県立図書館のお話
夏蜜が目を覚ましました。
クルクルクル……
お腹が鳴り、目を覚ます夏蜜。
夕食は今日入院のため準備ができず、病院の隣のコンビニで購入してきたおにぎりをと思っていたのだが、
父の紋士郎が、家の冷蔵庫の中からありったけのものを使い、豪勢な料理を作った。
紋士郎は、料亭の料理人である。
それを、大叔母の福実と共に持ってやって来ていた。
「う、ん……」
「あ、起きたかな?」
揚羽は覗き込む。
「お、おはようございます」
「夕方だよ。ご飯も食べてないから、みんなで食べようかって言っていたんだよ?良かった」
「皆?」
「そう。夏蜜ちゃん。紹介するね」
夏蜜が見える場所に男性が一人と女性が3人、そして赤ん坊がだっこされている。
「夏蜜ちゃん。左が、お兄ちゃんのお父さんの紋士郎。隣がお母さんの真澄。赤ん坊をだっこしているのは、お姉さんの立羽。赤ん坊は瑠璃だよ。そして、俺の曾祖父の妹の竹原福実お祖母ちゃん」
「お、お兄ちゃんの……家族……。あのっ」
「落ち着いて。動いちゃダメだ」
無事な手を握り、笑いかける。
「お兄ちゃんは前に言ったでしょ?夏蜜ちゃんのお父さんが嘘をついてたって。その上に実はね、お父さんと結婚してたお兄ちゃんのお姉さんは、夏蜜ちゃんに会わせてくれない上に、お金を使う、借金とかするお父さんに愛想をつかして、離婚するって。夏蜜ちゃんの方が大事だからって」
「り、離婚……お、お兄ちゃんのお姉さん……綺麗……。夏蜜、いない方が……」
「何言ってるの。あんなふざけた亭主……元旦那より夏蜜ちゃんの方が大事だわ。立羽と言うのよ?ママって呼んでね?」
「何を言ってるの。ママはお母さんでしょ‼夏蜜ちゃん?ママの真澄です?ちょっとおばさんだけど、嫌かしら?」
夏蜜はぱちぱちする。
「ママ……?」
「えぇ。このパパが園長先生とお話をしたのよ?で、お家にって」
「お家にって……あの、夏蜜は……」
「うちの子です‼一応、戸籍はね、一緒に住んでいるおばさんの……お祖母ちゃんの名字をって思っているのよ。眠っている間に勝手に決めてごめんなさいね?立羽が養女にって言っていたけれど、立羽は24で、夏蜜ちゃんは12才でしょう?だから」
そして、示す。
「後で、看護師さんに聞いたから、出来るだけパジャマに着替えしましょうね?ママとお姉ちゃんとお祖母ちゃんが手伝うわ?」
「ちょっと待て‼真澄‼お父さんであるわしがせっかく作った、夏蜜の為の料理を‼食べさせてやらねば‼お父さんが作ったんだからな‼旨いぞ‼食べるか?夏蜜」
必死にアピールする。
「お父さんは料理人なんだぞ?たくさん、料理を作ったぞ?何が食べたい?お魚は嫌いかな?お刺身を持ってきたんだが……」
「お刺身?お祝いですか?」
「いや。お家からちょっと下ったら海だから、良く揚羽と魚釣りに行くんだが、これくらいのアジとかさばいて、毎週のように。ハマチやタイは知り合いに漁船を持っている人がいて、漁で余ったと貰うけれど、今日はアジとタコ、いかそうめんだな……食べるかな?」
目をキラキラさせたのを見て、しっかり釣り用のクーラーボックスに氷を入れてそのなかにしまっていたお刺身などのなまものの料理をとって戻ってくる。
真澄は刺身醤油と、小さい器、お箸を二膳持ってくる。
「なっちゃん……ママが食べさせてあげるわ。何が食べたいかしら?」
「えっと、うわぁ……綺麗……。これ、おじ……お父さんが?すごいです。美味しそう……」
目を見開き、そして、嬉しそうに笑う。
「じゃぁ、食べましょうね?お祖母ちゃんも色々作ってきてくれたのよ?」
「お祖母ちゃんが……ありがとうございます。うれしい」
「じゃぁ」
