音楽初心者の僕がゲームの世界で歌姫とバンドを組んだら
Secret Track[R].2 楽器と頭痛
あまりに突然の誘いに対して、私は少し動揺はしたものの、それを受け入れる事はできた。
「こ、こんな私でよければ組んでもいいですけど、本当にいいんですか?」
「私、その、VRMMOを今日から始めたばかりなので、知らない事ばかりで不安なんです。ですから、優しそうな人を見つけて声をかけさせてもらったんですが、駄目でしたでしょうか?」
「だ、駄目だなんてそんなことはありませんよ」
涙目でこちらを見てくる少女に私はたじろいでしまう。初めてのゲームで誰もが不安になるのは私にも理解できるし、彼女の行動も不思議ではない。
(私も最初は優しそうな人を探していたりしていたっけ)
それはまるで転校してきて初日の転校生の気分。でもそれを乗り越えることさえ出来れば、その先はきっと失敗しない。何事も始まりが肝心。それをこの子は乗り越えて、私に話しかけてきてくれた。
それを断る理由なんて一つもない。
「じゃ、じゃあいいんですか? 私と組んでいただいても」
「勿論ですよ。丁度私もバンドのメンバーを探していたところですから」
「やったぁ!」
まるで本当に少女のように喜ぶ女の子。そんな彼女の様子を見て、私は思わず笑みをこぼしてしまう。
(なんか昔の自分を見ているみたいで、少し懐かしい)
懐かしいからこそ、彼女をこのゲームで初めてできた友達として大切にしていきたいと思った。
「あ、そういえば私の自己紹介がまだでしたね。私はリアラと言います」
「えっと、わ、わ、私はスズハです。って、名前を見れば分かりますよね、すいません」
「そんな謝らないでください、私の方から自己紹介したのですから:
自己紹介をするだけであたふたしてしまうスズハさん。別に気にしていない事まで謝られてしまったら、こちらまで気を使ってしまう。だけど何故だかそれが悪い気はしなかった。むしろそれすらも彼女らしいと思ってしまった。
そう、まるでスズハさんは私の妹みたいだった。
「ふふ」
「ど、どうしたんですか? 私何かおかしい事でも言いましたか?」
「いいえ、そうじゃないんです。スズハさんですね、βテストの間ですけどもよろしくおねがいしますね」
「は、はい! こちらこそよろしくお願いします、リアラさん」
こうしてβテストの三日間の短い間ではあるけど、私に小さな友達ができた。
■□■□■□
とりあえすお互いにこのゲームは初心者なので、探り探りで必要なものを店で買い物をし始めた。
「スズハさんはどの楽器を使うつもりですか?」
「と、とりあえずキーボードもあるらしいので、それにしようと思っているんですよ。リアラさんはどうするんですか?」
「私は何となくですけどボーカルを選ぼうと思うんです」
「ボーカルですか」
ログインの際に起きたあれが本当に影響するかは分からないけど、とりあえずそれに従う事にした。果たしてそこから鬼が出るか蛇が出るかは分からないけど、それ以外の道を考えられることはできなかった。
「歌が得意なんですか?」
「べつにそういう訳ではないのですが、楽器を弾ける気がしないので」
「それなら私と練習しましょうよ! 初心者同士練習すればきっとうまくいきますよ」
「そ、そうでしょうか」
先ほどまでとは立場が真逆で、今度はスズハさんが私に対してかぶせぎみに言ってきた。私としては一応歌を歌うほうが幾分かましだと思っているけど、楽器を練習してみるのも悪くないのかもしれない。
「私はどんな楽器が似合いますかね」
「リアラさんならどれでも似合うと思いますよ私は。例えばドラムとか」
「どこをどう見たらその結論に至るのか詳しく聞かせてくださいませんか?」
その後私とスズハさんはワイワイしながら私に似合いそうな楽器を探した。でも二時間ほど悩んだ結果、それらしい結論に至ることはできず、最終的に私はボーカルを務めることになった。
「そうなると次に必要人ってくるのは……」
「もう一人のメンバーですよね」
キーボードとボーカルだけではバンドが成り立つとは思えないので、私たちは店を出てもう一人のメンバーを探すことにした。
「もう一人といってももう二時間は時間が経っていますし、ほとんどの方がバンドを組んでしまっているんじゃないでしょうか」
「うーん、確かにそうかもしれませんけど。あ、リアラさん、あそこに一人ぼっちの方が」
失礼なことを言いながらスズハさんは広場のベンチを指さす。確かにそこには一人でポツンと座っている女性がいるけど、一人ぼっちって言い方は少し可哀想な気がする。
「行ってみましょうリアラさん」
「あ、ちょとスズハさん、まだ一人ぼっちって決まったわけでは……」
私が引き止める声を無視してその女性に近づいていくスズハさん。私はやれやれと思いながらその後を追おうとする。
「うっ……」
