異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー

心労の神狼

2-12 討伐作戦

ギルド長からの呼び出しから三日後の昼過ぎ、ギルド前にはたくさんの冒険者が集っていた。
「おぉ、けっこーいるね!」
「そうだね。大体四十人くらいかな?」
その中に朝日達はいた。
「…見た感じ、街の兵士も数人混じってるな」
「諸君!よくぞ集まってくれた!」
朝日たちがそんな会話をしていたところギルド前に立ち、大声で冒険者たちに呼びかけている赤髪の男の声が聞こえた。
「俺はBランクパーティ『世界樹の木陰』のリーダーのジョウという。ギルドより直々にこの作戦の指揮を執るように命じられた。この作戦の最終目的はリザーブの森に潜むゴブリンたちの殲滅だ!全員心してかかれ!」
男、ジョウが一度そこで区切ると、集まった冒険者たちを眺め、続ける。
「出発は今より一時間後、南門前に集合だ。それまでに各自ギルドでの依頼の受付を済ませておくように、以上だ!各自のご武運を祈る!」
それだけ告げるとジョウは後ろに控えていたパーティメンバーの元に戻っていった。
「成程、高ランク冒険者がいれば自然と士気も高まるし生還率も上がるって寸法か」
朝日が納得したように頷く。
「それよりも受付に行こうよ?」
「そうだね、じゃあ行こっか」
「あの人ごみの中へか?」
「「………少し待とうか」」
朝日が指さしたそこにはたくさんの冒険者たちだごった返していた。
さすがにあの中に突っ込んで依頼を受けるような度胸はない。
その後、朝日達が無事依頼を受けることができたのはそれから十分程経ってからであった。
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「ふん、なかなかの数が集まったんじゃないか?」
朝日は集合場所の南門の城壁に背を預け、手に持った紙を眺めそう呟く。
「朝日、それは?」
勇二が聞いてくる。
「ん?あぁ、参加してる冒険者たちの分布表だ。さっきギルドで貰った。
そういって朝日は紙を勇二に差し出す。
「それによるとDランクが俺たち含め九人、Cランクは十七、Bランクは『世界樹の木陰』のメンバーの四、んでこの街の兵士が十一、計四十一名ってところだ」
「なるほど、でも見た感じそれよりも人数が多いように見えるけど?」
「それは名声のために戦う旅人だったり、協会から派遣された神官だったり、あとは……」
「あとは?」
「………死んだ冒険者たちの装備を剥ぎに来た小汚い連中だろう」
「…なるほど」
「っと、見てみろ。そろそろ出発みたいだぞ」
どうやら二人が話し込んでいるうちに進軍の準備は整ったようだ。
「諸君!俺達はこれよりリザーブの森に奇襲をかける!斥候達の偵察によるとその数、約百五十のゴブリンが確認された!」
その数に思わずどよめく冒険者達。
だがジョウは構わず続ける。
「激戦が予想されるだろうが、この戦いを生き抜きリザーブの街を守る英雄となろうではないか!」
どよめいていた冒険者たちはその言葉によって士気を取り戻す。
「それでは、出撃!」
「「「「「「「オオォォォ!」」」」」」」
その言葉とともに冒険者たちは沸き立ち討伐隊全体がリザーブの森へ進軍を開始したのだった。
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ここはリザーブの森の奥地。
ゴブリンたちが拠点としている場所だ。
いうなればゴブリンの巣窟。
そこには先遣隊たちの発見した数の倍のゴブリンたちがいた。
あるものは肉を食らい、あるもの殺し持ち帰った冒険者を弓矢の的にし、あるものはさらってきた街の娘に己の欲望をぶつけるといった光景がなされていた。
そのゴブリンの中で一際大きな個体がいた。
そのゴブリンはゆっくりとした動作で立ち上がりリザーブの街のあるほうを向く。
その日の夜、ゴブリンの巣は襲撃を受ける。
その結末がどうなるかはまだ、誰にもわからない。

to be continued...

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