異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー

心労の神狼

5-3 帰還

「や、やっと着いた……」
朝日達が野営地(?)を出発してから約半日。
彼らは無事に商業の街、リユニオンに辿り着くことができた。
「使徒が出てきたり、朝日と再会したりしていろいろあったから、ほんの二日程度なのに物凄く久しぶりな気がするよ…」
「ははは、確かに。なんだかここ数日は濃い体験ばっかりだね」
そう言って苦笑する勇二に未希が同調するように苦笑いを浮かべる。
そんな中、二人の会話に耳を傾けながら朝日はズンズンとその足を町の中心へ進めていく。
「ちょ、ちょっと朝日!歩くの早いってば!」
「お前ら、確かギルドの依頼であそこに行ったんだろ?さっさと報告に行った方がいいんじゃねぇか?」
「あ、そういえばそうだった」
「おい」
「いや、そんなことより朝日よく知ってたね?」
「……まぁな。それよりもさっさと行かねぇと、めんどくさいぞ」
「面倒くさいって、なにが…?」
「レイーネ……冒険者ギルドのギルド長だよ」
朝日の口から出てきたのはリユニオンの冒険者ギルドでギルド長を務める青髪のエルフの名前だった。
「え、朝日あの人と面識あったの?」
「一応、お前らよりも先にこの街についてるからな。、ほしい情報があったんで、協力してもらってた」
「情報?それに協力?」
「別に情報についてはお前らが知りたいようなことはねぇよ。ほとんどオレの興味だ。まあ、その情報の中にはここ最近のお前らの行動についての物もあるんだがな」
「え、なんで!?」
「お前らがおかしなことしてないか見張るためだ」
「えー、そんなことしてないよー」
「嘘つけ!……話が逸れたな。で、協力についてだが、あいつの指名依頼をオレが受ける代わりに、オレの欲しい情報をあいつが仕入れて伝えるってもんだ」
「へー?」
「おかげで仕入れたい情報のほとんどが出そろった。お前らが街に着き次第合流して旅の続行をと、思ったんだがなぁ」
「なにかあったの?」
歩きながら首を傾げる勇二に朝日は無言でデコピンをかます。
「なにかあったの?じゃねぇよ、当事者だろお前」
「いたっ!?当事者って何の!?」
「地下オークション」
「あ……」
地下オークション、この単語から思い出されるのはこの街に来て最初に遭遇した面倒事。
地下空間で行われている違法な奴隷商売、その商人たちに連れ去られたハーフエルフの少女を助けに行った時のことだった。
「あの後火消しが面倒だったんだからな?主犯の貴族は逃げ回るわ、その部下たちが復習計画を立てようとするわで」
「え、あれに朝日もかかわってたの?」
「ああ、ほんとにこの件のせいでどれだけの時間を奪われたか……」
「えっと……お疲れ様でした?」
「いや、お前のせいだからな?」
ジト目で勇二を睨み付ける朝日。
勇二はそんな視線から逃れるように冒険者ギルドへ向けて足を速めていく。
「ほ、ほらほら皆!早くしないとおいて行っちゃうよ!」
「……ホントに変わらねぇな。お前はよ」
「朝日?」
一人先を歩く勇二の背中を見て、思わず口から零れた言葉。
それを聞き留めた未希は心配そうな顔で朝日の顔をのぞき込む。
脳裏によぎるのは昨日の真夜中の朝日と銀色の少女の会話だ。
「……いや、なんでもねぇ」
無意識に行った自分の行動に気づいたのか、朝日は小さく溜息をつき頬を掻く。
「さ、オレ達もあのバカをさっさと追いかけるぞ。あいつの場合街を歩くだけでも面倒事をひっかけてくるからな」
そういうが早いか速足で小さくなった勇二の背を追いかける朝日。
「朝日……」
「兄さん……」
その場に残された二人の少女はそんな朝日の後ろ姿を複雑そうな表情のまま見つめていた。
「行きましょうか……」
「うん。そだね…」

to be continued...

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