カノジョの好感度が上がってないのは明らかにおかしい
第20話 メールの文章は簡潔に
 俺は、ベッドに寝転び、昔のことを思い出していた。望月凛との思い出を。
 出会ったのは小学校に入った時。何故か気が合った俺たちは、毎日のように遊んでいた。まぁ、あんなかわいい凛と親しくしていれば他の男子どもは嫉妬するわけで……  俺はそれこそ毎日のように殴られ、蹴られていた。そして、毎回毎回凛が助けに来てくれるのだ。かっこよく、颯爽と。
 中学に入ってもその関係が壊れることはなかった。そりゃ、小学校の頃のように裏山を走り回るなんてことは無くなったが、図書館で一緒に勉強したり、映画を一緒に見に行ったり、凛に武道の心を叩き込まれたり…… あれはいい思い出とは言えないな……
 とにかく、俺は楽しかったのだ。ずっと、凛と一緒にいたいと思っていたし、友情とは違う感情が芽生えていたことにも俺は気づいていた。
 一緒にいたい、そう俺は思っていたのと共に、この感情を彼女に伝えたいとも思っていた。
 そして、悩んだ末に俺は彼女に想いを告げた。
 今となって思い返すと、実に馬鹿な行為だったと思う。一緒にいたいならその関係を維持していればいいものを、俺は先へ進みたいと思ってしまった。
 その結果が、リセットという罰である。
 俺が過去の自分を心の中で嘲笑していると、スマホがメールの着信を知らせた。
 「馨さん、小春さんからメールが届いています」
 「あぁ、読み上げてくれないか?」
 「いいんですか? 本当に?」
 「いいから読んでくれ」
 俺はベッドから起き上がるのが面倒でティアに読んでもらうことにした。
 「読み上げますね。『えぇっと、こんばんは。元気にしてるかな? って、ほんの数時間前まで会ってたのに元気か聞くのは変だね。いや、あの、月が綺麗だよ、って教えたくて…… じゃなくて! そんなこと言いたいんじゃなくて! 私、なんだかこういうメールとか送るの苦手なんだよね。ほら、文章書くのがちょっと苦手っていうかさ…… 作文とかも昔からあんまり得意じゃなかったんだよね。あれなんで原稿用紙3枚分しか書いちゃいけないの? 3枚じゃ足りるわけないじゃん、先生もうちょっと考えて欲しいよ。でね、その作文なんだけど……って、話逸れちゃったね、ごめんなさい。ほんと、クラスでみんなと話してる時も、話題急に変えちゃってみんなを困らせちゃったり……でも! みんな優しいから許してくれるんだよ? 本当にいい友達だなぁって思う! 』……馨さん、まだ読み上げを続けますか?」
 「いや、やめてくれ……」
 俺は頭を押さえながらティアに返した。そのティアも相当ダメージを受けているようで、テンションと声がとてつもなく低い。
 「で、要約すると?」
 「はい、今度の週末一緒に遊園地に行かないか、とのことです。それと、チケットが4枚あるので馨さんにあと2人連れてきて欲しいそうです」
 「遊園地か……」
 六実と一緒に遊園地へ行くのはワクワクしないことはないが…… 俺に人を遊園地へ誘うコミュ力があるわけないです。
 俺がどうしようかと迷っていると、ティアがある提案をしてきた。
 「馨さん、凛さんを誘ってみるのはどうですか? 美少女を2人も連れての遊園地デートなんて滅多にできませんよ」
 ティアが色男め〜♪ みたいな目で俺を見ていたが、確かに凛を誘うというのはいい案なので採用。で、俺が凛にメールを送ると、間髪入れずに着信音が鳴った。
 『了解した』
 お前は短すぎるっての。
 凛からの返信はそんな飾り気のない、というか女の子として異常なレベルのメールだった。絵文字とか絶対知らないよねこの子。
 「とにかく、1人は確保完了ですね。あと1人は心当たりがありますのでお任せください♪」
 ティアはいつものテンションが戻ったようで、敬礼しながら俺にそう言った。
 「わかった。それじゃ頼むな。俺はもう寝るから」
 「了解しました! それじゃあ私が馨さんのために子守唄を……」
 「歌わなくていいから! じゃ、おやすみ」
 
 俺はそう言って部屋の電気を消した。
        *     *     *
 そんなこんなで、週末になったわけだが……
 「何してるんですか〜? もう行きますよ、お兄様〜!」
 俺に妹はいなかったはずだが……
 なんだか高そうなバッグをブンブン振ってはしゃぐ彼女を俺はじっとりとした目で見つめていた。
