異世界八険伝
16.ギルドマスター
ボクたちは今、ギルド2階にあるギルドマスターの部屋を訪れている。大陸全ギルドを統括する人物が、ここフィーネの町にいるらしい。
金銀細工が施された厳つい扉の前で、ミルフェ王女が代表して入室を請う。
「お待たせしました、ミルフェです」
「入室を許可する」
しばらくの沈黙の後、渋い声が返ってくる。
残念ながら美人エルフさんではないらしい。
扉を開けて、まずボクの視界に飛び込んできたのは、壁一面に飾られた槍や剣だった。そして、豪華絢爛な部屋の奥には大理石風の事務机があり、そこには赤髪を無造作に伸ばす武人然とした壮年男性が座っていた。
第一印象=眉毛が太い。
眉毛さんは、机上に積まれたの書類から目線だけを上げて、ボクたちに来客用ソファーに座るよう視線だけで指示を出してきた。
第二印象=態度悪い、威圧感凄い。
ボクたちはソファーに座る前に、横一列に並んでキチンと挨拶をする。
「ご無沙汰してます、ミルフェです」
「マスター、久し振りです」
「初めまして、リンネと申します」
眉毛が席を立ち、ボクたちの向かいに座る。
第三印象=背が高い・筋肉凄い。
「ミルフェ王女、ランゲイル久しいな。このチビが勇者か? 」
挨拶も早々に、ボクに向けて品定めするかのような視線を放ってきたこの赤髪――雰囲気が只者じゃない。
鑑定してみよう。
バチンッ!
「おいおい、いきなり鑑定かよ! 失礼な勇者様だな!! 」
「「えっ!! 」」
ボクたちは三者三様の、驚きと動揺の混ざりあった表情を浮かべる。鑑定できないのではなく、魔法で弾かれた感覚だった――。
「リンネちゃん、鑑定できるんだ? 今度――」
ミルフェちゃんが目を円くしてボクを見つめてくる。何かを言おうとした彼女を遮り、大声を張り上げるギルドマスター――。
「リンネと言ったか? 人を鑑定するなら当人から許可を取れ。それがこの世界のマナーだ! 」
「はい、失礼しました……」
初対面からお互いに印象最悪だね。
「いくつか質問させてくれ。王女と勇者はなぜ冒険者になりたいんだ? 必要ないだろ? 」
これはいわゆる圧迫面接なのか!?
ミルフェちゃんが俯き加減に呟く。
「私は身分を伏せて行動するのに便利だからです。王女としてだと動きづらいので――」
「一理あるな。だがな、その髪にそのローブ、変装しないとバレバレだろ。お陰でギルド内は祭り騒ぎだ」
確かに、綺麗なピンクのロングヘアーと司祭様っぽい白くて豪華なローブは一般市民とは一線を画している。目立ち過ぎだね!
「すみません。今後は気を付けます」
「ボクは、情報や装備が手に入ると聞きまして――」
「情報か。確かにギルドは魔物討伐のために勇者に協力する立場にある。だがな、1つだけ言わせてもらえば、俺等とお前等は目的が違う。手短に話そう、お前等を迷宮に入れる訳にはいかん」
「マスター! 今はそんな状況じゃ――」
「状況は分かっている! だがな、自治長の立場から絶対に許さんぞ」
自治長? フィーネの!?
ギルドマスターがフィーネの自治長!?
