悪夢を食べるのは獏、命を狩るのがヴァルキュリア

ノベルバユーザー173744

連れられてきたのは、豪華絢爛と言うよりもド派手な目に痛い寺‼

「何なんで?はぁ?」

 取っ捕まってバタバタ暴れるんも、どう見ても、

『まな板の上の鯉』

ならぬ、

『髭親父に担がれたおばはん』

……まんまやん。

 突っ込みも飽きてきたし、元々嗜好品も、一応食事も味と匂いだけ楽しむんやけど、それもこの世界で一番してない、うちは、体力もないけん疲れてくる。
 ここのシステム上、仕事を成功させればこの世界のトップである閻魔大王さんに褒賞としてエナジーを貰えることになっとる。
 それは、連れてきた戦士の本来の寿命と戦死によって早く逝ってしもた差し引き分……それを取り込むことで、うちや同僚は前世に犯した罪を減らして貰うことも共に可能になるんや。
 つまり、エナジーはこの世界で生きる為のパワーであり、昔犯した罪を減刑ってことや。
 でも、うちは、罪を減らして貰うのんもお断り。
 やけん仕事も本当はしたない。
 やけど、後からやって来る同職の御姉様が、早々にその刑務と言うか、仕事を終えて、

「じゃぁね?又って、会えても覚えてないもんね」

と言いながら去っていくんは実際は羨ましい時もあった。

 でも、仕方ない。
 うちは、再び生まれ変わるんは金輪際お断りや……。

 ベッドは固いけど揺られていくうちに、次第に眠うなる。
 目を閉じてしもたんは不覚だ。



 髭親父こと関聖帝君かんせいていくんは、担ぎ上げていた体の動きが大人しくなり、そしてポツッと、

「……うちが、一体何をしたん?神さんでも仏さんでも、教えてぇや……何回、何度もよみがえって、人に裏切られ、人に捨てられ、人に欺かれ、人に襲われ、人に売られ……出家して、悟りも開けずに、日々苦悩して気違きちがいになっていくんを続けていかな、あかんのや……幸せってなんや……」

の言葉に息を呑む。



 百目鬼真侑良どうめきまゆら……別名『死神界の落ちこぼれ』、『死神界の役立たず』。
 ついでに、本人は寝ていると言うが、普通、死神は眠らない。
 次々とヴァルキュリアならば『英雄の魂』を、もしくは死神のランクによって『罪科つみとがの多い』者程屈強な死神が、あの有名な鎌等を持ち命を狩る。

 ちなみに死神の鎌として有名なあの巨大な刃を持つ鎌はヨーロッパの地域の元々草を刈る鎌で、刃を横に構え、ベルトや、フックで体に固定させたりして刈っていく。
 縦に刺すのではなく横に大きく振るのである。
 それが、次第に首を斬る……死神が持っているとなったらしい。



 話はそれたが、百目鬼真侑良は本来は死神になるべき人間ではなかった。
 逆に、死神に追われる程悪事を働いた悪人に何度も殺されたり、それに準ずる苦痛を味わわされ、心を病み命を断った人間である。

 本来は命を自ら絶つ者はそれ相応の罪を与えられるが、実は、百目鬼真侑良の生きていたくない程苦しい生き地獄を味わわされたのは、閻魔大王が特に地獄が機能しうる限り永遠に出てこられないように地獄の最下層に最終的に叩き込んだ極悪人によってであり、転生する度にその人間に利用され、もてあそばれ、命を絶つか、心を病んで幽閉され生涯を閉じた。
 一度は出家し、悟りを開こうとしたが、その者に追われ、『補陀落渡海ふだらくとかい』を実行したが、連れ戻されたと言う経緯がある。

『補陀落渡海』は仏教の『捨身行すてみぎょう』の一つで、西方浄土にいるという仏の元に船でお経を唱えながら波に揺られていくと言うものである。
 一種の逃げられないように石を巻き付けたりして船に乗るのだが、一人で、有名なのは和歌山県の那智勝浦で、20回この補陀落渡海が記録されている。
 他の地域でも残っているが、特に多いのは那智勝浦だったらしい。

 そして、送り出して戻ってきた場合、殺されたりするらしい。
 関聖帝君は、戦場に生きてきた為、ある程度解るが、解らないのは、

「何故、この者だけが不幸を被るかだな……まぁ、運が悪すぎるのだろう。詮索せずともよい」

呟いた。
 ほぼ死神の底辺として生き続けられるのは、特別に彼女が寝る間に『彼』が練った『エナジーの薬』を他には内緒で与えていることも……言わなくとも良いだろう……。



 しばらく歩くと、前を誘導していた周倉しゅうそうが、

「主、関聖帝君さまのお帰りである‼」

 門兵が慌てて扉を開いた。

 確認をし、

「主、若君……どうぞ。お入り下さいませ」
「あぁ。後のことは、妻子に頼むことにする」
「はっ!」



 翌日、目が覚めた真侑良は叫んだのだった。

「何やねーん!本がない‼巻物、しかも木簡‼」
「すみません。何もなくてどうぞ」



 関平の声に、真侑良は、

「何もなくないやんかー‼やったぁ‼ほんもんの書簡‼おぉ‼漢字だけでも何とか意味が通じるがね‼読めんけど」
「そうなんですか?」
「当たり前やんか‼関平くん‼あんたもご存じの、中国の広さと方言の多さやー‼うちは現代の中国語……北京ペイチン語を主に取り入れて作った普通語プートンホワを習っとるんと、上海シャンハイ語に、広東カントン語なら何とか身ぶり手振りで分かるけどな。西安シーアン……長安チィァンアンの方の言葉や、四川シーチュアン語はほぼ解らんわ。四川料理の麻婆豆腐位や。それに発音もおかしい。今から習っても数百年かかるわ。それに、聞いたけど、今の中国語は四声と軽声の5つで音の上げ下げや。でも、昔はその声の上げ下げだけでも相当数あったって聞いたわ。しゃべれる筈がなかろがね。中国語の歌はとてもとても」
「例えばどんな歌が?」
「ん?いや、知らんし。詩は知っとるけどな。中国語の歌は歌えんわ」

 首をすくめる。

「まぁ、読んで勉強しよ。ありがとさん」



 これは良いもんを借りたと中国語の書簡を読むことにしたのだった。

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