最弱の英雄

皐月 遊

二章 9話 「一方的な再会」

「なるほど、そんな理由があったんですね」

「あぁ、だから今まではボルトを両手で2回しか撃てなかったんだ」

「でもそのグローブがあれば手が痺れる事はない、だから君はこれからボルトを最後の切り札として使うのではなく、ボルトを使った戦い方をする事が出来るようになった」

俺とカインはアリスに俺の能力の事と、そのデメリットを話していた。
最初は「魔法じゃないんですか…?」と俺の能力を疑っていたが、手に電気を纏わせたりしたら信じてくれた。

「カイン、また暇な時でいいから俺の相手になってくれるか?」

「あぁ、望むところだよ、君の戦い方は見てて面白いからね」

「じゃあ次は、私も見に行きます!」

「おっ来い来い! アリスの目の前でカインをボコボコにしてやるよ!」

「ふっ…君の方こそ、アリス様の前でかっこ悪い負け方をしないようにね」

「はいはい2人とも喧嘩しないでください! それよりも、次は東の時計台に行こうって話になってるんです!」

「あ、そうだったな」

「時計台ですか、確かにあの場所は観光地として有名ですからね。 行きましょうか」

「やったー!」

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「うわー…下から見るとめっちゃデカイな」

俺たちは王都の東、時計台の真下まで来ていた。
アリスはずっと目をキラキラさせている

「早く! 早く登りましょう!」

「分かってる! 分かってるから! 今カインが飲み物買いに行ってるから待ってくれよ!」

遠くの方でカインが飲み物売り場にいるのが見える。
流石観光地だけあって売り場は行列ができていた。

「なぁアリス、この時計台ってそんなに人気なのか?」

「はいっ! 最強の英雄と呼ばれてた人は、この時計台の上で奥さんにプロポーズしたらしいですよ?」

「また英雄か、どんな人だったんだろうなー」

「私も見た事はないんですが、皆さんが言うには黒髪黒目で、凄い優しくて強い人だったらしいです!」

「黒髪黒目…ねぇ…」

黒髪黒目、まんま日本人の特徴だ。
その英雄の日本人はいったいどんな力を持ってたんだろう? 俺みたいに、何か能力のデメリットでもあったんだろうか。

「あ! 黒髪黒目っていえば、ラットさんも黒髪黒目じゃないですか! 黒髪の人は珍しいんですよ⁉︎」

「まぁ確かに王都で黒髪の人は見なかったな」

「まさかラットさんも、なにか凄い人になるんじゃないですか?」

「俺が? なれるわけないだろー、俺はあまり無理しないで働きながらのんびり生きていくよ」

その日本人が英雄まで上り詰めた過去があろうが、俺は英雄を目指そうとは思わない。
目指したところで、なれるわけがないからだ。

「あまり自分を下に見るのは感心しないな」

そこへ3人分の飲み物を持ってきたカインが俺にそんな事を言ってくる。

「別に自分を下に見てるわけじゃねぇよ? 現実を見てるだけだ」

「君はそう思ってるかも知れないがね…僕は… 」

「さって! アリスも待ちくたびれただろ? 早く登ろうぜ? カインもほら!」

「は、はい」

「……分かった」

余計なお世話だ、自分の能力がこの世界の人に通じないのは、ピエロやカインとの戦闘で分かった事だ。
だからあまり高望みはしない、あとで後悔することになるからな。

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「うわー! 高いですね!」

「そうですね、僕も初めてこの場所に来ましたが、なかなか眺める景色がいい」

「はい! それで…」

アリスは視線を俺に向ける、そしてカインも俺の方を向き

「ラット、なんでそこにいるんだ? こっちへ来て景色を眺めないのか?」

「そうですよラットさん! 折角上まで来たんですから!」

そう言ってアリスは俺の腕を引っ張る

「い、いや…! 俺はここから…! 空を眺めてるだけで…………!」

アリスに引っ張られ、ようやく端まで来てしまった。
俺は下を見ると…

「あ…あぁ…」

冷や汗が止まらなかった、なぜなら…俺は高所恐怖症なのだ。
異世界初日はうかれていたからか、アイリスの魔法で空に飛ばされた時は平気だったが、やっぱり高いところは怖い

