異世界八険伝
18.フィーネ迷宮2階
[ステーキオープン!]
違う、
[ステータスオープン!]
レベル:8 職業:見習い勇者
◆ステータス
攻撃:4.35(+4.50)
魔力:6.55
体力:3.05
防御:2.25(+1.50)
敏捷:4.10
器用:2.05
才能:3.00(ステータスポイント2.0)
お?
魔力が上がってる! 風刃さまさまだ!
だけど、この世界の魔力としては、この程度の数値だとイマイチ評価されないらしい。なぜかと言うと、人類の約9割が0.5以下だから。つまり、人類平均値は1だけど、名のある魔法職の方々は軒並み20を超えているそうな。魔物についても同じこと――と言うのが、隊長情報だ。
ステータス的には、今のところ、紙装甲とぶきっちょが目立つ弱点かな。
ちなみに、“防御”とは回避と被ダメ軽減能力のことで、“敏捷”は回避と速度上昇能力のこと。どちらも回避だけど、ちょこっと違うらしい。前者は身体を逸らせたり屈んで躱す力量のことだけど、後者はステップやジャンプで躱す力量という違いがある。要するに、技術依存か速度依存か、みたいなことらしい。
防御は防具で上がるけど、ある程度以上の負荷が掛かる場合、敏捷値が下がったりするらしい。今後、強敵と戦うかもしれないと考えたら、防御も上げておくべきだね。
あと、器用の方は今のところ必要性が感じられないから放っておこう。
で、こう振る。
レベル:8 職業:見習い勇者
◆ステータス
攻撃:4.35(+4.50)
魔力:7.30
体力:3.05
防御:3.50(+1.50)
敏捷:4.10
器用:2.05
才能:3.00(ステータスポイント0)
当面の目標は、魔力20オーバーだ!
階段を下りた先には、広大な草原と、なんと、山が――山が聳えていた。
「山なの?」
「山みたいだね」
「いや、どう見ても山だろ」
「高そうだね。山登りするの? 」
「上の方は雪が積もってるみたいだけど」
「山だけに、雪が止まない――」
「今はそういうの求めてない」
「余計に寒くなってきたよ」
「身体を動かせば温まるだろ。それで無理なら俺が、温めてやる! 」
「でもどうして迷宮内に山があるのかしら? 」
「迷宮の中なのか外なのか分からないよね」
「別に珍しくねぇよ。次元魔法とか空間魔法とか言われてる奴だ。迷宮にはフロア一面が海ってのもある。海底洞窟に進まないと攻略できないらしいな」
「何よそれ! 魚人族しか無理でしょ! 」
「潜水艦ノーチラス号の出番ですね! 」
「あぁ? センスイカンパンチラスってのは分からねぇが、かつての大魔法使いは、海を真っ二つに割ったり、業火で全ての海水を干上がらせたらしいな。あくまで噂だがな」
「そんな魔法あり得ない! 多分魔王だ! 」
「蒸発して出た水蒸気で窒息死しそうだね! 」
「まぁ、噂なんてほとんど嘘っぱちだ。ヒレが何枚も付いてくる。最近、巷での噂知ってるか? ゴブリンジェネラルがフィーネの町で美少女2人を連れ回してるとか。アホかよ! 」
「「半分以上ホントだよね」」
「なんだと! お前ら喰ってやろうか!? 」
山の裾野まで続く草原地帯は奥行きおよそ1kmもある。
途中、食事をしたり、疎らに生えている樹木の陰でお花積みをしたりと、ある意味ピクニックのような感じで進んだ。だって、魔物が1匹も居ないんですもん!
時間は多分夕方くらい。朝から歩きっぱなしで徐々に疲れが出ているので、ちょうど良い休憩になっている。
その平穏も、山の裾野辺りまで来たとき、一変する。
「あの黒いの何かしら? 」
「ん? ハエ? ハチ? 」
「違う! もっと上! もっと遠く! それ!! 」
ミルフェちゃんがボクの顔を掴み、上下左右に操縦した結果、やっとミルフェちゃんが指し示す先に目の焦点を合わせることができた。
「――鳥、かな? 」
「ワイバーンだな。飛竜系の竜種、わいのワイバーンだ」
「ワイバーン――またドラゴン? 勝てるの? 」
「レベルは? 」
「俺も戦ったことねぇ。レベルは最低でも30。俺たちのレベルを全部足せば30は超えるだろ、何とかなるんじゃねぇか? はっはー! 」
ツンツン頭の、自暴自棄な笑いが響き渡る。
「ワイバーンって、設定ではブレスを吐いたり吐かなかったりだけど、この世界はどっち!? 」
「設定とか分からねぇが――ワイバーンは普通はブレスを吐くぜ。風邪で喉が痛けりゃ吐かないだろうがな! はっはー! 」
「痛っ! お腹痛い!! 私、今日セイリだった」
「か、帰ろうか? レベル上げて出直そう? 」
「だよな、燃えカスじゃリビングデッドにもなれないしな。レベル15までしかいないって言ってたのによ! あのギルド職員、訴えてやる」
ワイバーン、飛行、ブレス――。
こっちには、高度10m以上を飛行する相手への攻撃手段はない。空からの一方的なブレス連発で全滅する未来が見える。ダメだ。
こっそりバレないように階段を探す?
