カノジョの好感度が上がってないのは明らかにおかしい
第19話 クラス委員で仲直りを
 「男女1名ずつ、誰か立候補してくださ〜い」
 先生が半泣きで言うが、クラスのほとんどが気まずそうに視線を逸らしている。
 そりゃそうだ。クラス委員なんて自分からする奴なんていないだろ。
 俺は内心にそう呟いて問題集を開いた。
 時は三限目のロングホームルーム。凛と共に日の出を拝んでから約5時間後である。
 さっき言ったように今はクラス委員を決める話し合い中だ。まぁ、話し合いといっても、皆だれかしないかなぁ〜と横をちらちらと見て時間を浪費しているだけだが。
 とにかく、俺のようないつも教室の端で勉強している地味な輩には関係ない話だ。それこそ、六実小春みたいな自意識高い系女子がするんじゃないのか?
 俺がそう思い彼女を見ると、彼女は何か思いつめたような顔でうつむいていた。いつもなら笑顔を振りまいている彼女があんな顔をしているのは気になったが、俺はすぐに問題集へ視線を戻した。
 ふと、昨日の口論の様子が蘇る。
 彼女の意味ありげな言動、あの表情…… 彼女も俺と同じように何か悩みを抱えているのではないか? という疑問が頭をよぎったが、全てはどうせ演技なんだと俺はそう自分を納得させた。それが幼い意地を張っているだけだと感じながら。
 しかし、話し合いは一向にに進んでいない。今ではいっその事じゃんけんで決めてしまおうかなんていう流れにさえなっている。
 先生は困り果て、生徒は目を逸らす。そんな空気を断ち切ったのはやはり彼女だった。
 「せ、先生! ……私、やっても、いいですけど……」
 六実は中途半端に挙げた手を、胸の前に持ってきながらそう言った。
 しばしの沈黙の後、クラスは叫び声が飛び交い始めた。傍から見れば阿鼻叫喚の地獄絵図ともとれるだろう。そのくらいカオスだった。
 ある女子は「さすがは我らの小春様ー!」なんて目をハートにしながら六実を崇め、ある男子は「六実様がやられるなら僕も!!!」と急にやる気になり、ある男子は「てめぇなんかに六実さんの横を取られてたまるか!!!」と他の男子に殴りかかる。
 そんな、俺からしたら滑稽な光景もそう長くは続かなかった。
 「みんなっ! 聞いてくれる……?」
 六実が全員の注目を集めるべく、右手を高く掲げ、天井を指差した。当然、クラス全員の視線はその指先へ集まる。
 クラス中の注目を向けられてか、六実は少し震えているようにも見える。それに、顔も少し赤く染まって……
 気づいた時にはもう遅かった。
 六実の指は俺をしっかりと指しており、それにつられてクラス中の目線も俺に向けられている。
 「かっ、馨くん、あなたも……クラス委員をしてください!」
 六実は頬を赤く染め、目をぎゅっと瞑って俺に言い放った。
        *     *     *
 重い。重すぎる。なんで俺がこんなこと……
 俺は大量に積まれたダンボールをえっちらおっちら運んでいた。
 と、いうのも、クラス委員は生徒会の仕事を手伝わなければいけないらしく、その荷物運びという仕事を昼休み返上してやっているのであった。それも俺一人で。
 生徒会の副会長は熱狂的な六実のファンらしく、これは俺に対する嫌がらせだろう。
  ったく、器が小さいったらありゃしない。
 俺がそう悪態をついていると、腕にかかる負担が少し軽くなった。
 「私もクラス委員だから……ね」
 隣を見ると、ダンボール箱を持つ六実がいた。
 「あ……サンキュ」
 「……うん」
 歩く二人の間に湿った沈黙が流れる。人が少ない廊下に二人の足音が響き、手に持つダンボールが無性に重く感じられた。
 「あ、あのさ……」
 六実が遠慮がちに口を開く。
 「昨日のこと……ごめん……」
 「なんで六実が謝るんだよ。勝手に押しかけて勝手に逃げたしたのは俺だろ」
 「そんな、こと……」
 再び、沈黙が二人の間に訪れ、俺は内心にため息をついた。
 振り返ってみれば、昨日の一件は俺が勝手に被害妄想を膨らませて逆上しただけなのかもしれない。まぁ、六実も少しひどいこと言っていたが、俺がしっかり否定していれば済んだ話だ。
 「六実、都合のいい話かもしれないけどさ。昨日のことはお互いに忘れないか?」
 「えっ?」
 
 予想外の言葉だったのか、六実は虚をつかれたような顔を俺に向けた。
 「ほら、なんというか、こうやってぎくしゃくしてるの嫌だしさ、六実の……笑ってる顔見たいし、さ」
 
 俺はダンボールに顔を隠しながらそう言った。
 「馨くんはやっぱり優しいなぁ」
 六実は顔を赤らめ、一言そう言った。
 優しい。なんだかその言葉がひどく俺には突き刺さり、胸の奥が熱くなるのを俺は感じた。
 「馨くん」
 こちらを向き直った六実が俺の名を呼ぶ。
 「これからも、よろしくお願いします」
 六実はぺこりと一礼し、俺に大輪の花のような笑顔を向けた。
 そんなかわいい笑顔を向けられて俺はなんと返せばいいのか。俺は言葉を探したが、結局何も思いつかなかったので再び歩き出した。
 六実は一瞬戸惑ったものの、すぐにかけてきて俺の横に並んだ。
 あぁ、なんだか気を抜いたらにやけてしまいそうだ。俺なんかがこんなかわいい子とこんな会話していいのだろうか。
 バチが当たることを心配する俺を、バチの原因が見つめていることなんて俺が知る由もなかった……
 
