音楽初心者の僕がゲームの世界で歌姫とバンドを組んだら
Track.04 噂のベーシスト
翌日、僕は再びログインしていた。
「あ、カオル君」
「あ、どうもです」
昨日と同じ場所に出ると、僕がやって来たのを気づいたのかリアラさんがすぐにやって来た。
「もしかして待たせたりした?」
「そんな事ありませんよ。それに具体的な時間を決めていなかったんで、会えなくてもおかしくないんですよ」
「それはそうだけど」
それなら何故彼女は、まるで僕が来るのを知っていたかのように、ピッタリなタイミングできたのだろうか? もしかしてずっとゲームの世界にいたとか?
「どうかされましたか?」
「え、あ、大丈夫。ただ、ちょっと気になることがあったので」
「気になること? 何かありましたか?」
「いや、えっと、気にしないでください」
「?」
流石にそれを直接本人に聞くのはどうかと思い自重する。いきなりそういう事聞いてm不快に思われたら、バンド解散の危機になりうるから、それだけは避けたい。
とりあえず昨日も座ったあの椅子へ座り、今日は何をやるのかリアラさんに尋ねる。
「それで今日は何かやるの?」
「今日は早速ですけど、バンドのメンバー探しをしようと思います」
「もう探すの?」
「はい。早めにメンバーを集めておかないと、いい人材を獲得できませんから」
「な、なるほど」
それは確かに正しい。より才能がある人を見つけたいなら、早いうちに仲間にしておいたほうがいいかもしれない。でもそんな簡単に見つけることができるのだろうか?
「実はアテが一つだけあるんですけど、それを利用してみませんか?」
「アテ?」
「これを見てください」
そう言ってリアラさんは僕に一通のメールを送ってきた(実は説明しているもの以外にも便利な機能が何種類もあったりする)。それを開くと、何かのニュースがそこには貼られていた、このゲーム内で出されているニュースだろうか。そこにはこう書かれていた。
『天才ベーシスト現る!』
「ベーシスト?」
「ベースを使う人のことをそう言うんですよ。どうやらその人かなりの腕前の持ち主らしいんですけど、実際に会えた人は少ないらしく、ほぼ噂みたいなものらしいですよ」
「噂? じゃあこの写真は?」
ニュースの記事とともに一枚の写真が添付されている。そこにはベースを弾く一人の黒髪の少女が写っていた。
「実際に誰かが撮ったらしいんですけど、それが本物なのかも分からないから、あくまで噂らしいんですよ」
「じゃあどうしてこれがアテなんですか? こんな噂に過ぎない人を探すくらいなら、他の人を探したほうがいいと思うけど」
「それにはちゃんとした理由があるんですよ」
「理由?」
「カオル君、昨日頂点を目指すって言っていまいたよね?」
「ま、まあ言いましたけど」
半分流れで言ったようなものだけど、やるからには一番を目指す気で頑張りたいとは思う。
「このゲームで一番を目指そうとするなら、やはりある程度才能がある人がいたほうがいいと私は思うんです」
「あの、それはつまり僕が邪魔者と言いたいのかな」
「そういうわけじゃないですよ。カオル君にだって隠れた才能があるかもしれませんよ?」
「あくまであるかもしれないんだ」
まあ、その言葉は間違っていないけど、実際そう言われるとちょっと傷つく。でも、確かに頂点を目指すというなら、それなりの才能がある人を探すのは妥当なのかもしれない。
「そういうわけで、早速ですけど今日から手分けして、彼女を探したいと思います」
「て、手分けして? まだ僕この世界の構造とか全く知らないんだけど」
「あ、そうでしたね。じゃあ軽くですけど説明させていただきますね」
そう言うとリアラさんは、この世界の構造について詳しく説明を始めた。
「まず今私たちがいるこの場は、始まりの広場という場所です。ここはログイン時に必ず訪れるので、そう名付けられています。ここでは多くの人がバンド仲間を探すために集まり、そして出会います。広さ的にはそこそこの大きさで、ここには楽器屋や休憩所といったちょっとした娯楽施設などもあります」
「つまり大体の用事はここでできるといった感じ?」
「そうですね。まあその他にも沢山の街が存在していて、そこでしか手に入らない限定モデルとかあったりしますけど、それはまた後ほど説明させていただきます」
その後もリアラさんの説明が続いた。その中で、このゲームにもどうやら東京ドーム並みの大きなライブ会場があることも知った。どうやらそこで年に一度大きなイベントがあるらしく、そこで頂点を勝ち取ったものが、このゲームの一番らしい。だから、誰もがそこを目指して日々練習に励んでいて、リアラさんも昨日はその練習中だったらしい。まあ今の僕には、だいぶ先の話になるかもしれないけど、目標がちゃんとあるなら、それに向けて努力するしかない。
「以上がこのゲームについての説明です。分かっていただけましたか?」
「うん。バッチリ。じゃあまずは大イベントに向けてのメンバー集めからだよね」
「はい!」
「よし、頑張ろう」
「おー」
こうして僕達の本格的なバンド活動が本格的に始まるのであった。
■□■□■□
で、噂の天才ベーシストを探すために一旦リアラさんと別れたわけなんだけど……。
(こんなに広いところから、どうやって探せと)
この始まりの広場だけでもかなり広いのに、ゲーム全体から探すなんてほぼ不可能に近い。しかもその存在は、あくまで噂だし、一体どうすればいいのだろうか?
