ユエとリィアンの冒険
クレーママ参上‼
リィアンたちママの子供たちは、基本的に棚でゆっくりしているか、ころころママのベッドで転がっているか、遊んでいることが多い。
小さい子は、ふたつきのカラーボックスで休む。
一応、他のお家の色々な子と情報交換もするので、ママに内緒でママのタブレットを操作している。
使うのはリィアンと、エリオットという名前を付けられたブルーの毛色のシュタイフ社のベアをはじめとするベアたち。
情報は消しておくんだけど、ママの先月と先々月の通信費を見ちゃって、
「……え?」
目を見開いちゃったよ‼
食い入るように見いってるよ‼
手がわなわな震えてるよ‼
ちらっと横から覗き込めば、そこにはでっかく、
『携帯とタブレット使用料金、50000円也』
「な、んで……」
顎落ちちゃった。
その上気絶しちゃった。
それで慌てて皆でご免なさいをしたら、ママが、携帯会社と相談をして、光回線を入れることにしたんだ。
その工事の時もお引っ越しで、ユエとリィアンはいたけれど、月花や大きい兄弟、それに一番ダメだろうと白タグ黒文字のトリスタンや、白タグ赤文字のシュタイフ社の限定兄弟は特に皆、クローゼット行き。
前日の掃除でママは、
「ごめんね。昔は簡単な工事で、外だけ動作するって聞いたのに、部屋の中で工事なんて……ひどすぎる。私の、皆の家が……。家族にも入らせてないのに」
と号泣。
「い、いや、ママ……そこで大泣きしなくても。良い子で皆いるから……」
「うわーん。皆の顔が見えないのがいやぁぁ……」
「ママー!泣かないでよ。ユエも悲しいからぁ……」
と泣くママを手伝い、40人の兄弟をきちんと箱に納めクローゼットに収納。
その代わりにママは自分の服は出したまま……うん、見えてはいけないものはない……はず?
当日、工事の人が、
「ぬいぐるみ多いんですね……アハハ」
ママはしれっと、
「大好きなんですよ‼ゆるキャラが‼」
ママはいつもは別の棚に置いている、きいろいとりのステテコさんをたくさん並べていた。
ママ……並べすぎだよ。
しばらくして帰って貰うと、操作が難しいと電話を掛けて遠隔操作で開通。
それで、ネットが使い放題になったんだけど、最近ママの様子が変。
前は、
「眠れないよー」
と早朝まで起きていたのに、最近は、安定したのか夜中の2時までには眠れるようになった。
で、朝の6時に、遅くても8時には起きて、病院や買い物に行くために準備をしている。
それなのに、突然、ママの体が揺れて倒れちゃった‼
「ママ‼」
「ママ大丈夫‼」
返事がない。
揺すっても起きない。
一応、ユエが鼻を塞ぐ。
「ユエ‼ママ死んじゃうでしょ‼」
「息してるかなーって」
「逆に死んじゃうって‼もう‼」
月花が首筋を触る。
「トクントクン言ってる」
「じゃぁ、大丈夫かな?」
ユエとリィアン、月花で毛布を被せる。
しばらくして目をあけたママは、
「あれ?寝てた?」
「違うよ。気絶だよ。ママ」
「大丈夫?」
「うん、大丈夫大丈夫」
それが3回続いて、今日は、
「えっ?」
と言ったきり、玄関で倒れちゃった‼
鍵は閉めてる。
だから大丈夫。
ママに駆け寄ると、
「痛いよ、痛いよ……苦しいよ……」
と小さい声がする。
はっとすると、ママの抱えている荷物。
ママの手から取ると、
「違うよ……苦しいの、取って……」
本当に苦しそうな泣き声に、荷物を見ると、大きな紙袋とそれにゴムで留められた半透明の袋の中で必死に動いてる……。
慌てて、ママに毛布をリィアンが掛けて、ユエがごむをパチーンと外し、月花が袋をべたべたを気にせず必死にはがした。
すると、薄いピンクの紙に包まれた……兄弟?