待ってよ――自治長ってのは市長さんみたいな立場だよね。ギルドマスターと言うのは大陸全土の冒険者の親玉、例えるなら多国籍企業のCEOだ。この人、二足草鞋の頂点さんだ。
2人は既にその事実を知っていたようだ。
後で聞いた話だと、フィーネというのは先代の長で、今の自治長兼ギルドマスター、ゴドルフィンの母だそうだ。
「迷宮が攻略されて役割を終えて消えてしまうと、町やギルドが儲からないということですか? 」
ミルフェちゃんが魔力を迸らせながら鋭い剣幕で単刀直入に言い放つ。初めて見た。これが彼女の――聖神教司祭級の力か。
「分かるだろう? 俺は、世界の存亡という見えない物よりも、すぐそこにある民の生活を守るべきなんだよ」
施政者ってそういうものなのかな。上に立つ者ほど、足下ばかりじゃなく遠い先、広い視野が必要だと思うんですが。
ミルフェちゃんも隊長さんも渋い顔で考え込んでしまった。
ここで立ち止まる訳にはいかないよ。何とか説得できないかな――。
「ボクは、いきなりこの世界に召還されました」
「事情は聞いている。何だ、同情してほしいのか? 」
「逆です。ボクが貴方に同情しています」
「何だと? 俺の顔はそんなに醜いかよ! 」
「自身の眉毛どころか、大切な人も身近な人も救えない、貴方を同情しているんです」
「少なくとも迷宮を維持することで、冒険者や民の生活は救えるだろ」
「魔物に怯えながら送る生活は、幸せですか? ボクにはそうは思えない。そんなの仮初めの、偽りの平和です」
「チビ、何が言いたい? 町アイドルにしてくれという自己アピールか? 」
「ふふっ、それも楽しそう! 私は応援するわ! 」
「ミルフェ王女、悪ノリせんでくれ」
「ごめんなさい――」
ミルフェちゃんのお陰で、嫌な空気が一変する。
「エリザベートさんから聞きましたよ。この世界の既に8割が魔物の支配下にあるということを」
「それは、事実だ――」
ギルドマスターは顔を顰めつつも、肯定する。
「お節介かもしれないけど、ボクは全員を救いたい! ギルドはグレートデスモス地境の調査をしましたか? ここが大陸の端だからと言って現実逃避していませんか? 生きることを諦めて今の幸せを謳歌するのか、生きることを諦めず幸せを求めて力を合わせるのか。よく考えてください」
かつて、文明を破壊し、人類を滅亡の一歩手前まで追い込んだ魔族の軍勢は、大陸中央のグレートデスモス地境から現れたと聞いている。恐らくその奥には魔王に与する勢力が跋扈しているはず。そんなことは、異世界人のボクなんかより彼の方が知っているはず。
「確かに、王都の城壁まで魔物が押し寄せてきたこともあったわ! 事態は一刻を争う。私たちには時間がない! 」
ミルフェちゃんがさらに危機感を煽ろうとするけど、ギルドマスターは動じない。
「だがな、1000年前の世界崩壊がまた起きると言い切れるか? お前等の語る未来が真実であるという保証はないんだよ」
「証明できますよ」
「なんだと? 」
ギルドマスターゴドルフィンは、初めてボクの目を見つめてきた。
★☆★
ボクはアイテムボックスから銀の召還石を取り出し、ギルドカウンターから鑑定結果表示用の魔道具を借りてきて、3人の前に置く。その機能を応用すれば、ボクがスキルで鑑定した内容を魔道具を使って転載することができるはず。
ボク自身、これを鑑定したことはないけど、もしも伝承が真実だとすれば、何らかの手掛かりを得られると思う。そして、その先には、なぜボクが召喚されたのかという理由も見えてくるはず――。
[鑑定眼!]
[召還石/銀:世界創造の主神、秩序神が創った唯一無二の神石。世界崩壊の100日前に輝くとされる。銀の召還石を与えられし勇者のみが7色の召還石の封印を破ることができる。全ての召還石が輝くとき、世界は聖なる神によって魔王から解放される]
「「……」」
鑑定は一か八かだったけど、予想以上に切羽詰まってますよこれ。100日とか、魔王とか、神とか――。
と言うか、召還されてから100日で魔王復活? 流れ的に、魔王と戦うのは神様ですよね? 、まさかボクじゃないですよね!? その前に、ボクは無神論者なんですけど。
蒼い顔が3つ並んでいる。
「世界を救うのか、滅ぼすのかを判断するのは、神様やボクではありません。ギルドマスターゴドルフィン、貴方です。もしボクの前に立ちはだかるのなら、押し通らせていただきます」
力強い後ろ盾(神様)を得たボクは、敢えて強気に攻める。こういうのは言ったもん勝ちだよね。
「ふぅ、子どもに強迫されるとはな。分かった――好きにしろ、いや、何としてでも迷宮を攻略してくれ。俺は、俺ができることをやる」
じっと目を閉じ、眉間に皺を寄せる彼。
堂々と1本に繋がった眉毛が、有言実行の意思の強さを表している感じだ。多分。
「盗賊団の首領に説教しただけじゃなく、今度はギルドマスターを強迫してるぜ、さすが勇者だな! 」
「時間がないわ、迷宮攻略は3日間ね! 明日から徹夜で篭るわよ! 」
マスターの前では借りてきた猫状態だったランゲイルさんも、入室前は緊張でガチガチだったミルフェちゃんも、今ではやる気に満ち溢れている様子。
「ロンダルシア大陸に存する冒険者ギルド全10支部、その全てが勇者に協力すると約束しよう。魔王とか神とか――全くもって信じられん話だが、鑑定の結果に嘘偽りはあり得ん。上に立つ者が信じないことには何も始まらん。俺は、俺の判断を信じる」
力強く語るギルドマスターを無視し、ボクは盛んにミルフェちゃんと隊長さんにアイコンタクトを繰り返す。頼む、通じて!
