負け組だった男のチートなスキル
another story 勇者達①
【勇者サイド】
光助が、魔物に追われていたころ、城内では召喚されて勇者になった生徒達119名が王の居る謁見の間に整列していた。
「そなたたちが、勇者か?」
台座に座る豪華な服装の王冠をかぶった老人が生徒兼勇者たちを見下ろしていた。
その問いに返事するように、先ほどまで案内していた老人が頭を下げて告げる。
「そうです、まだまだ子どもですがステータスはなかなかのものでした」
「そうか、せいぜい役になってもらわないとな」
王は表情を変えずに、そう勇者たちへ告げる。
その物言いが大将らの気に障らないわけがないが、彼らは握り拳を作っただけで騒ぎを起こすようなことはしなかった。
上の者には媚びる、そして下の者は虫けら同然、その理性が彼らを抑えつけていたのだ。
そのため大将らは見る限りでは、大人しく平然を装っていた。
「では私からあなた方にこれからしてもらいたいことを説明します」
先ほどの老人が前に立ちそう口を開いた。誰もが彼に視線を向ける。
「ではまずあなた方が戦えるようになるまで稽古をしてもらいます。いくらステータスが高いからと言ってもレベル1では平民たちより少し強い程度、であるなら戦い方をしっかり身に付け、その稽古の中でレベル上げもしてもらいます」
「分かりました、ではその後は?」
大将がすぐにそう尋ねた。その問いの速さに老人は怪訝そうな顔をしたが、直ぐに表情を戻し口を開いた。
「その後はあなた方の召喚された理由である魔王討伐をしてもらう予定です」
「魔王ですか?」
玲那が驚いた様子でそう尋ねた。
「そうです、魔人族の王である魔王を討伐してほしいのです。彼が現れてから人間族は日に日に土地を奪われ、このままでは人間族は滅んでしまいます。それを阻むために魔王を討伐しなければならないのです」
「分かりました。今すぐにでも稽古をしましょう」
大将が威勢よくそう答える。
周りのみんなも、傍若無人の大将とは思えない彼の態度に戸惑っていたが、次第に頷く者たちが増えていく。
この瞬間から実質的に大将がこの集団のリーダーになった。
「ではあなた方の部屋へ案内いたします」
老人はそう言って謁見の間から出て行く。そしてその後を勇者たちは着いていった。
部屋は5人は入れるような部屋がいくつか用意された。
部屋の割り振りは自由だった。まず初めに大将、駿佑に加え、それらと仲の良い功樹、拓哉、敦が同室となった。
このグループは学校は2学年ながらも学校を仕切るほどのグループである。
運動神経抜群、容姿端麗で喧嘩も強く、彼らを知らないものは学校だけに留まらず町全体が知っているほどだった。そしてその中でも大将は別格で他の4人も彼には逆らえない。
3学年は最上級生ながらもこの世代は学力重視に選抜された学年のため、実質的には2学年には逆らえないでいる。
そんな情けない現実に不満を持つものもいたが、彼らに逆らうだけ無駄だと冷めた気持ちになっている者がほとんどだった。
ちなみにそんな3学年も光助はいじめの対象であり、時々彼に手を加えていた。
【勇者――大将サイド】
「ふぅ、猫被るのはめんどくせぇな」
大将が部屋にあったベットにダイブしてそう呟いた。
「やっぱり猫被ってたのか、演技力も天才なんだな」
「まあな、俺だし」
駿佑の褒め言葉に対し、照れる様子もなくそう答える大将。
そこで拓哉が言葉を発する。
「でもまさか、光助のやつが本当に落ちるなんてな」
「予想外って程じゃないだろ、見た目と言い能力と言い」
拓哉の言葉に大将がそう答える。
「よく考えたらそうだな」
「っていうか、あいつの事なんてどうでもいいだろ、気分が悪くなる」
大将が不機嫌そうな顔でそう吐き捨てる。
「わ、悪い、じゃあこれからの事でも話すか」
拓哉が焦ったように話題を変えた。
それに対し駿佑、敦、功樹が、話しはじめる。大将はベットに寝転がってそれを聞くようだ。
