異世界八険伝
25.ノースリンクへの道1
この世界に来てから12日目の朝6時、ボクたち3人は既にチロル北門の馬車の横に居る。これから自己紹介をして、出発するんだ。
今回の馬車は、ギルド専用車だ。何と、馭者兼護衛のお兄さん2人も同行してくれるらしい。前回の件があったので、支部長のメリンダさんには彼らの身元をしっかり確認してもらった。結果、数年前からギルド職員をしている信頼できる方々とのことで、安心した。だって、美少女3人組の旅は何が起きるか分からないもの。ヤバい、フラグ立てちゃった!?
「僕はティミーと申します。ランクCで、歳は22歳です。勇者様たちのお世話ができて光栄です! 」
メルちゃんよりやや濃い青髪の、見るからに好青年さん。図書館のカウンターに居そうなタイプで、眼鏡をぐいっと上げる仕草が似合いそう。
「俺はラーンスロットだ。元ランクAだが3年前に引退した。40歳のおっさんだが、仲良くしてくれよ? 」
緋色の髪のお兄さんで、年齢よりはずっと若く見える。ランクAってどのくらい強いんだろう。後ろからお尻蹴られても避けちゃうくらい? 気になるけど、蹴りも鑑定もやめておこう。
「見習い勇者のリンネ、12歳です」
「青の召喚者のメルです。14歳です」
「リンネ様の付き人のアユナです。11歳です! 」
無難な自己紹介が終わった時点で……例のアレが脳裏に浮かぶ。
[メルがパーティに加わった]
[アユナがパーティに加わった]
あれっ!?
馭者さんはパーティに入らないんだ? 基準がよく分からなくなってきましたよ。しかも、パーティ加入は通知が入るのに、パーティ解散はいつの間にかされてる。町の中に入るとき? それとも宿屋やギルドに入るとき? 謎だ、謎すぎる!
10分も走ると、頻繁に魔物と遭遇するようになった。
レベル10程度の魔物ならボクの魔法で1撃なんだけど――あまりにも数が多いので、張り切り過ぎるとMPが切れるかも。ちなみに、威力を抑えれば、下級魔法を50回、中級なら20回くらいは連発できそう。
はぁー。それにしても多過ぎだぞ、魔物さん。チロルの高くて頑強な城塞は、最近だけでも何度も魔物の襲撃を防いだそうだ。さすがは城塞都市と言ったところか。
魔物を倒しつつ馬車にゆらゆらされながら、アユナちゃんから精霊召喚のことを訊いてみた。
「自慢しちゃうぞぉ? 普通はね、エルフと言っても先天スキルで精霊召喚が使える子は1000人に1人なんだって。えっへん! 私はその1人なのだぁー! 」
座席から立ち上がってドヤドヤなポーズを決めるエルフっ娘。全然凄そうには見えないけど――。
「へぇ! どんな風に凄いの? 」
「聞いちゃう? それ聞いちゃうのぉ? 」
「教えて可愛いエルフさん! 」
「えへへ! 仕方ないなぁ! まず、全精霊と契約可能です! あと、召喚に呪文がいりません! 契約している精霊の名前を言うだけで召喚できるんだぁ! 」
「あれ? 昨日は呪文を唱えていましたよね? 」
先にメルちゃんに突っ込まれた!
「あれは、雰囲気作り! いきなり召喚するとか、感動がないでしょ? 」
「そう、なんだ。うん、確かに感動は大切だよね――。ちなみに、今はどんな精霊を召喚できるの? 」
「それは――ほら、これからだんだんと増やしていって――いつかは精霊王や、精霊神も? 」
「つまり、今はあの、可愛い可愛いトレントのトレンちゃんだけなの? 」
「うぅぅ……」
「泣いちゃう、泣いちゃうよ!リンネちゃんは苛め過ぎです。アユナちゃん泣かないで? 」
「これから増やしていこうね!それで、アユナちゃん! 精霊とはどうやって契約するの? 」
「出会った精霊さんとお話するだけですぅ」
そうか。才能があっても、村に引き籠もっていたら契約精霊が増えないから、ご両親は旅に出したんだ! もしかしたら、アユナちゃんって、リザさんより凄い?
「そうなんだ! 出会ったらたくさんお話して契約してね! アユナちゃんなら凄い精霊魔法使いになれるよ! 一緒に頑張ろうね! 」
「やっぱり? えへへ! じゃあ、そこにいる風精霊のシルフちゃんや光精霊のウィルオーウィスプさんと契約しちゃうね! 」
「えっ!? どこどこ? 」
『*****3********?*******************! 』
「終わりましたぁ! シルフちゃん、ウィルオーウィスプさん、出てきて! 」
「「わっ!! 」」
アユナちゃんは精霊たちを両肩に乗せて踊っている!
本当にすぐに契約できるんだ! この才能は凄い! でも、リザさんが召喚した精霊たちよりずっと小さいよね――。
「アユナちゃんごめん、トレント見て思ったんだけど――リザさんが召喚したトレントより小さいよね? リザさんは10mくらいのを召喚してたけど、アユナちゃんのは50cmしか――」
「うぅぅ……。まだ初級召喚だし、私が成長したら精霊さんも成長するんだもん! 頑張るもん! 」
「そっか! 頑張ろうね!! 」
なんだかんだ話しているうちに、森の中からガッサガッサと大きな魔物が出てきた!
