音楽初心者の僕がゲームの世界で歌姫とバンドを組んだら
Track.05 ゲームの世界の自分 現実の自分
偶然なんて起きないと思っていたが、まさかこんな所で噂のベーシストに出会えるなんて思ってもいなかった。
「あ、あのどうかしたん?」
「え、あ、えっと、その……ですね」
一応聞いておくべきなのだろうか? 彼女が噂のベーシストなのかを。ていうか気のせいかもしれないけど、彼女口調おかしくないか?
「用がないなら、うちは去らせてもらうけど」
「あ、ちょっと待って」
な、何とかして彼女を引き止めなければ。勘違いだったら恥ずかしいけど、ここは勇気を振り絞って……。
「ぼ、僕達とバンド組んでくれませんか?」
「へ?」
あ、早まりすぎた。
■□■□■□
「何やそういう事やったんなら、先に言ってくれや」
「い、いや、人間違いだったら失礼だと思って……」
一通り事情を説明すると、どうやら彼女は理解してくれたらしく、先程までとはうって変わってご機嫌になった。ていうかもしかしてこの人、関西人?
「まあ確かにそんなこと聞いて、間違いだったら失礼やもんな。今回の場合は正解で助かりよったけど」
「正解って、じゃあ今僕が言ったことは間違いじゃないの?」
「せやな。天才とまでは言えへんけど、その写真はうちやな」
「す、すごい。まさか本当に会えるなんて……」
「まあ、そんなにログインしていなかったから、噂の範囲に留まっていたのもその影響かもしれへんな」
「へえ、じゃあこの写真は本当に?」
「せやで。うちはナナミ言うんや。よろしゅうな」
「僕はカオル。よろしくね」
お互いの軽い自己紹介を済ませ、例のニュースの写真が彼女であることを再確認したところで、話を元に戻す。
「さっきあんた僕達と、って言ってたけど誰かバンドメンバーおるん?」
「うん。実はもう一人いるんだけど、今はメンバー探しで別行動中なんだ」
「へえ、じゃあついでに呼んできてもらえへん? 仮にバンドに入るなら、最低限顔くらい知っておかへんと」
「そ、そうだよね。じゃあ今から呼ぶから」
彼女との連絡の取り方も予め教えてもらっているので、すぐにリアラさんと連絡を取る。僕が見つけたことに彼女は驚いたが、すぐに向かうと言って連絡を切った
そして彼女を待つこと五分後、ナナミさんと適当に雑談しているとリアラさんが到着した。
「ごめんなさいカオル君。で、そちらにいる方がもしかして……」
「あんたか。彼のバンドメンバーは」
「はい。リアラって言います」
「うちはナナミや。今後お世話になると思うから、よろしゅうな」
「お世話になるって、じゃあ……」
「当たり前や。誘われておいて断れるわけないやろ。しかもなかなかのイケメンやし」
「ぼ、僕はそんなんじゃないですよ」
「おお、焦っとる焦っとる」
「からかわないでよ!」
「お二人はいつの間にそんなに仲良くなられたんですか?」
というわけで何というか偶然ばかりだけど、僕のバンドに新たにベーシストのナナミが加入。基本バンドは四人ということで、残りはあと一人。誰が入るのか、少し楽しみになった僕であった。
■□■□■□
その日の晩、ゲームからログアウトした僕は、夕食を買うために外出した。一応親の元で生活しているのだが、二人共仕事ばかりでほとんど家にいない事が多い。実際もう二ヶ月くらいは会ってない気がする。
「うう、ちょっと冷えるな……」
ようやく冬を抜けたといってもまだ四月。夜はまだまだ寒い。その中でコンビニで適当な買い物を済ませた僕は、そのまま家に帰ろうとした。けどその帰り道……。
「よっ、久しぶりだな薫」
会いたくなかった人物に僕は出会ってしまった。もう一人の親友の竜介だ。
「竜介、どうしてこんな所に?」
「たまたまだよ。それよりお前こそ珍しいな外に出るなんて」
「食料が尽きたからね」
「家の物食えばいいんじゃねえの?」
「それだけはいちおうしないようにしてるんだよ」
こうして竜介と会うのはどれくらい振りだろうか? 正直ハッキリと覚えていない。もしかしてあの事件以来かも知れない。
「じゃあ僕は、もう帰るから」
あまり会いたくない相手なので、そそくさと帰ろうとするが、それを竜介は引き止めた。
「ちょっと待てよ薫」
後ろから肩を掴まれるが、僕は竜介に背を向けたままの状態で会話を続ける。
「何?」
「お前昨日千由里と電話したらしいな」
「まあ、向こうからかけてきただけだけど」
「どっちだって別に構わない。そんな事よりお前、その時に俺達には関係のないことだって言ったそうだな」
「うん、まあ言ったけど」
だからどうしたって話だ。これは僕が決めた道なんだから、二人には関係ない。
「どうしてそんな事言ったんだ? 俺達はお前の味方なのに、どうして関係ないなんて言えるんだよ」
「味方だったら……どうしてもっと早く気づいてくれなかったんだよ。僕がもうこんなにもボロボロだったのに」
「それはお前がちゃんと俺達に相談してくれなかったからだろ!」
「じゃあ聞くけど、もっと早く相談していたら何とかなった? 僕が知らないところで二人は付き合っていたくせに、それをずっと僕に黙っていたくせに……。何とかしてくれるとは思えなかったよ」
「お前まさかあの話を……」
「だからごめん。もう僕を一人にして!」
無理やり手を振り払って、そのまま僕は走り出した。何で二日連続でこんな思いをしなきゃいけないんだ僕は。
(何が信じてだよ。僕を裏切ったくせに)
「あ、あのどうかしたん?」
「え、あ、えっと、その……ですね」
一応聞いておくべきなのだろうか? 彼女が噂のベーシストなのかを。ていうか気のせいかもしれないけど、彼女口調おかしくないか?