「あの爺さんが言ってたことをまとめると、これからは稽古して魔王を倒すんだよな?」
真面目な感じで話しはじめたのは功樹だ。
彼は他の4人程荒れてはいない。しかし他の生徒たちと比べるとやはり荒れている部類に入る。
「相変わらず、真面目だな功樹は」
「べつにいいだろ、なんかそうでもしないと、意味が分からないんだからさ」
「まぁ確かにそうだな」
初めに笑いながら功樹に指摘したのは、駿佑、いつでも明るい性格である。
そして肯定したのは拓哉である。特に特徴がないのが特徴だ。
「ファンタジーの世界だよなぁ」
駿佑は楽しそうに剣を振る動きをしている。
「だな、ゲームの中でしか経験できないぜこんなの」
拓哉はそんな駿佑を見て笑っていた。
「ま、俺らにかかれば、魔王なんて一瞬だろうけどな」
自信満々にそう言ったのはさっきまで寝転がっていた大将である。
「確かに大将なら楽勝かもな」
「それは、否定できん」
「たぶん、そうだな」
「きっと、瞬殺だろうな」
他の4人も、大将が負けるイメージなどできず、その発言に対して否定はしなかった。
【勇者――玲奈サイド】
大将グループとは別の部屋。
その部屋に入ったのは、玲那、紗希、勝利、誠である。
何故、男女が同じ部屋に入ったのかというと、このグループには一つ共通点があるからだ。
友達がこれだけしかいないという訳ではない。むしろ人気がある方である。
性格は、温厚で、成績も優秀、容姿端麗、運動神経もそこそこ良い。
このグループは大将らのグループとは決定的に違う特徴があった。それはこの5人の共通点にある。いじめられっこの光助と唯一、友好的な関係を持った人たちなのだ。
「光助やつ今頃大変な目に合ってるんじゃないか?」
そう切り出したのは天運学高校の生徒会長を務めている、3年の神無月 勝利だ。
勝利は責任感が人一倍強く、正義感もそれに乗じて高い。
「そう言われてもね、今はここから出れそうにないわよ」
冷静な口調でそう言ったのは、光助のクラスメイトの玲那である。あくまでこの集団は対等なので先輩後輩の枠は取り払われていた。
「でも、光助先輩が心配です」
涙目になって光助を心配しているのは、1年で生徒会書記の古井 紗希。彼女は光助と同じ中学出身で、慣れない都会の環境で困っていた時に、光助に助けてもらった時に知り合ったのだ。
「落ち着け、今は信じるしかない」
そんな熱い言葉を発したのは、サッカー部主将の、参堂 誠。
言ってしまえば、熱い男で曲がったことが大嫌いな青年だ。だからといって猪突猛進ではなく、しっかりと後先の事は考えている。
「光助の事は信じるしかない、今は自分たちのことを考えないとな」
「そうね、今は状況を理解しないと」
「分かりました……」
勝利と玲那の言葉に一度光助の話題を終え、状況整理を始めた。
「まず神が言ってたのは、ここは異世界だということ」
「ああ、それは本当のようだな」
「そして老人が言ってたことをまとめると、魔王がこの国を攻めてくるのが怖いから私たちに倒してもらいたいと」
「え? そんなこと言ってました?」
玲那の発言に紗希が首を傾げる。玲那は丁寧にそれについて説明をした。
「あの老人が言ってたのは魔王が人間族を滅ぼしてしまうだったかしら? そんな感じに言って魔王を悪く見せてるのよあくまでも自分たちの国だけのことでしょうね」
「そ、そうだったんですか」
「だけど魔王が善人とは限らないけどね」
紗希は感心した様子で玲那の話に頷いていた。
「恐らく稽古を終えるまでは自由にはなれそうにないな」
「じゃあ稽古が終わらない限り。光助先輩を助けることは出来ないってことですか」
「そうなるな」
その言葉に紗希は心配そうに窓の外を見つめた。
それは他の4人も同じことを思い同じ行動をした。誰もが光助の事が心配だったのである。
「まずは強くならないと始まらないぞ」
誠がそう言った。4人は黙ってうなずく。