いや、多分あれはフロアボス。階段はボスを倒さないと出現しない設定らしい。ダメだ。
ミルフェ流投石の出番?
でも相手はドラゴン、硬い鱗を持つ。ダメだ。
どうする?
考える、考えよう。
冷静に、冷静に、冷静に。
「やっぱり、他の魔物が全く居ないよね」
「全部ワイバーンが喰っちまったか。はっはー! 」
「それじゃ、もうお腹が一杯かしら! 」
「違いねぇ。腹一杯でお昼寝だ。はっはー! 」
「あ、倒せるかも――」
ボソッと呟いたボクを、期待を込めた顔が見つめる。
「え? 巣穴で待ち伏せるのかしら? 」
「見つかったら、ブレスで消し炭だよ? 」
「夜這いか! 就寝中を襲うのか! 」
「一撃で倒せない限り、それも消し炭確定」
「分かったわ! リンネの極大魔法で! 」
「待ってるから魔法書買ってきて? 」
「どうせ、俺が囮になって、とかだろ? 」
「それも考えたけど、囮としての魅力が足りない」
「考えたんか! そして酷いな! 」
「お腹が痛い! 早く、早く薬を――死ぬぅ! 」
「そんな薬、俺が持ち歩いてる訳ねぇ! 」
手詰まりで騒ぎ始める2人にヒントを出す。
「えっとね、コロコロモヤモヤギャフン作戦」
眉間に皺を寄せる2人、でも眉毛は1つにならない。
「「教えて、リンネ先生!! 」」
「良かろう、静かにボクに付いて来なさい」
約5時間後、ボクたちは山頂に到達した。
標高は1000m以上、2000m未満と言ったところか。綿飴のような雲が手の届きそうな所を泳いでいる。
迷宮の外は既に真っ暗だろうが、ここ迷宮内は一日中昼間だ。見渡すと、遥か彼方には地平線も水平線も見える。本当にここって迷宮の中なのかな――。
山の中腹には適度に巨岩や樹木が点在していて、何とかワイバーンには気付かれずに登りきった。予想通り、山頂にはワイバーンの巣穴である洞窟がぽっかり口を開けている。
洞窟の中を確認する。
じっと耳を澄ます――。
大丈夫、ワイバーンは巣穴で寝ている。
「しかし、なんてパワーなんだ! 」
「これは魔法かしら? とうとう魔法に目覚めたのね! 」
いえ、意外と転がりますよ?
棒2号を使って、梃子の原理です。うんとこしょ、どっこいしょ。
1時間かけて巨岩をゴロンゴロンと洞窟の入り口に突っ込んで塞いだボクを、尊敬の眼差しで眺めてくる2人。見ていないで少しは手伝ってほしい。これ以上手足に筋肉を付けたくないし。
流石にワイバーンに気付かれた!
ブレス、ブレスの連続放火事件!
しかし、巨岩は真っ赤になりながらも巣穴を塞ぐという任務を全うしてくれる。頑張れ、お岩さん。
「それで、どうするの? 」
「こっからどうするんだ? 」
「餓死するまで何日も待つのかしら? 」
「いや、1時間あれば大丈夫だと思うよ? 」
「あれか。洞窟壊して生き埋めか? 」
「階段が塞がったら大変だと思うよ? 」
コロコロの後のモヤモヤが分からず、2人がモヤモヤし始めたタイミングで、ボクは作業に移る。
「ランタン貸して下さい! 」
ボクは、ランタンの火を使い、鰻の蒲焼きの要領で、洞窟の中に煙を満たしていく。絶賛活躍中なのはトレントさんに貰った枝。予想の遥か上空を通過する程の異臭と煙を出すのね。もしかして何かの呪い? 足りなくなったらその辺の樹木を伐採しよう――。
30分後、ワイバーンの喚き声が洞窟内に木霊する。
巨岩に体当たりしていて苦しそうだけど、無駄無駄無駄!