馭者席からラーンスロットさんが叫ぶ。
「トロールが出たぞ―い! 」
[鑑定眼!]
種族:トロール(中級戦士)
レベル:21
攻撃:13.65(+8.20)
魔力:9.20
体力:11.30
防御:15.15(+1.20)
敏捷:2.90
器用:0.70
才能:0.90
「トロール、レベル21!! 攻撃が20を超えてるよ! どうする!? 」
ボクは鑑定で魔物の情報を伝えた。冷静なのはメルちゃんとボクの2人だけ。ラーンスロットさんを含め他の3人は真っ青になってる――。精霊さんたちは消えてしまった。
「メルちゃん、ボクが雷2連発で弱らせるから、トドメお願いしていい? 」
「分かりました! それでいきましょう」
トロールは、緑色の7mを超す巨体だ。あの太い棍棒の1撃を受けたら、まず助からないだろう。
距離は30m――外さないよう、ぎりぎりまで引き付ける! 魔力を練って、練って、練りまくる。サンダーストーム2発分。よし!
轟音と奇声、トロールが棍棒を掲げて突っ込んできた! 馭者席のティミーさんは発狂寸前、ラーンスロットさんは青い顔で剣を握りしめている――。
「ごめんなさい、もう少し引き付ける! 」
距離10m!!
撃つ!!
「サンダーストーム! 」
半径1mほどの落雷がトロールを頭上から襲う! よし、グラっと足にきている。
「もう1発いくよ! サンダーストーム!! 」
2発目は半径2mほどに強化して放った魔法だ。ドガッ!という衝撃音でトロールの巨体が前倒しに崩れる!
「はっ!! 」
合図なんていらない。
阿吽の呼吸で飛び出したメルちゃんが、麻痺して蹲るトロールの頭部を、大上段から一閃!!
鈍い音を立ててトロールは動かなくなり、すぐに魔素を霧散させて魔結晶になった――。
ボクとメルちゃんは、馬車に戻ってハイタッチ。
「2人とも強ぇな――この強さはS級だぜ。可愛い顔して、末恐ろしいな! 」
まぁ、顔が可愛いのは当然だけど、S級は言い過ぎ! だって、こんなシンプルなやり方は、脳筋の魔物には通用しても、もっと知能の高い人型の魔人や高位のドラゴンには通用しないだろうから、もっと攻撃のバリエーションを増やさないとね!
ちなみに、倒した魔物はこんな感じ。
種族:ドラゴンフライ
レベル:18
攻撃:7.60
魔力:15.05
体力:6.10
防御:6.15
敏捷:14.25
器用:1.30
才能:1.10
種族:オーガ(中級戦士)
レベル:17
攻撃:10.85(+6.05)
魔力:5.55
体力:7.90
防御:10.15(+0.90)
敏捷:1.90
器用:0.60
才能:0.85
★☆★
馬車は昼の休憩を取らずに休み休み進んだため、ほぼ予定通りの時間に夜営予定地まで来た。魔素や瘴気が溜まりやすい森や盆地を避けて、見通しの良い丘で夜営をする。既に日は沈んでいる。
「見張りなんだけどさぁ、俺らだけじゃ対応しきれないから、勇者さん達にもお願いしていいか? 」
馭者兼護衛のラーンスロットさんが、ばつが悪そうに話し掛けてきた。
「勿論構いませんよ! そのつもりでしたし! 」
「助かる、2人ずつ交替で――」
「ちょっと待ったぁ!! 」
「ん? エルフっ娘、どうした? 」
「私、光魔法の結界が張れるの! 馬車の周りだけだけど、レベル20までの魔物は入れないよ! あ、もちろん、見張りも必要だけど――」
「アユナちゃんがエルフじゃなくて天使に見えます! 」
メルちゃんが感動してる! ボクも地味に嬉しい! 夜の見張り、嫌なんだよね――魔物がわんさか来るんだもん!
「「「お願いします!! 」」」
★☆★
はい、皆さんコンバンワ。
こちら、安心安全のアユナ結界の中から生中継です。リポーターは、朝1時現在――私、銀髪美少女のリンネちゃんが担当しております!
引き継ぎで確認したところ、見える範囲の魔物は皆無です!
さぁ、何故でしょう?
アユナ結界が優秀だから?
確かに光精霊さんと契約しているから強力ではありますが、有効範囲は馬車を中心とした半径3mほど。なので、残念! ハズレです!
近くに物凄く強い魔物、例えばドラゴンとか、ドラゴンとか、ドラゴンみたいなのが居て、他の魔物が怖くて逃げちゃった?
確かにあるあるパターンですが、そういう気配はなさそうです。
えっ? 分からない?
仕方ないですね、ヒントをあげます。
先程から急に寒くなってきましたよ。しかも、深夜なのに明るいです。まるで日本の、夜のネオン街に居るみたいに――。そうです、何だか賑やかな雰囲気です。皆さんも起こして差し上げましょう!!
「みんな起きて!! オバケが出た!!! 」
馭者席からラーンスロットさんとティミーさんが飛び出して来た。馬車からはメルちゃんも来た。アユナちゃんは――寝てるのか、怖いのか、姿が見えない。
「なんだこりゃ――。大量のレイスか!? 」
ラーンスロットさんが呟く。
レイスってことは、魔物? お化けと魔物の違いが分からないけど、鑑定してみる!
