったのか俺が避けたのかは知らないが頬を赤く腫れ上がらずに済んだ。
 「何避けてるのよ!」
 「知らないよ俺は。お前がからぶったんじゃないのかよ!」
 ぷくっーと頬が膨れ上がって不満を露にしている。
 「ひとつだけ条件付きで許してあげる」
 膨れ上がりながらそう言うと一度身を翻して間を作り向き直る。
 俺の顔の前にビシッと人差し指を突きつけてきた。
 「あなたが私の創設する部活に入ってくれたらなんていう条件よ」
 真っ直ぐ俺を見つめる。
 「とりあえず教室戻ろうよ。話はそのあとだ」
 「確かにそれもそうね」
 突き付けていた指を下ろして、納得する。
 とんだ災難が起きそうだよ。

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