最弱の英雄

皐月 遊

二章 6話 「動き出す者達」

ライトがアリスの家に泊まり始めてから3日がたった時のフローラの屋敷の話

「ライト君帰ってこないね…」

「そうね…もう2週間よね…」

屋敷のリビングで2人…ファリアとアイリスは居なくなったライトの話をする。

「ソラもライトがいつ帰ってきてもいいようにってずっと玄関の近くにいるし」

アイリスがそう言いながら外を見る。

「セレナもちょっとライト君に言い過ぎたかもしれないって落ち込んじゃってるし…」

「「はぁ…早く帰ってこないかなぁ…」」

2人は同じ事を言いながら机に突っ伏す。

そのリビングに突然セレナが入ってくる。

「あ、あの…2人とも、お願いが…」

セレナは言いづらそうに2人を見る、2人は顔を見合わせ、首を傾げる。

「え、えっと…このまま屋敷にいてもライトさんは帰ってこないと思うので…探しに行こうと思うんですが…」

「探しに行くって…アテはあるの? ライト君が居なくなってからもう2週間だよ?」

「はい…彼は屋敷に荷物を置いていったのでお金は無いはずです。 そんな状態で遠くには行けないはずなので、まずは働いてお金を稼ぐと思うんです」

「あ、なるほど…」

ファリアは分かったようだがアイリスはまだ首を傾げている。

「ここら辺で初心者が働けるお店があるのは王都くらいです。 なので私は今から王都にライトさんを探しにいってきます」

「えっ⁉︎ 1人で⁉︎ 」

「流石にそれは無理じゃないかしら…」

「もともとは私が言い過ぎたせいでこうなってしまったので…ちゃんと謝りたいんです。 許してもらえるかは分かりませんが…皆さんには屋敷でライトさんが帰ってくるのを待っててほしいんです」

そう言ったセレナの目は本気だった、それにファリアはため息をつき

「分かったよ、でも流石に1人はきついだろうから、私とソラちゃんも付いていくよ」

「なら、私は屋敷で待ってるわね? すれ違いになったらたいへんだから」

「え…いいんですか?」

「もちろん! まだライト君とソラちゃんの歓迎会やってないからね!」

そんな2人にセレナは頭を下げ

「あ、ありがとうございます!」

とお礼をした。

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「さて…2人とも忘れ物はない?」

「ボクは大丈夫だよ!」

「私も大丈夫です!」

「じゃあ気をつけてね?」

荷物を背負い歩き出す3人にアイリスは手を振り見送る。

王都への道中

「ねぇファリア、屋敷から王都ってどれくらいかかるのかな?」

「えっと…歩きならだいたい2日くらいかな? 足の速い竜車なら1日だけど 」

「2日かぁ…ライト、元気にしてるかなぁ…」

そんな話をしながら、3人は王都へと向かった。

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「へ…ヘックション!」

「ラットさん風邪ですか? 」

急にくしゃみをした俺にアリスはティッシュを渡してくる。

本当にいい子だなぁ…

「いや違うと思う…はっ! まさかどこかの美少女が俺の噂を…」

「はいはい…そんなこと言ってないで、次はラットさんの番ですよー」

「おっ悪りぃ悪りぃ…えっとー? コレと…コレ!」

今俺たちがやってるのはトランプの神経衰弱だ、俺が仕事から帰ってきてからやってるのだが、2人だとなかなか終わらない。

「あれ⁉︎ 違う⁉︎」

「残念ですねー、さっきのはコレとコレですよ」

俺が外したカードをアリスは簡単に揃える。

運も知能も記憶力もいいとか化け物だろ!

「次も私ですね! じゃあ一気に終わらせちゃいますねー」

「ま、まさか…」

アリスは連続でカードの絵柄を揃えていく、そして本当に残り全てを揃えて終わらせた。

「はい! 私のかちです! ラットさん罰ゲーム!」

「よ、容赦ないですねアリスさん…」

「負けたら罰ゲームだからお互い本気でやろう! って言ったのはラットさんですよ?」

「そうでしたね…」

我ながらなんて馬鹿な事をしてしまったのだろう。
アリスは何を罰にするか考え、思いついたのか顔をバッと上げ。

「今日の夜ご飯、ラットさん好き嫌いせずに全部食べてくださいね!」

「えっ⁉︎」

「ラットさんは嫌いな食べ物が多い気がします! 好き嫌いは身体に悪いので、ちゃんと野菜も食べてください! 」

「えっ…いや…」

「ずっと何も言いませんでしたが、「若い時は野菜をいっぱい食べなさい」と言いながら全ての野菜を私のお皿に置かないでくださいよ! あれ野菜嫌いだから私に押し付けてるの気づいてますからね!」

