TraumTourist-夢を渡るもの-
0-2 指輪
気が付くと見慣れた通学路ではなくホテルの一室のような見覚えの無い部屋に立っていた。
勿論自分からこの部屋に入った記憶はない。ほんの一瞬前まではいつもの通いなれた通学路を歩いて学校へと向かっていたはすだ。
「なんだろ。白昼夢?いや、でも壁に触れている手に伝わる感覚は夢の中のものではなくて現実のものっぽいし。」
近くの壁に触れたときに見覚えの無い腕時計がついていることに気づく。
「見たこと無い時計だな。ってことはやっぱり夢か。」
腕時計が見慣れないものであったことでここが夢の中だと断定し部屋を見回す。
間取りは8畳ほどでシングルベッド、テレビ、腰ほどの高さの棚、そしてベットと壁の間に不自然に置いてある黒い箱部屋唯一の扉は開け放たれており中にはユニットバスが広がっていた。
そこで先ほどから感じていた違和感に気がつく。
「あれ?この部屋って入り口はどこにあるんだ?」
そう、この部屋にある唯一の扉の先にはユニットバスがありどうみてもそこがこの部屋の入り口には見えなかった。
「・・・そうか。これ夢だしな。流石にこんな推理小説もビックリな密室なんて存在しないだろ。まだ本当の僕は部屋のベッドで寝てるんだろうな。よし、おきろっ!」
だがいくら念じてもこの部屋の光景は消えない。
「・・・・・まぁ夢って自分の意思で終わらせることなんてできないしね。そこまで期待なんかしてなかったさ。」
若干気まずくなったので考えることを放棄してベッドに寝転がりテレビでも見て気を紛らわせることにした。
だがテレビの前に置いてあるリモコンでテレビの電源をいれた僕の目に飛び込んできたのは砂嵐、砂嵐、砂嵐。
どのチャンネルを回しても砂嵐で見られる番組が一つもなかった。
「っていや、どんだけだよ!この部屋唯一の娯楽が砂嵐って何だよ!」
そういいながらもチャンネル+のボタンを一心不乱に押し続ける。
その調子でボタンを押し続けること1分。
別に自棄になったわけではなく、未だにチャンネルが一周しないからだ。
「いやっ、一体何個チャンネルが用意されてるんだよ!ラジオかっ!」
既に50チャンネルは見てるはずなのに一向に初めの1チャンネルが廻ってこない。
「あっ!」
すると52チャンネル目を通過するとき一瞬だが砂嵐以外のなにかが映る。
急いでチャンネルを戻すとそれは映った。
朱の服の男と翠の服の男と藍の服の男が手にもった何かを紹介していた。
「「「みんな大好き、視聴率80%越えのモンスター番組!トーラム通販!!!」」」
しかも陽気に。
「って、何が視聴率80%越えのモンスター番組だよっ!このチャンネル以外の番組自体やってないんですけど!?というか残りの20%は何だよ!砂嵐でも見てんのか!」
朱の服の男(軽そう)と翠の服の男(ボブって呼ばれてそう)と藍の服の男(すごい太ってる)の綺麗にハモった台詞についつい突っ込んでしまう。
だが別の番組が何もやっておらず、どこかの20%のように砂嵐を見る趣味なんて無いので諦めて通販を見る。
だが紹介される商品は、
貴方の全てが丸分かり!前世が見える水晶
・・・・・50,000TP
嫌いなやつを呪い殺すときに便利!藁人形
・・・・・30,000TP
どんに重症でもNo problem!生命の泉
・・・・・2,000,000TP
仕事で失敗したときには!使い捨てタイムマシン
・・・・・800,000TP
貴方を理想のスタイルに!ミラーof凹
・・・・・1,000,000TP
等とどれもこれも胡散臭いものばかり、というか最後のは詐欺に近い。
ただの凹ミラーだよね?何でそんなものがタイムマシンより高いのだろうか。
「まぁ詐欺だなんだって思ったところで値段が円じゃなくてTP?なんだから通販番組じゃなくてネタ番組か何かなのかな。全然面白くないけど。」
そんな風に考えてる間にもどんどん商品の紹介は進んでいく。
健康的な歯forever!オリハルコン製総入れ歯
・・・・・500,000TP
なに貴重なオリハルコンを無駄使いしてるんだよ!
子供が野菜を食べない時に!デス・マリオネット
・・・・・100,000TP
デスって言っちゃったよ!子供に何する気だよ!
眠れない貴方に安眠を!KU・GI・BA・TTO
・・・・・8,000TP
釘バットって安眠どころか永眠するわ!
