話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

普通のコンビニ店員とかなり変わったお客さん達

小夜子

第6話「揚げ物事件」



この店には毎日ノルマが全従業員に課せられていた。
どこのコンビニもあるFF(ファーストフーズ)という揚げ物のノルマだ。
揚げ物の名前はコンビニによって違うが、大体一緒である。
差別化を図るためにあえて名前を変えているのだろう。
知っての通り、コンビニの揚げ物は種類がとても多い。
唐揚げ、チキン、アメリカンドック、フランクフルトなどなど。
最近ではドーナッツもあるという多種多様っぷりには驚きを隠せない。




さて、正直言ってこの店の景気は非常に悪く、売上はとてつもなく低い。
なにせ、隣に大型スーパーがあるからだ。おまけに道は狭い道路なので路駐もできないし、そんなことしたらすぐに緑のおっちゃん(警察から民間委託された駐車違反取り締まりの人達。緑色の目立つ服装をしている)がやってきて違反切符を切るだろう。なかなか金取るし(7千~1万程度)。車で買い物に来る人はまずいないので、歩きの人だけが来店する。普通ならすぐに店が潰れても、何ら不思議ではない。




では、何故潰れないのか。それは従業員にノルマを課しているからである。信じられないかもしれなかいが、これは本当の話だ。
そのお店は揚げ物を売る数が他店より抜群に多いのである。
でも、その売上の大半は従業員の自腹である。
そう、ノルマに届かなかった場合は自腹を切らされるのだ。
その数も半端なく、40とか50とかいう尋常じゃない数だ。しかも毎日である。




大体、揚げ物が売れやすい時間帯は昼時(12~13時)夜の帰宅ラッシュ時(18~20時)である。場所によっては違うかもしれないが、この店ではそうだった。




ただ、いくら売れやすいとは言っても流石に限度がある。
毎日、毎日40も50も売れる訳がない。
月末などのお給料日なら財布の紐も緩いかもしれないが、世間は不景気で、普通は必要以上の物を買おうとはしない。賢い人なら定価で割高なコンビニより安いスーパーや百均に行くだろう。正直、無理難題だ。セールならまだしも、平均10~15個売れたらいい所である。だが、売れない場合は絶対に買わされてしまう。筆者も何度も買わされた。正直、これには閉口した…。





そんなある日の事。
その日は夕方から用事があり、早めに店を出る必要があった。勤務時間は朝から夕方まで。だが、そんな日に限って揚げ物セールという試練が筆者の前に立ち塞がった。
しかも店長は「ノルマ分売るまで帰ったらダメよ♪」と無駄に優しい笑顔で怖いことを言うのだから、さあ大変。




店長を恨む暇もなく、筆者はとにかく笑顔で「押し売り」をすることにした。
「いらっしゃいませー」と言いながら、レジで商品のバーコードをスキャンしていく。こちらも店長を余裕で倒せるほどの最高の笑顔を意識して接客する。実際、本当に余裕だ。普段は無愛想で接客し、好きな客だけ笑顔を浮かべて接客する店長にこの筆者が負けるはずがない。余談だが、ネットの地元スレでも店長は有名で、袋詰めのスピードは早い癖に物凄く無愛想だと陰口を叩かれていた。




「今日、〇〇のセールなんですよ。お一つどうですか?」と筆者は明るく勧める。
最高に良い笑顔とハッキリした、ハキハキした口調で勧める←ここ重要。
某芸人みたくチャラく言うのではなく、真面目で好印象を与えるようにイントネーションを調節し、優しく話すことを意識する。一人のお客さんだと優しい人は買ってくれるが、大体は断っていく。これはわかりきったことなので、断られても笑顔で「またお願いしますー」と返しておく。こうすれば客のお角は立たないし、後日買おうかなと思ってくれる人も中にはいる。




特に狙うのは家族連れだ。子供連れだと買ってくれやすく、子供も「ほしい~」と言いだしたら大成功。子供の目線に合わせ、少ししゃがんで声をかけるのも効果的だ。子供の笑顔を嫌がる親はいない。お金がなくてどうしても無理な場合は断られる事もあるが、大抵は買ってくれる。買ってくれた後も「ありがとうございましたー。またお越しくださいませー」と笑顔で明るく振舞う。最後の最後までアフターケアするのが良いお客さんに対する見返りである…。ホントはあまり、こういう考えはよくないんだけどね。




とにかく、独自の攻略法を筆者は短時間で掴み、時間内の勤務で45個という強烈な数字を叩き出した。これには店長もSVも驚いてた。だが、達成感に浸る余裕はない。なにしろ時間がギリギリだ。着替えている最中にも催促の電話が何度もかかってきて「すいません、すいません、すぐ行きますんで!」と平謝りの状態だった。




店長からは「何を急いでるんだろ?」と思われたが理由を説明する暇もない。ともかく着替えを済ませ、簡単に挨拶を済ませてから、自転車を爆走させて目的地へと向かったのであった。




尚、用事にはギリギリ間に合った。
こればっかりはよく頑張ったなと自分で自分を褒めてあげたい。














          

「普通のコンビニ店員とかなり変わったお客さん達」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「エッセイ」の人気作品

コメント

コメントを書く