[鑑定眼!]
種族:レイス
レベル:9
攻撃:2.05
魔力:9.30
体力:0.90
防御:4.50(物理無効)
敏捷:6.55
器用:2.30
才能:0.00
「レイス、レベル9。うわ、物理無効だって」
「だよな。結界があるからこの中に入ることはねぇだろうが、こんだけ大量のレイスが湧いてるってのは、何か原因があるよな」
「原因ですか? 例えば――? 」
メルちゃんは余裕の表情。怖くないらしい。何て頼もしい!
「魔物の襲撃を受けて村や町が全滅するなんてことは、今の世の中では当たり前なんだが――」
ボクとメルちゃんは嫌そうな顔をする。
「それだけならレイスがこんなに湧かないんだよな、恐らくだが、中心に何かあるぞ」
「レイスを引き付ける何か? レイスが守っている何か? もしかしたら――ボクたちが探している物? それとも、魂が成仏出来ない理由とか? 」
思いつく限り並べてはみたけど、具体的にイメージが湧かない。
「そのいずれの可能性もある。行ってみるか? 」
ティミーさんは腕組みして目を閉じている。多分寝てるか、行かない理由を考えてる。ラーンスロットさんは、楽しそうだ。肝試しとか好きなタイプかもね。メルちゃんはこっちを見て力強く頷いている。アユナちゃんは馬車で寝てるのか隠れているのか――。
「よし、ボクはアユナちゃんと留守番するから、皆さんよろしく!! 」
「まてまて! これって、勇者の勇気と力が試されているんじゃねーのか? 」
「もし召喚石があったら、リンネちゃんにしか触れないと思いますよ? 」
速攻で否定されるボクの案。
「物理無効……僕も無効……眠い…あ」
「はぁー、ティミーさんは寝ていいですよ! アンデッド相手なら、引き摺ってでもアユナちゃんを連れていくしかないよね! ボクとアユナちゃんで行ってくるから、皆さんで仲良くお留守番よろしくね! 」
自棄になって啖呵きってしまった――。
元の世界ではこんな経験できないから、きっと怖いと錯覚してるだけ! ただの魔物……ただの魔物……うん、これはただの魔物退治。そう言えば、リビングデッドも大丈夫ったし! 恐怖心なんて、変に意識しなければ湧いてこないよね?
「リンネちゃん、大丈夫ですか? 」
口をガクガク震わせているボクを心配してくれたのか、メルちゃんが近寄ってきた。
「魔法で一気に倒せるもん! 大丈夫だよ! アーユーナーちゃん!! 聴いてたよね!! さっさと行くよっ!! 」
「うぅぅ……うぇぇーん! 」
「はい、ウソ泣き!! 確か、光魔法に浄化系統もあったよね!! 」
「う……ん……一応、使える――」
「じゃ、行くよー!! 」
★☆★
「サンダーレイン! 」
「セイントブレス! 」
「サンダーレイン! 」
「セイントブレス! 」
「サンダーレイン! 」
「セイントブレス……」
「ハァハァ……リンネちゃん、私……もうダメかも」
「まだまだっ!! ダメかもと思ったその時が、新たなスタートラインだよっ!! 」
「えっ、そうなの? でもごめん、ちょっと意味わからないかも――」
「いくよ! サンダーレイン!! 」
「セイントブレス! 」
「サンダーレイン!! 」
「セイントブレス! 」
「サンダーレイン!! 」
「セイントブレス……」
「ハァハァ……リンネちゃん……私……ホントにもう……ダメ……」
「またスタートラインに立てたね! おめでとう! 君の冒険は、今、ここから始まるよ! 」
「えっ? 今までのは……何だったの……」
「もっいっちょ! サンダーレイン!! 」
「セイントブレス……」
「サンダーレイン!! 」
「セイントブレス……」
「ふぅ、やっと片付いたかな? 」
「リンネちゃん……鬼」
「アユナちゃん見て! あそこに何か居る――」
とうに風化した廃墟の中で、既に2割程しか外観を留めていない教会の様な石造りの建物――その一角に、淡く光を放つヒトが佇んでいる。レイスではない、確実に実体があるから。でも、人間ではない感じがする。
「あれは……ニンフ……だよ」
「ニンフ? 妖精? 」
「ううん、精霊。正確には女神様――」
「えっ、神様なの!? 」
「下級神、守護精霊とも言われる存在だよ」
「アユナちゃんなら話せるかな? 」
「うん、大丈夫だと思う。話してくるね……」
アユナちゃんがニンフから聴いた話は悲惨なものだった。
ニンフは何百年もの間、守護精霊としてこの町を見守ってきた。お世辞にも発展しているとは言えないが、豊かな自然と心ある為政者に恵まれ、活気のある素敵な町だったそうだ。
ところが、数ヶ月前に突如として現れた魔人のせいで、平和が絶たれ、悪夢のような町に変貌を遂げた。魔人は、人々を死に至らしめるだけでなく、魂を犯した。そしてこの地に呪いをもたらした――。
犯された魂は天に還って輪廻を遂げることすら叶わず、意思を持たないレイスとなってこの地に束縛された。呪いを受けたかつての平和な町は、自然界の加護を失い、あと数ヶ月で魔界の門を呼び寄せるらしい。
ニンフは魔人との戦いで傷付きながらも、守護精霊としての義務を果たし、魔人が施した忌まわしき呪いを解呪しようとした。しかし、弱体化した心身は逆に呪いに犯されてしまい、現在生命の危機にある――そんな話だった。それでレイスたちが騒いでいたのかもしれない。でも、全て倒しちゃったよ――。
「ニンフを救うことはできないの? 」
「呪いにはリンネちゃんのヒールは効かないし、私の光魔法でも魔人の呪いを解くことは無理なの――」
魔人――確か、メリンダさんも北の大迷宮に魔族が現れたって言ってたよね。魔人は魔族の中でも上位の存在で、魔王直属の精鋭とも言われている。その魔人がここに魔界の門を開けば――魔族が大量に雪崩れ込んでくる! そんなことは絶対に阻止しなければ!