1時間後、洞窟内は既に静寂に満ちている。
一酸化炭素中毒? 酸欠? どちらでも構いません!
あ、レベル上がった!?
勝ちました? 勝ちましたよ!
「これはさすがに――ワイバーンが可哀想だな! 」
「お宝? ステーキ? その岩、早く退かして! 」
「あれっ? 」
夢中で岩を押し込んだのは良いけど、引き出すのは凄く大変でした――。
隊長の剣で何とか岩と洞窟を削って、漸く人が通れるスペースを確保。剣の刃がどうなったのかは、見なかったことにする。
よし!
[上級魔結晶]と[ワイバーンの牙]をゲット!
肉はありませんでした――。
残念だけど、今は団子より花!
今のうちにステ振りしておきましょう。
なになに~?
攻撃、体力、器用が上がってる?
2ポイントは、迷わず魔力に注ぎ込む!
こうだっ!!
レベル:9 職業:見習い勇者
◆ステータス
攻撃:4.95(+4.50)
魔力:9.30
体力:3.25
防御:3.50(+1.50)
敏捷:4.10
器用:2.25
才能:3.00(ステータスポイント0)
洞窟の中には階段が見える。
そして、宝箱があった!
「宝箱発見! 」
「よし、久しぶりに俺の出番だな。ん、よし。大丈夫そうだ。開けるぞ! 」
「魔法書お願い! 」
「可愛い服かアクセサリーか食べ物きて! 」
・・・・・・
「2人とも、残念だったな! 」
「全く、期待外れだわ! 」
「けど、次こそは期待できるね! 」
宝箱に入っていたのはこの3つ。
[ミスリルの塊:魔力を増幅して蓄えたり通したりできる聖銀のインゴット]
[ミスリルの大盾:防御:3.20 特殊:魔法防御+5.0]
[ミスリルの鍵:迷宮内にある宝箱を開けることが出来る魔力を帯びた鍵]
「もう外は深夜だよね、さすがに疲れたでしょ。3時間くらい休憩してから3階に行こう! 」
「俺は疲れてないんだが? 進めるうちに進んでおこうぜ! 」
「私も全然大丈夫よ? 逆にテンション上がってきたからすぐ3階に行きたいわ! 」
あぅ~!
敵は身近にいた! この人たちは鬼か!
本気で徹夜ルートですね――。
違う、
[ステータスオープン!]
レベル:8 職業:見習い勇者
◆ステータス
攻撃:4.35(+4.50)
魔力:6.55
体力:3.05
防御:2.25(+1.50)
敏捷:4.10
器用:2.05
才能:3.00(ステータスポイント2.0)
お?
魔力が上がってる! 風刃さまさまだ!
だけど、この世界の魔力としては、この程度の数値だとイマイチ評価されないらしい。なぜかと言うと、人類の約9割が0.5以下だから。つまり、人類平均値は1だけど、名のある魔法職の方々は軒並み20を超えているそうな。魔物についても同じこと――と言うのが、隊長情報だ。
ステータス的には、今のところ、紙装甲とぶきっちょが目立つ弱点かな。
ちなみに、“防御”とは回避と被ダメ軽減能力のことで、“敏捷”は回避と速度上昇能力のこと。どちらも回避だけど、ちょこっと違うらしい。前者は身体を逸らせたり屈んで躱す力量のことだけど、後者はステップやジャンプで躱す力量という違いがある。要するに、技術依存か速度依存か、みたいなことらしい。
防御は防具で上がるけど、ある程度以上の負荷が掛かる場合、敏捷値が下がったりするらしい。今後、強敵と戦うかもしれないと考えたら、防御も上げておくべきだね。
あと、器用の方は今のところ必要性が感じられないから放っておこう。
で、こう振る。
レベル:8 職業:見習い勇者
◆ステータス
攻撃:4.35(+4.50)
魔力:7.30
体力:3.05
防御:3.50(+1.50)
敏捷:4.10
器用:2.05
才能:3.00(ステータスポイント0)
当面の目標は、魔力20オーバーだ!
