悪夢を食べるのは獏、命を狩るのがヴァルキュリア

ノベルバユーザー173744

閑話休題……龍花のネーミングセンス

龍花は、父や母、侍女に手伝ってもらい着替えをするのだが、

「お母様。これは?」
「まぁ。子鵬しほうかしら。もう。いたずらはダメと言ったのに」

くすくす笑う。

「うーん……お耳に、お手手、グーパーできない……それに、おしっぽがついてる……」
「これもはいてねって……お洋服は可愛いワンピースなのに、うさぎさんみたいね」
「出来た〜?」

ひょこっと顔を出した子鵬は、

「おぉぉ!可愛い!スッゲェ可愛い!」
「お兄様、お手手使えないですよ?」
「いいんだ〜。今日はうさぎさん。可愛い!」
「こら!全く隙がない!」

子麟しりんがため息をつく。

「お兄様、似合いませんか?」
「似合ってるから悲しいよ。お兄様は」
「ふにゃ?」
「違う違う。お兄様は折角だから、お出かけしたかったんだ」

その言葉に目をキラキラさせる。

「子麟お兄様。お出かけ行きたいです!どこにいくのですか?」
「ふふふっ。今日は父上の所にね?」
「お父様!行きたいです!」

父親が手を回し送られてきたぬいぐるみを抱っこし、兄を見上げる。

「じゃぁ、行こうか」
「はい!」

兄に抱き上げられ、ワンピースにうさ耳と手袋とウサギ足のブーツである。

「お兄様、高い高いです〜」

きゃはきゃはと嬉しそうに笑う。
兄の首に腕を回し、周囲を見回す姿は、子麟や子鵬だけでなく護衛についている青年たちも頬が緩む。

「後で父上に高い高いしてもらう?」
「もっと高いのですか?」
「そうだね。お兄ちゃんたちよりも背が高いからね。小さい頃には忙しい人だったけど、休みの時には遊んで貰ったなぁ……」
「あ、そう言えば、忙しいから、俺たちが寝た後に帰ってきて、起きる前に仕事に行くから、時々1日いた時誰だろうって悩んだなぁ……」

子鵬はため息をつく。
龍花も悲しそうに、

「……龍花は、お母様と別々に住んでいたので……」
「これから兄ちゃん達と父さんや母さんと一緒だぞ?」
「今日はね?父上が一緒に白竜に乗ろうかって。早いよ?あの、ヒゲのおじさんの馬、真っ赤でね、大きいんだけどね。白竜はとても綺麗だろう?」
「うんっ。ロンちゃん大好き!」

龍花は、父と出かけている時以外、白竜が守役となり、面倒を見ている。
ちなみに母の桃花も、方向音痴の為、白竜がどこかフラフラと出かけるのを捕まえて連れ戻す役目である。
今日は、一応予定では孔明の奥方や娘の果が遊びに来るそうである。
出なければ、母を置いて出て来ることはない。

「えへへ。お兄様たちも大好きです。お父様もお母様も大好き!」
「私も龍花が大好きだよ」
「俺も俺も!大好きだぞ!」
「……爺。お前の子供は人目も憚ることはないんだな」
「髭、黙れ」

冷たく言いすてると、白竜から降りる。
一瞬にして表情が変わり、

「龍花、よく来たね……おや?」
「うさぎさんなの。子鵬お兄様が選んでくれたのです」
「ふふっ。可愛いね」

息子の腕から抱き上げると、高い高いをして、くるくると回る。
龍花はびっくりしたもののすぐにキャハハと笑い、

「わーい!お父様お空飛んでる〜!」
「はい、抱っこ。ぽふん。そして、くるくる〜」
「キャァァ〜!」

喜ぶ娘に、子竜は微笑む。

「ふふふ、龍花は可愛いね。じゃぁ、今日はお父様とお兄ちゃんたちとお出かけに行こうかな?」
「お出かけ?」
「そう。白竜と。お兄ちゃんたちは愛馬で行くからね」

『おい、子竜殿』

深い声で声をかけて来るものに、龍花は目を丸くする。
白竜は大きいがしなやかな筋肉に覆われた、白馬だがスリムな馬である。
しかし、目の前に姿を見せたのは、巨体の真紅の馬……。
驚き硬直する龍花に、真紅の馬は、

「申し訳ないが、子竜殿が向かう森には馬鹿が居座っているらしい。気をつけた方がいいだろう。何なら、私と周倉が蹴散らして来てもいいが……」
「赤兎に迷惑はかけられないだろう」
「いや、我の主人は、自分で我の世話ができぬ。いつも周倉や関平、子竜殿に面倒をかけている。この程度大丈夫だ。それに、見たところ幼い姫に何かあってはたまらぬ」

横にいる主人をちらっとみ、溜息をつく。

「コラァ、赤兎!主人を何だと!」
「……黙れ。髭。愚かな主人は一人で良かったというのに……我の主人は見てくれのみ!まだ、見た目のみでなく将軍として采配をふるえる子竜殿の方がありがたかった」
「せきと……?」
「龍花。この馬が、赤い兎と書いて、赤兎と言う」
「うさちゃん!」

赤兎とその主人は可愛らしい少女の一言に遠い目をする。
『うさちゃん』……巨躯の馬に全く似合わない台詞である。

「お父様。うさちゃん。ロンちゃんとうさちゃん!龍花大好き!」

子竜はちらっとプライドの高い赤兎を見るが、すぐに、

「うん。赤兎はとっても賢いからね。白竜がいない時には、赤兎を呼ぶんだよ?」
「うん!うさちゃん呼ぶの!」
「おい、子竜殿!」
「……赤兎。諦めろ。子竜は桃桃と龍花にはとてつもなく甘いんだ」

やって来ていた白竜は友人である赤兎に囁く。

「うさちゃんで我慢しなければ、ぴょんちゃんとか赤うさちゃんとか激しくなるぞ」
「……それはもっと嫌だ」

青ざめた赤兎は、新しい呼び方を受け入れざるを得なかったのだった。

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