３－２０　足元注意

勇二達は脱出用魔法『エスケープホール』で作ったトンネルの中を移動していた。
先程は飛んできたために分からなかったが、歩いてみるとなかなかの距離あるため子供達の中にはすでにバテバテの者もいる。
そんな中で未希がなにかを発見したように声を上げる。
「あっ！見えた、出口だよ！」
それはこのトンネルの出口であった。
「よし！みんな、ここの出口まで競争しよう！ほら、行くよ！」
そう言って勇二が走り出すと競争という言葉に反応した子供達が一斉に勇二の後ろを追いかけていった。
「いきなり走ると危ないですよーって、話聞いてませんねアレ」
呆れ気味に溜息をつくラック。
「ふふ、勇二はああやって小さい子供達を乗せるのがうまいんだよ。さあ、私達も走らない？」
対する未希は半分惚気である。
「…このままでは置いて行かれてしまいますし、走るしかないでしょうね」
ラックはそう言って苦笑する。
「ゆーじー！待ってよー！」
「あ、ミキさん。そこ少しくぼんでま「ぷぎゃ！？」…手遅れでしたか」
勇二を追いかけようといた矢先、少しへこんだ土につまずき転ぶ未希。ラックはそれを見て肩をすくめながら未希に手を差し出す。
「大丈夫ですか？」
「う、うん。大丈夫。さ、さあ早くしないと置いて行かれちゃうよ！」
ラックの手を借りて立ち上がった未希は、若干声を震せてそう言い走り出す。動揺しまくりだった。
「成程。これは『あの人』も心配する訳ですね。少しだけ分かります」
ラックはどこかそそっかしい未希の後姿を見てそうひとりごちると自分も二人の後を追うべく走り出すのだった
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勇二達が地上に出ると、そこには予想とは違う景色が広がてっていた。
「あれ？ここは？」
「見たところ、地下居住区のようですね」
「なんで…？」
勇二は疑念のこもった眼差しを未希に向ける。
「えっと…意識してコントロールしたらできた？」
「なんで疑問形なのさ…」
首をかしげそう言った未希に勇二がジト目を向ける。
「ホントに、予想を軽々と越えていく人たちですね」
そんな様子を遠目で見ていたラックは一人しみじみとそう呟くのだった。
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所変わってリユニオンの街の裏オークションの会場の裏手。
そこにある一つの大きなテント中では怒号が響き渡っていた。
「おい！まだ私の奴隷は見つからんのか！」
そう言って握りしめた拳を机に叩き付けるのは小太りな中年の男だ。
実は、この小太りの男は商人で、非合法的な手段を使って捕まえてきた奴隷を売りさばくためにこの街まで来たのだ。
だが、その奴隷たちが数分前に失跡したというのだ。
「は、はい申し訳ありません」
男の目の前で頭を下げ謝罪の言葉を口にする青年。
この男に金で雇われた傭兵である。
「謝罪をする暇があったらさっさと探しに行け！他の者達はどうした！」
青年の謝罪の言葉をそう言って一蹴すると男は声を荒げて奴隷の捜索を命じるが...
「それが…外部からの侵入者を排除するために出ていったのですが、未だに戻ってきていません」
「誰が余計な事をしろと言った！？私が命じたのは奴隷の見張りであって侵入者の駆除ではない！」
青年の口から出た言葉に男はこめかみに青筋を浮かべながらそう怒鳴りつける。
「全く。貴様らのせいでとんんだ大恥をかいた…無駄金もいいところだ」
男はそう言うと腰かけていた椅子の背もたれに背中を預け、何となくテントの天井を見上げる。
「し、失礼します！盟主殿に至急お伝えしたいことが！」
そんな中に、もう一人別の傭兵が入ってきた。
「なんだ？奴隷共が見つかったのか？」
興味なさげな表情をして男が訪ねる。
「え、ええ…。地下居住区付近で三名の男女が十名近い子供を連れている者が目撃されました。おそらく盟主殿の奴隷を奪っていった犯人ではないかと…」
「…そうか。ご苦労」
男はそう言うと椅子から立ち上がりその傭兵に金貨を一枚投げ渡し、号令を飛ばした。
「ならば、今いる傭兵を全員その場に向かわせろ！私の奴隷を奪い返せ！」

to be continued...