朝、起きられない貴方に!AED
・・・・・492,000TP
これ確実にKU・GI・BA・TTOとセットだよね!?値段的にも
「まともな商品がねぇ!しかもこの番組の終わりも見えねぇ!」
かれこれ1時間は見ているはずだが、朱の服の男と翠の服の男と藍の服の男が延々と順番に何かを紹介しているこの番組は終わる気配がない。
寧ろこんなによく思い付くなという称賛の気持ちも芽生えてきてしまった。
すると朱の服の男の番が回ってきたときこれまでより少し気合いをいれる。
「そして今回の目玉商品!恐らくお嬢様の書類ミスでしょう!しかし商品が売れれば給金も上がるため私は恐れずに紹介したい!」
いや、いくら給料のためだからって書類ミスってわかってるなら紹介するなよ。
「なんと我らがズィノバー家に受け継がれる、蓄積の指輪と呼ばれる神器です!!この指輪は夢の世界での経験を蓄積することができ、尚且つ指輪を付けている間は夢であろうと現実であろうとその記憶をその身に反映させることができるのです!
夢の中で前の夢の記憶があったなら、と思ったことはありませんか?この指輪はその思いを叶えてくれるのです!今ならお値段、なんと300.000TP!お嬢様は一体何の商品と家宝を間違えたのでしょうか。物凄く気になります!!」
朱の服の男のテンションが天元突破しそうなほど上がっているのを、横にいる翠の服の男と藍の服の男が若干引きぎみで眺めている。
「そうか、神器って入れ歯より安いんだ。」
僕が呟くと同時に生中継なのか通販番組の撮影スタジオが騒がしくなる。
「ま、まずいですよー!ズィノバー家の執事長さまの飛び入り参加がありそうです。むむ、このままで私のお給料が消えてしまいますね。テレビの前の皆さん、買うなら今ですよ!今ならなんとお部屋まで商品を直接転送いたしますよ!!あ、グレンさん、もうちょっと待って、」
「やかましいっ!お嬢様のミスだと分かっていながら商品を出品するとは何事だ!しかもよりにもよって蓄積の指輪だと?お前は何を考えているんだ!」
神器を販売しようとしていた朱の服の男に、今にも殴りかからんとするTHE・執事といった見た目の60歳前後の男性の乱入により番組が混沌となってきた。
だが僕は番組がそのようになっているとは気づかず、蓄積の指輪を買うかどうか本気で悩んでいた。
「蓄積の指輪の効果を聞く限り僕の持っているペンダントみたいに夢でも現実でも変わらず存在するアクセサリーなんだよな。じゃあやっぱりあの指輪もこのペンダントみたいに特殊な効果があるのかな?だとしたら欲しい。正直300.000TPって何かわからないけれどどうせこの世界も夢だろうし。でもどうやって注文するんだろ?電話みたいなのもないしあったとしてもどこに連絡するかは一度も紹介されてなかったな。結局はネタ番組か。」
そういってペンダントを見る。
このペンダントを手に入れてから僕に色々な変化が起きた。
まず夢の中で初めて知った知識、習ったことなのに習得が不思議なほどすんなりといくようになった。
これだけだと夢の中ということを考えると不思議でもなかった。
何せ、自分の夢なのだから。
だが不思議な力はこれだけではなかった。
その力は何と現実世界でも現れたのだ。
具体的にいうと、学校の授業で習ったことは軽く問題を解くと習得できるようになった。これにより学校の成績がグンと伸びたのだ
それだけかよと思うかもしれないが考えてもみて欲しい。
教科書を一度読むとその内容を理解できる。ということは試験は常に100点、入試も怖いものなし、経済のことなんか覚えたら将来お金に困ることもない。
そんな力を与えられるペンダントが存在するのだ。
この指輪だって何かすごい力があるかもしれない。
「・・・欲しいな。」
そう呟いた瞬間、執事風の男に指輪を取り上げられそうになっいた朱の服の男の手から指輪が消えるのがテレビ越しにわかった。
「!?くぅっ、手遅れかっ。」
