異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー
4-14 朝日の過去
「実は、私と兄さんは本当の兄妹ではないんです」
「え?」
華夜の口から出たその言葉に未希は驚き、目を見開いた。
「か、華夜ちゃん。それって、どういうことなの?」
未希が思わずといった様子で聞き返す。
「そのままの意味ですよ。私と兄さんは戸籍所は兄妹ということになっていますが、血が繋がっていないんです」
「それじゃあ、二人は…?」
「ええ、義兄妹ということになりますね」
「そう、なんだ…」
「ええ。ちなみに一応言っておきますと、うちの両親と血がつながっているのは私の方で、兄さんはどちらとも血の繋がっていない養子、ということになります」
「華夜ちゃんはそれを知ってたの?」
「…いえ。この世界に来て、兄さんと再会して暫く経った時に初めて聞かされました」
そういって何かを考え込むように視線を落とす華夜。
数秒後、華夜は伏せていた顔を上げ、未希の瞳を真っ直ぐに見つめる。
「未希さん」
「な、なに?」
「未希さんは兄さんの御友人ですよね?」
「へ?」
「私がこれから話すことを聞いても、変わらずに兄さんとトモダチでいてくれますよね?」
そういって真剣な眼差しで未希の目をのぞき込んでくる華夜の瞳には不安と焦燥がチラついていた。
「…勇二は華夜ちゃんの言いたいことに何か見当はついてるの?」
「うん。大体はね」
「それは聞かなきゃダメなんだよね?」
「未希の判断に任せるよ」
勇二の口から出たその短い言葉を噛みしめるように目を瞑った未希は少々の長考の後、答えが出たのかいまだに不安そうな眼差しでこちらを見つめている華夜の瞳を見つめ返す。
「…わかった。華夜ちゃん話を聞かせてくれる?」
未希のその言葉に華夜は小さくホッと息を吐くと、未希の言葉に応えるように小さく頷いた。
「ありがとうございます、未希さん。あなたのようなトモダチがいる兄はとても幸せ者です」
「では、少し昔の話をしましょう。すべての始まりは十数年前。兄さんが養子として我が家に引き取られた時のことです…」
-------------------------------------------------------------
地球の、日本のある街に一組の夫婦がいた。
その夫婦はある一点を除いて、一般的な幸せな夫婦だった。
その一点とはズバリ、『子供』である。
この夫婦は結婚してからそれなりの年月が経ったにも拘らず未だに子を成していなかったのだ。
別に夫婦のどちらかに問題があったわけはない。
たまたま巡り合わせが悪かっただけなのだ。
このままではいけないと思った夫婦は考え、ある答えに行きついた。
養子をとればいいのではないか、と。
通常、養子をとったりする際には裁判所からの許可が必要であり、書類の手続きがあったりと面倒な点が多いのだが、この夫婦には関係のないことだった。
そして、夫婦はついに県外にある小さな孤児院を訪れた。
その時、その夫婦は孤児院でその男の子を見つけた。
‘黒い髪,にこげ茶の瞳をした小さな男の子だった。
特に容姿が目立つわけでもない普通の男の子だ。
だが、その夫婦は何故か、その男の子の事が強く印象に残った。
その子の名前は『朝日』というらしく、よく晴れた日の早朝に孤児院の前に捨てられていた事が名前の由来だそうだ。
男の子のことを痛く気に入った夫婦はその男の子を養子として迎え入れることを決めた。
そして、裁判所の許可が下り、書類の手続きを終えたその日、夫婦とその近親者だけだった戸籍に新しい名前が加わった。
それが『東山 朝日』の始まりだった。
to be continued...
「え?」
華夜の口から出たその言葉に未希は驚き、目を見開いた。
「か、華夜ちゃん。それって、どういうことなの?」
未希が思わずといった様子で聞き返す。
「そのままの意味ですよ。私と兄さんは戸籍所は兄妹ということになっていますが、血が繋がっていないんです」
「それじゃあ、二人は…?」
「ええ、義兄妹ということになりますね」
「そう、なんだ…」
「ええ。ちなみに一応言っておきますと、うちの両親と血がつながっているのは私の方で、兄さんはどちらとも血の繋がっていない養子、ということになります」
「華夜ちゃんはそれを知ってたの?」
「…いえ。この世界に来て、兄さんと再会して暫く経った時に初めて聞かされました」
そういって何かを考え込むように視線を落とす華夜。
数秒後、華夜は伏せていた顔を上げ、未希の瞳を真っ直ぐに見つめる。
「未希さん」
「な、なに?」
「未希さんは兄さんの御友人ですよね?」
「へ?」
「私がこれから話すことを聞いても、変わらずに兄さんとトモダチでいてくれますよね?」
そういって真剣な眼差しで未希の目をのぞき込んでくる華夜の瞳には不安と焦燥がチラついていた。
「…勇二は華夜ちゃんの言いたいことに何か見当はついてるの?」
「うん。大体はね」
「それは聞かなきゃダメなんだよね?」
「未希の判断に任せるよ」
勇二の口から出たその短い言葉を噛みしめるように目を瞑った未希は少々の長考の後、答えが出たのかいまだに不安そうな眼差しでこちらを見つめている華夜の瞳を見つめ返す。
「…わかった。華夜ちゃん話を聞かせてくれる?」
未希のその言葉に華夜は小さくホッと息を吐くと、未希の言葉に応えるように小さく頷いた。
「ありがとうございます、未希さん。あなたのようなトモダチがいる兄はとても幸せ者です」
「では、少し昔の話をしましょう。すべての始まりは十数年前。兄さんが養子として我が家に引き取られた時のことです…」
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地球の、日本のある街に一組の夫婦がいた。
その夫婦はある一点を除いて、一般的な幸せな夫婦だった。
その一点とはズバリ、『子供』である。
この夫婦は結婚してからそれなりの年月が経ったにも拘らず未だに子を成していなかったのだ。
別に夫婦のどちらかに問題があったわけはない。
たまたま巡り合わせが悪かっただけなのだ。
このままではいけないと思った夫婦は考え、ある答えに行きついた。
養子をとればいいのではないか、と。
通常、養子をとったりする際には裁判所からの許可が必要であり、書類の手続きがあったりと面倒な点が多いのだが、この夫婦には関係のないことだった。
そして、夫婦はついに県外にある小さな孤児院を訪れた。
その時、その夫婦は孤児院でその男の子を見つけた。
‘黒い髪,にこげ茶の瞳をした小さな男の子だった。
特に容姿が目立つわけでもない普通の男の子だ。
だが、その夫婦は何故か、その男の子の事が強く印象に残った。
その子の名前は『朝日』というらしく、よく晴れた日の早朝に孤児院の前に捨てられていた事が名前の由来だそうだ。
男の子のことを痛く気に入った夫婦はその男の子を養子として迎え入れることを決めた。
そして、裁判所の許可が下り、書類の手続きを終えたその日、夫婦とその近親者だけだった戸籍に新しい名前が加わった。
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