異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー

心労の神狼

2-6 買い物

「おっ買い物!おっ買い物!」
「あまりはしゃぐな、ガキかお前は」
「まぁまぁ、女の子は買い物が好きっていうし、ね?」
三人は今、リザーブの街の商業区に来ていた。
リザーブの街は大体三つのフロアに分けられる。
一番外側にある居住区、その内側の商業区、そしてさらにその内側の貴族街だ。
朝日はわざわざ買い物をする必要はないと言い切ったのだが.....
未希が「だって!絶対に替えの着替えとか必要だよ!お洒落とかしなきゃ損だよ!?」といい。
勇二まで「ほら、戦うときにサブウェポン的なものは必要になるでしょ?それに怪我した時の治療道具だってね?」と言い出す始末だ。
朝日は非常に不服ながらも二人の買い物に同行することになった。
なぜなら財布のひもは彼が握っているので。
「大体、怪我の治療なら未希の魔法でどうにかなるだろ」
「それでもあまり使わない方がいいんでしょ?手の内は明かすなっていっつも言ってるじゃん」
思わず悪態をつけばそう返される。
「あ、あった!武器屋さん!」
そういうと未希はさっそく武器屋に直行していった。
「だから少し落ち着きを持てっての……」
朝日達も続いて店に入る。
「ほぉ、中々に品揃えが豊富だな」
思わず朝日がそう呟くと...
「ガハハハッ、そうだろうそうだろう?オレの店はそれがモットーだからな!」
店の奥から背の低い老人がやってきた。
しかしこの老人ただの背の低い老人ではなかった。
「ドワーフか?」
朝日はそれに覚えがあった。
それは妖精族、ドワーフだった。
小さなに体躯に強靭な力を持つ種族だ。
世界中の鍛冶師の半分ほどはドワーフだと言ってもいいほどに鍛冶に誇りを持っている種族でもある。
「ほう?分かるか小僧!」
「あぁ、実際に会って見たのは初めてだがな」
「ドワーフのおじさん、ここの商品は全部おじさんが?」
朝日とドワーフが会話しているところに、先ほどまで店内を見回していた勇二が入ってきた。
「あぁ、その通りだ。それで?どうやらお前たちはすでに武器を持っているようだが……ってちょっと待て、お前さんその武器を見せて見ろ」
その言葉に怪訝そうな顔をした勇二だが言われたとおりに自信の腰に下げた剣を鞘ごとドワーフの男に投げ渡す。
「……やはりそうか」
渡された剣を見てどこか納得したような表情になるドワーフ。
「その剣がどうかしたのか?」
「いや、どうやらこの剣を打ったのは儂の師匠のようだ。ああ、剣は返そう」
そういって勇二に剣を手渡すドワーフ。
「この剣をどこで手に入れた?」
「知り合いに貰った」
「そうか、きっとその知り合いはいい目を持ってるようだ。しかしこれもまた何かの縁だ。気になるものがあったら言ってくれ、出来るだけまけてやろう」
「それは助かる。実はサブウェポンを探していてな」
「成程な、少し待て」
ドワーフはそういって店の奥に引っ込んでいった。
「いやー、こんなことってあるものなんだねー」
「うん、私も少しびっくりした」
ドワーフが店の奥に引っ込んでいっている間三人はそれぞれ会話をしながら店の中の商品を物色していた。
すると...
「いや、すまんすまん。探すのに手間取ってな。ほれ、これなんてどうだ?」
そういってドワーフは店の奥から持ってきた武器を一つ一つ三人に手渡していく。
「これはダガーか?」
渡されたのは全長三十センチほどのダガー。
勇二や未希も同じものを渡されている。
「このダガーは選別だ。そうだな、まずはお前さんにこれをやろう」
そういってドワーフは勇二に小盾バックラーを渡す。
「小盾、ですか?」
「ああ、だがこれはただの小盾ではないぞ?ほれ」
ドワーフはそういうと小盾を裏返す。
そこには数本の刃が収納されていた。
「仕込み盾だ、なかなか作るのに苦労したが敵の意表を突くのにはいいだろう?」
そういって次に未希に向き直る。
「お主は魔法使いのようだからな、これなんてどうだ?」
そういって渡されたには短弓だった。
「弓矢?でも私弓なんて全く使えないよ?」
未希は思わず首をかしげる、が。
「ガハハハッ!もちろんこれにも仕掛けはある。この弓矢はな、魔法の発動媒体だ」
「なるほど、それも敵の意表を突くためか?」
「その通りだ。ああ、もちろん普通美弓矢としても使えるぞ?さて最後のお主だが…」
そ言ってドワーフは手の平にすっぽりと収まるサイズのナイフを手渡した。
「投げナイフか…いいな」
「だろう?もちろん、強度は保証する」
「だろうな。よし、気に入った。いくらになる?」
「そうだな、全部が全部拘りの一品だからな。金貨二枚と大銀貨五枚でどうだ?」
「流石に高いな……よし、矢と投げナイフ、あと解体用のナイフも付けてくれ」
「ふむ、まぁそれぐらいが妥当なところか?よし、それで手を打とう!」
そういうとドワ―フと朝日は金銭と商品を交換する。
そこで勇二が思い出したように尋ねる。
「あ、そういえばおじさんって何て名前なんですか?」
「ん?儂か?儂はダグダという。剣の手入れをしたいときは来い、サービスしてやる。」
そう言いながらダグダは朝日に釣りを渡す。
「ほら、他のところも回るんだろ?さっさと行くぞ」
釣りを受け取った朝日はさっさと買い物を終わらせるため二人を促す。
「あ!そうだった!お洋服みなきゃだった!」
「目的はそれだけじゃないんだけどね」
一気に騒がしくなる店内。
「それじゃあ、ダグダさん!また来ますね!」
そういって勇二を先頭に朝日達は店を出ていく。
「ああ、また来い」
ダグダはそう言って彼らが店を出たのを見送るのだった。

to be continued...

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