紙を破り、中の透明の袋を破ると、茶色とシルバーの混ざった毛色のチリチリと鈴がなる……チーキー‼
「はぁぁ……助かったのです。死ぬかと思いました……ふえぇぇぇ」
10センチ余りの小さい兄弟が、ふえふえと泣きじゃくる。
「最初、このままで郵便局で出されて……お目めが割れちゃったらどうしようって、悲しくて……でも、お声は出せないし、動けなくて……」
小さくなって肩を揺らせる兄弟をユエはだっこする。
「怖かったね……大丈夫だよ。ね?」
「それに、首に食い込んで……」
ちんまりとした新しい兄弟が泣く姿に、兄弟たちは、
「許せない‼ママは?」
「まだ起きないよ。それに変な咳してるのと、喉がヒュウヒュウ言ってる」
リィアンはとんとんとママを叩く。
「待って」
ウンショウンショとトリスタンが体温計を持ってくる。
何とか脇の下に差し込んで、熱を測ると、
「……お熱がある‼風邪だ‼」
「もう一枚毛布を持ってきて‼」
「お薬あるのかな?」
ちなみに兄弟全員は、ママはお薬を飲んでいるのは知ってても、何を飲んでいるのか解らない。
ママが起きるまでどうしようもない。
ユエたちはペンちゃんママたちの事は知っていても、ペンちゃんママはユエたちが動いておしゃべりしている事は知らない。
「あ、ネットだ‼ママの携帯‼メール‼」
「でも、誰を呼ぶの?ペンちゃんママたちはどこにいるの?」
黙りこむ。
ピクンっと体が動き、目を覚ますママ。
と、
「赦さん……‼うちの子をあんな目に遭わせて‼クレーママ参上‼ご本人に、フリマサイトにうちの子にしでかした仕打ちを、謝罪させてやるわぁぁ、この、オドリャァァー!」
ちなみにママはキレると、ドスの効いたおっさんになる。
「うちの子に……しかも、ガラスの目のテディベアを包装するのに、あんな簡易包装かや‼オドレ、赦せるかやぁぁ‼しかも、もう少し包装を良くしていたら、うちの子を痛め付けずにすんだのに‼やっぱり最悪やがぁぁ‼あのフリマ‼何なんで‼ぶっ潰すで‼おらぁぁ‼……けほっ、ケホ‼」
叫びすぎて咳き込み始める。
「ママ、血、吐かないと良いね」
「それ、テレビの見すぎ。ママは、肺結核、初期で自然治癒してるから大丈夫らしいよ」
リィアンはユエに説明する。
その目の前では咳き込みながら、サイトに入り込み、『クレーママ』となったママが送ってきた兄弟の前のご主人にメールを送りつけつつ、サイトの本部にもクレームを書き込んだ。
……返答がない。
その間ママは、ゼイゼイいいながら解熱剤を、その後晩御飯を押し込んで、喘息の薬の入った大量の薬を飲んだのだった。
ちなみに、一時間後に帰ってきた返答は、
『すみませんでした。グラスアイ(ガラスの目)の事は考えておりませんでした。私のミスです。でも、言ってくだされば、包装や送付方法も変更しました。それよりも、可愛らしい包装にした方が喜ばれるかと思いまして……』
に、クレーママはますますキレ、
「ほんじゃぁ何か?あぁ?値下げしますと、送料込みと書いておきながら、簡単な包装で140円の送料で送りつけて、大事なうちの子を危険にさらしたやとぉ?冗談じゃないわ‼」
と、クレーママお得意の言葉尻や、書かれているメッセージの部分をチェックし、その部分を追求するための文章を書き込む。
と、
「あぁ、疲れた……もういやや……。こんな風に言いたくないのに……でも、赦せんのよ……」
うわぁぁん……。
泣き出したママに、小さい兄弟が、
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい。あたちが悪いの」
「違うよー!ママは、貴方怒ってないもん。本当にひどい目に遭ったね……でもよくきたね。ママだよ?」
ママは泣きながら、兄弟を抱き締める。