テレビを見ると悔しそうに指輪を今まで持っていた朱の服の男の手を見る執事風の男と、これまた嬉しそうに自分の手を見る朱の服の男が映っていた。
僕はテレビから聞こえてきた朱の服の男や翠の服の男、藍の服の男以外の声にようやくテレビが混沌としていたことに気がつく。
「あれ?この人いつの間に・・・」
出てきたんだ?と言おうとした瞬間
カタンッ
「うおぅっ!」
足元に置いてあった用途不明の箱がひとりでに揺れる。
驚く僕は箱が完全に沈黙したのを爪先でつついて確認してから恐る恐る手を伸ばす。
すると中に何か入っており取り出すとそこには先程テレビで突如消え去った蓄積の指輪が入っていた。
「えっ?・・・これ夢だよね?後で料金請求されないよね?」
これ以上この番組を見続けられなくなった僕はテレビを消し、ベッドに横になるのだった。
「蓄積の指輪をどこの誰かもわからん奴に売っただと!?」
「はい、私の管理が及ばず弁解のしようも御座いません。」
とある一室では50歳ほどの朱髪の男性とその後ろに控えるメイドがおり、執事風の男性が朱髪の男の前で頭を下げていた。
朱髪の男性は言葉ほど感情は動いておらず寧ろ少し興味があるといった風にも見える。
執事風の男性の方も主が怒るどころかこの件を使って娘の社会経験にしようとしているのだろうと考え、だが実際自分の管理が及ばず今回の件が起こった為謝罪の言葉は本心からのものだった。
「で、一体あの神器を買ったものは幾ら支払ったのだ?」
「値段は300.000TPほどだったんですが・・・」
「まさか値引きでも持ちかけられたか?」
言い淀む男に朱髪の男は半ば違うだろうと思いながらも尋ねる。
「それが、買い取った者との連絡がつかず・・・」
「はっはっはっ。まさか持ち逃げまでされるとはな!その買い取った者はなかなか豪胆な者のようだな。」
「調べたところ戌亥渉というまだ夢を渡った経験の無い者のようで。」
男の言葉に朱髪の男は首をかしげる。
「ふむ?夢を渡ったことの無いものがあの番組を見ることができたと?」
「どうやらそのようでして。」
「初めて現実世界に来てあの番組を見るか。何か裏があるかもしれんな。よし、罰という名目でロットを一人でその者のところに行かそうと思ったが、供として奴も付けろ。」
「御意に。」
そういい残し去っていく男の背中を見送りながら朱髪の男は末の娘であるロットを預ける男を思い浮かべる。
「あの男は実力はあるが態度がな。まぁ一日中堅物と一緒にいるよりはマシだろう。」
「何か?」
朱髪の男の言葉が自分のことを指していると気づいたメイドは主を一瞥し口を開く。
「何もないさ。」
朱髪の男はメイドに気づかれないように内心ため息を着くのだった。
勿論自分からこの部屋に入った記憶はない。ほんの一瞬前まではいつもの通いなれた通学路を歩いて学校へと向かっていたはすだ。
「なんだろ。白昼夢?いや、でも壁に触れている手に伝わる感覚は夢の中のものではなくて現実のものっぽいし。」
近くの壁に触れたときに見覚えの無い腕時計がついていることに気づく。
「見たこと無い時計だな。ってことはやっぱり夢か。」
腕時計が見慣れないものであったことでここが夢の中だと断定し部屋を見回す。
間取りは8畳ほどでシングルベッド、テレビ、腰ほどの高さの棚、そしてベットと壁の間に不自然に置いてある黒い箱部屋唯一の扉は開け放たれており中にはユニットバスが広がっていた。
そこで先ほどから感じていた違和感に気がつく。
「あれ?この部屋って入り口はどこにあるんだ?」
そう、この部屋にある唯一の扉の先にはユニットバスがありどうみてもそこがこの部屋の入り口には見えなかった。
「・・・そうか。これ夢だしな。流石にこんな推理小説もビックリな密室なんて存在しないだろ。まだ本当の僕は部屋のベッドで寝てるんだろうな。よし、おきろっ!」
だがいくら念じてもこの部屋の光景は消えない。
「・・・・・まぁ夢って自分の意思で終わらせることなんてできないしね。そこまで期待なんかしてなかったさ。」