「エリクサーで呪いを解くことはできないの? 」
「エリクサー?? 」
「うん。全状態異常を治せる奇跡の薬」
「奇跡!? やってみる価値はあるね! 」
ボクは、迷うことなくアイテムボックスからエリクサーを取り出し、壁に寄り掛かるニンフにそっと飲ませた。
エリクサーの放つ7色の光が、ニンフを蝕んでいた黒き魔人の呪印を溶かしていき――やがて、全ての黒が消滅し、魔人の呪詛を打ち破った!!
女神としての力を完全に取り戻したニンフは、召喚した聖なる光の矛を地面に突き刺す――この地を縛る魔人の呪いは徐々に薄れていき、やがて、大地が淡く輝きを放ち始めた。まるで歓喜に震えているかのように。
これで魔界の門なんて物騒なのは現れないはず! 良かった!
『神に求められし勇者よ。また、精霊神の加護を持つ者よ。汝らに深い感謝を! 我が愛する民を癒し浄化してくれたこと、魔人の陰謀を阻止してくれたこと、汝らの助力なければ不可能であった――』
ニンフ――女神様が、宙に浮いた状態でボクたちに笑いかけてくれた。なにこの眩しすぎる笑顔!
「勇者リンネ様の意思と力のお陰です! 」
アユナちゃんがまじめ人間だ。さっきはボクのことを鬼とか言ってたのに! 一応、町の方々――レイスをバッタバッタと倒したのは浄化なんだね、怒られずに済んで良かった!
「いえ、ボクが偶然通りかかったのは神様のお導きだと思います。町の方々は可哀想でしたが――」
ボクも無神論者らしからぬ真面目なお返事を。だって、目の前に神様が居るんだもん――。
『尊い心ある者たちよ、汝らに女神の加護を与えん、幸多かれ!! 』
女神様がボクたちに光のシャワーを浴びせてくれる。疲れが吹き飛んでいく――。
「「ありがとうございます」」
★☆★
馬車に戻ったボクとアユナちゃんは、この話をみんなに聞かせて一頻りビックリさせた後、朝までの数時間、夢の国へと旅立った――。
ノースリンクへの旅の初日、アユナちゃんと倒したアンデッドを含めると500匹以上の魔物を退治したことになる。皆それぞれレベルが上がっている。
ボクはレベルが2つ上がって15に。ステータスポイントは全て魔力に振った。
◆名前:リンネ
年齢:12歳 性別:女性 レベル:15 職業:見習い勇者
◆ステータス
攻撃:8.35(+1.50)
魔力:20.80(+3.00)
体力:6.20
防御:8.50(+4.80)
敏捷:5.15
器用:2.35
才能:3.00(ステータスポイント0)
◆先天スキル:取得経験値2倍、鑑定眼、食物超吸収、アイテムボックス
◆後天スキル:棒術/初級、カウンター、雷魔法/初級 中級、ヒール/初級
◆称号:ゴブリンキラー、ドラゴンバスター、女神の加護を持つ者
うわっ!
何か称号貰ってるし!
[女神の加護を持つ者:女神に存在を祝福された証。魔に対して強い加護を有する。攻撃+7.00 防御+7.00]
メルちゃんもレベルが2つ上がっていた。ステータスポイントは攻撃に全部振ったらしい。ボクみたいに長所を伸ばす作戦に切り替えたとか。
◆名前:メル
年齢:14歳 性別:女性 レベル:8 職業:メイド
◆ステータス
攻撃:15.20(+4.50)
魔力:9.80
体力:7.35
防御:8.35(+2.80)
敏捷:8.25(+2.00)
器用:6.90
才能:2.00(ステータスポイント0)
◆先天スキル:気配察知、食物超吸収、鬼化
◆後天スキル:
◆称号:青の召喚者
アユナちゃんはレベルが4つも上がっていた。レイス以外は馬車で寛いでいたような気がするけど? ポイントの割り振りは弱点克服作戦で、とのこと。
◆名前:アユナ
年齢:11歳 性別:女性 レベル:6 職業:精霊魔法使い
◆ステータス
攻撃:3.20(+1.50)
魔力:19.80(+3.00)
体力:3.15
防御:4.25(+3.20、魔法防御+3.00)
敏捷:3.85
器用:2.10
才能:2.00(ステータスポイント0)
◆先天スキル:精霊召喚/初級、光魔法/初級
◆後天スキル:風魔法/初級
◆称号:森に愛されし者、女神の加護を持つ者
さぁ、ノースリンクへ向けて出発だ!