(そんなに簡単に見つかるわけないよな……)
一人でボーっと歩きながら探し回るが、いそうな気配なんてどこにもない。もう既にバンドを組んでいる可能性だってあるのだから、見つかるわけ……。
ドンッ
「きゃっ」
「痛ぅ!」
前も見ずに歩いていたせいで、誰かとぶつかってしまう。ぶつかった方は衝撃で尻餅をついてしまい、痛そうにしている。僕は慌てて彼女を助けた。
「だ、大丈夫ですか?」
「わ、私は大丈夫……」
手を差し伸べて起き上がらせてあげる。よかった、立ち上がれるから大怪我ではなさそうだ。
「ご、ごめん。僕が前を向いてなかったから……」
「わ、私こそ前方不注意で」
立ち上がらせたところで、ようやく彼女の顔が見える。あれ? 黒髪でこの顔って、どこかで見たことがあるような……。
「どうかした?」
「あ、いや、えっと、へ、変なこと聞くかもしれないけど、君もしかしてベースとかやってる?」
「うん。そうだけど、どうして?」
やっぱり、あの写真の子だ絶対。
「あ、カオル君」
「あ、どうもです」
昨日と同じ場所に出ると、僕がやって来たのを気づいたのかリアラさんがすぐにやって来た。
「もしかして待たせたりした?」
「そんな事ありませんよ。それに具体的な時間を決めていなかったんで、会えなくてもおかしくないんですよ」
「それはそうだけど」
それなら何故彼女は、まるで僕が来るのを知っていたかのように、ピッタリなタイミングできたのだろうか? もしかしてずっとゲームの世界にいたとか?
「どうかされましたか?」
「え、あ、大丈夫。ただ、ちょっと気になることがあったので」
「気になること? 何かありましたか?」
「いや、えっと、気にしないでください」
「?」
流石にそれを直接本人に聞くのはどうかと思い自重する。いきなりそういう事聞いてm不快に思われたら、バンド解散の危機になりうるから、それだけは避けたい。
とりあえず昨日も座ったあの椅子へ座り、今日は何をやるのかリアラさんに尋ねる。
「それで今日は何かやるの?」
「今日は早速ですけど、バンドのメンバー探しをしようと思います」
「もう探すの?」
「はい。早めにメンバーを集めておかないと、いい人材を獲得できませんから」
「な、なるほど」
それは確かに正しい。より才能がある人を見つけたいなら、早いうちに仲間にしておいたほうがいいかもしれない。でもそんな簡単に見つけることができるのだろうか?