若干気まずくなったので考えることを放棄してベッドに寝転がりテレビでも見て気を紛らわせることにした。
だがテレビの前に置いてあるリモコンでテレビの電源をいれた僕の目に飛び込んできたのは砂嵐、砂嵐、砂嵐。
どのチャンネルを回しても砂嵐で見られる番組が一つもなかった。
「っていや、どんだけだよ!この部屋唯一の娯楽が砂嵐って何だよ!」
そういいながらもチャンネル+のボタンを一心不乱に押し続ける。
その調子でボタンを押し続けること1分。
別に自棄になったわけではなく、未だにチャンネルが一周しないからだ。
「いやっ、一体何個チャンネルが用意されてるんだよ!ラジオかっ!」
既に50チャンネルは見てるはずなのに一向に初めの1チャンネルが廻ってこない。
「あっ!」
すると52チャンネル目を通過するとき一瞬だが砂嵐以外のなにかが映る。
急いでチャンネルを戻すとそれは映った。
朱の服の男と翠の服の男と藍の服の男が手にもった何かを紹介していた。
「「「みんな大好き、視聴率80%越えのモンスター番組!トーラム通販!!!」」」
しかも陽気に。
「って、何が視聴率80%越えのモンスター番組だよっ!このチャンネル以外の番組自体やってないんですけど!?というか残りの20%は何だよ!砂嵐でも見てんのか!」
朱の服の男(軽そう)と翠の服の男(ボブって呼ばれてそう)と藍の服の男(すごい太ってる)の綺麗にハモった台詞についつい突っ込んでしまう。
だが別の番組が何もやっておらず、どこかの20%のように砂嵐を見る趣味なんて無いので諦めて通販を見る。
だが紹介される商品は、
貴方の全てが丸分かり!前世が見える水晶
・・・・・50,000TP
嫌いなやつを呪い殺すときに便利!藁人形
・・・・・30,000TP
どんに重症でもNo problem!生命の泉
・・・・・2,000,000TP
仕事で失敗したときには!使い捨てタイムマシン
・・・・・800,000TP
貴方を理想のスタイルに!ミラーof凹
・・・・・1,000,000TP
等とどれもこれも胡散臭いものばかり、というか最後のは詐欺に近い。
ただの凹ミラーだよね?何でそんなものがタイムマシンより高いのだろうか。
「まぁ詐欺だなんだって思ったところで値段が円じゃなくてTP?なんだから通販番組じゃなくてネタ番組か何かなのかな。全然面白くないけど。」
そんな風に考えてる間にもどんどん商品の紹介は進んでいく。
健康的な歯forever!オリハルコン製総入れ歯
・・・・・500,000TP
なに貴重なオリハルコンを無駄使いしてるんだよ!
子供が野菜を食べない時に!デス・マリオネット
・・・・・100,000TP
デスって言っちゃったよ!子供に何する気だよ!
眠れない貴方に安眠を!KU・GI・BA・TTO
・・・・・8,000TP
釘バットって安眠どころか永眠するわ!
朝、起きられない貴方に!AED
・・・・・492,000TP
これ確実にKU・GI・BA・TTOとセットだよね!?値段的にも
「まともな商品がねぇ!しかもこの番組の終わりも見えねぇ!」
かれこれ1時間は見ているはずだが、朱の服の男と翠の服の男と藍の服の男が延々と順番に何かを紹介しているこの番組は終わる気配がない。
寧ろこんなによく思い付くなという称賛の気持ちも芽生えてきてしまった。
すると朱の服の男の番が回ってきたときこれまでより少し気合いをいれる。
「そして今回の目玉商品!恐らくお嬢様の書類ミスでしょう!しかし商品が売れれば給金も上がるため私は恐れずに紹介したい!」
いや、いくら給料のためだからって書類ミスってわかってるなら紹介するなよ。
「なんと我らがズィノバー家に受け継がれる、蓄積の指輪と呼ばれる神器です!!この指輪は夢の世界での経験を蓄積することができ、尚且つ指輪を付けている間は夢であろうと現実であろうとその記憶をその身に反映させることができるのです!
