TraumTourist-夢を渡るもの-
1-5 一週間
麒麟児が僕に宣戦布告をし、訓練所から退散した後
僕たち三人はガッツさん、率いる第1級パーティー"紅蓮風牙"と共にギルドの正面の酒場へと来ていた。
「それで?渉君は麒麟児に勝てそうなのか?」
席について料理を注文するや否や耳と尻尾を力無く項垂れさせたイザベラさんは申し訳なさそうに尋ねてくる。
・・・ちょっと、いや、かなりカワイイ。
「そうですねー。今のままじゃ僕が二人いてやっと良い勝負になるそうですよ?」
そういって僕はチラリとカトラを見る。
カトラは視線に気づいたが何も言わないようだ。
「なるほど。確かにそっちの・・・カトラムルスだったか?は私たちより、いや、麒麟児よりも高い実力を秘めているな。彼に言われたのなら渉君と麒麟児の実力差はそのくらいなんだろう。それに最終的には彼に止めに入ってもらえれば命は取られないだろう。」
「まぁ俺としては渉の死はなんとしてでも回避させますよ。」
・・・うん。
借金返済のためにって言葉を抜くとカトラがとても良い奴に見えるから不思議だなー。
「なかなか仲間想いな男じゃねぇか。気に入った!お前たち、俺たちのパーティー、紅蓮風牙に入れ!」
カトラの目的語を故意に抜いた言葉に感動してガッツさんは心を打たれたようだ。
「ありがたいが妾たちも取り敢えずは3人でどこまでやれるのか知りたいからの。今回は断らさせてもらおう。」
ガッツさんの言葉はロットのナイスなインターセプトによって却下される。
「そうか。そいつぁ残念だな。でも、ま、困ったことがあったら俺たちを頼ってくれ!」
ガッツさんがそう言うと同時に料理が運ばれてくる。
なんていい人なんだ、ガッツさん!
「さぁまだ一週間も後の話は置いといて取り敢えずは食おうじゃないか。ここは俺たちが奢るから遠慮せずに食え!」
「「「いただきまーす。」」」
僕たち6人の親睦会は、お酒に弱いグリンデさんが酔い潰れ、幼いロットが寝落ちするまで続いた。
翌朝、日が登って間もない頃、僕はカトラに連れられて再び懐かしき(一日も経ってないけど)森へと帰ってきていた。
ちなみにロットは未だに宿屋で寝ている。
カトラにロットの警護はいいのかと聞くとサラッと召喚魔法で眷族(麒麟児より戦闘力が高い狼)を召喚して。
「こいつがいれば問題ない。」
と言われた。
カトラと僕は森に入り十分も進まないうちに見えてきた広場で向かい合っていた。
「渉、お前は何故か対人経験が豊富なことは昨日のイザベラとの模擬戦での冷静に弱点を付くところを見てわかった。打って変わって、麒麟児は対人経験がほぼないだろう。つまり渉が麒麟児に勝つために足りないものは戦闘力だけだ。」
それは僕も思っていた。
昨日見た麒麟児の風魔法は確かに強力だったが麒麟児本人から感じられたのは力を手に入れて調子に乗っている子供のような雰囲気だった。
だが、恐らくその感覚は間違っていないんだろう。
カトラが言うには夢の中へは別の夢の記憶を持ち込めない。
持ち込むことができるのは倉庫機能の中身と体が覚えている技や魔法だけだ。
つまり麒麟児はこの世界においては対人戦闘の素人だ。
「それで、ここまで来たってことはカトラと模擬戦でもするのか?」
「いや、俺と模擬戦をしてもあまり戦闘力は伸びないだろう。俺の経験では命の危機がある戦闘において最もステータスの伸びが良い。ということでこれから渉には俺の眷族たちと命懸けの戦闘を一週間行ってもらう。」
・・・いま、めのまえのおとこは、なんていった?