だけど突然私は謎の頭痛に襲われ、一瞬足を止めてしまう。あまりの痛さにその場からしばらく動けなくなるが、頭痛はすぐに消え去った。
「今のは……何?」
今思えばこの時から私に異変が起きていたのかもしれない。
「こ、こんな私でよければ組んでもいいですけど、本当にいいんですか?」
「私、その、VRMMOを今日から始めたばかりなので、知らない事ばかりで不安なんです。ですから、優しそうな人を見つけて声をかけさせてもらったんですが、駄目でしたでしょうか?」
「だ、駄目だなんてそんなことはありませんよ」
涙目でこちらを見てくる少女に私はたじろいでしまう。初めてのゲームで誰もが不安になるのは私にも理解できるし、彼女の行動も不思議ではない。
(私も最初は優しそうな人を探していたりしていたっけ)
それはまるで転校してきて初日の転校生の気分。でもそれを乗り越えることさえ出来れば、その先はきっと失敗しない。何事も始まりが肝心。それをこの子は乗り越えて、私に話しかけてきてくれた。
それを断る理由なんて一つもない。
「じゃ、じゃあいいんですか? 私と組んでいただいても」
「勿論ですよ。丁度私もバンドのメンバーを探していたところですから」
「やったぁ!」
まるで本当に少女のように喜ぶ女の子。そんな彼女の様子を見て、私は思わず笑みをこぼしてしまう。
(なんか昔の自分を見ているみたいで、少し懐かしい)
懐かしいからこそ、彼女をこのゲームで初めてできた友達として大切にしていきたいと思った。
「あ、そういえば私の自己紹介がまだでしたね。私はリアラと言います」
「えっと、わ、わ、私はスズハです。って、名前を見れば分かりますよね、すいません」
「そんな謝らないでください、私の方から自己紹介したのですから:
自己紹介をするだけであたふたしてしまうスズハさん。別に気にしていない事まで謝られてしまったら、こちらまで気を使ってしまう。だけど何故だかそれが悪い気はしなかった。むしろそれすらも彼女らしいと思ってしまった。
そう、まるでスズハさんは私の妹みたいだった。
「ふふ」
「ど、どうしたんですか? 私何かおかしい事でも言いましたか?」
「いいえ、そうじゃないんです。スズハさんですね、βテストの間ですけどもよろしくおねがいしますね」
「は、はい! こちらこそよろしくお願いします、リアラさん」
こうしてβテストの三日間の短い間ではあるけど、私に小さな友達ができた。
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「スズハさんはどの楽器を使うつもりですか?」
「と、とりあえずキーボードもあるらしいので、それにしようと思っているんですよ。リアラさんはどうするんですか?」
「私は何となくですけどボーカルを選ぼうと思うんです」
「ボーカルですか」
ログインの際に起きたあれが本当に影響するかは分からないけど、とりあえずそれに従う事にした。果たしてそこから鬼が出るか蛇が出るかは分からないけど、それ以外の道を考えられることはできなかった。
「歌が得意なんですか?」
「べつにそういう訳ではないのですが、楽器を弾ける気がしないので」
「それなら私と練習しましょうよ! 初心者同士練習すればきっとうまくいきますよ」
「そ、そうでしょうか」
先ほどまでとは立場が真逆で、今度はスズハさんが私に対してかぶせぎみに言ってきた。私としては一応歌を歌うほうが幾分かましだと思っているけど、楽器を練習してみるのも悪くないのかもしれない。
「私はどんな楽器が似合いますかね」
「リアラさんならどれでも似合うと思いますよ私は。例えばドラムとか」
「どこをどう見たらその結論に至るのか詳しく聞かせてくださいませんか?」
その後私とスズハさんはワイワイしながら私に似合いそうな楽器を探した。でも二時間ほど悩んだ結果、それらしい結論に至ることはできず、最終的に私はボーカルを務めることになった。
「そうなると次に必要人ってくるのは……」
「もう一人のメンバーですよね」
キーボードとボーカルだけではバンドが成り立つとは思えないので、私たちは店を出てもう一人のメンバーを探すことにした。
「もう一人といってももう二時間は時間が経っていますし、ほとんどの方がバンドを組んでしまっているんじゃないでしょうか」
「うーん、確かにそうかもしれませんけど。あ、リアラさん、あそこに一人ぼっちの方が」
失礼なことを言いながらスズハさんは広場のベンチを指さす。確かにそこには一人でポツンと座っている女性がいるけど、一人ぼっちって言い方は少し可哀想な気がする。
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私が引き止める声を無視してその女性に近づいていくスズハさん。私はやれやれと思いながらその後を追おうとする。
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