悪夢を食べるのは獏、命を狩るのがヴァルキュリア

ノベルバユーザー173744

関平の優しさに手を伸ばすのを躊躇う真侑良です。

 躊躇いつつ自らを覆う結界を解いた真侑良まゆらは、呼吸が細く弱っていた。
 関平かんぺいは中に入り、真侑良を抱き上げると、

「先触を‼西王母さいおうぼさまの元に、お願いを‼仙桃せんとうを」
「い、ら……」

朦朧としつつ、『仙桃』の意味を理解していた真侑良は、袖をつかみ、首を振る。

「駄目です。真侑良どの‼まずは静かにお休みなさい」
「だ……め……私は、嫌われて……」
「お休みなさい……」

 真侑良の額に唇を寄せた関平のそれに、しっとりとした感触と暖かい何かを感じながら、真侑良は意識を失ったのだった。



 緊急に届いた使いに西王母はおっとりと、側近の九天玄女きゅうてんげんにょを見る。

「貴方の意見だと、反対って言いそうね」
「そうですわ。ですが人として生まれ、現在ここにいるとしても、女性としては……守ってあげたいと思いますわね」
「では、仙桃を贈りましょう。そして……」
「かしこまりました。すぐに手配を」

 西王母の一言に、彼女の側近であり秘書である九天玄女は頭を下げ、下がっていった。

「本当に、愛情と言うものの恐ろしさは……こごり、よどみ、それに巻き込まれた哀しい女性……逃げれば良いものを……優しい人ね……。それに、関平どのは強い方ね。私の夫は仕事にかまけて会いに来てくれないのに……」



 九天玄女の名前で届けられた、桃を丁寧に一口大に切られた物を押し戴いた関平は、真侑良に食べさせる。

「真侑良さん……口を開けて」
「……」

 その力もなさそうな真侑良の口をちょっと開け、押し込む。

「ちょっと噛んで下さい……そう……そうです。甘いでしょう?」
「……あ、ま……」
「でしょう?もう1つだけ食べましょうね?後でまたたべましょう」

 もう1つ口に入れて、モコモコと口を動かす真侑良に、

「傷が悪化していたらいけないので、包帯だけ……治したら、また食べましょう。お菓子も冷茶も用意しますね?」
「ありがとう……」

 医師に手当てを頼み、そして薬を飲ませる代わりに仙桃の欠片を口に含ませる。

「ありがとう……」
「構いませんよ。はい。もう1つ」

 体調不良の上、絶食の真侑良には沢山食べさせるのはよくないが、時間をかけてゆっくりと運ぶ。

「あの、関平くん。大丈夫だよ……大分……良くなったから、さ……えへへ、恥ずかしいところを……心配かけてごめんね」
「良いですよ。気にしていません。それよりも、桃以外に何か必要でしょうか……」
「あの、関平くん?これ、何?」
「衣や、飾りを用意しているんです」

 中国の三国志の映画のような部屋だが、テーブルの上に、見たこともない物が次々と積み上がっていた。

「あ、の……うち……ヴァルキュリアの仕事……」
「治るまでは無理ですし、傷に触らなければ、如何ですか?ね?」

 にっこり……
無邪気に笑われ、

「う、うん……ちょっとだけ……」
「ありがとうございます。じゃぁちゃんと休んで下さいね?」

そっと横たえられる。
 真侑良は無意識に探す。
 関平は、『趙雲ちょううんくん。』を差し出す。

「あ、ありがとう……」

 抱き締めるとへにゃっと笑い、目を閉じる。



 ドキン……

と胸が高鳴った。
 その高鳴りは、心を許し寝入った真侑良の姿をずっと見ていたいと思っていた……。

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