異世界でウサギダンジョン始めました

テトメト@2巻発売中!

第34層 ダンジョンマスター

 
カツンカツンと足音を立てながら階段を下りていく。
幼女を食べる(意味深)しようとした犬畜生モンスターのダンジョンは山の中腹に入り口があり、中は洞窟系のダンジョンだな。
壁がぼんやりと光り、明かりを確保できているこのダンジョンの中はアリの巣の様に通路と部屋が絡み合って下へ下へと伸びていっており、適当に進めば迷子になったり、挟み撃ちにあったりするであろう構造になっている。
まぁ、入り口から桜を雪崩こませてミキサーした後に、兎海戦術でマップ全てを丸裸にしたから迷いようが無いんだけどな。
ダンジョンに残っていた敵も全て経験値になったし、そのままダンジョンコアまでウサギ達に破壊してきて貰ってもいいんだが、俺に喧嘩売ってきやがった相手の顔ぐらい一目見ておこうと思ってダンジョンコアのある小部屋に移動ナウ。
にしても、やっぱり普通のダンジョンってこういう迷宮っぽいタイプだよな。家の大部屋ダンジョンも早いとこ何とかしないと、水攻めとか喰らったら対処法があんまり無いぞ。

「むむぅ・・・」
「キャージュンニィコワイヨー(棒)」

人がダンションの改造案を考えているというのに、俺の右手に抱きついてぶら下がっている燈火がめっちゃ妨害してくる。
レベルアップのおかげで、ちっちゃい燈火をいくらぶら下げていても問題ないが、幼女の重みと体温が袖越しに俺の腕へと伝わってくる上に、俺の手のひらを太ももの際どい場所で挟み込んでいる所為で思考能力の殆どが右腕に奪われていく。
だって燈火がもみもみって太ももを擦り合わせるんだもん。間に挟まれた俺の右手がむにむにするんだもん。右手がぽかぽかと温かいんだもん。
こんなの考え事が続けられる訳ないじゃないか。むしろ自分との戦いで忙しい。何故俺は敵陣で自分と戦っているんだろう。ダークリ○クかな?

「・・・?燈火は暗いのが怖いの?敵のダンジョンが怖いの?心配しなくてもあたち達がみ~んなやっつけたから大丈夫なの!」
「ん?違うよボーパルちゃん。これはね、ラッキースケベなんだよ。暗い所で女の子が怖いよ~って言ったら好きな人に抱きついてもいいんだよ!ラッキースケベなら仕方ないんだよ!あ~怖いな~、暗闇怖いよ~。すりすり、すきすき」

うん。知ってた。なんだろう。お饅頭怖いと似たような雰囲気を感じる。
それと、意図してやるのは果たしてラッキースケベと言えるのだろうか。ただのスケベな気がする。いや、突っ込まないけど。言わなきゃセーフ。

「なるほど。分かったの!じゃぁあたちも暗いの怖いの~。とぅ!」
「おわっとっと・・・」

燈火の反対側の左手側に回ったボーパルがピョンと俺の左手に飛びついて、よじよじと登ってくる。

「えへへ~。ジュンあったかいの~」

右手を太ももに挟み込んでぶら下がっている燈火と違い、俺の肩の上に顎を乗せる程上に登って来たボーパルからはふんわりと太陽と草の匂いがする。
横を向いたらキスをしてしまいそうな程至近距離にあるボーパルの吐息が俺の耳に吹きかかってゾクゾクと背筋が震えてくる。

「じゅんにぃ、じゅんにぃ。後どれぐらいで奥に着きそう?急がば回れって言うし、遠まわりして行っちゃう?あと、大好き」
「もうちょっとで着くの。具体的にはあと3分ぐらいで着くの!あとは階段を下りるだけだし、遠回りをする必要もないから大丈夫なの!あたちもジュンが大好きなの!」
「はいはい。俺も大好きだぞ~」

なんか最近ついでの様に告られるんだが、それでいいのか。いや、今さら大好きって言うぐらい告白でも無いか。知ってるし。LikeかLoveかは置いておいて。

「きゅい!」
「ご苦労様なの!」

長かったような、短かったような階段を下まで降りると鉄製の扉があり、その扉を守るように立っていた2匹の迷彩帽子を被って銃っぽいのを持った兵隊ウサギが敬礼で出迎えてくれた。
返礼しようにも、俺は両手がようじょで塞がっているから出来ないので、俺に抱きついている花2人が敬礼してた。締まらねぇなぁ・・・

既にコアのある部屋に着いたのに2人は俺の腕から降りる様子は無いので、手のひらが開いている左手で扉を開けて中に入る。
にしても両手に幼女をぶら下げてボスと対面かぁ~。俺が相手の立場なら絶対に嫌だな。自分の軍勢が文字通り全滅された上にそんな奴が目の前にやってくるとか煽ってるとしか思えん。

実際は舐めてるけど、煽ってはいないんだけどな。さてさて、どんな奴が出てくるかな~っと。

「うにゅぅ・・・」

「・・・えっと、アレがボス?」
「なの!アイツがこのダンジョンのダンジョンマスターなの!」

俺達が入った小さな部屋では、武装したウサギ達に囲まれて、光を放つ球体であるダンジョンコアを抱えてぷるぷると震えているダンジョンマスターが居た。
その姿は、なんというか・・・

「かわいい!じゅんにぃこの子家で飼おうよ!かわいいよ!」
「おい、待て。落ち着け燈火。そいつ敵のボスだから。愛玩動物じゃないから」

俺の右手から飛び降りた燈火が、地面で蹲ってぷるぷる震えているダンジョンマスターのしんなりしている尻尾に抱きついてもふもふしてる。
いいなぁ~俺も、もふもふしたい。

「ひゃっ!・・・うぅ・・・わたし・・・食べる、の・・・?」

「「はぅっ!!」」

突然背後から尻尾を抱きしめられて、ビクンッ!と体を跳ねさせたダンジョンマスターがへにょんと犬耳をへたらせた顔をあげて燈火を涙目で見つめてきた。

相手のダンジョンマスターはボーパルの犬耳バージョンの仔犬幼女だ。
全裸で蹲っているイヌ耳幼女は日焼けなんかした事が無い白い肌に、黒くてサラサラの長髪。小ぶりなお尻の上の辺りから生えている尻尾はふさふさとしており、手を埋めている燈火は幸せそうだ。
また、少女の頭の天辺にはへにょんと垂れた三角のお耳が付いており、黒い大きな瞳には今にも零れ落ちそうな程大粒の涙が浮かんでいる。
そんな子に見つめられたらそりゃハートに矢が刺さりますわ~

「大丈夫だよ~食べないよ~。ね?じゅんにぃ?」
「お、おうよ。幼女を食べるだなんて、そんなことを俺がするわけ無いだろ?」

ダンジョンコアは欲しいけど、ダンジョンマスターを殺す必要も食べる必要も無いからな。
まぁ、生殺与奪の権利を俺が握っているのは確かだけどな。

はっ!まさかダンジョンマスターが幼女の姿をしているのは俺の情に訴えかけて生き残る為!?
くそぅ。なんて卑怯な・・・これじゃあ絶対にトドメを刺せないじゃないか・・・!

「わたし、負けた。たべ、ない?」
「まぁ、そうだな。言って俺らにダメージ無いしな。むしろ経験がガッポガッポだし」
「こんな可愛い子が悪い子のはずがないもんね!」
「ジュンが決めたならあたち達は従うの!」

完・全・敗・北・!
2万の軍勢には勝てても、幼女には勝てなかったよ・・・

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