ダメでした――。
忙しくなったからと退室を指示された後で、ボクは2人に愚痴らざるを得なかった。
「どうして魔法書を融通してくれと言ってくれなかったんですか! 空気的にボクには切り出せなかったのに! 」
「あれってそういう意味? 私は、お腹が空いたから早く帰ろうって合図かと思ってたわ――」
「俺は、リンネちゃんがとうとう俺に惚れたのかと思ってたぜ――」
ダメだ、このコンビ。
冒険者ギルドを出たボクたちは、護衛の方々が予約してくれた宿に直行。
ミルフェちゃんと仲良くお風呂に入り、同じベッドで寝ました。
王女様には完敗でした。アユナちゃんには圧勝したのに――そうか、きっと食事の違いなんだよ!
でも、今夜は素敵な夢が見られそうです。
ちなみに、男性5人はまとめて1部屋に鮨詰め。
隊長さんが王女の護衛を理由にしつこく同室をせがんできたけれど、新しい武器がさっそく役に立ちました。
さて、明日も朝6時出発だ。
いざ迷宮へ!
金銀細工が施された厳つい扉の前で、ミルフェ王女が代表して入室を請う。
「お待たせしました、ミルフェです」
「入室を許可する」
しばらくの沈黙の後、渋い声が返ってくる。
残念ながら美人エルフさんではないらしい。
扉を開けて、まずボクの視界に飛び込んできたのは、壁一面に飾られた槍や剣だった。そして、豪華絢爛な部屋の奥には大理石風の事務机があり、そこには赤髪を無造作に伸ばす武人然とした壮年男性が座っていた。
第一印象=眉毛が太い。
眉毛さんは、机上に積まれたの書類から目線だけを上げて、ボクたちに来客用ソファーに座るよう視線だけで指示を出してきた。
第二印象=態度悪い、威圧感凄い。
ボクたちはソファーに座る前に、横一列に並んでキチンと挨拶をする。
「ご無沙汰してます、ミルフェです」
「マスター、久し振りです」
「初めまして、リンネと申します」
眉毛が席を立ち、ボクたちの向かいに座る。
第三印象=背が高い・筋肉凄い。
「ミルフェ王女、ランゲイル久しいな。このチビが勇者か? 」
挨拶も早々に、ボクに向けて品定めするかのような視線を放ってきたこの赤髪――雰囲気が只者じゃない。
鑑定してみよう。
バチンッ!
「おいおい、いきなり鑑定かよ! 失礼な勇者様だな!! 」
「「えっ!! 」」
ボクたちは三者三様の、驚きと動揺の混ざりあった表情を浮かべる。鑑定できないのではなく、魔法で弾かれた感覚だった――。
「リンネちゃん、鑑定できるんだ? 今度――」
ミルフェちゃんが目を円くしてボクを見つめてくる。何かを言おうとした彼女を遮り、大声を張り上げるギルドマスター――。
「リンネと言ったか? 人を鑑定するなら当人から許可を取れ。それがこの世界のマナーだ! 」
「はい、失礼しました……」
初対面からお互いに印象最悪だね。
「いくつか質問させてくれ。王女と勇者はなぜ冒険者になりたいんだ? 必要ないだろ? 」
これはいわゆる圧迫面接なのか!?
