異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー

心労の神狼

3-4 到着!リユニオンの街

フォレストベアとの遭遇から数時間。
すっかり暗くなり始めた大地に一つの大きな灯りがあった。
「見て勇二!街の灯りだよ!」
「おお、ホントだ。ここに来るまでトラブルはあったけど何とかここまでこれたね」
丘の上から覗いた街の灯りを見ながら二人は嘆息し、もう一息とばかりに歩き出す。
(やっと着いたんだ。朝日、もうついてるかなぁ)
数か月前、再会を約束した親友の姿を思い浮かべながら。勇二は心の中でそう呟く。
勇二達は遂に再開の地、リユニオンの街に足を踏み入れるのだった。
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「おお、流石人間国最大の商業の街だね。ほかの街とは活気が違う」
無事に街にたどり着き、一番最初に口にしたのは街に関する感想だった。
「もう夜なのに賑やかだね」
未希の方も視線をキョロキョロとさ迷わせ街を物色している様子だ。
確かに未希の言う通りだ。
見れば道の隅々には多く出店のようなものが開かれている。
「あそこにいるのは…行商かな?」
その視線の先には他の行商人と商談を交わしている商人がいた。
「今までの街よりも心なしか他種族の人たちが多いね」
「うーん。確かこの街の近くにもう一つ港のある街があったからそれも関係しているのかな?」
基本的に勇二が今まで通ってきた街では他の種族の者を見かけることはあまりなかった。
だがこの街には妖精族や獣人族の者たちが少しばかりか多く見受けられた。
「物の集まるところには自然と人も集まるってことだね」
勇二はそんなことを呟いてあたりを見回す。
「勇二?どうしたの?」
「いや、冒険者ギルドどこにあるのかなって。検問の時に聞いた話じゃ街の真中って言ってたけど」
そう言って再びあたりを見回す勇二。
「あの、すみません」
すると不意に後ろから声が聞こえ勇二と未希が振り返る。
「余計なおせっかいでなければ冒険者ギルドまでご案内しましょうか?」
そこには黒髪の少女が立っていた。
勇二は話しかけてきた少女をじっくりと観察する。
少女を一目見て抱いたイメージは‘モノクロ,だ。
その少女は白い革のブーツに同色ショートパンツ、白い革鎧の上に羽織った黒いベスト、左右で白と黒に色の分かれたマフラーを首に巻いていた。
背丈は平均よりも小さい自分の肩あたり、この世界ではなかなか目にすることのない長い黒髪を後頭部で束ねポニーテールにしていた。
勇二達を見つめるその瞳は黒曜石のごとく黒い。
まだ幼さの残る彼女だが、纏う雰囲気には落ち着きが感じられどこか大人びて見える。
「迷惑なんてとんでもない!むしろこっちからお願いしたいところだよ。ところで、君は?」
勇二がそういうと少女はハッとしたように居住まいを正す。
「私はラックと言います。こんななりですが一応Bランク冒険者です」
そう言って少女、ラックは勇二たちに自身の腰のベルトに括り付けた二本の短剣を見せる。
「なら同業者だね。僕は勇二、でこっちは未希。ランクはあと少しでB、かな?」
それを聞いたラックは勇二に手を差し出す。
「こうやって出会ったのもきっと何かの縁です。歩きながらこの街の事を紹介しましょう」
そう言いながらラックは「まぁ、私も先週着いたばかりなんですけどね」と苦笑する。
「それでも先立ちがいるのとないのとでは大分違うからね。ありがたいよ」
勇二もそう言ってラックの手をとる。
「未希さん?」
「へ?あ、うん!宜しくね!」
勇二の手を取ったラックは続いてなぜか勇二の後ろで一人百面相をしていた未希の方に手をやる。
それに気づいた未希は驚きながらも笑顔でその手をとった。
「さぁ、では早速冒険者ギルドに向かいましょうか」
その言葉に勇二と未希は一度視線を見合わせ頷く。
それを見たラックは冒険者ギルドのある方に歩いていく。
勇二と未希もそれに続き、時折ラックに質問などをしながらその足を進めていくのだった。

to be continued...

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