今回の馬車は、ギルド専用車だ。何と、馭者兼護衛のお兄さん2人も同行してくれるらしい。前回の件があったので、支部長のメリンダさんには彼らの身元をしっかり確認してもらった。結果、数年前からギルド職員をしている信頼できる方々とのことで、安心した。だって、美少女3人組の旅は何が起きるか分からないもの。ヤバい、フラグ立てちゃった!?
「僕はティミーと申します。ランクCで、歳は22歳です。勇者様たちのお世話ができて光栄です! 」
メルちゃんよりやや濃い青髪の、見るからに好青年さん。図書館のカウンターに居そうなタイプで、眼鏡をぐいっと上げる仕草が似合いそう。
「俺はラーンスロットだ。元ランクAだが3年前に引退した。40歳のおっさんだが、仲良くしてくれよ? 」
緋色の髪のお兄さんで、年齢よりはずっと若く見える。ランクAってどのくらい強いんだろう。後ろからお尻蹴られても避けちゃうくらい? 気になるけど、蹴りも鑑定もやめておこう。
「見習い勇者のリンネ、12歳です」
「青の召喚者のメルです。14歳です」
「リンネ様の付き人のアユナです。11歳です! 」
無難な自己紹介が終わった時点で……例のアレが脳裏に浮かぶ。
[メルがパーティに加わった]
[アユナがパーティに加わった]
あれっ!?
馭者さんはパーティに入らないんだ? 基準がよく分からなくなってきましたよ。しかも、パーティ加入は通知が入るのに、パーティ解散はいつの間にかされてる。町の中に入るとき? それとも宿屋やギルドに入るとき? 謎だ、謎すぎる!
10分も走ると、頻繁に魔物と遭遇するようになった。
レベル10程度の魔物ならボクの魔法で1撃なんだけど――あまりにも数が多いので、張り切り過ぎるとMPが切れるかも。ちなみに、威力を抑えれば、下級魔法を50回、中級なら20回くらいは連発できそう。
はぁー。それにしても多過ぎだぞ、魔物さん。チロルの高くて頑強な城塞は、最近だけでも何度も魔物の襲撃を防いだそうだ。さすがは城塞都市と言ったところか。
魔物を倒しつつ馬車にゆらゆらされながら、アユナちゃんから精霊召喚のことを訊いてみた。
「自慢しちゃうぞぉ? 普通はね、エルフと言っても先天スキルで精霊召喚が使える子は1000人に1人なんだって。えっへん! 私はその1人なのだぁー! 」
座席から立ち上がってドヤドヤなポーズを決めるエルフっ娘。全然凄そうには見えないけど――。
「へぇ! どんな風に凄いの? 」
「聞いちゃう? それ聞いちゃうのぉ? 」
「教えて可愛いエルフさん! 」
「えへへ! 仕方ないなぁ! まず、全精霊と契約可能です! あと、召喚に呪文がいりません! 契約している精霊の名前を言うだけで召喚できるんだぁ! 」
「あれ? 昨日は呪文を唱えていましたよね? 」
先にメルちゃんに突っ込まれた!
「あれは、雰囲気作り! いきなり召喚するとか、感動がないでしょ? 」
「そう、なんだ。うん、確かに感動は大切だよね――。ちなみに、今はどんな精霊を召喚できるの? 」
「それは――ほら、これからだんだんと増やしていって――いつかは精霊王や、精霊神も? 」
「つまり、今はあの、可愛い可愛いトレントのトレンちゃんだけなの? 」
「うぅぅ……」
「泣いちゃう、泣いちゃうよ!リンネちゃんは苛め過ぎです。アユナちゃん泣かないで? 」
「これから増やしていこうね!それで、アユナちゃん! 精霊とはどうやって契約するの? 」
「出会った精霊さんとお話するだけですぅ」
そうか。才能があっても、村に引き籠もっていたら契約精霊が増えないから、ご両親は旅に出したんだ! もしかしたら、アユナちゃんって、リザさんより凄い?
「そうなんだ! 出会ったらたくさんお話して契約してね! アユナちゃんなら凄い精霊魔法使いになれるよ! 一緒に頑張ろうね! 」
「やっぱり? えへへ! じゃあ、そこにいる風精霊のシルフちゃんや光精霊のウィルオーウィスプさんと契約しちゃうね! 」
「えっ!? どこどこ? 」
『*****3********?*******************! 』
「終わりましたぁ! シルフちゃん、ウィルオーウィスプさん、出てきて! 」
「「わっ!! 」」
アユナちゃんは精霊たちを両肩に乗せて踊っている!
本当にすぐに契約できるんだ! この才能は凄い! でも、リザさんが召喚した精霊たちよりずっと小さいよね――。
「アユナちゃんごめん、トレント見て思ったんだけど――リザさんが召喚したトレントより小さいよね? リザさんは10mくらいのを召喚してたけど、アユナちゃんのは50cmしか――」
「うぅぅ……。まだ初級召喚だし、私が成長したら精霊さんも成長するんだもん! 頑張るもん! 」
「そっか! 頑張ろうね!! 」
なんだかんだ話しているうちに、森の中からガッサガッサと大きな魔物が出てきた!