「もう、あのサイト辞める。貴方をうちに迎えられたからもういい。あのネットフリマは、テディベアを大事にしない、購入者のことを考えないサイトだって良く解った。もう辞める。代わりに、皆を大事にする。貴方を大事にする……。貴方の名前は、きららだよ……」
「きらら?」
「そう。水晶。兄弟たちと仲良くしてね?」
「あい」
きららが兄弟になったけれど、ママは熱が上がって寝込んだのだった。
小さい子は、ふたつきのカラーボックスで休む。
一応、他のお家の色々な子と情報交換もするので、ママに内緒でママのタブレットを操作している。
使うのはリィアンと、エリオットという名前を付けられたブルーの毛色のシュタイフ社のベアをはじめとするベアたち。
情報は消しておくんだけど、ママの先月と先々月の通信費を見ちゃって、
「……え?」
目を見開いちゃったよ‼
食い入るように見いってるよ‼
手がわなわな震えてるよ‼
ちらっと横から覗き込めば、そこにはでっかく、
『携帯とタブレット使用料金、50000円也』
「な、んで……」
顎落ちちゃった。
その上気絶しちゃった。
それで慌てて皆でご免なさいをしたら、ママが、携帯会社と相談をして、光回線を入れることにしたんだ。
その工事の時もお引っ越しで、ユエとリィアンはいたけれど、月花や大きい兄弟、それに一番ダメだろうと白タグ黒文字のトリスタンや、白タグ赤文字のシュタイフ社の限定兄弟は特に皆、クローゼット行き。
前日の掃除でママは、
「ごめんね。昔は簡単な工事で、外だけ動作するって聞いたのに、部屋の中で工事なんて……ひどすぎる。私の、皆の家が……。家族にも入らせてないのに」
と号泣。
「い、いや、ママ……そこで大泣きしなくても。良い子で皆いるから……」
「うわーん。皆の顔が見えないのがいやぁぁ……」
「ママー!泣かないでよ。ユエも悲しいからぁ……」
と泣くママを手伝い、40人の兄弟をきちんと箱に納めクローゼットに収納。
その代わりにママは自分の服は出したまま……うん、見えてはいけないものはない……はず?
当日、工事の人が、
「ぬいぐるみ多いんですね……アハハ」
ママはしれっと、
「大好きなんですよ‼ゆるキャラが‼」
ママはいつもは別の棚に置いている、きいろいとりのステテコさんをたくさん並べていた。
ママ……並べすぎだよ。
しばらくして帰って貰うと、操作が難しいと電話を掛けて遠隔操作で開通。
それで、ネットが使い放題になったんだけど、最近ママの様子が変。
前は、
「眠れないよー」
と早朝まで起きていたのに、最近は、安定したのか夜中の2時までには眠れるようになった。
で、朝の6時に、遅くても8時には起きて、病院や買い物に行くために準備をしている。
それなのに、突然、ママの体が揺れて倒れちゃった‼
「ママ‼」
「ママ大丈夫‼」
返事がない。
揺すっても起きない。
一応、ユエが鼻を塞ぐ。
「ユエ‼ママ死んじゃうでしょ‼」
「息してるかなーって」
「逆に死んじゃうって‼もう‼」
月花が首筋を触る。
「トクントクン言ってる」
「じゃぁ、大丈夫かな?」
ユエとリィアン、月花で毛布を被せる。
しばらくして目をあけたママは、
「あれ?寝てた?」
「違うよ。気絶だよ。ママ」
「大丈夫?」
「うん、大丈夫大丈夫」
それが3回続いて、今日は、
「えっ?」
と言ったきり、玄関で倒れちゃった‼
鍵は閉めてる。
だから大丈夫。
ママに駆け寄ると、
「痛いよ、痛いよ……苦しいよ……」
と小さい声がする。
はっとすると、ママの抱えている荷物。
ママの手から取ると、
「違うよ……苦しいの、取って……」
本当に苦しそうな泣き声に、荷物を見ると、大きな紙袋とそれにゴムで留められた半透明の袋の中で必死に動いてる……。
慌てて、ママに毛布をリィアンが掛けて、ユエがごむをパチーンと外し、月花が袋をべたべたを気にせず必死にはがした。
すると、薄いピンクの紙に包まれた……兄弟?