階段を下りた先には、広大な草原と、なんと、山が――山が聳えていた。
「山なの?」
「山みたいだね」
「いや、どう見ても山だろ」
「高そうだね。山登りするの? 」
「上の方は雪が積もってるみたいだけど」
「山だけに、雪が止まない――」
「今はそういうの求めてない」
「余計に寒くなってきたよ」
「身体を動かせば温まるだろ。それで無理なら俺が、温めてやる! 」
「でもどうして迷宮内に山があるのかしら? 」
「迷宮の中なのか外なのか分からないよね」
「別に珍しくねぇよ。次元魔法とか空間魔法とか言われてる奴だ。迷宮にはフロア一面が海ってのもある。海底洞窟に進まないと攻略できないらしいな」
「何よそれ! 魚人族しか無理でしょ! 」
「潜水艦ノーチラス号の出番ですね! 」
「あぁ? センスイカンパンチラスってのは分からねぇが、かつての大魔法使いは、海を真っ二つに割ったり、業火で全ての海水を干上がらせたらしいな。あくまで噂だがな」
「そんな魔法あり得ない! 多分魔王だ! 」
「蒸発して出た水蒸気で窒息死しそうだね! 」
「まぁ、噂なんてほとんど嘘っぱちだ。ヒレが何枚も付いてくる。最近、巷での噂知ってるか? ゴブリンジェネラルがフィーネの町で美少女2人を連れ回してるとか。アホかよ! 」
「「半分以上ホントだよね」」
「なんだと! お前ら喰ってやろうか!? 」
山の裾野まで続く草原地帯は奥行きおよそ1kmもある。
途中、食事をしたり、疎らに生えている樹木の陰でお花積みをしたりと、ある意味ピクニックのような感じで進んだ。だって、魔物が1匹も居ないんですもん!
時間は多分夕方くらい。朝から歩きっぱなしで徐々に疲れが出ているので、ちょうど良い休憩になっている。
その平穏も、山の裾野辺りまで来たとき、一変する。
「あの黒いの何かしら? 」
「ん? ハエ? ハチ? 」
「違う! もっと上! もっと遠く! それ!! 」
ミルフェちゃんがボクの顔を掴み、上下左右に操縦した結果、やっとミルフェちゃんが指し示す先に目の焦点を合わせることができた。
「――鳥、かな? 」
「ワイバーンだな。飛竜系の竜種、わいのワイバーンだ」
「ワイバーン――またドラゴン? 勝てるの? 」
「レベルは? 」
「俺も戦ったことねぇ。レベルは最低でも30。俺たちのレベルを全部足せば30は超えるだろ、何とかなるんじゃねぇか? はっはー! 」
ツンツン頭の、自暴自棄な笑いが響き渡る。
「ワイバーンって、設定ではブレスを吐いたり吐かなかったりだけど、この世界はどっち!? 」
「設定とか分からねぇが――ワイバーンは普通はブレスを吐くぜ。風邪で喉が痛けりゃ吐かないだろうがな! はっはー! 」
「痛っ! お腹痛い!! 私、今日セイリだった」
「か、帰ろうか? レベル上げて出直そう? 」
「だよな、燃えカスじゃリビングデッドにもなれないしな。レベル15までしかいないって言ってたのによ! あのギルド職員、訴えてやる」
ワイバーン、飛行、ブレス――。
こっちには、高度10m以上を飛行する相手への攻撃手段はない。空からの一方的なブレス連発で全滅する未来が見える。ダメだ。
こっそりバレないように階段を探す?
いや、多分あれはフロアボス。階段はボスを倒さないと出現しない設定らしい。ダメだ。
ミルフェ流投石の出番?
でも相手はドラゴン、硬い鱗を持つ。ダメだ。
どうする?
考える、考えよう。
冷静に、冷静に、冷静に。
「やっぱり、他の魔物が全く居ないよね」
「全部ワイバーンが喰っちまったか。はっはー! 」
「それじゃ、もうお腹が一杯かしら! 」
「違いねぇ。腹一杯でお昼寝だ。はっはー! 」
「あ、倒せるかも――」
ボソッと呟いたボクを、期待を込めた顔が見つめる。
「え? 巣穴で待ち伏せるのかしら? 」
「見つかったら、ブレスで消し炭だよ? 」
「夜這いか! 就寝中を襲うのか! 」
「一撃で倒せない限り、それも消し炭確定」
「分かったわ! リンネの極大魔法で! 」
「待ってるから魔法書買ってきて? 」
「どうせ、俺が囮になって、とかだろ? 」
「それも考えたけど、囮としての魅力が足りない」
「考えたんか! そして酷いな! 」
「お腹が痛い! 早く、早く薬を――死ぬぅ! 」
「そんな薬、俺が持ち歩いてる訳ねぇ! 」
手詰まりで騒ぎ始める2人にヒントを出す。
「えっとね、コロコロモヤモヤギャフン作戦」
眉間に皺を寄せる2人、でも眉毛は1つにならない。
「「教えて、リンネ先生!! 」」
「良かろう、静かにボクに付いて来なさい」
約5時間後、ボクたちは山頂に到達した。
標高は1000m以上、2000m未満と言ったところか。綿飴のような雲が手の届きそうな所を泳いでいる。
迷宮の外は既に真っ暗だろうが、ここ迷宮内は一日中昼間だ。見渡すと、遥か彼方には地平線も水平線も見える。本当にここって迷宮の中なのかな――。
山の中腹には適度に巨岩や樹木が点在していて、何とかワイバーンには気付かれずに登りきった。予想通り、山頂にはワイバーンの巣穴である洞窟がぽっかり口を開けている。
洞窟の中を確認する。
じっと耳を澄ます――。
大丈夫、ワイバーンは巣穴で寝ている。
「しかし、なんてパワーなんだ! 」
「これは魔法かしら? とうとう魔法に目覚めたのね! 」
いえ、意外と転がりますよ?