馭者席からラーンスロットさんが叫ぶ。
「トロールが出たぞ―い! 」
[鑑定眼!]
種族:トロール(中級戦士)
レベル:21
攻撃:13.65(+8.20)
魔力:9.20
体力:11.30
防御:15.15(+1.20)
敏捷:2.90
器用:0.70
才能:0.90
「トロール、レベル21!! 攻撃が20を超えてるよ! どうする!? 」
ボクは鑑定で魔物の情報を伝えた。冷静なのはメルちゃんとボクの2人だけ。ラーンスロットさんを含め他の3人は真っ青になってる――。精霊さんたちは消えてしまった。
「メルちゃん、ボクが雷2連発で弱らせるから、トドメお願いしていい? 」
「分かりました! それでいきましょう」
トロールは、緑色の7mを超す巨体だ。あの太い棍棒の1撃を受けたら、まず助からないだろう。
距離は30m――外さないよう、ぎりぎりまで引き付ける! 魔力を練って、練って、練りまくる。サンダーストーム2発分。よし!
轟音と奇声、トロールが棍棒を掲げて突っ込んできた! 馭者席のティミーさんは発狂寸前、ラーンスロットさんは青い顔で剣を握りしめている――。
「ごめんなさい、もう少し引き付ける! 」
距離10m!!
撃つ!!
「サンダーストーム! 」
半径1mほどの落雷がトロールを頭上から襲う! よし、グラっと足にきている。
「もう1発いくよ! サンダーストーム!! 」
2発目は半径2mほどに強化して放った魔法だ。ドガッ!という衝撃音でトロールの巨体が前倒しに崩れる!
「はっ!! 」
合図なんていらない。
阿吽の呼吸で飛び出したメルちゃんが、麻痺して蹲るトロールの頭部を、大上段から一閃!!
鈍い音を立ててトロールは動かなくなり、すぐに魔素を霧散させて魔結晶になった――。
ボクとメルちゃんは、馬車に戻ってハイタッチ。
「2人とも強ぇな――この強さはS級だぜ。可愛い顔して、末恐ろしいな! 」
まぁ、顔が可愛いのは当然だけど、S級は言い過ぎ! だって、こんなシンプルなやり方は、脳筋の魔物には通用しても、もっと知能の高い人型の魔人や高位のドラゴンには通用しないだろうから、もっと攻撃のバリエーションを増やさないとね!
ちなみに、倒した魔物はこんな感じ。
種族:ドラゴンフライ
レベル:18
攻撃:7.60
魔力:15.05
体力:6.10
防御:6.15
敏捷:14.25
器用:1.30
才能:1.10
種族:オーガ(中級戦士)
レベル:17
攻撃:10.85(+6.05)
魔力:5.55
体力:7.90
防御:10.15(+0.90)
敏捷:1.90
器用:0.60
才能:0.85
★☆★
馬車は昼の休憩を取らずに休み休み進んだため、ほぼ予定通りの時間に夜営予定地まで来た。魔素や瘴気が溜まりやすい森や盆地を避けて、見通しの良い丘で夜営をする。既に日は沈んでいる。
「見張りなんだけどさぁ、俺らだけじゃ対応しきれないから、勇者さん達にもお願いしていいか? 」
馭者兼護衛のラーンスロットさんが、ばつが悪そうに話し掛けてきた。
「勿論構いませんよ! そのつもりでしたし! 」
「助かる、2人ずつ交替で――」
「ちょっと待ったぁ!! 」
「ん? エルフっ娘、どうした? 」
「私、光魔法の結界が張れるの! 馬車の周りだけだけど、レベル20までの魔物は入れないよ! あ、もちろん、見張りも必要だけど――」
「アユナちゃんがエルフじゃなくて天使に見えます! 」
メルちゃんが感動してる! ボクも地味に嬉しい! 夜の見張り、嫌なんだよね――魔物がわんさか来るんだもん!
「「「お願いします!! 」」」
★☆★
はい、皆さんコンバンワ。
こちら、安心安全のアユナ結界の中から生中継です。リポーターは、朝1時現在――私、銀髪美少女のリンネちゃんが担当しております!
引き継ぎで確認したところ、見える範囲の魔物は皆無です!
さぁ、何故でしょう?
アユナ結界が優秀だから?
確かに光精霊さんと契約しているから強力ではありますが、有効範囲は馬車を中心とした半径3mほど。なので、残念! ハズレです!
近くに物凄く強い魔物、例えばドラゴンとか、ドラゴンとか、ドラゴンみたいなのが居て、他の魔物が怖くて逃げちゃった?
確かにあるあるパターンですが、そういう気配はなさそうです。
えっ? 分からない?
仕方ないですね、ヒントをあげます。
先程から急に寒くなってきましたよ。しかも、深夜なのに明るいです。まるで日本の、夜のネオン街に居るみたいに――。そうです、何だか賑やかな雰囲気です。皆さんも起こして差し上げましょう!!
「みんな起きて!! オバケが出た!!! 」
馭者席からラーンスロットさんとティミーさんが飛び出して来た。馬車からはメルちゃんも来た。アユナちゃんは――寝てるのか、怖いのか、姿が見えない。
「なんだこりゃ――。大量のレイスか!? 」
ラーンスロットさんが呟く。
レイスってことは、魔物? お化けと魔物の違いが分からないけど、鑑定してみる!
