異世界でウサギダンジョン始めました
第14層 侵入者
「侵入者なの!!」
「ごっふぁ!?なんだ!?・・・ボーパル?おはよう?」
昨日はウサギの気分だったのか、ウサギ形態で俺の胸元に潜り込んできたボーパルのもふもふを堪能しながら、ぐっすりと睡眠を取っていた俺を文字通り叩き起こしたのは、ウサミミ幼女形態のボーパルだった。
俺の胸に跨る形で乗っかって。俺の胸元をゆさゆさしてくるボーパルは今日もかわいいなぁ。なでなで。
俺の胸元を両手で掴んでいる事で奇跡的に隠れてるボーパルのスカートの中が、ゆさゆさとボーパルが体を揺らす度に見えそうで見えないのも実にイイと思います。けしからん。もっとやれ。
「おはようなの!でもそれ所じゃないの!侵入者なの!し・ん・にゅ・う・しゃ・な・の!!」
「シンニュウシャ・・・?真乳者?新入社?侵入者?・・・侵入者!?」
「なの~~~」
寝起きのぼんやりした頭でボーパルを愛でていた俺の意識が覚醒する。
思わず上半身を跳ね上げてしまった所為で、俺の胸に乗っていたボーパルがころんと俺の足元に転がっていった。
チラリと見えた白桃みたいに小振りなお尻が大変キュートでよろしいと思います。
じゃなくて、侵入者!?つまりはこのダンジョンが攻められてるって事か!?まだ、居住区である草原エリアと、作ったばっかりの森エリアしか無い上にモンスターもウサギしか居ないのに?
・・・新しいキャラシートはどこに置いてあったっけかなぁ・・・
「なの!前にジュンが町に行くためにあけた穴が隠蔽してたのに何故か見つかって、万が一を考えて埋めたておいたのにすごい勢いで掘り進められて、森エリアに侵入されたの!今は眷属のウサギ達で足止めをしてるけど、どうなるか分からないの・・・だからあたちも出撃するの!ジュンにはもしもの時の為にここに残って欲しいの・・・」
「ボーパル・・・」
もしもの時のために残って欲しい。その意味は分かる。頭が2つあるのが俺達の強みだ。なのに2人共が一緒に前線に出て両方死んだら意味が無い。それは分かる。
「ボーパルの言いたい事は分かるよ。だが・・・だが断る!ボーパルだけを危険な戦場に送り出して、俺だけが安全な場所で指を咥えて見てられるか!!」
「・・・大丈夫なの。侵入者は1人なの。たった1人に負けるほどあたちは弱くないの」
「分かってるよ。俺が足手まといだってことぐらい。それでも連れてってくれ。頼む」
「・・・」
ベットの上にちょこんと座っているボーパルに頭を下げる。
これは俺のわがままだ。これで断られたら大人しくここで待ってよう・・・
「・・・はぁ。しょうがないの。ジュンはわがままっ子の甘えんぼさんなの。このまま置いていって、いつ戦場に飛び出してくるか分からないぐらいなら最初から連れて行ってあたちが守ってたほうが安全なの」
「ボーパル・・・ありがとう」
そうと決まれば今すぐに準備をしなくては。
俺はボーパルが抱きついてきやすいように着ていた、もふもふのきぐるみタイプのパジャマを脱ぎ捨て、こんなん事もあろうかと用意していた魔法鉄の鎧と剣を装備して草原エリアの階段へと転移した。
敵が存在しているエリアには直接転移は出来ないらしい。厄介な・・・
「ん~。こっちなの!」
「おう!」
わさわさと木々が生えている森の中だというのに、ぴょんぴょんと軽快に茂みをかわしながら進んでいくボーパルを、見失わない様にガサガサと強行突破をして追いかける。
というか、どうやったらあんなにスムーズに移動できるんだ・・・服にも殆ど葉っぱが付着してないし。
俺なんかピカピカだった鎧が既に葉っぱやら汁やらでデロデロだ。これが終わったら洗ってやらないとな。
「森を出るの!」
俺の耳でもウサギ達の声が風に乗って微かに聞こえるようになったころ。そう叫んだボーパルが森エリアの中に点在している、木々が少なくちょっとした広場のようになっている所へと飛び出した。
鎧がクソ重くて喋る元気が無くなっていた俺も続いて飛び出す。
飛び出した瞬間腰の剣を引き抜き、ゼーゼー言いながら敵を探す。
ナンオラー!スッゾオラー!ダッテッメコラー!