「ラットさん? どうしたんですか?」

「ら、ラット…まさか君…」

「すみません…俺…高い所苦手です…」

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「もう! 高所恐怖症なら先に言ってくれればいいのに!」

俺が高所恐怖症だと聞いて、アリスの提案ですぐに時計台を降りようという事になった。

「だ、だってさ? アリスがめっちゃ楽しみにしてたから…」

「私が楽しくても、他の人が楽しくなきゃ意味ないんですよ!」

「はい、すみません」

「それでアリス様、次はどこへ行くつもりですか?」

カインの問いにアリスはしばらく考え

「あ! じゃあ、北のほうの商店街に行きたいです!」

「商店街? なんでだ?」

「さっき食べたタコン焼きみたいな食べ物をいっぱい食べたいんです!」

「なるほど、食べ歩き…というやつですね?」

「ほー、んじゃ行ってみるか!」

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「アリス様、もうすぐ商店街につきますよ」

「あ、はい! 楽しみですねー」

「どんな食べ物があるんだろうな?」

俺たちが商店街を目指して歩いていると…

「ん? あれ⁉︎ アリスちゃん⁉︎」

という声が聞こえた。

何か聞き覚えがあるな…と思い、声の方向を見ると

「…⁉︎」

「あ、ファリアさん⁉︎ それにセレナさんまで! お久しぶりです!」

そう、なんとそこにいたのはファリアとセレナ、そしてソラまでいた。

アイリスが居ないのは…迷子になってるか、留守番でもしてるのか?

「久しぶりー! あ、カイン君も! 元気だった?」

「はい、僕は変わらず元気ですよ」

「アリスさん、今日はお買い物ですか?」

「はいっ! 外出する許可を頂けて、王都を回ってるんです!」

4人の会話に入る事が出来ない俺とソラは、孤立してしまっていた。

なんで3人がここに居るんだ? 
もしかして、俺を探しに来たのか?
いやでも、それならセレナがいるのはおかしいか…

そんな事を考えていると、セレナの視線が俺の方を向き

「アリスさん? こちらのフードの方は…?」

「あ、この人はラットさんといって、今一緒に住んでるんですが、とても優しい方なんです!」

「ら、ラット…さん? 」

「ど…どうも…はじめまして、ラットです」

俺は出来るだけ声を低くし、気づかれないようにした、セレナはじーっと俺の方を見つめている。

ヤバイ、バレたか⁉︎

「……はじめまして、私はセレナといいます。 なぜラットさんはフードを被っているのですか?」

「えっ⁉︎ ふ、フードですか⁉︎ えっと……あっ、自分は日焼け対策にフードかぶってますはい!」

「ひ、日焼け対策?」

「ラットさんって凄く肌が白いんですよ! だから日焼けしたくないらしくて」

ナイスフォローだアリス!

「ところで、ファリア様たちはなぜ王都に? 何か用でもあるのですか?」

カインが俺の知りたい事を聞いてくれた、グッジョブだカイン!

カインの質問にファリアとセレナは

「えっと、実は私達は人を探してるの」

……え?

「人…ですか? 」

「はい、実は私とその人が喧嘩をしてしまって…私が言いすぎたせいで屋敷を出て行ってしまったんです」

そしてこれまでずっと黙っていたソラが

「その人はね…ライトは、きっと王都にいるはずなんだ。 あっ、自己紹介してなかったね、ボクはソラだよ。 はじめまして」

なぞのタイミングで自己紹介を挟むソラ。

まさかこいつらが俺を探してるとは思わなかった。
今すぐにフードをとって皆に言わなければいけないのだが、俺にはその度胸がなかった。

「ライトさん…ですか。 分かりました! その人が王都に居るんなら、私達も探すのを手伝います!」

「あ、アリス様⁉︎ 」

「だって、こんな事を聞いたら放っておけないじゃないですか! 」

「そ、そうですが…はぁ…分かりました。 僕も手伝います」

カインの答えにアリスは笑顔になり、そして次は俺の方を向き

「あの…出来ればラットさんも…ライトさんを探すのを手伝っていただけないでしょうか?」

…そのライトが俺なんだが…

だが断ったら余計怪しまれると思い

「…分かった、俺も手伝うよ」

こうして、6人による俺探しが始まった。

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