紙を破り、中の透明の袋を破ると、茶色とシルバーの混ざった毛色のチリチリと鈴がなる……チーキー‼
「はぁぁ……助かったのです。死ぬかと思いました……ふえぇぇぇ」
10センチ余りの小さい兄弟が、ふえふえと泣きじゃくる。
「最初、このままで郵便局で出されて……お目めが割れちゃったらどうしようって、悲しくて……でも、お声は出せないし、動けなくて……」
小さくなって肩を揺らせる兄弟をユエはだっこする。
「怖かったね……大丈夫だよ。ね?」
「それに、首に食い込んで……」
ちんまりとした新しい兄弟が泣く姿に、兄弟たちは、
「許せない‼ママは?」
「まだ起きないよ。それに変な咳してるのと、喉がヒュウヒュウ言ってる」
リィアンはとんとんとママを叩く。
「待って」
ウンショウンショとトリスタンが体温計を持ってくる。
何とか脇の下に差し込んで、熱を測ると、
「……お熱がある‼風邪だ‼」
「もう一枚毛布を持ってきて‼」
「お薬あるのかな?」
ちなみに兄弟全員は、ママはお薬を飲んでいるのは知ってても、何を飲んでいるのか解らない。
ママが起きるまでどうしようもない。
ユエたちはペンちゃんママたちの事は知っていても、ペンちゃんママはユエたちが動いておしゃべりしている事は知らない。
「あ、ネットだ‼ママの携帯‼メール‼」
「でも、誰を呼ぶの?ペンちゃんママたちはどこにいるの?」
黙りこむ。
ピクンっと体が動き、目を覚ますママ。
と、
「赦さん……‼うちの子をあんな目に遭わせて‼クレーママ参上‼ご本人に、フリマサイトにうちの子にしでかした仕打ちを、謝罪させてやるわぁぁ、この、オドリャァァー!」
ちなみにママはキレると、ドスの効いたおっさんになる。
「うちの子に……しかも、ガラスの目のテディベアを包装するのに、あんな簡易包装かや‼オドレ、赦せるかやぁぁ‼しかも、もう少し包装を良くしていたら、うちの子を痛め付けずにすんだのに‼やっぱり最悪やがぁぁ‼あのフリマ‼何なんで‼ぶっ潰すで‼おらぁぁ‼……けほっ、ケホ‼」
叫びすぎて咳き込み始める。
「ママ、血、吐かないと良いね」
「それ、テレビの見すぎ。ママは、肺結核、初期で自然治癒してるから大丈夫らしいよ」
リィアンはユエに説明する。
その目の前では咳き込みながら、サイトに入り込み、『クレーママ』となったママが送ってきた兄弟の前のご主人にメールを送りつけつつ、サイトの本部にもクレームを書き込んだ。
……返答がない。
その間ママは、ゼイゼイいいながら解熱剤を、その後晩御飯を押し込んで、喘息の薬の入った大量の薬を飲んだのだった。
ちなみに、一時間後に帰ってきた返答は、
『すみませんでした。グラスアイ(ガラスの目)の事は考えておりませんでした。私のミスです。でも、言ってくだされば、包装や送付方法も変更しました。それよりも、可愛らしい包装にした方が喜ばれるかと思いまして……』
に、クレーママはますますキレ、
「ほんじゃぁ何か?あぁ?値下げしますと、送料込みと書いておきながら、簡単な包装で140円の送料で送りつけて、大事なうちの子を危険にさらしたやとぉ?冗談じゃないわ‼」
と、クレーママお得意の言葉尻や、書かれているメッセージの部分をチェックし、その部分を追求するための文章を書き込む。
と、
「あぁ、疲れた……もういやや……。こんな風に言いたくないのに……でも、赦せんのよ……」
うわぁぁん……。
泣き出したママに、小さい兄弟が、
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい。あたちが悪いの」
「違うよー!ママは、貴方怒ってないもん。本当にひどい目に遭ったね……でもよくきたね。ママだよ?」
ママは泣きながら、兄弟を抱き締める。
「もう、あのサイト辞める。貴方をうちに迎えられたからもういい。あのネットフリマは、テディベアを大事にしない、購入者のことを考えないサイトだって良く解った。もう辞める。代わりに、皆を大事にする。貴方を大事にする……。貴方の名前は、きららだよ……」
「きらら?」
「そう。水晶。兄弟たちと仲良くしてね?」
「あい」
きららが兄弟になったけれど、ママは熱が上がって寝込んだのだった。
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