「え⁉︎ 気づいてたの⁉︎」

「当たり前じゃないですか! とにかく、今日は絶対に全部1人で食べてくださいね!」

腰に手を当てて俺にそう言うアリスは、15歳とは思えないほど大人に見えた。

15歳の女の子の前で17歳の男が正座している光景は、異様だった。

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その日の夜ご飯

「ついに…ついにきてしまったか…」

「大丈夫ですよ! 食べてみれば案外美味しいかもしれませんよ?」

「話は聞かせてもらったよ、ラット」

「カイン? どうした?」

「先ほどアリス様から君が野菜を食べたいと言っていたと聞いてね」

「なっ! アリス⁉︎」

俺がアリスの方を見ると、アリスは俺の顔をじっと見て……

「てへっ」

と舌を出しウインクをした。

可愛い…可愛いが…ちゃんと言うことは言わねば!

「あ、あの…?」

言わなければいけないのに、ついアリスの頭を撫でてしまう俺自身に腹がたった。

「上等だよアリス! 食ってやるよ野菜達をよぉ! カイン! 今日のご飯はなんだ⁉︎」

「野菜炒めだ」

「……………………」

俺は無言になってしまった。

「あぁ、君のは大盛りだよ。 たくさん食べてくれ、デザートもあるからね」

「わぁ! デザートはなんですか⁉︎」

デザートという言葉にアリスは目を輝かせる、こういう所は子供だな。
そんなアリスにカインは微笑みながら

「2人が大好きなチョコレートケーキですよ」

「な、なに⁉︎」

「チョコレート! ケーキ! やったぁ!」

チョコレートケーキだと⁉︎ 

俺はこの屋敷に来て2日目の日にアリスのおやつであるチョコレートケーキを一口貰ったのだが、それがめっちゃ美味かったのだ。

アリスの大好物らしく、俺もチョコレートは大好物なのだ。

それが…デザートだと…?

「夕飯を”皆が全部”食べ終えたらデザートを差し上げます。 なので誰か1人でも夕飯を食べる事が出来なかったら、デザートは無しです」

「なっ⁉︎」

「なるほど! ラットさん、頑張ってくださいね! 私もデザート食べたいので!」

「お、おう…! まか、まかしとけ」

声が震えてしまう、メイド達やアリスからの期待の眼差しが俺に突き刺さる、皆デザートを食べたいのだろう。 
俺だって食べたい。

そして皆の元に夕飯が運ばれる。

「僕もデザートは食べたいが、君を甘えさせる訳にはいかないからね、量は他の者の倍ある。 頑張ってくれ」

俺の前に来た野菜炒めは確かにアリスのよりも量が多かった。

「それでは、いただきます!」

それぞれ食べ始める、俺も食べなくては…箸でまずは人参を取る。
そして口に運ぼうとする、すると、食堂にいる全員が俺の方を見ていた。
皆俺が食うのを待っているのだろう、だから俺はその人参をヤケクソ気味に口の中に入れた。

俺が口に人参を入れたら、隣のアリスが

「ど、どうですか…?」

と不安そうに聞いてくる。
きっと味を聞いているのだろう。

味…味は…あれ? 

「あれ…? 美味い…? 美味いぞ!」

「ほ、本当ですか⁉︎ よかったぁ…」

「野菜ってこんなに美味かったのか⁉︎」

俺は野菜炒めをどんどん口に入れる。

「味付けにこだわったからね、口に合ったようで何よりだ」

カインも嬉しそうに言う。

それから食事は進み、皆野菜炒めを食べ終えた。

「さて…皆食い終わったみたいだね」

周りを確認し、カインが立ち上がる。

アリスは俺の隣で

「ケーキ! ケーキ!」

とはしゃいでいる。

可愛い。 頭を撫でておいた。

そして皆の前にチョコレートケーキが運ばれ、それを食べた。

そのチョコレートケーキは、今まで食べたどんなデザートよりも美味かった。

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