異世界でウサギダンジョン始めました

テトメト@2巻発売中!

第36層 報酬

 
「お茶ですぅ~」
「あ、どうもです」
「きゅい!」

サクラと2人で町へと戻ると大歓声で迎えられた。ちょっと引くぐらいの歓声を受けながら町へ入ると、そのまま馬車へ詰められて冒険者ギルドへ連行された。
最悪化け物扱いで石投げられる覚悟を決めていたんだが、英雄扱いをしてもらえるみたいだからまだ良かったな。
ちょっと煩わしいけど、幼女に手を振ってもらえたから俺は満足だ。自殺する必要も無さそうだしな。

「うふふ」

さて、俺達の扱いはまぁいいんだが。この状況はいったいどうしたもんかね。
冒険者ギルドへ連れてこられた俺達はちょっと前にも入ったギルドマスターの部屋に案内されたんだが、ギルドの職員が全員ボンキュッボンなお姉さんに変わってたんだよね。
戦闘が出来るような人が全員出払ってるから女性ばっかり残ったのかね?
にしても、ギルドマスターの部屋なんてそんなに広くも無いのに、5人も職員が居る所為で息苦しいったらありゃしない。唯一の癒しは俺の膝の上でクッキーを齧っているサクラだけだぜ。ギルマスのおっさんも俺に用事があるなら早く来ないかねぇ・・・

「ん、んんぅ・・・」

俺の座っている席の正面にあるギルマスの執務机で前かがみになりながら書類を読んでいた女性が、暑いのか胸元の布を摘んでパタパタしてる所為で胸の天辺がチラチラと見えてしまっている。
今この部屋で作業をしている職員はどの人も胸やら腹やら太ももやらが見えてる布地が少ない服を着てるんだが、寒くないのかね?まぁ、服装なんて個人の趣味だしどうでもいいんだけどな。

服装といえばさっき配下になったイヌミミ幼女だよな。
天真爛漫なボーパルは真っ白いワンピースを着てて、燈火は肩出し脇出しの大きめのシャツに太もも丸出しのホットパンツを合わせたボーイッシュな服装だからなぁ。
イヌミミ幼女は性格的には大人しめの子だから、ロングスカートに短めのジャケットとかどうだろうか。
いや、配下だしメイド服とかでもいいな!
アキバとかで着てる改造メイド服じゃなくって、ロングスカートの本職っぽい清楚なやつね。
メイド服とタレ犬耳のコンボとか素敵やん?

ざわっ

おっと、危ない。ついつい妄想で口元が緩んでしまった。
んん?なんか部屋の空気がざわついているような・・・気のせいか?まぁ、幼女は居ないしどうでもいっか。

「いやぁ、すまんすまん!待たせたな!」
「お待たせしました」

まったくだぞ。こっちは早く帰ってイヌミミ幼女をもふもふしたいというのに。
まぁ、本音をそのまま口にするほど子供じゃないから全然待ってないですよ~て言うけども。

「さて。とりあえず礼を言わせて貰おうか。ジュン君。キミのおかげでダンジョンの氾濫を殆ど被害なく乗り越える事ができた。ありがとう」
「あぁ、まぁ。モンスターを全滅させたのは単についでの八つ当たりだから気にしなくていいですよ」

「”ついで”の”八つ当たり”で俺達の町は救われたのか・・・それこそ、きっちりお礼を言わなければな。ジュン君とは友好的な関係を築かないと”ついで”の”八つ当たり”で町を襲われたらたまったものじゃないからな」

くつくつと小さく笑いを漏らしながらギルドマスターが俺の正面のソファーに座った。
このおっさんぶっちゃけるなぁ・・・まぁ、それだけ俺が信用されているんだろう。
だがわざわざ釘を刺さなくても幼女が沢山住むこの町を俺達が襲うことは無いんだがな。自分から言うつもりは無いけど。

「それでだ。ジュン君には今回の報酬として働きに応じた報酬を渡すと約束していただろう?だが、たった1パーティで氾濫モンスター全てを殲滅したなど、どんな報酬なら釣り合うのかこっちでも判断がつかなくてな。いっその事ジュン君本人に何が欲しいか聞こうと思ってな。何か欲しい物はあるか?言うだけならタダだからな。何でも言ってみていいぞ。俺に叶えられる事なら叶えてやる」

なんだろう。デジャブを感じるセリフだな。ついさっき俺が同じ問いかけを口にして噴出すような答えが返ってきた気がする。
にしても、欲しい物か・・・今日は食材を買いにこの町に来た訳だが、必要な物は大抵DMで出せるし、町で買わなきゃダメな物ってそんなに無いんだよなぁ・・・

「あー、さっきも言いましたがモンスターを殲滅したのはついでなので」
「要らないとかは言ってくれるなよ。町を救った英雄に報酬を渋ったなんて言われたら俺の立場がなくなってしまう。俺を助けると思って何か決めてくれ」

「・・・」

本当に要らねぇんだけどなぁ・・・俺は幼女とイチャイチャ過ごせればそれでいいし。あぁ、早くダンジョンに帰って皆と遊びたい。

「本当になんでもいいんだぞ?町の一等地に豪邸付きでもいいし、Aランク冒険者試験のキップでもいいし、この場にいる女をお持ち帰りしてもいい。可能か不可能かは置いておいて、何でも欲しいものを言ってみてくれ」

「うーん・・・」

金に権力に女ね・・・別にいらねえな。
正直今の状態で大分満たされてるしな。あえて言うなら人間との繋がりはあったほうがいいと思うから、1つ借りにしておいてくれれば一番いいんだが、それは嫌がるだろうしな。
欲しいもの、欲しいものか・・・

「あっ」

「んん?何か思いついたのか?ほら、この子とかオススメだぞ。この町でもNo1の美人だ」
「あんっ♪」
「いえ、そんな人はどうでもよくって。1つ俺に商売の権利を貰えませんか?・・・あ、いや、違う。権利だけ貰っても俺じゃ商売は出来ない。えーっと、お店と店員と・・・とにかく商品を俺が持ってくるのでそれを販売できる状況をください」

うん。これなら完璧だな。一石二鳥・・・いや、三鳥ぐらいあるか?流石俺。早く皆のところに帰るために全力で頭を回転させただけはある。

「ちょっと、ちょっと待ってくれ。えーっと、店だな。それもすぐにでも商売が出来る様に人も揃っている。・・・おう。それぐらいなら準備できるだろうし、店を与えるなら町中にジュン君にきちんと報酬を与えている事も周知できるだろうが・・・何を売るつもりだ?マイナーが過ぎる物だと、ノウハウを持った店員は殆ど居なくなるぞ?」
「あぁ、それなら大丈夫です。俺が売りたい物はこの町にも売っているお店がありましたから。売り方や、適正価格が分からないって事は無いと思いますよ?」

そもそもソレが商品として取引されている事を知ったのもこの町に初めて来た時だったしな。さっきの戦闘で有用性も知れ渡っただろうし、きっと売れるはずだ。

「・・・で?結局何を売りたいんだ?」

俺が脳内で未来予想図を描いて、うんうんと頷いていると、痺れを切らしたギルドマスターが尋ねてきたのでにっこりと笑って答えを教えてあげることにした。

「はい。俺がこの町で売りに出したいのは――――――ウサギの従魔です♪」

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