音楽初心者の僕がゲームの世界で歌姫とバンドを組んだら
Track.38 歌姫と二人で 後編
少々重苦しい空気がしばらく続いてしまったものの、リアラさんのオススメの楽譜をこれまたリアラさんに買ってもらってしまった。さすがにこれ以上リアラさんに買ってもらったばかりなのは申し訳なくなり、ご飯だけは僕が奢らせてもらうことになった。
「そういえばリアラさんてどんな食べ物が好きなんですか? あまり好き嫌いないように見えますけど」
「私は基本何でも食べれますよ。カオル君の方はどうなんですか?」
「僕も殆ど好き嫌いはないようなものですよ。あ、料理がきましたね」
僕とリアラさんがやって来た店は、この街でもそこそこ有名なお店。僕も以前に一度食べに来た事はあったのだけれど、絶品だったのは覚えている。おまけにその料理を低価格で提供されているというのだから、まだお金の少ない僕にとってもリーズナブルだ。
「ここのお店はすごく美味しいですよね。現実の世界の料理と全く変わらないくらいですよ」
「私もここのお店は何度も訪れていたんです。いつかはカオル君とも来てみたかったんです」
「あ、そ、そうなんですか」
何気ない言葉に僕はドキッとしてしまう。勿論僕に限った話ではないのは理解しているけど、来てみたかったまで言われたら少しはドキドキしてしまう。
(というか気づかなかったけど……)
僕達どう見てもデートをしているようにしか見えないよね。
「ああ美味しい。私すごく幸せです」
そんな僕をよそに、一口料理を食べてすごく幸せそうな顔を見せるリアラさん。この顔だけ見ても、こちらまでもが幸せになってくる気分だ。
「うん、やっぱりここで食べにくるのは正解でしたね」
「はい」
この幸せな時間がいつまでも続けばいいのにとさえ僕は思ってしまった。勿論時間は限られているからそれは難しい話なのかもしれないけど、もしリアラさんがちゃんと現実の世界にいて、そこで出会える可能性が少しでもあれば、きっと僕はもっと幸せなんだろう。
(ここまで考えてしまうのって、やっぱり僕は……)
あの出会った時からリアラさんに恋していたんだ。
■□■□■□
お昼を食べ終えた後は、特にどこかの店に入ることはなく、二人で街を歩いた。その間は他愛のない会話ばかりしていたけど、その時間は僕にとってはとても心地よいもので、時間が経つのもつい忘れてしまうくらいだった。
「気がつけばもうこんな時間ですね」
ふとリアラさんが呟く。時計を見たら間も無く夕刻を迎える時間だった。
「カオル君、そろそろ戻りますか」
「そうですね。ナナミ達もストーカーに飽きてきたからですし」
わざと後ろに視線を向けながら言う。こんだけの時間追跡されていたら、気がつかない方がおかしい。というか最初から付いてきているのは僕も気づいていた。
「え? ナナミさん達どこかにいたんですか?」
「もしかしてリアラさん……気づいていなかったんですか?」
「はい。全く」
「逆によく気づきませんでしたね……」
あからさまだったというのに。
「じゃあそろそろリアラさんの家に戻りますか」
「あ、ちょっとその前に少しだけ時間をくれませんか?」
「別に急いでないのでいいですけど。どうしたんですか突然」
「少し人気がない場所へ行きましょう」
僕の腕を掴んで、どこかへ連れて行こうとするリアラさん。何かを読み取ったのか、後ろの二人が付いて来る気配がない。つまり今こそ正真正銘の二人きり。
「カオル君はこの一ヶ月半、私と一緒にバンドを組んでどう思いましたか?」
歩きながらリアラさんが話しかけてくる。
「どうって、それは勿論リアラさんと組めてよかったと思っていますよ。あの日から色々変わりましたし」
「確かにこの一ヶ月半はとても濃い日々ばかりでした。カオル君と出会って、沢山のことをお話しして。私はすごく幸せでした。今日この日も二人で出かけることが出来て」
そしてリアラさんは足を止める。やって来たのは街から少し離れた場所。人気もあまりないしここなら二人で話をするにはうってつけの場所ではあるけど。先程からリアラさんの様子が少しだけ変だ。
「あの、リアラさん?」
「幸せだから私はカオル君に渡しておきたいものがあるんです」
そう言ってリアラさんが僕に渡して来たものは……。
「え? これ」
いつしか僕が受け取った箱の中身に入っていたあの花冠とほぼ同じに近いものだった。
「カオル君、今の内に言っておきます。これ以上私の事に、いえ、歌姫について何かを知ろうとするのはやめてください」
だけどそれと一緒に添えられた言葉は僕を拒絶する意味での言葉だった。
「どうしてそれをリアラさんが……あっ」
「やっぱりそうだったんですねカオル君。それならカオル君はその花冠の意味も分かっているはずです。だからもうこれ以上はやめてください。どう望んでも結果は何一つ変わらないんですから」
結果は何一つ変わらない? この花冠に添えられていた言葉は違う。あそこには見つけて欲しいとだけ書いてあった。それならば、拒絶なんかとは遠くかけ離れている。
「リアラさん、僕は」
「さあ要は済みましたから、戻りましょうか」
僕の次の言葉を聞く前にリアラさんはそそくさと歩き出してしまう。僕はその後に言葉をかけることができなかった。
