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カノジョの好感度が上がってないのは明らかにおかしい

陽本奏多

第21話 遊園地における争奪戦開幕

 「改めて、お兄様の妹の朝倉ティアです。よろしくお願いします♪」

 にっこりと当たり前のように自己紹介をするティアを見て、六実と凛はにへらと顔を口元を緩ませ、よだれを少し垂らしながら笑っている。

 なにやってるんだこいつらは。

 「しかし、ティアとは…… 珍しい名前だな」

 急に正気に戻った凛がティアに尋ねる。

 「私、フランスから養子としてこの家に来たんです。まぁ、お兄様に対する愛情は普通の兄弟より深いですけどね♪」

 ティアがウィンクして飛ばしたハートを俺はキャッチし、床に打ちつけた。

 というか、フランスからの養子なんてありえるわけないだろ。なんで、六実と凛はなるほど〜なんて納得しちゃってんだ。

 「でも、本当にティアちゃんかわいいね〜。白くてプニプニの肌にサラサラの金髪。もう持って帰りたくなっちゃう!」

 六実がティアの頬ずりを再開しながら言ったように、ティアの容姿は本当にかわいい。人形のような整った顔立ちに艶やかな金髪。妹という設定のせいか背は低いが、それはそれでいい。まずい、俺の何かが目覚める……! なんてね、そんな簡単にロリコンになってたまるもんですか。

 「とにかくお兄様! 遊園地に出発しましょう!」

 ティアが俺の手を引き、外へ向かった。

 「あぁー! 馨くんだけずるい!」

 六実はそう言ってティアの手をとった。って、これラブコメ的におかしくないですか? 普通逆ですよね? 「ティアちゃんだけずるい!」って言って、俺の手を取るパターンだよね?

 「遊園地へしゅっぱーつ!」
 「おー!」

 ティアがそう掛け声を掛け、一行は家を出た。

 なんだか嫌な予感しかしないんだが……


        *     *     *


 やはりというべきか、嫌な予感は的中した。

 「ティアちゃんかわいいね〜。はい、これ食べていいよ!」
 「本当ですか? ありがとうございます!」
 「これも食べていいぞ」
 「やったぁ! ありがとうございます!」

 ティアは2人に餌付けされているかのようにお菓子などいろいろな食べ物を与えられている。

 ティアがモグモグと食べてにっこりと笑顔を見せるたびに六実と凛は幸せそうに笑っている。

 実に微笑ましい光景だが、これには一つ問題点がある。

 それは、俺が彼女らの5メートルほど後ろを歩いていることである。とどのつまり、現在俺はのけ者なのである。遊園地デートってもう少し楽しいものだと思ってました……

 説明補足すると、家を出た俺たちはバスでこの遊園地に来たのだ。この遊園地はアトラクションが多いことでそこそこ有名だが、アトラクションの数を重視したためか、千葉にあるのに東京と名のついているあの遊園地のような心躍るような飾りなんかはない。

 それでも彼女らは結構楽しんでいるようで、終始ニコニコしている。まぁ、その笑顔の要因はティアなわけだが……

 俺が気持ち悪い苦笑いを浮かべていると、何故かティアがかけてきて俺に抱きついた。ティアに現在進行形で狂愛している女子2人が俺をジト目で見てきたのは言うまでもない。

 「お兄様、どうして私と遊んでくれないんですか? あのお姉様達と遊ぶのも楽しいですが、やっぱり私、お兄様じゃないとダメなんです!」

 ティアが涙目で俺にそう言うが、全く意味がわからない。いや、だからそこの女子2人、俺にその冷たい目線を浴びせるのやめてくださいお願いします。

 「馨くん、もしかして…… 大丈夫だよ、馨くんがどんな性癖を持ってたとしても私仲良くするから……」
 「馨、幼女好きだったとは……すまない、その心の闇に気づいてやれなくて……」

 なんだか表面的には俺を気遣ってくれているようだが、2人とも拳を握りしめている。

 「で、本心は?」
 「「ティアちゃんに抱きついてもらえるなんて羨ましい!!!」」

 俺がきくと彼女たちは本音を吐いてくれました。いや、そこの二人、今更咳払いとかしてもごまかせないから。

 「じゃあこうしませんか?」

 俺がジト目で二人を見つめていると、ティアが待ってましたと言わんばかりに話し始めた。

 「一人一人、私と20分間だけ一緒に遊んでください。それで私を一番楽しませてくれた人と私は遊ぶことにします」
 「つまり、誰が一番お前を楽しませれるか勝負する、ってことか?」
 「はい! そういうことです!」

 と、いうわけで何故か俺たちはティア争奪戦を行うことになったのである。って、これも普通逆ですよね。普通ラブコメ的に俺を可愛い女の子達が取り合う展開ですよね?

 そんな風に俺が愚痴っている間にも凛や六実はティアをいかに楽しませるか作戦を必死に練っていた。

 あぁ、もうなんでもいいや。勝手にやってください。

 そうして、俺たちのティア争奪戦は幕を開けた。

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