椅子に座ると、刺身を醤油につけて、醤油の器を近づけ、夏蜜の小さい口に運ぶ。
モゴモゴと口を動かして飲み込むと、
「おいしい……お母さんありがとうございます。お父さんもありがとうございます」
「ありがとうでいいのよ。さきはタコだったからアジにしましょうね」
と真澄は食べさせ始め、その間に父とテーブルを運び、折り畳み椅子を運んできた立羽は、瑠璃を抱いてくれていた大叔母の福実に、
「お祖母ちゃん。はい。皆で食べましょ」
「だんだん。瑠璃はおもなったなぁ……ばあちゃんには無理かもしれんわ」
「またまた。お祖母ちゃん。お祖母ちゃんは何がいいの?揚羽は?お父さんは?」
「刺身を残しといて。俺は、口拭いたりしないと」
母が食べさせるのを、姉が買ってきたティッシュで口を拭く。
「それに、おばちゃん……瑠璃重いから、そこのソファに寝かせて食べた方がいいよ?」
「子供が大きなるんを、だっこで確認できるんは幸せや。夏蜜ちゃんはようなったら、ばあちゃんと出掛けような?お寺さんとか、竹原夏蜜です、言うてご挨拶せないかんけんなぁ」
「竹原夏蜜……新しいお名前……」
「そうやで?夏蜜ちゃんは渡邊じゃのうなったんよ。お家はばあちゃんは離れにおるけど、同じ敷地。一緒に住むんや。蛍池町から、南になってしもうたなぁ。学校も転校することになったんよ」
転校、引越しに不安と戸惑うが、揚羽はなだめるように告げる。
「毎週土曜日か日曜日に図書館に行こう。お兄ちゃんが連れていくからね?」
「図書館……」
「それに考古学博物館も近くにあって、元気になったら散歩に行こう。大丈夫。すぐになれるよ」
真澄と紋士郎は交互に夏蜜に食べさせると、看護師を呼ぶと、薬と着替えを手伝ってもらい、可愛いフリルのついた裾の長いネグリジェ風パジャマに着替える。
そして、嬉しそうにすやすやと寝入ったのだった。
お腹が鳴り、目を覚ます夏蜜。
夕食は今日入院のため準備ができず、病院の隣のコンビニで購入してきたおにぎりをと思っていたのだが、
父の紋士郎が、家の冷蔵庫の中からありったけのものを使い、豪勢な料理を作った。
紋士郎は、料亭の料理人である。
それを、大叔母の福実と共に持ってやって来ていた。
「う、ん……」
「あ、起きたかな?」
揚羽は覗き込む。
「お、おはようございます」
「夕方だよ。ご飯も食べてないから、みんなで食べようかって言っていたんだよ?良かった」
「皆?」
「そう。夏蜜ちゃん。紹介するね」
夏蜜が見える場所に男性が一人と女性が3人、そして赤ん坊がだっこされている。
「夏蜜ちゃん。左が、お兄ちゃんのお父さんの紋士郎。隣がお母さんの真澄。赤ん坊をだっこしているのは、お姉さんの立羽。赤ん坊は瑠璃だよ。そして、俺の曾祖父の妹の竹原福実お祖母ちゃん」
「お、お兄ちゃんの……家族……。あのっ」
「落ち着いて。動いちゃダメだ」
無事な手を握り、笑いかける。
「お兄ちゃんは前に言ったでしょ?夏蜜ちゃんのお父さんが嘘をついてたって。その上に実はね、お父さんと結婚してたお兄ちゃんのお姉さんは、夏蜜ちゃんに会わせてくれない上に、お金を使う、借金とかするお父さんに愛想をつかして、離婚するって。夏蜜ちゃんの方が大事だからって」
「り、離婚……お、お兄ちゃんのお姉さん……綺麗……。夏蜜、いない方が……」
「何言ってるの。あんなふざけた亭主……元旦那より夏蜜ちゃんの方が大事だわ。立羽と言うのよ?ママって呼んでね?」
「何を言ってるの。ママはお母さんでしょ‼夏蜜ちゃん?ママの真澄です?ちょっとおばさんだけど、嫌かしら?」
夏蜜はぱちぱちする。
「ママ……?」
「えぇ。このパパが園長先生とお話をしたのよ?で、お家にって」
「お家にって……あの、夏蜜は……」