(リアラさんが望んでいるのは本当は……)
こんな言葉じゃないはずだ。
「待ってください!」
「そういえばリアラさんてどんな食べ物が好きなんですか? あまり好き嫌いないように見えますけど」
「私は基本何でも食べれますよ。カオル君の方はどうなんですか?」
「僕も殆ど好き嫌いはないようなものですよ。あ、料理がきましたね」
僕とリアラさんがやって来た店は、この街でもそこそこ有名なお店。僕も以前に一度食べに来た事はあったのだけれど、絶品だったのは覚えている。おまけにその料理を低価格で提供されているというのだから、まだお金の少ない僕にとってもリーズナブルだ。
「ここのお店はすごく美味しいですよね。現実の世界の料理と全く変わらないくらいですよ」
「私もここのお店は何度も訪れていたんです。いつかはカオル君とも来てみたかったんです」
「あ、そ、そうなんですか」
何気ない言葉に僕はドキッとしてしまう。勿論僕に限った話ではないのは理解しているけど、来てみたかったまで言われたら少しはドキドキしてしまう。
(というか気づかなかったけど……)
僕達どう見てもデートをしているようにしか見えないよね。
「ああ美味しい。私すごく幸せです」
そんな僕をよそに、一口料理を食べてすごく幸せそうな顔を見せるリアラさん。この顔だけ見ても、こちらまでもが幸せになってくる気分だ。
「うん、やっぱりここで食べにくるのは正解でしたね」
「はい」
この幸せな時間がいつまでも続けばいいのにとさえ僕は思ってしまった。勿論時間は限られているからそれは難しい話なのかもしれないけど、もしリアラさんがちゃんと現実の世界にいて、そこで出会える可能性が少しでもあれば、きっと僕はもっと幸せなんだろう。
(ここまで考えてしまうのって、やっぱり僕は……)
あの出会った時からリアラさんに恋していたんだ。
■□■□■□
お昼を食べ終えた後は、特にどこかの店に入ることはなく、二人で街を歩いた。その間は他愛のない会話ばかりしていたけど、その時間は僕にとってはとても心地よいもので、時間が経つのもつい忘れてしまうくらいだった。
「気がつけばもうこんな時間ですね」
ふとリアラさんが呟く。時計を見たら間も無く夕刻を迎える時間だった。
「カオル君、そろそろ戻りますか」
「そうですね。ナナミ達もストーカーに飽きてきたからですし」
わざと後ろに視線を向けながら言う。こんだけの時間追跡されていたら、気がつかない方がおかしい。というか最初から付いてきているのは僕も気づいていた。
「え? ナナミさん達どこかにいたんですか?」
「もしかしてリアラさん……気づいていなかったんですか?」
「はい。全く」
「逆によく気づきませんでしたね……」
あからさまだったというのに。
「じゃあそろそろリアラさんの家に戻りますか」
「あ、ちょっとその前に少しだけ時間をくれませんか?」
「別に急いでないのでいいですけど。どうしたんですか突然」
「少し人気がない場所へ行きましょう」
僕の腕を掴んで、どこかへ連れて行こうとするリアラさん。何かを読み取ったのか、後ろの二人が付いて来る気配がない。つまり今こそ正真正銘の二人きり。
「カオル君はこの一ヶ月半、私と一緒にバンドを組んでどう思いましたか?」
歩きながらリアラさんが話しかけてくる。
「どうって、それは勿論リアラさんと組めてよかったと思っていますよ。あの日から色々変わりましたし」
「確かにこの一ヶ月半はとても濃い日々ばかりでした。カオル君と出会って、沢山のことをお話しして。私はすごく幸せでした。今日この日も二人で出かけることが出来て」
そしてリアラさんは足を止める。やって来たのは街から少し離れた場所。人気もあまりないしここなら二人で話をするにはうってつけの場所ではあるけど。先程からリアラさんの様子が少しだけ変だ。
「あの、リアラさん?」
「幸せだから私はカオル君に渡しておきたいものがあるんです」
そう言ってリアラさんが僕に渡して来たものは……。
「え? これ」
いつしか僕が受け取った箱の中身に入っていたあの花冠とほぼ同じに近いものだった。
「カオル君、今の内に言っておきます。これ以上私の事に、いえ、歌姫について何かを知ろうとするのはやめてください」
だけどそれと一緒に添えられた言葉は僕を拒絶する意味での言葉だった。
「どうしてそれをリアラさんが……あっ」
「やっぱりそうだったんですねカオル君。それならカオル君はその花冠の意味も分かっているはずです。だからもうこれ以上はやめてください。どう望んでも結果は何一つ変わらないんですから」
結果は何一つ変わらない? この花冠に添えられていた言葉は違う。あそこには見つけて欲しいとだけ書いてあった。それならば、拒絶なんかとは遠くかけ離れている。
「リアラさん、僕は」
「さあ要は済みましたから、戻りましょうか」
僕の次の言葉を聞く前にリアラさんはそそくさと歩き出してしまう。僕はその後に言葉をかけることができなかった。
(リアラさんが望んでいるのは本当は……)
こんな言葉じゃないはずだ。
「待ってください!」
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