「実はアテが一つだけあるんですけど、それを利用してみませんか?」
「アテ?」
「これを見てください」
そう言ってリアラさんは僕に一通のメールを送ってきた(実は説明しているもの以外にも便利な機能が何種類もあったりする)。それを開くと、何かのニュースがそこには貼られていた、このゲーム内で出されているニュースだろうか。そこにはこう書かれていた。
『天才ベーシスト現る!』
「ベーシスト?」
「ベースを使う人のことをそう言うんですよ。どうやらその人かなりの腕前の持ち主らしいんですけど、実際に会えた人は少ないらしく、ほぼ噂みたいなものらしいですよ」
「噂? じゃあこの写真は?」
ニュースの記事とともに一枚の写真が添付されている。そこにはベースを弾く一人の黒髪の少女が写っていた。
「実際に誰かが撮ったらしいんですけど、それが本物なのかも分からないから、あくまで噂らしいんですよ」
「じゃあどうしてこれがアテなんですか? こんな噂に過ぎない人を探すくらいなら、他の人を探したほうがいいと思うけど」
「それにはちゃんとした理由があるんですよ」
「理由?」
「カオル君、昨日頂点を目指すって言っていまいたよね?」
「ま、まあ言いましたけど」
半分流れで言ったようなものだけど、やるからには一番を目指す気で頑張りたいとは思う。
「このゲームで一番を目指そうとするなら、やはりある程度才能がある人がいたほうがいいと私は思うんです」
「あの、それはつまり僕が邪魔者と言いたいのかな」
「そういうわけじゃないですよ。カオル君にだって隠れた才能があるかもしれませんよ?」
「あくまであるかもしれないんだ」
まあ、その言葉は間違っていないけど、実際そう言われるとちょっと傷つく。でも、確かに頂点を目指すというなら、それなりの才能がある人を探すのは妥当なのかもしれない。
「そういうわけで、早速ですけど今日から手分けして、彼女を探したいと思います」
「て、手分けして? まだ僕この世界の構造とか全く知らないんだけど」
「あ、そうでしたね。じゃあ軽くですけど説明させていただきますね」
そう言うとリアラさんは、この世界の構造について詳しく説明を始めた。
「まず今私たちがいるこの場は、始まりの広場という場所です。ここはログイン時に必ず訪れるので、そう名付けられています。ここでは多くの人がバンド仲間を探すために集まり、そして出会います。広さ的にはそこそこの大きさで、ここには楽器屋や休憩所といったちょっとした娯楽施設などもあります」
「つまり大体の用事はここでできるといった感じ?」
「そうですね。まあその他にも沢山の街が存在していて、そこでしか手に入らない限定モデルとかあったりしますけど、それはまた後ほど説明させていただきます」
その後もリアラさんの説明が続いた。その中で、このゲームにもどうやら東京ドーム並みの大きなライブ会場があることも知った。どうやらそこで年に一度大きなイベントがあるらしく、そこで頂点を勝ち取ったものが、このゲームの一番らしい。だから、誰もがそこを目指して日々練習に励んでいて、リアラさんも昨日はその練習中だったらしい。まあ今の僕には、だいぶ先の話になるかもしれないけど、目標がちゃんとあるなら、それに向けて努力するしかない。
「以上がこのゲームについての説明です。分かっていただけましたか?」
「うん。バッチリ。じゃあまずは大イベントに向けてのメンバー集めからだよね」
「はい!」
「よし、頑張ろう」
「おー」
こうして僕達の本格的なバンド活動が本格的に始まるのであった。
■□■□■□
で、噂の天才ベーシストを探すために一旦リアラさんと別れたわけなんだけど……。
(こんなに広いところから、どうやって探せと)
この始まりの広場だけでもかなり広いのに、ゲーム全体から探すなんてほぼ不可能に近い。しかもその存在は、あくまで噂だし、一体どうすればいいのだろうか?
(そんなに簡単に見つかるわけないよな……)
一人でボーっと歩きながら探し回るが、いそうな気配なんてどこにもない。もう既にバンドを組んでいる可能性だってあるのだから、見つかるわけ……。
ドンッ
「きゃっ」
「痛ぅ!」
前も見ずに歩いていたせいで、誰かとぶつかってしまう。ぶつかった方は衝撃で尻餅をついてしまい、痛そうにしている。僕は慌てて彼女を助けた。
「だ、大丈夫ですか?」
「わ、私は大丈夫……」
手を差し伸べて起き上がらせてあげる。よかった、立ち上がれるから大怪我ではなさそうだ。
「ご、ごめん。僕が前を向いてなかったから……」
「わ、私こそ前方不注意で」
立ち上がらせたところで、ようやく彼女の顔が見える。あれ? 黒髪でこの顔って、どこかで見たことがあるような……。
「どうかした?」
「あ、いや、えっと、へ、変なこと聞くかもしれないけど、君もしかしてベースとかやってる?」
「うん。そうだけど、どうして?」
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