 「ティア、なんのつもりだよ」
 俺はその少女の脳天にチョップしながら尋ねた。
 「イタタ……もー何するんですかお兄様!」
 「いや、そのお兄様ってのも意味不明なんだけど」
 「説明しましょう! お兄様とは、本人から見て、男で年長の兄弟のことである!」
 「兄についての説明を求めるほど俺は馬鹿に見えるか……?」
 「はい」
 「はい ︎」
 俺とティアが漫才のようなことをしていると、家のチャイムが鳴った。
 今出まーすとドアを開くと、そこには2人の美少女がいた。
 「おはよ、馨くん」
 そう言って微笑む六実小春の服装は、とても爽やかだった。
 白いスカートに裾が前で結ばれたデニムがとても活動的な印象を与える。靴は意外にもスニーカーで、片手に持つポーチがセンスを感じさせる。
 「誘ってもらって悪いな」
 そう言う望月凛の学校とは違う印象に俺は驚いた。
 上はシャツに黒いジャケット、下はとてつもなく短いパンツにスパッツというスタイルで、全体的に大人びた印象を与えるものの、何故か内側から幼い感じが滲み出ている気がする。
 とにかく、延々と玄関でファッションチェックをしているわけにはいかないので俺は2人を中に招き入れた。
 「すぐ準備するから、ちょっと待ってて」
 「うん、そんなに急がないで大丈夫だよ?」
 優しい六実にありがとうといいつつ、俺は自分の部屋へ。
 さっきまで騒いでいたティアは携帯の中に入ったようで、今は静かだ。
 まぁ、女の子を待たせるわけにはいかないので俺はちゃっちゃと着替えて2人のもとへ。
 俺が階段を下り始めた瞬間、下から悲鳴が聞こえた。
 「どうした ︎」
 俺は階段を駆け下って2人のいる部屋のドアを開く。
 「かわいい〜、一生こうしてたいよ〜……」
 「こんなにふわふわしたものは触れたことがない……」
 その部屋では、2人がティア(実体化してます)のほっぺたをプニプニしたり頬ずりしたりしていた。ちなみにプニプニされているティアは、とても気持ちよさそうな顔をしている。
 あぁ、そういうことね。さっきの悲鳴は六実がティアのかわいさにあげた悲鳴なのだろう。
 俺はそう納得し、一つため息をついた。
 この遊園地デート、かなり大変そうです。
 
 
 出会ったのは小学校に入った時。何故か気が合った俺たちは、毎日のように遊んでいた。まぁ、あんなかわいい凛と親しくしていれば他の男子どもは嫉妬するわけで……  俺はそれこそ毎日のように殴られ、蹴られていた。そして、毎回毎回凛が助けに来てくれるのだ。かっこよく、颯爽と。
 中学に入ってもその関係が壊れることはなかった。そりゃ、小学校の頃のように裏山を走り回るなんてことは無くなったが、図書館で一緒に勉強したり、映画を一緒に見に行ったり、凛に武道の心を叩き込まれたり…… あれはいい思い出とは言えないな……
 とにかく、俺は楽しかったのだ。ずっと、凛と一緒にいたいと思っていたし、友情とは違う感情が芽生えていたことにも俺は気づいていた。
 一緒にいたい、そう俺は思っていたのと共に、この感情を彼女に伝えたいとも思っていた。
 そして、悩んだ末に俺は彼女に想いを告げた。
 今となって思い返すと、実に馬鹿な行為だったと思う。一緒にいたいならその関係を維持していればいいものを、俺は先へ進みたいと思ってしまった。
 その結果が、リセットという罰である。
 俺が過去の自分を心の中で嘲笑していると、スマホがメールの着信を知らせた。
 「馨さん、小春さんからメールが届いています」
 「あぁ、読み上げてくれないか?」
 「いいんですか? 本当に?」
 「いいから読んでくれ」
 俺はベッドから起き上がるのが面倒でティアに読んでもらうことにした。
 「読み上げますね。『えぇっと、こんばんは。元気にしてるかな? って、ほんの数時間前まで会ってたのに元気か聞くのは変だね。いや、あの、月が綺麗だよ、って教えたくて…… じゃなくて! そんなこと言いたいんじゃなくて! 私、なんだかこういうメールとか送るの苦手なんだよね。ほら、文章書くのがちょっと苦手っていうかさ…… 作文とかも昔からあんまり得意じゃなかったんだよね。あれなんで原稿用紙3枚分しか書いちゃいけないの? 3枚じゃ足りるわけないじゃん、先生もうちょっと考えて欲しいよ。でね、その作文なんだけど……って、話逸れちゃったね、ごめんなさい。ほんと、クラスでみんなと話してる時も、話題急に変えちゃってみんなを困らせちゃったり……でも! みんな優しいから許してくれるんだよ? 本当にいい友達だなぁって思う! 』……馨さん、まだ読み上げを続けますか?」