ミルフェちゃんが俯き加減に呟く。
「私は身分を伏せて行動するのに便利だからです。王女としてだと動きづらいので――」
「一理あるな。だがな、その髪にそのローブ、変装しないとバレバレだろ。お陰でギルド内は祭り騒ぎだ」
確かに、綺麗なピンクのロングヘアーと司祭様っぽい白くて豪華なローブは一般市民とは一線を画している。目立ち過ぎだね!
「すみません。今後は気を付けます」
「ボクは、情報や装備が手に入ると聞きまして――」
「情報か。確かにギルドは魔物討伐のために勇者に協力する立場にある。だがな、1つだけ言わせてもらえば、俺等とお前等は目的が違う。手短に話そう、お前等を迷宮に入れる訳にはいかん」
「マスター! 今はそんな状況じゃ――」
「状況は分かっている! だがな、自治長の立場から絶対に許さんぞ」
自治長? フィーネの!?
ギルドマスターがフィーネの自治長!?
待ってよ――自治長ってのは市長さんみたいな立場だよね。ギルドマスターと言うのは大陸全土の冒険者の親玉、例えるなら多国籍企業のCEOだ。この人、二足草鞋の頂点さんだ。
2人は既にその事実を知っていたようだ。
後で聞いた話だと、フィーネというのは先代の長で、今の自治長兼ギルドマスター、ゴドルフィンの母だそうだ。
「迷宮が攻略されて役割を終えて消えてしまうと、町やギルドが儲からないということですか? 」
ミルフェちゃんが魔力を迸らせながら鋭い剣幕で単刀直入に言い放つ。初めて見た。これが彼女の――聖神教司祭級の力か。
「分かるだろう? 俺は、世界の存亡という見えない物よりも、すぐそこにある民の生活を守るべきなんだよ」
施政者ってそういうものなのかな。上に立つ者ほど、足下ばかりじゃなく遠い先、広い視野が必要だと思うんですが。
ミルフェちゃんも隊長さんも渋い顔で考え込んでしまった。
ここで立ち止まる訳にはいかないよ。何とか説得できないかな――。
「ボクは、いきなりこの世界に召還されました」
「事情は聞いている。何だ、同情してほしいのか? 」
「逆です。ボクが貴方に同情しています」
「何だと? 俺の顔はそんなに醜いかよ! 」
「自身の眉毛どころか、大切な人も身近な人も救えない、貴方を同情しているんです」
「少なくとも迷宮を維持することで、冒険者や民の生活は救えるだろ」
「魔物に怯えながら送る生活は、幸せですか? ボクにはそうは思えない。そんなの仮初めの、偽りの平和です」
「チビ、何が言いたい? 町アイドルにしてくれという自己アピールか? 」
「ふふっ、それも楽しそう! 私は応援するわ! 」
「ミルフェ王女、悪ノリせんでくれ」
「ごめんなさい――」
ミルフェちゃんのお陰で、嫌な空気が一変する。
「エリザベートさんから聞きましたよ。この世界の既に8割が魔物の支配下にあるということを」
「それは、事実だ――」
ギルドマスターは顔を顰めつつも、肯定する。
「お節介かもしれないけど、ボクは全員を救いたい! ギルドはグレートデスモス地境の調査をしましたか? ここが大陸の端だからと言って現実逃避していませんか? 生きることを諦めて今の幸せを謳歌するのか、生きることを諦めず幸せを求めて力を合わせるのか。よく考えてください」
かつて、文明を破壊し、人類を滅亡の一歩手前まで追い込んだ魔族の軍勢は、大陸中央のグレートデスモス地境から現れたと聞いている。恐らくその奥には魔王に与する勢力が跋扈しているはず。そんなことは、異世界人のボクなんかより彼の方が知っているはず。
「確かに、王都の城壁まで魔物が押し寄せてきたこともあったわ! 事態は一刻を争う。私たちには時間がない! 」
ミルフェちゃんがさらに危機感を煽ろうとするけど、ギルドマスターは動じない。
「だがな、1000年前の世界崩壊がまた起きると言い切れるか? お前等の語る未来が真実であるという保証はないんだよ」
「証明できますよ」
「なんだと? 」
ギルドマスターゴドルフィンは、初めてボクの目を見つめてきた。
★☆★
ボクはアイテムボックスから銀の召還石を取り出し、ギルドカウンターから鑑定結果表示用の魔道具を借りてきて、3人の前に置く。その機能を応用すれば、ボクがスキルで鑑定した内容を魔道具を使って転載することができるはず。
ボク自身、これを鑑定したことはないけど、もしも伝承が真実だとすれば、何らかの手掛かりを得られると思う。そして、その先には、なぜボクが召喚されたのかという理由も見えてくるはず――。
[鑑定眼!]
