宗狂皇神曲

紙尾鮪

猿山

我先にと母の体を
  切り取る
             抉りとる
    千切り取る
                 もぎ取る
        奪い取り合う

 まるで猿山に餌を投げ入れた時のように群がり、その餌を我が物にしようと必死で無様、
 そして狂気すら感じるほどの執着心、
血を浴びようとも気にせず、
 肉片を持つ者に対し暴力を以て肉片を得る、
人間ではなく獣の所業。

 なぜこんな事が起こっているのか、
その者はこれも分からなかった。
 そして母の片足を持った男と目が合った、
片足を持った男は
       ―ありがとう―
そう言った。

 なぜこんな事が起こっているのか、
それもまた国教の影響。
 金持ちが行った事により出来た副産物は
神聖な物として崇められ、
持てばその家系は一生裕福になる、
 つまり神へと近づく事が出来る、
そんな教えがあるから。
 もしくは高値で売ることが出来るから……
どっちにしろ神へと近づく事が出来るのだ。

 その者は先程殴りかけた近くにいた人に
なぜこのような事になっているか聞こうとしたが……

 近くにいた人は母の肉片を奪い合っていた。

 この時、その者は人間をバケモノにしか見えなくなった。

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