「光助先輩……無事でいてください」
静かに沙希がそう呟いた。
光助が、魔物に追われていたころ、城内では召喚されて勇者になった生徒達119名が王の居る謁見の間に整列していた。
「そなたたちが、勇者か?」
台座に座る豪華な服装の王冠をかぶった老人が生徒兼勇者たちを見下ろしていた。
その問いに返事するように、先ほどまで案内していた老人が頭を下げて告げる。
「そうです、まだまだ子どもですがステータスはなかなかのものでした」
「そうか、せいぜい役になってもらわないとな」
王は表情を変えずに、そう勇者たちへ告げる。
その物言いが大将らの気に障らないわけがないが、彼らは握り拳を作っただけで騒ぎを起こすようなことはしなかった。
上の者には媚びる、そして下の者は虫けら同然、その理性が彼らを抑えつけていたのだ。
そのため大将らは見る限りでは、大人しく平然を装っていた。
「では私からあなた方にこれからしてもらいたいことを説明します」
先ほどの老人が前に立ちそう口を開いた。誰もが彼に視線を向ける。
「ではまずあなた方が戦えるようになるまで稽古をしてもらいます。いくらステータスが高いからと言ってもレベル1では平民たちより少し強い程度、であるなら戦い方をしっかり身に付け、その稽古の中でレベル上げもしてもらいます」
「分かりました、ではその後は?」
大将がすぐにそう尋ねた。その問いの速さに老人は怪訝そうな顔をしたが、直ぐに表情を戻し口を開いた。
「その後はあなた方の召喚された理由である魔王討伐をしてもらう予定です」
「魔王ですか?」
玲那が驚いた様子でそう尋ねた。
「そうです、魔人族の王である魔王を討伐してほしいのです。彼が現れてから人間族は日に日に土地を奪われ、このままでは人間族は滅んでしまいます。それを阻むために魔王を討伐しなければならないのです」
「分かりました。今すぐにでも稽古をしましょう」
大将が威勢よくそう答える。
周りのみんなも、傍若無人の大将とは思えない彼の態度に戸惑っていたが、次第に頷く者たちが増えていく。
この瞬間から実質的に大将がこの集団のリーダーになった。
「ではあなた方の部屋へ案内いたします」
老人はそう言って謁見の間から出て行く。そしてその後を勇者たちは着いていった。
部屋は5人は入れるような部屋がいくつか用意された。
部屋の割り振りは自由だった。まず初めに大将、駿佑に加え、それらと仲の良い功樹、拓哉、敦が同室となった。
このグループは学校は2学年ながらも学校を仕切るほどのグループである。
運動神経抜群、容姿端麗で喧嘩も強く、彼らを知らないものは学校だけに留まらず町全体が知っているほどだった。そしてその中でも大将は別格で他の4人も彼には逆らえない。
3学年は最上級生ながらもこの世代は学力重視に選抜された学年のため、実質的には2学年には逆らえないでいる。
そんな情けない現実に不満を持つものもいたが、彼らに逆らうだけ無駄だと冷めた気持ちになっている者がほとんどだった。
ちなみにそんな3学年も光助はいじめの対象であり、時々彼に手を加えていた。
【勇者――大将サイド】
「ふぅ、猫被るのはめんどくせぇな」
大将が部屋にあったベットにダイブしてそう呟いた。
「やっぱり猫被ってたのか、演技力も天才なんだな」
「まあな、俺だし」
駿佑の褒め言葉に対し、照れる様子もなくそう答える大将。
そこで拓哉が言葉を発する。
「でもまさか、光助のやつが本当に落ちるなんてな」
「予想外って程じゃないだろ、見た目と言い能力と言い」
拓哉の言葉に大将がそう答える。
「よく考えたらそうだな」
「っていうか、あいつの事なんてどうでもいいだろ、気分が悪くなる」
大将が不機嫌そうな顔でそう吐き捨てる。
「わ、悪い、じゃあこれからの事でも話すか」
拓哉が焦ったように話題を変えた。
それに対し駿佑、敦、功樹が、話しはじめる。大将はベットに寝転がってそれを聞くようだ。