 先生が半泣きで言うが、クラスのほとんどが気まずそうに視線を逸らしている。
 そりゃそうだ。クラス委員なんて自分からする奴なんていないだろ。
 俺は内心にそう呟いて問題集を開いた。
 時は三限目のロングホームルーム。凛と共に日の出を拝んでから約5時間後である。
 さっき言ったように今はクラス委員を決める話し合い中だ。まぁ、話し合いといっても、皆だれかしないかなぁ〜と横をちらちらと見て時間を浪費しているだけだが。
 とにかく、俺のようないつも教室の端で勉強している地味な輩には関係ない話だ。それこそ、六実小春みたいな自意識高い系女子がするんじゃないのか?
 俺がそう思い彼女を見ると、彼女は何か思いつめたような顔でうつむいていた。いつもなら笑顔を振りまいている彼女があんな顔をしているのは気になったが、俺はすぐに問題集へ視線を戻した。
 ふと、昨日の口論の様子が蘇る。
 彼女の意味ありげな言動、あの表情…… 彼女も俺と同じように何か悩みを抱えているのではないか? という疑問が頭をよぎったが、全てはどうせ演技なんだと俺はそう自分を納得させた。それが幼い意地を張っているだけだと感じながら。
 しかし、話し合いは一向にに進んでいない。今ではいっその事じゃんけんで決めてしまおうかなんていう流れにさえなっている。
 先生は困り果て、生徒は目を逸らす。そんな空気を断ち切ったのはやはり彼女だった。
 「せ、先生! ……私、やっても、いいですけど……」
 六実は中途半端に挙げた手を、胸の前に持ってきながらそう言った。
 しばしの沈黙の後、クラスは叫び声が飛び交い始めた。傍から見れば阿鼻叫喚の地獄絵図ともとれるだろう。そのくらいカオスだった。
 ある女子は「さすがは我らの小春様ー!」なんて目をハートにしながら六実を崇め、ある男子は「六実様がやられるなら僕も!!!」と急にやる気になり、ある男子は「てめぇなんかに六実さんの横を取られてたまるか!!!」と他の男子に殴りかかる。
 そんな、俺からしたら滑稽な光景もそう長くは続かなかった。
 「みんなっ! 聞いてくれる……?」
 六実が全員の注目を集めるべく、右手を高く掲げ、天井を指差した。当然、クラス全員の視線はその指先へ集まる。
 クラス中の注目を向けられてか、六実は少し震えているようにも見える。それに、顔も少し赤く染まって……
 気づいた時にはもう遅かった。
 六実の指は俺をしっかりと指しており、それにつられてクラス中の目線も俺に向けられている。
 「かっ、馨くん、あなたも……クラス委員をしてください!」
 六実は頬を赤く染め、目をぎゅっと瞑って俺に言い放った。
        *     *     *
 重い。重すぎる。なんで俺がこんなこと……
 俺は大量に積まれたダンボールをえっちらおっちら運んでいた。
 と、いうのも、クラス委員は生徒会の仕事を手伝わなければいけないらしく、その荷物運びという仕事を昼休み返上してやっているのであった。それも俺一人で。
 生徒会の副会長は熱狂的な六実のファンらしく、これは俺に対する嫌がらせだろう。
  ったく、器が小さいったらありゃしない。
 俺がそう悪態をついていると、腕にかかる負担が少し軽くなった。
 「私もクラス委員だから……ね」
 隣を見ると、ダンボール箱を持つ六実がいた。
 「あ……サンキュ」
 「……うん」
 歩く二人の間に湿った沈黙が流れる。人が少ない廊下に二人の足音が響き、手に持つダンボールが無性に重く感じられた。
 「あ、あのさ……」
 六実が遠慮がちに口を開く。
 「昨日のこと……ごめん……」
 「なんで六実が謝るんだよ。勝手に押しかけて勝手に逃げたしたのは俺だろ」
 「そんな、こと……」
 再び、沈黙が二人の間に訪れ、俺は内心にため息をついた。
 振り返ってみれば、昨日の一件は俺が勝手に被害妄想を膨らませて逆上しただけなのかもしれない。まぁ、六実も少しひどいこと言っていたが、俺がしっかり否定していれば済んだ話だ。
 「六実、都合のいい話かもしれないけどさ。昨日のことはお互いに忘れないか?」
 「えっ?」
 
 予想外の言葉だったのか、六実は虚をつかれたような顔を俺に向けた。
 「ほら、なんというか、こうやってぎくしゃくしてるの嫌だしさ、六実の……笑ってる顔見たいし、さ」
 
 俺はダンボールに顔を隠しながらそう言った。
 「馨くんはやっぱり優しいなぁ」
 六実は顔を赤らめ、一言そう言った。
 優しい。なんだかその言葉がひどく俺には突き刺さり、胸の奥が熱くなるのを俺は感じた。
 「馨くん」
 こちらを向き直った六実が俺の名を呼ぶ。
 「これからも、よろしくお願いします」
 六実はぺこりと一礼し、俺に大輪の花のような笑顔を向けた。
 そんなかわいい笑顔を向けられて俺はなんと返せばいいのか。俺は言葉を探したが、結局何も思いつかなかったので再び歩き出した。
 六実は一瞬戸惑ったものの、すぐにかけてきて俺の横に並んだ。
 あぁ、なんだか気を抜いたらにやけてしまいそうだ。俺なんかがこんなかわいい子とこんな会話していいのだろうか。
 バチが当たることを心配する俺を、バチの原因が見つめていることなんて俺が知る由もなかった……
 
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