棒2号を使って、梃子の原理です。うんとこしょ、どっこいしょ。
1時間かけて巨岩をゴロンゴロンと洞窟の入り口に突っ込んで塞いだボクを、尊敬の眼差しで眺めてくる2人。見ていないで少しは手伝ってほしい。これ以上手足に筋肉を付けたくないし。
流石にワイバーンに気付かれた!
ブレス、ブレスの連続放火事件!
しかし、巨岩は真っ赤になりながらも巣穴を塞ぐという任務を全うしてくれる。頑張れ、お岩さん。
「それで、どうするの? 」
「こっからどうするんだ? 」
「餓死するまで何日も待つのかしら? 」
「いや、1時間あれば大丈夫だと思うよ? 」
「あれか。洞窟壊して生き埋めか? 」
「階段が塞がったら大変だと思うよ? 」
コロコロの後のモヤモヤが分からず、2人がモヤモヤし始めたタイミングで、ボクは作業に移る。
「ランタン貸して下さい! 」
ボクは、ランタンの火を使い、鰻の蒲焼きの要領で、洞窟の中に煙を満たしていく。絶賛活躍中なのはトレントさんに貰った枝。予想の遥か上空を通過する程の異臭と煙を出すのね。もしかして何かの呪い? 足りなくなったらその辺の樹木を伐採しよう――。
30分後、ワイバーンの喚き声が洞窟内に木霊する。
巨岩に体当たりしていて苦しそうだけど、無駄無駄無駄!
1時間後、洞窟内は既に静寂に満ちている。
一酸化炭素中毒? 酸欠? どちらでも構いません!
あ、レベル上がった!?
勝ちました? 勝ちましたよ!
「これはさすがに――ワイバーンが可哀想だな! 」
「お宝? ステーキ? その岩、早く退かして! 」
「あれっ? 」
夢中で岩を押し込んだのは良いけど、引き出すのは凄く大変でした――。
隊長の剣で何とか岩と洞窟を削って、漸く人が通れるスペースを確保。剣の刃がどうなったのかは、見なかったことにする。
よし!
[上級魔結晶]と[ワイバーンの牙]をゲット!
肉はありませんでした――。
残念だけど、今は団子より花!
今のうちにステ振りしておきましょう。
なになに~?
攻撃、体力、器用が上がってる?
2ポイントは、迷わず魔力に注ぎ込む!
こうだっ!!
レベル:9 職業:見習い勇者
◆ステータス
攻撃:4.95(+4.50)
魔力:9.30
体力:3.25
防御:3.50(+1.50)
敏捷:4.10
器用:2.25
才能:3.00(ステータスポイント0)
洞窟の中には階段が見える。
そして、宝箱があった!
「宝箱発見! 」
「よし、久しぶりに俺の出番だな。ん、よし。大丈夫そうだ。開けるぞ! 」
「魔法書お願い! 」
「可愛い服かアクセサリーか食べ物きて! 」
・・・・・・
「2人とも、残念だったな! 」
「全く、期待外れだわ! 」
「けど、次こそは期待できるね! 」
宝箱に入っていたのはこの3つ。
[ミスリルの塊:魔力を増幅して蓄えたり通したりできる聖銀のインゴット]
[ミスリルの大盾:防御:3.20 特殊:魔法防御+5.0]
[ミスリルの鍵:迷宮内にある宝箱を開けることが出来る魔力を帯びた鍵]
「もう外は深夜だよね、さすがに疲れたでしょ。3時間くらい休憩してから3階に行こう! 」
「俺は疲れてないんだが? 進めるうちに進んでおこうぜ! 」
「私も全然大丈夫よ? 逆にテンション上がってきたからすぐ3階に行きたいわ! 」
あぅ~!
敵は身近にいた! この人たちは鬼か!
本気で徹夜ルートですね――。
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