「用がないなら、うちは去らせてもらうけど」
「あ、ちょっと待って」
な、何とかして彼女を引き止めなければ。勘違いだったら恥ずかしいけど、ここは勇気を振り絞って……。
「ぼ、僕達とバンド組んでくれませんか?」
「へ?」
あ、早まりすぎた。
■□■□■□
「何やそういう事やったんなら、先に言ってくれや」
「い、いや、人間違いだったら失礼だと思って……」
一通り事情を説明すると、どうやら彼女は理解してくれたらしく、先程までとはうって変わってご機嫌になった。ていうかもしかしてこの人、関西人?
「まあ確かにそんなこと聞いて、間違いだったら失礼やもんな。今回の場合は正解で助かりよったけど」
「正解って、じゃあ今僕が言ったことは間違いじゃないの?」
「せやな。天才とまでは言えへんけど、その写真はうちやな」
「す、すごい。まさか本当に会えるなんて……」
「まあ、そんなにログインしていなかったから、噂の範囲に留まっていたのもその影響かもしれへんな」
「へえ、じゃあこの写真は本当に?」
「せやで。うちはナナミ言うんや。よろしゅうな」
「僕はカオル。よろしくね」
お互いの軽い自己紹介を済ませ、例のニュースの写真が彼女であることを再確認したところで、話を元に戻す。
「さっきあんた僕達と、って言ってたけど誰かバンドメンバーおるん?」
「うん。実はもう一人いるんだけど、今はメンバー探しで別行動中なんだ」
「へえ、じゃあついでに呼んできてもらえへん? 仮にバンドに入るなら、最低限顔くらい知っておかへんと」
「そ、そうだよね。じゃあ今から呼ぶから」
彼女との連絡の取り方も予め教えてもらっているので、すぐにリアラさんと連絡を取る。僕が見つけたことに彼女は驚いたが、すぐに向かうと言って連絡を切った
そして彼女を待つこと五分後、ナナミさんと適当に雑談しているとリアラさんが到着した。
「ごめんなさいカオル君。で、そちらにいる方がもしかして……」
「あんたか。彼のバンドメンバーは」
「はい。リアラって言います」
「うちはナナミや。今後お世話になると思うから、よろしゅうな」
「お世話になるって、じゃあ……」
「当たり前や。誘われておいて断れるわけないやろ。しかもなかなかのイケメンやし」
「ぼ、僕はそんなんじゃないですよ」
「おお、焦っとる焦っとる」
「からかわないでよ!」
「お二人はいつの間にそんなに仲良くなられたんですか?」
というわけで何というか偶然ばかりだけど、僕のバンドに新たにベーシストのナナミが加入。基本バンドは四人ということで、残りはあと一人。誰が入るのか、少し楽しみになった僕であった。
■□■□■□
その日の晩、ゲームからログアウトした僕は、夕食を買うために外出した。一応親の元で生活しているのだが、二人共仕事ばかりでほとんど家にいない事が多い。実際もう二ヶ月くらいは会ってない気がする。
「うう、ちょっと冷えるな……」
ようやく冬を抜けたといってもまだ四月。夜はまだまだ寒い。その中でコンビニで適当な買い物を済ませた僕は、そのまま家に帰ろうとした。けどその帰り道……。
「よっ、久しぶりだな薫」
会いたくなかった人物に僕は出会ってしまった。もう一人の親友の竜介だ。
「竜介、どうしてこんな所に?」
「たまたまだよ。それよりお前こそ珍しいな外に出るなんて」
「食料が尽きたからね」
「家の物食えばいいんじゃねえの?」
「それだけはいちおうしないようにしてるんだよ」
こうして竜介と会うのはどれくらい振りだろうか? 正直ハッキリと覚えていない。もしかしてあの事件以来かも知れない。
「じゃあ僕は、もう帰るから」
あまり会いたくない相手なので、そそくさと帰ろうとするが、それを竜介は引き止めた。
「ちょっと待てよ薫」
後ろから肩を掴まれるが、僕は竜介に背を向けたままの状態で会話を続ける。
「何?」
「お前昨日千由里と電話したらしいな」
「まあ、向こうからかけてきただけだけど」
「どっちだって別に構わない。そんな事よりお前、その時に俺達には関係のないことだって言ったそうだな」
「うん、まあ言ったけど」
だからどうしたって話だ。これは僕が決めた道なんだから、二人には関係ない。
「どうしてそんな事言ったんだ? 俺達はお前の味方なのに、どうして関係ないなんて言えるんだよ」
「味方だったら……どうしてもっと早く気づいてくれなかったんだよ。僕がもうこんなにもボロボロだったのに」
「それはお前がちゃんと俺達に相談してくれなかったからだろ!」
「じゃあ聞くけど、もっと早く相談していたら何とかなった? 僕が知らないところで二人は付き合っていたくせに、それをずっと僕に黙っていたくせに……。何とかしてくれるとは思えなかったよ」
「お前まさかあの話を……」
「だからごめん。もう僕を一人にして!」
無理やり手を振り払って、そのまま僕は走り出した。何で二日連続でこんな思いをしなきゃいけないんだ僕は。
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