 「いや、やめてくれ……」
 俺は頭を押さえながらティアに返した。そのティアも相当ダメージを受けているようで、テンションと声がとてつもなく低い。
 「で、要約すると?」
 「はい、今度の週末一緒に遊園地に行かないか、とのことです。それと、チケットが4枚あるので馨さんにあと2人連れてきて欲しいそうです」
 「遊園地か……」
 六実と一緒に遊園地へ行くのはワクワクしないことはないが…… 俺に人を遊園地へ誘うコミュ力があるわけないです。
 俺がどうしようかと迷っていると、ティアがある提案をしてきた。
 「馨さん、凛さんを誘ってみるのはどうですか? 美少女を2人も連れての遊園地デートなんて滅多にできませんよ」
 ティアが色男め〜♪ みたいな目で俺を見ていたが、確かに凛を誘うというのはいい案なので採用。で、俺が凛にメールを送ると、間髪入れずに着信音が鳴った。
 『了解した』
 お前は短すぎるっての。
 凛からの返信はそんな飾り気のない、というか女の子として異常なレベルのメールだった。絵文字とか絶対知らないよねこの子。
 「とにかく、1人は確保完了ですね。あと1人は心当たりがありますのでお任せください♪」
 ティアはいつものテンションが戻ったようで、敬礼しながら俺にそう言った。
 「わかった。それじゃ頼むな。俺はもう寝るから」
 「了解しました! それじゃあ私が馨さんのために子守唄を……」
 「歌わなくていいから! じゃ、おやすみ」
 
 俺はそう言って部屋の電気を消した。
        *     *     *
 そんなこんなで、週末になったわけだが……
 「何してるんですか〜? もう行きますよ、お兄様〜!」
 俺に妹はいなかったはずだが……
 なんだか高そうなバッグをブンブン振ってはしゃぐ彼女を俺はじっとりとした目で見つめていた。
 「ティア、なんのつもりだよ」
 俺はその少女の脳天にチョップしながら尋ねた。
 「イタタ……もー何するんですかお兄様!」
 「いや、そのお兄様ってのも意味不明なんだけど」
 「説明しましょう! お兄様とは、本人から見て、男で年長の兄弟のことである!」
 「兄についての説明を求めるほど俺は馬鹿に見えるか……?」
 「はい」
 「はい ︎」
 俺とティアが漫才のようなことをしていると、家のチャイムが鳴った。
 今出まーすとドアを開くと、そこには2人の美少女がいた。
 「おはよ、馨くん」
 そう言って微笑む六実小春の服装は、とても爽やかだった。
 白いスカートに裾が前で結ばれたデニムがとても活動的な印象を与える。靴は意外にもスニーカーで、片手に持つポーチがセンスを感じさせる。
 「誘ってもらって悪いな」
 そう言う望月凛の学校とは違う印象に俺は驚いた。
 上はシャツに黒いジャケット、下はとてつもなく短いパンツにスパッツというスタイルで、全体的に大人びた印象を与えるものの、何故か内側から幼い感じが滲み出ている気がする。
 とにかく、延々と玄関でファッションチェックをしているわけにはいかないので俺は2人を中に招き入れた。
 「すぐ準備するから、ちょっと待ってて」
 「うん、そんなに急がないで大丈夫だよ?」
 優しい六実にありがとうといいつつ、俺は自分の部屋へ。
 さっきまで騒いでいたティアは携帯の中に入ったようで、今は静かだ。
 まぁ、女の子を待たせるわけにはいかないので俺はちゃっちゃと着替えて2人のもとへ。
 俺が階段を下り始めた瞬間、下から悲鳴が聞こえた。
 「どうした ︎」
 俺は階段を駆け下って2人のいる部屋のドアを開く。
 「かわいい〜、一生こうしてたいよ〜……」
 「こんなにふわふわしたものは触れたことがない……」
 その部屋では、2人がティア(実体化してます)のほっぺたをプニプニしたり頬ずりしたりしていた。ちなみにプニプニされているティアは、とても気持ちよさそうな顔をしている。
 あぁ、そういうことね。さっきの悲鳴は六実がティアのかわいさにあげた悲鳴なのだろう。
 俺はそう納得し、一つため息をついた。
 この遊園地デート、かなり大変そうです。
 
 
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