[召還石/銀:世界創造の主神、秩序神が創った唯一無二の神石。世界崩壊の100日前に輝くとされる。銀の召還石を与えられし勇者のみが7色の召還石の封印を破ることができる。全ての召還石が輝くとき、世界は聖なる神によって魔王から解放される]
「「……」」
鑑定は一か八かだったけど、予想以上に切羽詰まってますよこれ。100日とか、魔王とか、神とか――。
と言うか、召還されてから100日で魔王復活? 流れ的に、魔王と戦うのは神様ですよね? 、まさかボクじゃないですよね!? その前に、ボクは無神論者なんですけど。
蒼い顔が3つ並んでいる。
「世界を救うのか、滅ぼすのかを判断するのは、神様やボクではありません。ギルドマスターゴドルフィン、貴方です。もしボクの前に立ちはだかるのなら、押し通らせていただきます」
力強い後ろ盾(神様)を得たボクは、敢えて強気に攻める。こういうのは言ったもん勝ちだよね。
「ふぅ、子どもに強迫されるとはな。分かった――好きにしろ、いや、何としてでも迷宮を攻略してくれ。俺は、俺ができることをやる」
じっと目を閉じ、眉間に皺を寄せる彼。
堂々と1本に繋がった眉毛が、有言実行の意思の強さを表している感じだ。多分。
「盗賊団の首領に説教しただけじゃなく、今度はギルドマスターを強迫してるぜ、さすが勇者だな! 」
「時間がないわ、迷宮攻略は3日間ね! 明日から徹夜で篭るわよ! 」
マスターの前では借りてきた猫状態だったランゲイルさんも、入室前は緊張でガチガチだったミルフェちゃんも、今ではやる気に満ち溢れている様子。
「ロンダルシア大陸に存する冒険者ギルド全10支部、その全てが勇者に協力すると約束しよう。魔王とか神とか――全くもって信じられん話だが、鑑定の結果に嘘偽りはあり得ん。上に立つ者が信じないことには何も始まらん。俺は、俺の判断を信じる」
力強く語るギルドマスターを無視し、ボクは盛んにミルフェちゃんと隊長さんにアイコンタクトを繰り返す。頼む、通じて!
ダメでした――。
忙しくなったからと退室を指示された後で、ボクは2人に愚痴らざるを得なかった。
「どうして魔法書を融通してくれと言ってくれなかったんですか! 空気的にボクには切り出せなかったのに! 」
「あれってそういう意味? 私は、お腹が空いたから早く帰ろうって合図かと思ってたわ――」
「俺は、リンネちゃんがとうとう俺に惚れたのかと思ってたぜ――」
ダメだ、このコンビ。
冒険者ギルドを出たボクたちは、護衛の方々が予約してくれた宿に直行。
ミルフェちゃんと仲良くお風呂に入り、同じベッドで寝ました。
王女様には完敗でした。アユナちゃんには圧勝したのに――そうか、きっと食事の違いなんだよ!
でも、今夜は素敵な夢が見られそうです。
ちなみに、男性5人はまとめて1部屋に鮨詰め。
隊長さんが王女の護衛を理由にしつこく同室をせがんできたけれど、新しい武器がさっそく役に立ちました。
さて、明日も朝6時出発だ。
いざ迷宮へ!
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