「いやいやいやいや、命懸けの戦闘を一週間って無茶だろ!」
「だがこのままでは渉は一週間後に麒麟児に殺されるぞ?」
「殺されたとしてもそれはこの夢での話だろ?」
僕はカトラの行動の意味がわからず情けないくらい必死に命懸けの一週間を回避しようとする。
「いや、恐らく渉は一週間、麒麟児に本当に殺される。文字通り現実世界でもな。」
「それは向こうで麒麟児が改めて僕を殺しに来るってことか?」
「いや、俺たちはこの世界で普通に死んでも殺されても現実世界では死なない。だが例外もある。その例外が・・・これだ。」
そういってカトラが倉庫機能から取り出したものは一振りの剣だった。
「まさか、魔剣的な?」
「いや、これはごく普通の剣だ。ただしこの世界に存在しない、な。」
「んん?謎かけか?この世界に存在しないのに普通の剣?」
「はぁ、ちょっとはお嬢様くらい頭がよくなれば良いものの。いいか渉。この剣はTPで購入したものだ。この世界に存在しないというのは元々この世界の物ではなく現実世界の物って意味だ。」
「あぁなるほど。で、それが僕たちを本当に殺す物のひとつってことか?」
「そうだ。まぁ難しい話は面倒だから省くが、現実世界で目が覚めたときに元に戻ってるのはこの世界の因子で受けたものだけってことだ。この世界の病気やこの世界での寿命、この世界で作られた物による傷とかな。だから現実世界産の武器で死ぬと本当に死ぬ。」
「それを麒麟児ほ来週の戦いで使ってくると。」
「多分だか腰に掛けていた剣がそれだ。だからこれから渉には俺の召喚獣たちと一週間遊ん、ゴホンッ訓練してもらう。」
こいつ遊ぶ気満々だな。
何を言ってもはぐらかされるから言わないけど。
「我願うは獣
古き盟約に従い
我が前に姿を表せ
召喚獣軍」
カトラの詠唱が終わるとそこかしこに魔方陣が現れそれぞれから虎、狼、犬、ライオン、猿、ゴリラ、鷹と多種多様な獣が出てくる。
「出しすぎじゃない?」
「いや、こんなもんだろ。一応結界を張って誰も入ってこられないようにしてるけど魔物は通すようにしてるから戦闘音で寄ってきた奴もついでに相手しとけよ。」
カトラはそういって街の方へ歩いていく。
カトラの姿が見えなくなると先程まで大人しくしていた獣たちが殺気立つ。
え?なにこれ?いじめ?
「我が主の指示だ。これから一週間寝る間もないと思え。」
リーダーらしき狼が低く唸るとそれを皮切りに次々と獣が襲いかかつて来る。
「いぃーーーやぁぁーーーー。」
獣たちと僕の戦闘は一週間後、最後の一匹を倒すと同時に結界が解除されるまで続くのだった。
戌亥渉 16歳
称号:密航者・借金を背負う者・夢を渡る者・死を見た者・チャラ男の玩具・脱兎・耐える者
Rank1 0RP 3,205円 0TP
「ザースト:ベヴォーナ」
戦闘力 45
生活力 11
学習能力 5
魔力 8
夢力 1
固有:密航
技:首狩り・投擲
技能:頑丈・逃げ足・自然回復(小)・簡易道具作成・隠行
魔法:4級水魔法
ザースト滞在時間4日目
僕たち三人はガッツさん、率いる第1級パーティー"紅蓮風牙"と共にギルドの正面の酒場へと来ていた。
「それで?渉君は麒麟児に勝てそうなのか?」
席について料理を注文するや否や耳と尻尾を力無く項垂れさせたイザベラさんは申し訳なさそうに尋ねてくる。
・・・ちょっと、いや、かなりカワイイ。
「そうですねー。今のままじゃ僕が二人いてやっと良い勝負になるそうですよ?」
そういって僕はチラリとカトラを見る。
カトラは視線に気づいたが何も言わないようだ。
「なるほど。確かにそっちの・・・カトラムルスだったか?は私たちより、いや、麒麟児よりも高い実力を秘めているな。彼に言われたのなら渉君と麒麟児の実力差はそのくらいなんだろう。それに最終的には彼に止めに入ってもらえれば命は取られないだろう。」
「まぁ俺としては渉の死はなんとしてでも回避させますよ。」
・・・うん。
借金返済のためにって言葉を抜くとカトラがとても良い奴に見えるから不思議だなー。
「なかなか仲間想いな男じゃねぇか。気に入った!お前たち、俺たちのパーティー、紅蓮風牙に入れ!」
カトラの目的語を故意に抜いた言葉に感動してガッツさんは心を打たれたようだ。
「ありがたいが妾たちも取り敢えずは3人でどこまでやれるのか知りたいからの。今回は断らさせてもらおう。」
ガッツさんの言葉はロットのナイスなインターセプトによって却下される。
「そうか。そいつぁ残念だな。でも、ま、困ったことがあったら俺たちを頼ってくれ!」
ガッツさんがそう言うと同時に料理が運ばれてくる。
なんていい人なんだ、ガッツさん!