「あの爺さんが言ってたことをまとめると、これからは稽古して魔王を倒すんだよな?」
真面目な感じで話しはじめたのは功樹だ。
彼は他の4人程荒れてはいない。しかし他の生徒たちと比べるとやはり荒れている部類に入る。
「相変わらず、真面目だな功樹は」
「べつにいいだろ、なんかそうでもしないと、意味が分からないんだからさ」
「まぁ確かにそうだな」
初めに笑いながら功樹に指摘したのは、駿佑、いつでも明るい性格である。
そして肯定したのは拓哉である。特に特徴がないのが特徴だ。
「ファンタジーの世界だよなぁ」
駿佑は楽しそうに剣を振る動きをしている。
「だな、ゲームの中でしか経験できないぜこんなの」
拓哉はそんな駿佑を見て笑っていた。
「ま、俺らにかかれば、魔王なんて一瞬だろうけどな」
自信満々にそう言ったのはさっきまで寝転がっていた大将である。
「確かに大将なら楽勝かもな」
「それは、否定できん」
「たぶん、そうだな」
「きっと、瞬殺だろうな」
他の4人も、大将が負けるイメージなどできず、その発言に対して否定はしなかった。
【勇者――玲奈サイド】
大将グループとは別の部屋。
その部屋に入ったのは、玲那、紗希、勝利、誠である。
何故、男女が同じ部屋に入ったのかというと、このグループには一つ共通点があるからだ。
友達がこれだけしかいないという訳ではない。むしろ人気がある方である。
性格は、温厚で、成績も優秀、容姿端麗、運動神経もそこそこ良い。
このグループは大将らのグループとは決定的に違う特徴があった。それはこの5人の共通点にある。いじめられっこの光助と唯一、友好的な関係を持った人たちなのだ。
「光助やつ今頃大変な目に合ってるんじゃないか?」
そう切り出したのは天運学高校の生徒会長を務めている、3年の神無月 勝利だ。
勝利は責任感が人一倍強く、正義感もそれに乗じて高い。
「そう言われてもね、今はここから出れそうにないわよ」
冷静な口調でそう言ったのは、光助のクラスメイトの玲那である。あくまでこの集団は対等なので先輩後輩の枠は取り払われていた。
「でも、光助先輩が心配です」
涙目になって光助を心配しているのは、1年で生徒会書記の古井 紗希。彼女は光助と同じ中学出身で、慣れない都会の環境で困っていた時に、光助に助けてもらった時に知り合ったのだ。
「落ち着け、今は信じるしかない」
そんな熱い言葉を発したのは、サッカー部主将の、参堂 誠。
言ってしまえば、熱い男で曲がったことが大嫌いな青年だ。だからといって猪突猛進ではなく、しっかりと後先の事は考えている。
「光助の事は信じるしかない、今は自分たちのことを考えないとな」
「そうね、今は状況を理解しないと」
「分かりました……」
勝利と玲那の言葉に一度光助の話題を終え、状況整理を始めた。
「まず神が言ってたのは、ここは異世界だということ」
「ああ、それは本当のようだな」
「そして老人が言ってたことをまとめると、魔王がこの国を攻めてくるのが怖いから私たちに倒してもらいたいと」
「え? そんなこと言ってました?」
玲那の発言に紗希が首を傾げる。玲那は丁寧にそれについて説明をした。
「あの老人が言ってたのは魔王が人間族を滅ぼしてしまうだったかしら? そんな感じに言って魔王を悪く見せてるのよあくまでも自分たちの国だけのことでしょうね」
「そ、そうだったんですか」
「だけど魔王が善人とは限らないけどね」
紗希は感心した様子で玲那の話に頷いていた。
「恐らく稽古を終えるまでは自由にはなれそうにないな」
「じゃあ稽古が終わらない限り。光助先輩を助けることは出来ないってことですか」
「そうなるな」
その言葉に紗希は心配そうに窓の外を見つめた。
それは他の4人も同じことを思い同じ行動をした。誰もが光助の事が心配だったのである。
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