[鑑定眼!]
種族:レイス
レベル:9
攻撃:2.05
魔力:9.30
体力:0.90
防御:4.50(物理無効)
敏捷:6.55
器用:2.30
才能:0.00
「レイス、レベル9。うわ、物理無効だって」
「だよな。結界があるからこの中に入ることはねぇだろうが、こんだけ大量のレイスが湧いてるってのは、何か原因があるよな」
「原因ですか? 例えば――? 」
メルちゃんは余裕の表情。怖くないらしい。何て頼もしい!
「魔物の襲撃を受けて村や町が全滅するなんてことは、今の世の中では当たり前なんだが――」
ボクとメルちゃんは嫌そうな顔をする。
「それだけならレイスがこんなに湧かないんだよな、恐らくだが、中心に何かあるぞ」
「レイスを引き付ける何か? レイスが守っている何か? もしかしたら――ボクたちが探している物? それとも、魂が成仏出来ない理由とか? 」
思いつく限り並べてはみたけど、具体的にイメージが湧かない。
「そのいずれの可能性もある。行ってみるか? 」
ティミーさんは腕組みして目を閉じている。多分寝てるか、行かない理由を考えてる。ラーンスロットさんは、楽しそうだ。肝試しとか好きなタイプかもね。メルちゃんはこっちを見て力強く頷いている。アユナちゃんは馬車で寝てるのか隠れているのか――。
「よし、ボクはアユナちゃんと留守番するから、皆さんよろしく!! 」
「まてまて! これって、勇者の勇気と力が試されているんじゃねーのか? 」
「もし召喚石があったら、リンネちゃんにしか触れないと思いますよ? 」
速攻で否定されるボクの案。
「物理無効……僕も無効……眠い…あ」
「はぁー、ティミーさんは寝ていいですよ! アンデッド相手なら、引き摺ってでもアユナちゃんを連れていくしかないよね! ボクとアユナちゃんで行ってくるから、皆さんで仲良くお留守番よろしくね! 」
自棄になって啖呵きってしまった――。
元の世界ではこんな経験できないから、きっと怖いと錯覚してるだけ! ただの魔物……ただの魔物……うん、これはただの魔物退治。そう言えば、リビングデッドも大丈夫ったし! 恐怖心なんて、変に意識しなければ湧いてこないよね?
「リンネちゃん、大丈夫ですか? 」
口をガクガク震わせているボクを心配してくれたのか、メルちゃんが近寄ってきた。
「魔法で一気に倒せるもん! 大丈夫だよ! アーユーナーちゃん!! 聴いてたよね!! さっさと行くよっ!! 」
「うぅぅ……うぇぇーん! 」
「はい、ウソ泣き!! 確か、光魔法に浄化系統もあったよね!! 」
「う……ん……一応、使える――」
「じゃ、行くよー!! 」
★☆★
「サンダーレイン! 」
「セイントブレス! 」
「サンダーレイン! 」
「セイントブレス! 」
「サンダーレイン! 」
「セイントブレス……」
「ハァハァ……リンネちゃん、私……もうダメかも」
「まだまだっ!! ダメかもと思ったその時が、新たなスタートラインだよっ!! 」
「えっ、そうなの? でもごめん、ちょっと意味わからないかも――」
「いくよ! サンダーレイン!! 」
「セイントブレス! 」
「サンダーレイン!! 」
「セイントブレス! 」
「サンダーレイン!! 」
「セイントブレス……」
「ハァハァ……リンネちゃん……私……ホントにもう……ダメ……」
「またスタートラインに立てたね! おめでとう! 君の冒険は、今、ここから始まるよ! 」
「えっ? 今までのは……何だったの……」
「もっいっちょ! サンダーレイン!! 」
「セイントブレス……」
「サンダーレイン!! 」
「セイントブレス……」
「ふぅ、やっと片付いたかな? 」
「リンネちゃん……鬼」
「アユナちゃん見て! あそこに何か居る――」
とうに風化した廃墟の中で、既に2割程しか外観を留めていない教会の様な石造りの建物――その一角に、淡く光を放つヒトが佇んでいる。レイスではない、確実に実体があるから。でも、人間ではない感じがする。
「あれは……ニンフ……だよ」
「ニンフ? 妖精? 」
「ううん、精霊。正確には女神様――」
「えっ、神様なの!? 」
「下級神、守護精霊とも言われる存在だよ」
「アユナちゃんなら話せるかな? 」
「うん、大丈夫だと思う。話してくるね……」
アユナちゃんがニンフから聴いた話は悲惨なものだった。
ニンフは何百年もの間、守護精霊としてこの町を見守ってきた。お世辞にも発展しているとは言えないが、豊かな自然と心ある為政者に恵まれ、活気のある素敵な町だったそうだ。
ところが、数ヶ月前に突如として現れた魔人のせいで、平和が絶たれ、悪夢のような町に変貌を遂げた。魔人は、人々を死に至らしめるだけでなく、魂を犯した。そしてこの地に呪いをもたらした――。
犯された魂は天に還って輪廻を遂げることすら叶わず、意思を持たないレイスとなってこの地に束縛された。呪いを受けたかつての平和な町は、自然界の加護を失い、あと数ヶ月で魔界の門を呼び寄せるらしい。
ニンフは魔人との戦いで傷付きながらも、守護精霊としての義務を果たし、魔人が施した忌まわしき呪いを解呪しようとした。しかし、弱体化した心身は逆に呪いに犯されてしまい、現在生命の危機にある――そんな話だった。それでレイスたちが騒いでいたのかもしれない。でも、全て倒しちゃったよ――。
「ニンフを救うことはできないの? 」
「呪いにはリンネちゃんのヒールは効かないし、私の光魔法でも魔人の呪いを解くことは無理なの――」
魔人――確か、メリンダさんも北の大迷宮に魔族が現れたって言ってたよね。魔人は魔族の中でも上位の存在で、魔王直属の精鋭とも言われている。その魔人がここに魔界の門を開けば――魔族が大量に雪崩れ込んでくる! そんなことは絶対に阻止しなければ!