「うちの子です‼一応、戸籍はね、一緒に住んでいるおばさんの……お祖母ちゃんの名字をって思っているのよ。眠っている間に勝手に決めてごめんなさいね?立羽が養女にって言っていたけれど、立羽は24で、夏蜜ちゃんは12才でしょう?だから」
そして、示す。
「後で、看護師さんに聞いたから、出来るだけパジャマに着替えしましょうね?ママとお姉ちゃんとお祖母ちゃんが手伝うわ?」
「ちょっと待て‼真澄‼お父さんであるわしがせっかく作った、夏蜜の為の料理を‼食べさせてやらねば‼お父さんが作ったんだからな‼旨いぞ‼食べるか?夏蜜」
必死にアピールする。
「お父さんは料理人なんだぞ?たくさん、料理を作ったぞ?何が食べたい?お魚は嫌いかな?お刺身を持ってきたんだが……」
「お刺身?お祝いですか?」
「いや。お家からちょっと下ったら海だから、良く揚羽と魚釣りに行くんだが、これくらいのアジとかさばいて、毎週のように。ハマチやタイは知り合いに漁船を持っている人がいて、漁で余ったと貰うけれど、今日はアジとタコ、いかそうめんだな……食べるかな?」
目をキラキラさせたのを見て、しっかり釣り用のクーラーボックスに氷を入れてそのなかにしまっていたお刺身などのなまものの料理をとって戻ってくる。
真澄は刺身醤油と、小さい器、お箸を二膳持ってくる。
「なっちゃん……ママが食べさせてあげるわ。何が食べたいかしら?」
「えっと、うわぁ……綺麗……。これ、おじ……お父さんが?すごいです。美味しそう……」
目を見開き、そして、嬉しそうに笑う。
「じゃぁ、食べましょうね?お祖母ちゃんも色々作ってきてくれたのよ?」
「お祖母ちゃんが……ありがとうございます。うれしい」
「じゃぁ」
椅子に座ると、刺身を醤油につけて、醤油の器を近づけ、夏蜜の小さい口に運ぶ。
モゴモゴと口を動かして飲み込むと、
「おいしい……お母さんありがとうございます。お父さんもありがとうございます」
「ありがとうでいいのよ。さきはタコだったからアジにしましょうね」
と真澄は食べさせ始め、その間に父とテーブルを運び、折り畳み椅子を運んできた立羽は、瑠璃を抱いてくれていた大叔母の福実に、
「お祖母ちゃん。はい。皆で食べましょ」
「だんだん。瑠璃はおもなったなぁ……ばあちゃんには無理かもしれんわ」
「またまた。お祖母ちゃん。お祖母ちゃんは何がいいの?揚羽は?お父さんは?」
「刺身を残しといて。俺は、口拭いたりしないと」
母が食べさせるのを、姉が買ってきたティッシュで口を拭く。
「それに、おばちゃん……瑠璃重いから、そこのソファに寝かせて食べた方がいいよ?」
「子供が大きなるんを、だっこで確認できるんは幸せや。夏蜜ちゃんはようなったら、ばあちゃんと出掛けような?お寺さんとか、竹原夏蜜です、言うてご挨拶せないかんけんなぁ」
「竹原夏蜜……新しいお名前……」
「そうやで?夏蜜ちゃんは渡邊じゃのうなったんよ。お家はばあちゃんは離れにおるけど、同じ敷地。一緒に住むんや。蛍池町から、南になってしもうたなぁ。学校も転校することになったんよ」
転校、引越しに不安と戸惑うが、揚羽はなだめるように告げる。
「毎週土曜日か日曜日に図書館に行こう。お兄ちゃんが連れていくからね?」
「図書館……」
「それに考古学博物館も近くにあって、元気になったら散歩に行こう。大丈夫。すぐになれるよ」
真澄と紋士郎は交互に夏蜜に食べさせると、看護師を呼ぶと、薬と着替えを手伝ってもらい、可愛いフリルのついた裾の長いネグリジェ風パジャマに着替える。
そして、嬉しそうにすやすやと寝入ったのだった。
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