「あははははは!みんなくすぐったいよ~。んん。あぁ。全身がもふもふだぁ~。ふにゅぅ~」
「「「きゅい!!」」」
「・・・あたちも混ざるの!」
・・・そこには侵入者を全力で足止め(?)しているウサギ達がいた・・・
いや、俺から見えるのはもふもふしているおっきな毛玉と、その毛玉に頭から突っ込んで、楽しそうに足をパタパタさせてるボーパルの下半身と、放り捨てられた武器たちだけなんだけだな。
くっ!シリアスさんが息してない!この小説始まって以来のシリアスシーンだったのにコミカルな雰囲気になるのが早すぎる!1話も持たんかった!まぁ、今更か・・・
え、え~と、みなさん?辺りに散らばっている武器は飾りですか?武器なんか捨ててかかっていっちゃったんですか?まぁ、確かに侵入者が現れたときの訓練とかはしてなかったけど、一緒に遊ぶってどうよ・・・でも結果的に足止めは大成功してるんだよなぁ。一羽も被害は出てないみたいだし・・・むむぅ。一概に否定もできん・・・
「すんすん・・・はっ!この匂いは!間違いない!私の五感と、第六感と、じゅんにぃセンサーと、乙女の勘と、その他諸々が私の目の前にじゅんにいが居ると告げているぅー!!とぅ!!」
「「「きゅい~~~」」」
「なの~~~」
なんだかドッとした疲れを感じつつ、巨大な毛玉型モンスターに少女が捕食されているシーンに見えなくも無いウサ玉に近づいていくと、なんだか不穏な叫びと共にウサ玉がコロコロと崩れていった。もちろんウサ玉に捕食されていたボーパルもコロコロっと開脚後転をして俺の足元に転がってきた。侵入者グッジョブ。一瞬で中は詳しく見えなかったけど、幼女が肌色多目なだけで俺はハッピーです。
というか、個々は軽いウサギとはいえ、あれだけ重なった状態から自力で脱出しようとするとか、どんだけ怪力の持ち主なんだ・・・
・・・うん。分かってる。むしろ最初に声を聞いた時から分かってた。認めたくなかっただけだ。この”声”と”じゅんにぃ”と言う呼び方に聞き覚えがありまくるからなぁ・・・というかコイツはなんでこんなところに居るんだよ。自分のダンジョンに引きこもってろよ。俺みたいに。
・・・
ち、違うからな?俺はダンジョンマスターなんだから自宅警備が立派な仕事なんだからな?
・・・自宅警備が本業・・・
やべぇ!なにがヤバイって字面がやべぇ!今度近いうちにまた町へ行っておこう。そうしよう。
「じゅんにぃ~!!会いたかったよぉ~~~!!」
おっと。”俺はうさみみ幼女のヒモじゃねえ!”と、心の中で謎の弁明をしている間に、ウサ玉から這い出してきた人影が俺の方へと飛び掛ってきた。
まったく。出会いがしらにジャンプして抱きついてくるのは危ないから止めろと、いつも言ってるのにコイツは。
俺が生前に幼女と合法的にくんずほぐれつするために習った柔道と合気道の合わせ技で投げ飛ばしてやる。
「おい燈火。飛びついてくるのは止めろといつも言ってr・・・誰だお前!?」
「じゅんにぃ、ぎゅぅ~♪うぇへへ♪じゅんにぃの匂いだぁ~。すりすり、すきすき」
俺へと飛びついて、鎧の隙間に無理やり体を押し込み、ぎゅぅ~、くんくん、すりすりしてくるのはどこかで見たことがあるような幼女だった。
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