夢の中で前の夢の記憶があったなら、と思ったことはありませんか?この指輪はその思いを叶えてくれるのです!今ならお値段、なんと300.000TP!お嬢様は一体何の商品と家宝を間違えたのでしょうか。物凄く気になります!!」
朱の服の男のテンションが天元突破しそうなほど上がっているのを、横にいる翠の服の男と藍の服の男が若干引きぎみで眺めている。
「そうか、神器って入れ歯より安いんだ。」
僕が呟くと同時に生中継なのか通販番組の撮影スタジオが騒がしくなる。
「ま、まずいですよー!ズィノバー家の執事長さまの飛び入り参加がありそうです。むむ、このままで私のお給料が消えてしまいますね。テレビの前の皆さん、買うなら今ですよ!今ならなんとお部屋まで商品を直接転送いたしますよ!!あ、グレンさん、もうちょっと待って、」
「やかましいっ!お嬢様のミスだと分かっていながら商品を出品するとは何事だ!しかもよりにもよって蓄積の指輪だと?お前は何を考えているんだ!」
神器を販売しようとしていた朱の服の男に、今にも殴りかからんとするTHE・執事といった見た目の60歳前後の男性の乱入により番組が混沌となってきた。
だが僕は番組がそのようになっているとは気づかず、蓄積の指輪を買うかどうか本気で悩んでいた。
「蓄積の指輪の効果を聞く限り僕の持っているペンダントみたいに夢でも現実でも変わらず存在するアクセサリーなんだよな。じゃあやっぱりあの指輪もこのペンダントみたいに特殊な効果があるのかな?だとしたら欲しい。正直300.000TPって何かわからないけれどどうせこの世界も夢だろうし。でもどうやって注文するんだろ?電話みたいなのもないしあったとしてもどこに連絡するかは一度も紹介されてなかったな。結局はネタ番組か。」
そういってペンダントを見る。
このペンダントを手に入れてから僕に色々な変化が起きた。
まず夢の中で初めて知った知識、習ったことなのに習得が不思議なほどすんなりといくようになった。
これだけだと夢の中ということを考えると不思議でもなかった。
何せ、自分の夢なのだから。
だが不思議な力はこれだけではなかった。
その力は何と現実世界でも現れたのだ。
具体的にいうと、学校の授業で習ったことは軽く問題を解くと習得できるようになった。これにより学校の成績がグンと伸びたのだ
それだけかよと思うかもしれないが考えてもみて欲しい。
教科書を一度読むとその内容を理解できる。ということは試験は常に100点、入試も怖いものなし、経済のことなんか覚えたら将来お金に困ることもない。
そんな力を与えられるペンダントが存在するのだ。
この指輪だって何かすごい力があるかもしれない。
「・・・欲しいな。」
そう呟いた瞬間、執事風の男に指輪を取り上げられそうになっいた朱の服の男の手から指輪が消えるのがテレビ越しにわかった。
「!?くぅっ、手遅れかっ。」
テレビを見ると悔しそうに指輪を今まで持っていた朱の服の男の手を見る執事風の男と、これまた嬉しそうに自分の手を見る朱の服の男が映っていた。
僕はテレビから聞こえてきた朱の服の男や翠の服の男、藍の服の男以外の声にようやくテレビが混沌としていたことに気がつく。
「あれ?この人いつの間に・・・」
出てきたんだ?と言おうとした瞬間
カタンッ
「うおぅっ!」
足元に置いてあった用途不明の箱がひとりでに揺れる。
驚く僕は箱が完全に沈黙したのを爪先でつついて確認してから恐る恐る手を伸ばす。
すると中に何か入っており取り出すとそこには先程テレビで突如消え去った蓄積の指輪が入っていた。
「えっ?・・・これ夢だよね?後で料金請求されないよね?」
これ以上この番組を見続けられなくなった僕はテレビを消し、ベッドに横になるのだった。
「蓄積の指輪をどこの誰かもわからん奴に売っただと!?」
「はい、私の管理が及ばず弁解のしようも御座いません。」
とある一室では50歳ほどの朱髪の男性とその後ろに控えるメイドがおり、執事風の男性が朱髪の男の前で頭を下げていた。
朱髪の男性は言葉ほど感情は動いておらず寧ろ少し興味があるといった風にも見える。
執事風の男性の方も主が怒るどころかこの件を使って娘の社会経験にしようとしているのだろうと考え、だが実際自分の管理が及ばず今回の件が起こった為謝罪の言葉は本心からのものだった。
「で、一体あの神器を買ったものは幾ら支払ったのだ?」
「値段は300.000TPほどだったんですが・・・」
「まさか値引きでも持ちかけられたか?」
言い淀む男に朱髪の男は半ば違うだろうと思いながらも尋ねる。
「それが、買い取った者との連絡がつかず・・・」
「はっはっはっ。まさか持ち逃げまでされるとはな!その買い取った者はなかなか豪胆な者のようだな。」
「調べたところ戌亥渉というまだ夢を渡った経験の無い者のようで。」
男の言葉に朱髪の男は首をかしげる。
「ふむ?夢を渡ったことの無いものがあの番組を見ることができたと?」
「どうやらそのようでして。」
「初めて現実世界に来てあの番組を見るか。何か裏があるかもしれんな。よし、罰という名目でロットを一人でその者のところに行かそうと思ったが、供として奴も付けろ。」
「御意に。」
そういい残し去っていく男の背中を見送りながら朱髪の男は末の娘であるロットを預ける男を思い浮かべる。
「あの男は実力はあるが態度がな。まぁ一日中堅物と一緒にいるよりはマシだろう。」
「何か?」
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