異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー

心労の神狼

1-16 疑問

「さて、早速だが聞きたいことがあるんだ、全部はいてもらうぜ?」
朝日がそういった瞬間、国王の目が少しだけ細められた。
「聞きたいことですかな?」
その言葉に朝日は頷く。
「あぁ、まず一つ。今は魔法歴何年だ?」
その言葉に一瞬驚いたような表情をし、すぐに納得のいったという顔になる国王。
ちなみに魔法歴とはこの世界での暦を表す。
「なるほど、我々に不信感を抱いたのはそれか」
「あぁ、その様子だとアンタは勇者たちが残した日記について知っているようだな」
その言葉に、然りと頷く国王。
「日記には先代勇者が召喚された時のあっちの世界での日時が記されていた」
その言葉にさらに納得したような顔になる国王。
「そしてその時期は…四年前だ」
「…本来なら魔王は力を傷をいやすために五十年近く眠るはずなのだがな、今回はたった数年で魔王復活のお告げが来た」
「そこに俺たちが現れた訳だ」
「如何にも」
だが...
「アサヒ殿が不信感を抱いたのは、なぜこのことを告げなかったのか、そうであろう?」
その言葉にコクりと頷く朝日。
「あぁ、本来ならこれはとんでもない異常事態のはずだ。だがアンタらはオレたちにそれを説明しなかった」
何故か...
「それを伝えることでオレ達が魔王退治を躊躇うと思ったから、そうだろ?」
「…はぁ、貴殿は本当に少年なのか?その年でよく一国の王を相手取りそんな切り込んだことを聞ける」
国王はあきれたようにため息をつく。
「あぁ、相違ない。確かにこのことを貴殿たちに話せば魔王退治にためらいが生まれるのではないかそう思った」
「だけど、それは恐らく杞憂だったのではないか、だろ?」
一瞬だけ驚いた顔をする国王、それを見てニヤリと笑う朝日。
「まぁ、確かに普通ならそんなことを聞いたら躊躇うだろうさ」
だがな、と朝日は続ける。
「あいつは、勇二は困った人がいれば誰でも助けちまうんだ、だから少なくともあいつは躊躇わずに戦うぞ?」
「…なるほどな、確かに杞憂だったようだ」
「あぁ、それに俺や未希だってもちろん躊躇わねぇよ」
「ほぅ?それは如何にして?」
「やらなきゃいけない事が沢山あるからな、世界を終わらせるわけにゃいかねーのよ」
「そう、か」
国王はその言葉にしみじみと頷く。
朝日の言動にはそれだけの重みが感じられたのだ。
「…はっきり言ってこんなに早く魔王が復活するのは異常のはずだ、いつ復活するかもわからない、そうだろ?」
「うむ、そうだな、ルシフルよ例の紙を持って来い」
先程から黙り一言ことも話すことのなかったルシフルが頭を下げ懐からある紙を出し朝日に手渡す。
「先程は言うタイミングを見失ったが勇者様方の出発は十日後に決まった」
「十日後?ずいぶん急だが、まぁ致し方あるまい、か」
そしてルシフルから受け取った紙を見る。
「この紙は?」
「その紙は各国の国王に宛てた我が国の王族の紋章入りの手紙だ、もしも他国に行くことがあったらその手紙を持って王城に行くと良い」
「ふーん」
その言葉を聞いた朝日は興味ありげにその手紙を見つめる。
「ま、いいや聞きたいことは聞けたしな」
「…つまり不信感は振り払えたと?」
期待しているような顔で国王が問う。
「いや、不信感はまだ残っている」
しかしその期待を朝日は根元から断ち切る、が
「でも、少しだけなら信頼してやるよ」
そういって朝日は速足で国王の間を後にした。
その場に残ったのはぽかんと口を開けた国王だけであった。

to be continued...

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