最弱の英雄

皐月 遊

二章 12話 「英雄の正体」

王城に入った俺たちは、どこに行けばいいのか分からず、たまたま歩いていたスーツ姿の老人に

「あ、あのーすいません! 俺たちこの国の王女様に呼ばれたんですが…」

俺がそういうと老人は少し考えてから

「………おぉ! ではあなたがライト様で、あなたがセレナ様ですな?」

「はい」

「では王女様の部屋へご案内致しますので、ついてきてください」

どうやら連れてってくれるらしい。

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王城の階段を登り、最上階の1つしかない部屋の前へと来た。

老人は扉の前で膝をつき

「エリス様、ライト様とセレナ様がいらっしゃいました」

老人がそういう、王女様はエリスというらしい。  

すると中から

「ご苦労様です。 バルム、さがっていいですよ」

「はっ!」

老人が俺たちに一礼して下がっていく。

バルム…バルム⁉︎ あの人がバルムか⁉︎

バルムとは、この世界に初めて来た時に、余分3兄弟を追い払うために借りた名前だ、まさかあんな老人だとは…

「ライトさん、セレナ、中へどうぞ」

そんな事を思っていると、中から名前を呼ばれた、その声はアナウンスの声と同じだった。

俺たちは扉を開け、中へ入る。

すると中には、ファリア、ソラ、アリス、カインとすでに4人がいた。

4人は横一列に並んでおり、俺たちを見ていた。

「あ、ラットさん! ……じゃないや、えっと…ライト…さん?」

アリスが俺の元に来て、遠慮しながら俺の本名を呼ぶ。 
そういえばアリスとカインには偽名を使ってたな…

「あぁ、偽名使ってて悪かった…俺の名前はラットじゃなくてライトなんだ」

俺はアリスに頭を下げ、謝罪する。

そしてカインも俺の元にきて

「それが君の本名なんだね、よろしく、ライト」

カインが俺に手を差し出してくる、カインはすぐに俺が偽名を使っている事に気付いたが、一度も俺の本名が何なのかを聞いてきた事は無かった。

きっと俺が自分から名前を名乗るのを待っていてくれたんだろう。

「あぁ、俺の名前はライトだ、偽名使ってて悪かった」

といって俺はカインの手を取り、握手をする。

そして俺たちはファリアとソラの元へ行き

「あー…ファリア、急に屋敷を出て行って悪かった! 」

「うん、ちゃんと謝ってくれたから許す! それにしてもまさか偽名まで使ってるなんてねー」

「はは…」

苦笑いしかでない、次に俺はずっとこちらを見ているソラに

「ソラ、本当は最初にお前に相談するべきだった。 勝手に居なくなって悪かった」

「ホントだよもう! ボクに相談してくれれば協力くらいはしたのに! 」

「…あぁ」

「まったく…ボクがどれだけ心配したことか!」

「あぁ」

「だから、これからは死ぬまでずっとボクと一緒だからね!」

「あぁ……ん⁉︎ 待て待て、それはおかしいぞ⁉︎」

いつかしたやりとりと似たものを繰り返す、どうやら皆許してくれたらしい。

「どうやら、無事仲直りできたようですわね」

突然声が聞こえて、声の方角を見る。

そこには、ピンク色の髪をした女性がいた。

「あ、初めましてですわね。 わたくしはエリス、この国の…エルキド王国の王女です」

まさかこんな若い人が王女だとは思わなかった、女王になる人を募集してるのだからもっと年寄りなのかと思っていたが… 見た感じは30…いや下手したらまだ20代かもしれない。

「…ん? どうしました? わたくし、何か変なこと言いましたか?」

俺が無言なのが気になったのか、王女様がそんな事を聞いてくる。

「い、いや! 若いなーと」

「あらあら…嬉しいですわねぇ」

王女様は口に手をあて上品に笑う。

そしてファリアが

「エリス様、ライト君達も来たことですし、そろそろ私達を呼んだ理由を聞いてもよろしいですか?」

「あ、そうでしたね。 わたくしがあなた達を呼んだのは……ライトさん、あなたの事を知りたいからですわ」

「…え? 俺?」

突然の名指しに驚く、そもそも何故王女様は俺の名前を知っているのだろう。

「あ、ちなみにわたくしがあなたの事を知っているのは、この間フローラの屋敷であったピエロ襲撃の件が理由ですわ」

「…! 襲撃されたのを知ってるんですか⁉︎」

「はい、王都で噂になってますわよ? 黒魔道士 幹部 ”ピエロ”を撃退した者がいる…と」

「な…」

ピエロはそこまでこの世界で恐れられているのか…と俺は思った。
確かにアイツはめっちゃ強かったし、危険な奴だ、本気を出されていたら簡単に殺されていただろう。

「そしてわたくしが興味を持ったのは、あなたの名前です」

「名前?」

「はい、きっとカイン、あなたも驚きますよ?」

「僕が…ですか?」

王女様は微笑むと、俺に向かって

「ライトさん、あなたの本名を…フルネームを教えてくれませんか?」

「俺の本名? イヅナ・ライトですけど…」

なんだ? 俺の名前がどうかしたのか?

ファリア、セレナ、ソラ、アリスは首を傾げて何が何だか分からないような感じだった。

だが1人…カインだけは、口を開けて固まっていた。

「な、なんだと…? 今…君はイヅナと…そう言ったのか?」

「あ、あぁ。 一体なんなんだ? 言っとくけど、この名前は嘘じゃないからな?」

「ライトさん、あなたには…兄弟がいますか?」

突然そんな事を聞かれる、俺は意味が分からなかった。

「はい、兄がいますが」

「やっぱり…」

「なんなんですか? もったいぶらないで教えてくださいよ! 俺に兄弟がいる事を聞いて何が…」

「もう1つ聞きます」

俺の言葉を遮り、王女様が言ってくる。

そして…

「あなたのお兄様の名前は…イヅナ・ユウトですか?」

「……………え?」

何故…何故王女様は兄さんの名前を知ってるんだ?

