異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー

心労の神狼

1-13 仲違い

さて、朝の騒動から一転、朝日達は今食堂にいる。
食堂のテーブルにはおいしそうな白いパンや冷たいスープなどが並べられていた。
朝日達は長机の好きな椅子に座ってっているが空気が若干気まずい。
いつもなら勇二の前や横は未希が座わっているのだが今日は勇二の横に朝日が座わり、その前に未希が座っている形だ。
未希と勇二は先ほどの出来事がまだ頭から離れないのかお互いに顔を合わせようとしない。
だが、やはり気になるのか両者ともにチラチラ、とお互いのことを見てはたまに視線が合い赤面し目を逸らす、といった流れだ。
朝日としては早く二人に仲直りしてほしいものだと考えているのだが。
朝日は朝食を胃袋に流し込みながら真新しい服のポケットにしまい込んだ紙を取り出し目を向ける。
どうやら朝食の後は給仕の付き添いで国王の間に行くらしい。
先程メイドに聞いたところその時に行う儀式というのは、勇者の実力を測定するためのものであるらしい。
実力といえば昨日の模擬戦があったが、この世界に来た時に与えられた知識の中に魔法の存在があった。
恐らく今回測定するのは魔法の適性云々だろう、と大体のあたりを付ける。
しかし...
(なんというかいつもの騒がしさに比べると異常なほどに静かだな…)
実を言うと勇二と未希は先ほどの一軒以来一度も喋っていないのだ。
喋ろうとして、迷って、諦めるというサイクルが繰り返されている。
どうやらお互いに仲直りする気はあるのだろう。
現に「「朝日、ジャム取っ…やっぱいい」」と、このように息ピッタリなやり取りが数回繰り返されている。
そんなこんなで朝日達が朝食を食べていると数人のメイドが食堂に入ってきた。
「勇者様方、国王の間にて国王様がお待ちです。どうぞご同行ください」
そう頭を下げたのはお馴染みのジェーンである。
朝日達は急いで残りのパンとスープをのどに流し込む。
急ぎすぎて喉を詰まらせかけたのは御愛嬌だ。
「はい、分かりました。案内してください」
勇二が先頭に立ちその後に朝日と未希が続く形で朝日達は食堂から出て行った。

to be continued...

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