「さぁまだ一週間も後の話は置いといて取り敢えずは食おうじゃないか。ここは俺たちが奢るから遠慮せずに食え!」
「「「いただきまーす。」」」
僕たち6人の親睦会は、お酒に弱いグリンデさんが酔い潰れ、幼いロットが寝落ちするまで続いた。
翌朝、日が登って間もない頃、僕はカトラに連れられて再び懐かしき(一日も経ってないけど)森へと帰ってきていた。
ちなみにロットは未だに宿屋で寝ている。
カトラにロットの警護はいいのかと聞くとサラッと召喚魔法で眷族(麒麟児より戦闘力が高い狼)を召喚して。
「こいつがいれば問題ない。」
と言われた。
カトラと僕は森に入り十分も進まないうちに見えてきた広場で向かい合っていた。
「渉、お前は何故か対人経験が豊富なことは昨日のイザベラとの模擬戦での冷静に弱点を付くところを見てわかった。打って変わって、麒麟児は対人経験がほぼないだろう。つまり渉が麒麟児に勝つために足りないものは戦闘力だけだ。」
それは僕も思っていた。
昨日見た麒麟児の風魔法は確かに強力だったが麒麟児本人から感じられたのは力を手に入れて調子に乗っている子供のような雰囲気だった。
だが、恐らくその感覚は間違っていないんだろう。
カトラが言うには夢の中へは別の夢の記憶を持ち込めない。
持ち込むことができるのは倉庫機能の中身と体が覚えている技や魔法だけだ。
つまり麒麟児はこの世界においては対人戦闘の素人だ。
「それで、ここまで来たってことはカトラと模擬戦でもするのか?」
「いや、俺と模擬戦をしてもあまり戦闘力は伸びないだろう。俺の経験では命の危機がある戦闘において最もステータスの伸びが良い。ということでこれから渉には俺の眷族たちと命懸けの戦闘を一週間行ってもらう。」
・・・いま、めのまえのおとこは、なんていった?
「いやいやいやいや、命懸けの戦闘を一週間って無茶だろ!」
「だがこのままでは渉は一週間後に麒麟児に殺されるぞ?」
「殺されたとしてもそれはこの夢での話だろ?」
僕はカトラの行動の意味がわからず情けないくらい必死に命懸けの一週間を回避しようとする。
「いや、恐らく渉は一週間、麒麟児に本当に殺される。文字通り現実世界でもな。」
「それは向こうで麒麟児が改めて僕を殺しに来るってことか?」
「いや、俺たちはこの世界で普通に死んでも殺されても現実世界では死なない。だが例外もある。その例外が・・・これだ。」
そういってカトラが倉庫機能から取り出したものは一振りの剣だった。
「まさか、魔剣的な?」
「いや、これはごく普通の剣だ。ただしこの世界に存在しない、な。」
「んん?謎かけか?この世界に存在しないのに普通の剣?」
「はぁ、ちょっとはお嬢様くらい頭がよくなれば良いものの。いいか渉。この剣はTPで購入したものだ。この世界に存在しないというのは元々この世界の物ではなく現実世界の物って意味だ。」
「あぁなるほど。で、それが僕たちを本当に殺す物のひとつってことか?」
「そうだ。まぁ難しい話は面倒だから省くが、現実世界で目が覚めたときに元に戻ってるのはこの世界の因子で受けたものだけってことだ。この世界の病気やこの世界での寿命、この世界で作られた物による傷とかな。だから現実世界産の武器で死ぬと本当に死ぬ。」
「それを麒麟児ほ来週の戦いで使ってくると。」
「多分だか腰に掛けていた剣がそれだ。だからこれから渉には俺の召喚獣たちと一週間遊ん、ゴホンッ訓練してもらう。」
こいつ遊ぶ気満々だな。
何を言ってもはぐらかされるから言わないけど。
「我願うは獣
古き盟約に従い
我が前に姿を表せ
召喚獣軍」
カトラの詠唱が終わるとそこかしこに魔方陣が現れそれぞれから虎、狼、犬、ライオン、猿、ゴリラ、鷹と多種多様な獣が出てくる。
「出しすぎじゃない?」
「いや、こんなもんだろ。一応結界を張って誰も入ってこられないようにしてるけど魔物は通すようにしてるから戦闘音で寄ってきた奴もついでに相手しとけよ。」
カトラはそういって街の方へ歩いていく。
カトラの姿が見えなくなると先程まで大人しくしていた獣たちが殺気立つ。
え?なにこれ?いじめ?
「我が主の指示だ。これから一週間寝る間もないと思え。」
リーダーらしき狼が低く唸るとそれを皮切りに次々と獣が襲いかかつて来る。
「いぃーーーやぁぁーーーー。」
獣たちと僕の戦闘は一週間後、最後の一匹を倒すと同時に結界が解除されるまで続くのだった。
戌亥渉 16歳
称号:密航者・借金を背負う者・夢を渡る者・死を見た者・チャラ男の玩具・脱兎・耐える者
Rank1 0RP 3,205円 0TP
「ザースト:ベヴォーナ」
戦闘力 45
生活力 11
学習能力 5
魔力 8
夢力 1
固有:密航
技:首狩り・投擲
技能:頑丈・逃げ足・自然回復(小)・簡易道具作成・隠行
魔法:4級水魔法
ザースト滞在時間4日目
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