俺はもう何が何だか分からなくなってきた。

「その反応は、当たりみたいですね」

「な……なんで…? 何で兄さんの名前を…」

「単刀直入に言いますね」

王女様は俺たち6人を見て、一度目を閉じ

「あなたのお兄様……ユウトは、この世界に召喚されてきました」

「……は? 」

召喚? 召喚と言ったのか? 

兄さんが…この世界に?

って事は!

「ほ、本当ですか⁉︎ じ、じゃあ、兄さんは⁉︎ 兄さんは何処に居るんですか⁉︎ 合わせてください!」

もう2度と会えないと思っていた、死んだと思っていた兄さんは俺と同じく異世界に召喚されていたのだ。

もう一度兄さんに会える。

そんな俺の希望は……

「申し訳ありません…ユウトは…もうこの世におりません。 8年前に…死にました」

叶う事はなかった。

「………え? この世に居ないって? 」

「言い忘れてましたが……あなたのお兄様は、この国では英雄と呼ばれていました」

その一言で全てを察した。

「最強の英雄」の正体は俺と同じ日本人。

その日本人の正体は俺の兄であるイヅナ・ユウト。

「……誰ですか…英雄を…兄さんを殺したのは、誰ですか?」

「あなたもよく知ってる人物ですよ」

「俺が知ってる…?」

俺は記憶をフル回転させ、考える。

すると、すぐにある男が浮かんだ。

その男は”8年前”に何か事件を起こしたと言った、そしてその事でこの国の全員に恨まれている。

全てが繋がった。

「……黒魔道士……”ピエロ”…」

「…はい。 ユウトを殺したのは、黒魔道士 幹部 ”ピエロ”こと、アイアスです」

兄さんを殺したのは……ピエロ。 
あの狂人だ。

「で…でも! おかしいですよ、兄さんは俺と2歳しか違わない。 しかも兄さんが俺の世界で死んだのは2年前だ! この世界に8年も居るわけが…!」

「……という事は、ライトさんの世界とこちらの世界では、時間の流れが違うのでしょう」

「そんな事が……」

ありえるのか…と、そう問おうとしたが、ここは異世界、時間の流れが違うのもありえるだろう。

「ち、ちょっと待ってください!」

「何ですか? セレナ」

それまでずっと黙っていたセレナが喋り出す。

「ゆ、ユウトさんがライトさんのお兄さんって…そんな偶然がありえるんですか⁉︎ 」

「あぁ、セレナはユウトになついていましたからね、信じられないのも無理はないでしょう。 ですが、事実ですわ。 ライトさんはユウトの弟です」

「え⁉︎ セレナと兄さんが知り合い⁉︎」

兄さんがセレナとも面識があったとは思わなかった。

そしてファリアが

「セレナだけじゃなくて、私とアイリスもユウトさんと知り合いだよ、まだ小さかった私達とよく遊んでくれてたの」

「ま、マジかよ…」

「皆さん、急にこんな話をしてごめんなさいね? また、落ち着いたらはなしましょう。今日は皆さん城に泊まっていってください。 ライトさんとも話がしたいですしね?」

王女様の一声で、この話は終わりになった。

正直めっちゃ混乱してたので、ありがたかった。

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「ライト様の部屋はこちらになります」

俺はバルムさんに客室へと案内された。

「ありがとうございます。 バルムさん」

「いえいえ、それよりも、まさかライト様がユウトの弟さんだったとは…」

「…! バルムさんも兄さんと知り合いなんですか?」

「えぇ…ユウトがこの世界に来てからは、私の弟子としてよく一緒に鍛錬をしたものです」

「に、兄さんがバルムさんの弟子⁉︎」

まさかバルムさんが兄さんの師匠をやっていたとは…

バルムさんは昔の事を懐かしそうに…

「えぇ、でもすぐに力では抜かされてしまいましたがね……ユウトは才能の塊みたいな男でしたよ」

「はは…」

「ライト様も、ユウトのように英雄になられるおつもりですか?」

…はい?

「何を言ってるんですかバルムさん。 俺が英雄なんかになれるわけがないですよ」

「……では英雄になるつもりはないと?」

「もちろんですよ、目指した所でなれるとも思えませんしね」

「……そうですか、残念ですなぁ。 では、私はこれで失礼します。 ごゆっくりどうぞ」

「あ、はい」

バルムさんは俺に一礼して去っていった。

案内された部屋の中に入ると

「うわっ…なにこれめっちゃ豪華…流石王城」

でかい部屋にでかいベッド。 これが客室かと疑うレベルだった。

俺はベッドに飛び込み

「うわっ、フカフカだ」

ベッドのフカフカさに感激し…

「……兄さんも…この世界にいたんだな。 しかも英雄って…やっぱり兄さんはすげぇよ」

兄さんの事を考え始める。

「兄さんはきっと、俺みたいに情けなく偽名使って逃げたりせずに、人のため国のために頑張ったんだろうな」

兄さんが英雄になるまでしてきた事を考えると、自分が情けなく思えてくる。

「俺にはきっと………兄さんみたいに英雄って呼ばれるようにはなれないよ」

だからといって俺は英雄になろうとは思わないし、目指した所でなれるとも思えない。

「………でも」

俺は手を上にあげ、拳を握り。

「仇は…取るよ。 兄さんを殺した”ピエロ”は、俺が絶対に……殺す」

俺は、兄さんを殺した”ピエロ”に復讐する事を決意した。

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