「エリクサーで呪いを解くことはできないの? 」
「エリクサー?? 」
「うん。全状態異常を治せる奇跡の薬」
「奇跡!? やってみる価値はあるね! 」
ボクは、迷うことなくアイテムボックスからエリクサーを取り出し、壁に寄り掛かるニンフにそっと飲ませた。
エリクサーの放つ7色の光が、ニンフを蝕んでいた黒き魔人の呪印を溶かしていき――やがて、全ての黒が消滅し、魔人の呪詛を打ち破った!!
女神としての力を完全に取り戻したニンフは、召喚した聖なる光の矛を地面に突き刺す――この地を縛る魔人の呪いは徐々に薄れていき、やがて、大地が淡く輝きを放ち始めた。まるで歓喜に震えているかのように。
これで魔界の門なんて物騒なのは現れないはず! 良かった!
『神に求められし勇者よ。また、精霊神の加護を持つ者よ。汝らに深い感謝を! 我が愛する民を癒し浄化してくれたこと、魔人の陰謀を阻止してくれたこと、汝らの助力なければ不可能であった――』
ニンフ――女神様が、宙に浮いた状態でボクたちに笑いかけてくれた。なにこの眩しすぎる笑顔!
「勇者リンネ様の意思と力のお陰です! 」
アユナちゃんがまじめ人間だ。さっきはボクのことを鬼とか言ってたのに! 一応、町の方々――レイスをバッタバッタと倒したのは浄化なんだね、怒られずに済んで良かった!
「いえ、ボクが偶然通りかかったのは神様のお導きだと思います。町の方々は可哀想でしたが――」
ボクも無神論者らしからぬ真面目なお返事を。だって、目の前に神様が居るんだもん――。
『尊い心ある者たちよ、汝らに女神の加護を与えん、幸多かれ!! 』
女神様がボクたちに光のシャワーを浴びせてくれる。疲れが吹き飛んでいく――。
「「ありがとうございます」」
★☆★
馬車に戻ったボクとアユナちゃんは、この話をみんなに聞かせて一頻りビックリさせた後、朝までの数時間、夢の国へと旅立った――。
ノースリンクへの旅の初日、アユナちゃんと倒したアンデッドを含めると500匹以上の魔物を退治したことになる。皆それぞれレベルが上がっている。
ボクはレベルが2つ上がって15に。ステータスポイントは全て魔力に振った。
◆名前:リンネ
年齢:12歳 性別:女性 レベル:15 職業:見習い勇者
◆ステータス
攻撃:8.35(+1.50)
魔力:20.80(+3.00)
体力:6.20
防御:8.50(+4.80)
敏捷:5.15
器用:2.35
才能:3.00(ステータスポイント0)
◆先天スキル:取得経験値2倍、鑑定眼、食物超吸収、アイテムボックス
◆後天スキル:棒術/初級、カウンター、雷魔法/初級 中級、ヒール/初級
◆称号:ゴブリンキラー、ドラゴンバスター、女神の加護を持つ者
うわっ!
何か称号貰ってるし!
[女神の加護を持つ者:女神に存在を祝福された証。魔に対して強い加護を有する。攻撃+7.00 防御+7.00]
メルちゃんもレベルが2つ上がっていた。ステータスポイントは攻撃に全部振ったらしい。ボクみたいに長所を伸ばす作戦に切り替えたとか。
◆名前:メル
年齢:14歳 性別:女性 レベル:8 職業:メイド
◆ステータス
攻撃:15.20(+4.50)
魔力:9.80
体力:7.35
防御:8.35(+2.80)
敏捷:8.25(+2.00)
器用:6.90
才能:2.00(ステータスポイント0)
◆先天スキル:気配察知、食物超吸収、鬼化
◆後天スキル:
◆称号:青の召喚者
アユナちゃんはレベルが4つも上がっていた。レイス以外は馬車で寛いでいたような気がするけど? ポイントの割り振りは弱点克服作戦で、とのこと。
◆名前:アユナ
年齢:11歳 性別:女性 レベル:6 職業:精霊魔法使い
◆ステータス
攻撃:3.20(+1.50)
魔力:19.80(+3.00)
体力:3.15
防御:4.25(+3.20、魔法防御+3.00)
敏捷:3.85
器用:2.10
才能:2.00(ステータスポイント0)
◆先天スキル:精霊召喚/初級、光魔法/初級
◆後天スキル:風魔法/初級
◆称号:森に愛されし者、女神の加護を持つ者
さぁ、ノースリンクへ向けて出発だ!
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