異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー
3-12 通行止め
「これは、早速ピンチかな?」
勇二は冷や汗を流しながら自分達の周りを囲っている傭兵たちを見る。
よく観察してみると、彼等の着ている甲冑は全てバラバラなところから所属が異なることが見て取れる。
「貴様ら、何者だ?一体ここで何をしていた!」
そう言ったのは先ほど声を掛けてきた傭兵だ。
「何って言われても…」
対する勇二は頬を掻きながら視線を彷徨わせる。
勇二達はここに来てから‘まだ,何もしていない。
まさか「魔法の爆発でここまで飛んできたところだ」なんてことは言えないし、言っても信じないだろう。
傭兵の質問にどう答えたものか、と勇二が頭を抱えていると...
「たす、けて……」
突然、ラックが傭兵たちのもとに歩き出した。
俯いて歩くその足取りはフラフラとしていて覚束ない様子だ。
勇二と未希が困惑する中、ラックは足取りをそのままに毒気を抜かれている傭兵達のもとまで辿り着く。
そして...
「っしーーーーーーーーー!」
俯いていた顔を上げ、一番近く似た傭兵の頭を蹴りつけた。
一切の敵意、殺意を感じさせずにはなったその蹴りは吸い込まれるようにその傭兵の頭に命中し、昏倒させた。
「は?」
そう呟いたのは一体誰だったか。
甲冑から激しい金属音を立てて倒れ込む傭兵。
周りにいる傭兵達は、まだ現状を把握できていないのかポカンと口を開けている。
その隙にもラックは付近の傭兵を、自身の得物である短剣で肉薄にしていく。
「ユージさん、ミキさん!この場は私一人で何とかします!今なら警備も手薄のはず、行ってください!」
「で、でも!」
「いいから早く!大丈夫ですよ。自己犠牲なんて真似はしませんから!」
ラックのその叫び、その姿に二人は思わず、ここにはいない親友、朝日の面影を幻視した。
「手薄になったとはいえ、まだまだ傭兵はいるはずです!」
ラックはそこまで言うと傭兵達のもとから離れ、一度勇二達のもとに戻ってくる。
「先程こちらにいた傭兵の一人が会場の方に行っているのを見ました。恐らくこのことを知らせに行ったのでしょう。このままだとさらに騒ぎが大きくなるはずです。お二人はその隙を窺って突入してください」
「でもそれだとラックの負担が!」
勇二の言う通りである。
先程からラックは傭兵達を倒し続けているが一向に数が減る気配が見えない。
恐らく、最初にいた部隊はとうに倒し終えていて、今現在戦っているのはその援軍だろう。
「この程度の傭兵、数が増えようとなんてことありません!さあ、早く!」
ラックはそう言うと一瞬で傭兵達のもとに戻り、一人、また一人と傭兵を倒してゆく。
「分かった…後で合流しよう」
その光景を見た勇二は苦虫を噛み殺したような顔をしながら未希の方へ視線を向ける。
「行くよ、未希!」
勇二が叫ぶように名前を呼ぶと、未希は俯いていた顔を上げ静かに頷いた。
「ラック、絶対に合流するよ。約束だからね?」
「分かってますよ。私は約束を破らない主義なんで安心してください」
ここまで来るとラックは苦笑気味だ。
二人はラックに背を向け、そのまま会場の方へ走り出した。
「「行かせるかっ!」」
そんな二人のもとに二人の傭兵が襲い掛かろうとするが…
「「ぐぁ!?」」
何者かに足を取られてその場に倒れ込む。
何事かと自身の足元を見ればそこには自身の影から生える‘正体不明の黒い塊,があった。
「行かせませんよ?」
ラックはそう言って自身の周りに立つ傭兵達を見回し、二人が向かった方向に背を向けて立つ。
「申し訳ありませんが、約束があるので…」
「あなた方はここで退けさせていただきます!」
to be continued...
勇二は冷や汗を流しながら自分達の周りを囲っている傭兵たちを見る。
よく観察してみると、彼等の着ている甲冑は全てバラバラなところから所属が異なることが見て取れる。
「貴様ら、何者だ?一体ここで何をしていた!」
そう言ったのは先ほど声を掛けてきた傭兵だ。
「何って言われても…」
対する勇二は頬を掻きながら視線を彷徨わせる。
勇二達はここに来てから‘まだ,何もしていない。
まさか「魔法の爆発でここまで飛んできたところだ」なんてことは言えないし、言っても信じないだろう。
傭兵の質問にどう答えたものか、と勇二が頭を抱えていると...
「たす、けて……」
突然、ラックが傭兵たちのもとに歩き出した。
俯いて歩くその足取りはフラフラとしていて覚束ない様子だ。
勇二と未希が困惑する中、ラックは足取りをそのままに毒気を抜かれている傭兵達のもとまで辿り着く。
そして...
「っしーーーーーーーーー!」
俯いていた顔を上げ、一番近く似た傭兵の頭を蹴りつけた。
一切の敵意、殺意を感じさせずにはなったその蹴りは吸い込まれるようにその傭兵の頭に命中し、昏倒させた。
「は?」
そう呟いたのは一体誰だったか。
甲冑から激しい金属音を立てて倒れ込む傭兵。
周りにいる傭兵達は、まだ現状を把握できていないのかポカンと口を開けている。
その隙にもラックは付近の傭兵を、自身の得物である短剣で肉薄にしていく。
「ユージさん、ミキさん!この場は私一人で何とかします!今なら警備も手薄のはず、行ってください!」
「で、でも!」
「いいから早く!大丈夫ですよ。自己犠牲なんて真似はしませんから!」
ラックのその叫び、その姿に二人は思わず、ここにはいない親友、朝日の面影を幻視した。
「手薄になったとはいえ、まだまだ傭兵はいるはずです!」
ラックはそこまで言うと傭兵達のもとから離れ、一度勇二達のもとに戻ってくる。
「先程こちらにいた傭兵の一人が会場の方に行っているのを見ました。恐らくこのことを知らせに行ったのでしょう。このままだとさらに騒ぎが大きくなるはずです。お二人はその隙を窺って突入してください」
「でもそれだとラックの負担が!」
勇二の言う通りである。
先程からラックは傭兵達を倒し続けているが一向に数が減る気配が見えない。
恐らく、最初にいた部隊はとうに倒し終えていて、今現在戦っているのはその援軍だろう。
「この程度の傭兵、数が増えようとなんてことありません!さあ、早く!」
ラックはそう言うと一瞬で傭兵達のもとに戻り、一人、また一人と傭兵を倒してゆく。
「分かった…後で合流しよう」
その光景を見た勇二は苦虫を噛み殺したような顔をしながら未希の方へ視線を向ける。
「行くよ、未希!」
勇二が叫ぶように名前を呼ぶと、未希は俯いていた顔を上げ静かに頷いた。
「ラック、絶対に合流するよ。約束だからね?」
「分かってますよ。私は約束を破らない主義なんで安心してください」
ここまで来るとラックは苦笑気味だ。
二人はラックに背を向け、そのまま会場の方へ走り出した。
「「行かせるかっ!」」
そんな二人のもとに二人の傭兵が襲い掛かろうとするが…
「「ぐぁ!?」」
何者かに足を取られてその場に倒れ込む。
何事かと自身の足元を見ればそこには自身の影から生える‘正体不明の黒い塊,があった。
「行かせませんよ?」
ラックはそう言って自身の周りに立つ傭兵達を見回し、二人が向かった方向に背を向けて立つ。
「申し訳ありませんが、約束があるので…」
「あなた方はここで退けさせていただきます!」
to be continued...
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